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転生ドラゴンは生き残りたい  作者: プレ子
プロローグ
3/114

3.初めての恐怖

 六足熊を倒す覚悟は出来たけど、11匹の幼竜が一匹の瀕死の熊を相手にするのだ。

 控えめに言って集団リンチだ。

 まず負けることは無いだろうが、威圧感が凄い。

 眠っていると解っていても近づきたくは無い。


 僕の妹達はまだ眠っている。

 皆が起きたらあの熊も起こして、戦闘訓練がはじまる。

 緊張するし怖い。

 少しでも安全に倒せるように戦力分析をしておこう。

 分かりやすい物差しが無いが、僕の大きさはだいたい1メートル位だ。

 勢いをつけて頭突きをするだけでかなりの威力になるだろう。

 まっまあ頭突きは無しだ、怖いし。

 魔法の練習のために離れて攻撃しよう。


 六足熊は大きい。 

 4メートル位はあるんじゃないだろうか。 

体の至るところに傷痕があり、最初はお母さんとの戦闘で傷がついたのだろうと思ったが、新しい傷痕は背中にある大きな爪痕だけで、それ以外は古傷のようだ。

 まさに歴戦の猛者だった。


 眠らされているにも関わらず、威圧感を感じるのは数々の修羅場を生き抜いてきた証拠だろう。

 しかし今は瀕死だきっと。

 誰も欠ける事もなく倒せるだろう。 

 もしものことがあっても、お母さんがいる。それでも得も言われぬ不安感が襲ってくる。

 

「最後まで気を抜かないようににしよう」


 ある程度の戦力分析が終った時には、すでにほとんどの妹達が起きていた。

 しばらくして、最後の一匹が目覚めた。

 全員が起きたのを確認すると、お母さんから念話が届いてきた。

 

 『今から六足熊にかけている魔法を解くから、あなた達だけで倒してみなさい。』


 そしてお母さんに連れられて、僕達は熊の方へ近づいていった。

 お母さんが睡眠魔法を解く。その瞬間威圧感が増した。

 凄く怖い。幼竜の中に緊張が走る。

 

 「落ち着け、僕」

 

 『ふふっ頑張ってね』

 

 弱々しい鳴き声が聞こえてしまってのが、お母さんからの声援が飛んでくる。 

 よし落ち着いた。まだ少し怖いが、それだけだ。

 この熊は瀕死で後ろにはお母さんがいる。

 だから、大丈夫だ。 

 僕は覚悟を決めて一歩前へ踏み出した。




 ・・・それから10分ほどの時が流れた。

 そうだよね、睡眠魔法が解けた瞬間に目が覚める訳じゃないよね・・

 歴戦の猛者と言えど、瀕死の状態で、睡眠魔法までかけられていたのだ。

 すぐに目が覚めるならそれは、生物ではなく何か別のおそろしい化け物だろう。

 魔法を解いた瞬間威圧感が増したこの熊は、むしろ、強い方である。

 恐怖心で頭が回っていなかったと、言い訳はできるが、これは気づくべきだったろう。

 恥ずかしい。顔が赤くなっているだろう。もとから赤いけど・・・


 そしてようやく六足熊が目覚めた。

 熊は、辺りを見渡すと、少しもたつきながら立ち上がった。

 

 彼は現状を理解していた。

 自分はこの幼竜の戦闘訓練に付き合わされて、死ぬと。

 腕は上がらないし、突進も出来ない。立ち上がるのがやっとだ。

 けれど、それでも戦う意思があった。

 広いテリトリーを持ち、戦いの中に生きてきた意地があった。


 六足熊から感じる強大な殺気に怖気づく。

 それでも僕はこの熊を倒す。

 魔力を口に集めて解放する。当てるイメージをして、勝つことだけを考えて魔法を放つ。

 放たれそれはまっすぐに飛び、熊のお腹に着弾して爆発した。

 熊の体が見えなくなるほどの黒煙が発生した。

 かなりの威力だったと思う。

 魔法を放つことには、成功した。特に意識はしていなかったのだが、放たれたのは火の玉だった。

 自分の色合いで薄々気付いていたが、僕は火竜なんだろう。

 そんなこを考えていても警戒は怠らない。

 まだ殺気は感じている。まだ生きている。

 

 黒煙が晴れる。そこにいた熊は、まったく動じていなかった。

 確かに火の玉は当たっていた。傷だらけの体に焼け焦げた後が追加で存在している。

 その姿に動揺した妹達が一斉に火の玉を放つ。

 それでもこの熊いや彼は立っていた。その姿が、生き様がどうしようもなく美しく、かっこよく見えた。


 だから彼は僕が倒す。

 最初の一撃で魔力はほとんど残っていない。 

 だけどそんなことはどうでもいい。

 誇り高い彼を倒すのだ。ならば僕も誇り高くあろう。

 だから僕は正面から堂々と詰めより寄り彼に飛び込み、喉元に食らいついた。

 

 時間にして10秒ほどだろう。喉から口を放したとき六足熊は息絶えていた。

 勝った。そう実感したとき、僕は咆哮をあげていた。

 いつもちょっぴり怖いしと、思っていたけど、今はそんなことを微塵も感じなかった。

 





 今僕は熊を食べている。

 前世の記憶があるからと言って、生肉が、拷問に感じることはなく、大変美味しく頂いている。やっぱり前世の記憶は記録でしかないらしい。


 お肉を食べていると不思議と、体力が回復しているのが分かる。それも、六足熊を倒す前よりもだ。

 魔力も回復しているのでお母さんに聞くと、魔物を倒したり、魔力を使いきったりすると、魔力上限が上がるらしい。

 そして倒したばかりの魔物には、魔力が豊富に残っており、それを食べることで魔力が急速に回復したのだ。

 

 感覚的な物だが、僕の魔力上限は相当に上がっている。

 それだけだ僕と六足熊には戦力の差があった。

 太陽を見る。時間はまだお昼を過ぎたころだ。2時くらいだろう。しかし、眠い。

 忘れがちだが、僕はまだ昨日産まれたばかりの幼竜だ。

 それが魔法を使い、感じたことの無い殺気を受け、初めて動物を殺したのだ。

 疲れない訳は無い。

 

 お腹を満たし、お母さんの近くへ行き、寝転がる。少し明るすぎる気もするが、すぐに寝られるだろう。


 『おやすみなさい』


 そう念話を飛ばし微睡みのかかに落ちて行く。


 『お疲れ様、ゆっくりやすみなさい』


 そして僕は、その念話を最後まで聞かずに眠りに落ちた。

ブックマーク、評価ありがとうございます。 

ぼちぼち投稿していくので、これからも宜しくお願いします。

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