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転生ドラゴンは生き残りたい  作者: プレ子
第一章
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14.ロックドラゴン2

 ロックドラゴンが熱線を放った。

 避けなければ間違い無く死ぬ。

 しかしウインドバレットを食らい、態勢を崩してしまっている僕がこの攻撃を避ける事は不可能に近い。


 この絶望的な状況を前に、僕の気分は高揚していた。

 その事を疑問に感じながらも、答えを出せる程の時間的余裕は無い。


 気づいたら、僕はブレスを吐いていた。

 無意識的に放たれたブレスは格上であるロックドラゴンが放つ熱線と比べれば明らかに弱く、ほとんど拮抗すること無く、押し負けていく。

 しかし、少しは拮抗していた。

 1秒に満たない間ではあるが、時間を稼ぐ事が出来た。

 

 僕の真上に2メートルの氷塊を生成し、自分に向けて射出する。

 強い衝撃で自分を吹き飛ばして熱線の軌道上から外れる。

 熱線は、僕の真上を通過し、その軌道上にあった氷塊を貫いた。

 一瞬の間に昇華した氷塊の凄まじい爆発が僕を襲う。


 勢い良く地面に墜落し、思わず呻き声が上がりそうになるのを必死にこらえる。

 追撃は来ない。

 水蒸気が煙幕となり姿を隠す事が出来たのだ。


 体を起こし、自分の状態を確認する。

 至るところに切り傷があり、背中側の鱗が広範囲に渡って火傷している。

 そして、お腹にあいた風穴。

 人間だったら間違いなく致命傷、生きて居るのがやっとな状態ではあるが、僕は、そこまで生命の危機を感じていない。


 まだ戦えるだろう。

 逃げる選択肢は頭に浮かばなかった。

 気持ちが高ぶり敵を倒す事しか考えていないのだ。

 前世の記憶が無駄な戦闘を忌避していたが、ドラゴンは本来戦闘種族なのだ。

 つまり今、格上と戦えている現状がとっても楽しい。

 

 流れ出る血液の量と比例するように魔力が減っている。

 魔物は呼吸や食事をしなくても生きていける。

 呼吸や食事をするのはあくまで魔力を回復させる為で、血管の役割は前世の頃と全く違うのだ。

 だから致命傷足り得ない。

 もっとも戦闘中に魔力回復が無いのは致命傷だか・・・


 そんな事を考えていると霧が晴れていく。

 背の高い雑草に隠れながらロックドラゴンの様子を見る。

 距離は20メートル程だろうか。

 どうやら、僕を見失って居るようで辺りを見回している。

 2回連続で竜言語魔法を使い、その上で血を流し過ぎている僕は『切り札』の魔術式を破棄せざるを得なかった。

 そのおかげで、気配遮断が機能し、つかの間の安息が得られているのだから不幸中の幸いと言うやつだろう。


 魔力量は残り半分程度で、回復は見込めない。

 さっきは、長期戦を挑もうとして失敗したから、今度は短期間で倒す方法を考える。

 とはいえ、いくら考えても答えは一つしか思い浮かばない。

 つまり、身体強化魔術を使っての特攻。


 僕の使える身体強化の中で最も強いものが『パワーブースト』といい、自分の身体能力を体感で2.5倍程度上昇させる事が出来る。

 その分魔力消費が多く、今の状態だと1分持つか持たないかギリギリの所だ。


 他にいい案は浮かばない。

 『パワーブースト』を発動させる。

 魔術式が完成するまでの時間は約10秒。

 その間は気配遮断が効果を無くし、集中砲火を受けるだろう。


 ロックドラゴンが僕に気づき、魔術を放ってきた。

 それをひたすらに避けながも、ロックドラゴンとの距離を縮めて行く。

 放たれる攻撃を最小限の移動で避け続けていると、魔術式が完成し、身体能力が一気に上昇していく。

 この時点でロックドラゴンとの距離は約5メートル。

 後ろ足に力を入れて飛びかかる。

 身体強化魔術は魔力を使って肉体を一次的に強化する物で、故に防御力も多少上がっているのだ。


 攻撃魔術をもろに受け、体に痛みが走るが意図的に無視してて、顔面に鉤爪を突き立てる。

 ドラゴンの生命力は僕で証明されている。

 ロックドラゴンを倒すためには、最高の一撃を顔面に当てるほか無い。


 鉤爪は、ロックドラゴンの頬の岩の様な鱗を剥がす事が出来た。

 空中で体をひねり、続けざまにもう一撃、尻尾で攻撃を加え、離脱しようとして、しかし、離れることが出来ない。

 ロックドラゴンが僕の尻尾に噛みついていたのだ。

 まずい。そう思った瞬間には、抗えない力で地面に叩きつけられていた。


 その威力は想像を絶し、体の至る場所が内出血を起こし、目から血涙が溢れ出ている。

 それでもロックドラゴンは尻尾を離していない。

 地面を掴み尻尾を引きちぎる勢いで体を捻る。

 何とか離脱に成功したが、尻尾には抉れた様な傷跡が残っていて、尻尾での攻撃は出来ないだろう。


 ロックドラゴンが前足を高らかと上げ、次の瞬間に振り下ろす。

 寸での所でそれを避け、しかし、爆発に近い衝撃音と共に地面が陥没し、体勢が崩れる。

 とっさに翼を羽ばたかせ、空に飛び上がる事で何とか体勢を整える。


 息をつく暇もなく緊急回避。

 ロックドラゴンが熱線を放って来たのだ。

 しかし、身体強化を使っている今ならギリギリで避ける事が出来る。


 またしてもロックドラゴンに特攻をして行く。

 魔力量的に身体強化の残り時間は後20秒程しかない。

 それでも勝ち目は残っているのだ。

 ロックドラゴンの背中に飛び乗り、首筋に噛み付く。


 ロックドラゴンから流れ出て行く血を啜り、自分の魔力を回復させる。

 振り落とそうと暴れ回るロックドラゴンの背中に爪を食い込ませ、必死にしがみつく。

 しびれを切らしたのか、勢いを付けて横に回転をし始めた。

 このまま背中にしがみついていたら、地面とロックドラゴンに挟まれて擦り潰されてしまうだろう。


 僕は、地面がギリギリの所まで来た時に飛立った。

 空からロックドラゴンを見下ろす。

 ロックドラゴンは横回転するという致命的なミスをし、現在大変無防備な格好をしている。

 大きい体を持つロックドラゴンは、相応に俊敏性が無いのだ。


 圧倒的格上であるロックドラゴンの血を飲んだ僕の魔力量は7割程まで回復している。

 口を開き、そこに魔力を込める。

 二度も僕に向かって放たれたそれは、願いを形にする竜言語魔法によって完全に再現出来た。


 『熱線』


 収束された光は長いようで短かった戦闘に終止符を打つ。

 放たれたそれは正確にロックドラゴンの頭を撃ち抜いた。

 地面が融解し、蒸気が立ち込める。


 白煙が晴れ、ロックドラゴンを視認する。

 頭が完全に消失していて、確実に死んでいるのが分かる。


 勝利の咆哮を上げ、力尽きて地面に着地する。

 

 「地面融解してる。あちゅい」

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