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転生ドラゴンは生き残りたい  作者: プレ子
第一章
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19.本拠点

 おはようございます。

 目が覚め、辺りがまだ暗い事に違和感を覚え、少しの思考の後、ここが引っ越してきた洞窟の中だと思い出した。

 きっと、洞窟を出れば朝日が登っている事だろう。


 氷漬けにしていた荷物は、洞窟の中に置いてあったせいか殆ど溶けてずに残っている。

 洞窟内が冷蔵庫状態なので、早く溶けてほしいのだ。


 この洞窟は奥行きが20メートル程あり分かれ道は無く、真っ直ぐに伸びている。

 1番狭い所が、だいたい直径約2メートル位しかないので、少し、拡張したい。

 とはいえ、生き埋めになりたく無いので、いい手段が見つかるまでは特に手を加える気はない。

 危険を犯して洞窟を拡張するよりも、人化魔術を鍛えた方が安全で良いだろう。


 今日は、このゴツゴツした洞窟の地面をなだらかに整地したい。

 良い方法が思いつかないから、とりあえず今から今日のご飯を探しに行こう。

 僕は起き上がり猫の様に体を伸ばした後、洞窟を出る。

 ごつごつした地面のせいで体が痛い。


 洞窟を抜けると、目の前には対岸まで2メートルちょっとの小さな川が流れている。

 この川を飛び越えないとこの洞窟には入れないので、少し面倒くさい。


 川を飛び越えると、直ぐに森が広がっており、早朝なのもあって、かなり暗い。

 しかし、僕は夜目が利くので、気にせず森の中へ入って行く。

 この森は、木々の密集度が高く、移動する分には気にならないが、全力で戦闘するには少し狭い。

 地の利が相手にある以上、戦う相手は慎重に選びたい。

 なので、足音を出来るだけ立てないようにゆっくりと進んで行く。


 森の中が少し明るくなってきた頃、漸く魔物を一匹見つける事が出来た。

 そいつは木の上に佇む巨大な鷲の様な魔物だ。

 その大きさは、羽を広げずとも1メートルを超えている程だ。

 特徴的なのはその体色、僕と正反対な青い色は雷を思わせる曇り一つない青色だ。

 この鳥の名前はサンダーバード。

 名前の通りに雷系の魔術を得意としている魔物だ。


 戦って負ける事は無いだろうか、手を抜いて勝てる相手では無い。

 それに、ここは体を完全に隠せる場所が無く、近づけば確実に発見される。

 中距離からの特攻は木々が邪魔しているせいで出来ない。

 つまり、奇襲が出来ない。


 愚策に突っ込んで逃げられれば追いつけるかどうかは分からない。

 なのでここは一つ魔術をぶっ放してみよう。

 『ウインドカッター』

 しかし、放たれた不可視の刃はいとも容易く避けられてしまった。

 でも、これは想定内なのだ。

 放った物が風なのだから視認する事は出来ないが、そこには魔力がこもっている。


 サンダーバードは魔術を多様する魔物だ。

 ならば魔力がこもった攻撃を避けれない訳がない。

 僕だって避けれる。

 そもそも魔術を使う上で魔力の知覚は最低限必要な事だ。


 なら何故、当たらないと分かった攻撃をしたかと言うと、それにはちゃんと意味があるのだが……

 まあ、うまく行く確率は五分五分程度、うまく行かなくても今日のご飯が焼き鳥じゃ無くなるだけだ。


 攻撃を受け、一瞬呆けたサンダーバードだったが、次第に怒りの感情が見て取れ、次の瞬間に僕に向かって飛んできた。

 その事実ににやりと笑って迎え撃つ。

 僕が特攻していれば間違いなく逃げられていただろう。

 その勘は当たっていた用で、今サンダーバードは僕の全力より速い速度を出してこちらに向かってきている。


 サンダーバードは僕の姿を見て怯んだ様だか、もう逃げられない。

 特攻してきたサンダーバードを寸でで躱し、避けざまに尻尾の一撃をお見舞いする。

 相手の速度もあってかなりの威力になるだろう。


 この一撃で倒れてくれたら有り難いのだが、そううまく行かない。

 サンダーバードと尻尾が当たった瞬間、僕の体が思うように動かなくなってしまった。

 体内が焼ける様な激痛が走り、体が硬直したのが電撃のせいだと気づいた。


 おそらくサンダーバードは自身の体に雷を纏わせていたのだろう。

 致命的なミスではあったが、何とか立て直してサンダーバードの羽に噛み付く。

 案の定、雷撃を食らい体が思うように動かなくなる。


 体内が焼け焦げる痛みを無視して、動かしづらくなった体にムチをうち、サンダーバード咥えたままに振りかぶり、全力で地面に叩きつける。

 すると、サンダーバードの雷撃が途切れ、固まっていた体が次第に元に戻っていく。

 そこそこきついダメージを負ったが何とか倒す事が出来た。


 少し回復がてら休憩しよう。

 戦闘は一瞬で終わったが、もの凄い疲労感が襲ってきた。

 体内の損傷が酷いので『ライトヒール』を使い、痛いのを紛らわす為に、さっきの戦闘について考える。

 サンダーバードは、羽を広げれば3メートル程の大きさでありながら、狭い木々の隙間を正確に、速度を落とさず飛行していた。

 それは、今の僕には到底出来ない事なのだ。

 この先、こういった技術は必ず必要になると思う。


 『ライトヒール』を使ってから数時間が立ち、完全に痛みが消え、体が治っ為、倒したサンダーバードを口に咥えて拠点に向かって移動を始める。

 あ、そうだ。

 帰りは森の中を飛んで帰って見よう。



 数時間後、僕はボロボロの状態で拠点にたどり着いた。

 帰り道は酷いものだった。

 飛び立っては直ぐにぶつかり、まだ飛んではぶつかり。

 戦闘の怪我は完全に回復してから帰り始めたのに、何故か体中が痛い。

 誠に遺憾だ。


 ここに帰ってきた時には既にお昼時を過ぎてしまっている。

 お腹が空いている僕は、全身から感じる軽い痛みを我慢しながらご飯の下ごしらえをするのだった。

 悲しい。

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