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転生ドラゴンは生き残りたい  作者: プレ子
第一章
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12.幼竜さんのイライラ

 時間が立つのは早いもので、あっという間に2週間が過ぎた。

 最もこの星の2週間が14日なのかは分からないけど、とにかく前世基準での2週間がたったのだ。


 この2週間特に目立った進歩は無く、鍛練をして、オークを狩って寝る毎日を続けていた。

 オーク以外の魔物も時々狩ってはみたけど、どれも弱くて、あまり美味しく無かった。


 「そろそろ移動した方がいいかな」


 いくらオークが美味しくてもさすがに飽きてきた。

 それに、ここら辺の魔物を倒してもほとんど強くなれなくなっていている。

 とは言え、安全なこの場所から拠点を移すのはなかなかに勇気がいる訳で、移動に踏み切れずにいる。



 移動するする詐欺からさらに1週間が過ぎてしまった。

 いつもと変わらない日常を過ごしていただけだけど、変わった事がある。

 それは、魔術を常時発動している事だ。

 使っている魔術は、常時発動型の中でも一番魔力消費が少ない『プロテクション』と言う名前で、体の表面を硬化させて防御力を上昇させる結界魔術の一つだ。

 魔力消費が低い分本来なら、体が硬化したことで関節が動かしづらくなったり、体重が少し重くなったりなどのデバフ的要素があるのだか、僕の場合、硬化するのは鱗なので体が動かしづらくはならないし、体重が増えれば尻尾の攻撃力が上がるので良いことしか無いのだ。


 魔術の常時発動にはかなり慣れてはきたけど、他の魔術を同時に使う時のはまだ難しく、実戦で使うにはまだまだ練習が必要だろう。

 ちなみに人化魔術は発動出来るようにはなった。

 3秒で魔力切れを起こしてしまうが・・・

 とは言え魔術の常時発動のお陰で、魔力上限と魔力回復量がかなり上がっているから、予想よりも早く人化魔術が使える様になるだろう。


 ある程度の鍛練をして、ご飯を狩りに行く。

 今日は『プロテクション』の実験もしたいので、何発かは攻撃を受けて見ようと思っている。

 オークは僕を見つけると逃げてしまうので、バトルホースが居る場所まで飛んでいく。


 バトルホースはオークの集落を越えてさらに1時間程飛んだ所に群れで生息していて、攻撃性が非常に高い大型の馬だ。

 しかし、攻撃手段が突進か後ろ蹴りしかなく、僕からしたらかなり弱い。

 攻撃の威力自体は強いのだが、倒してもあまり強くなれないし、あまり美味しく無いので、わざわざここまで来ることは無かったけど、『プロテクション』を試すにはちょうど良いのだ。


 オークの集落が見えてきた辺りで違和感を感じる。

 何か猛烈に嫌な予感がしてオークの集落の600メートル程前に着地する。

 地面におり、数分の間じっとしていると、ようやく違和感の正体が現れた。

 そこに居たのは岩のような鱗を持ち退化した小さな翼と長い尻尾、体長6メートルを越えるドラゴンだった。


 僕とは明らかに違った外見をしているこのドラゴンは、ロックドラゴンだろう。

 ロックドラゴンは、圧倒的な防御力があり、ドラゴン故の膨大な魔力を持つ、天然の要塞だ。

 そして、6メートルの巨体でありながら視認する事が出来なかったのは、結界魔術『光学迷彩』だと思われる。


 僕も『光学迷彩』の魔術式は覚えているが、常に変わる光量と背景に対応して調整を続ける魔術式は異常なまでに精密で、要求する魔力量も然る事ながら、魔術式を発動する事自体が難しい。


 それを平然とやってのけるロックドラゴンは相当に強い事になる。

 さて、どうやって逃げようか。


 ロックドラゴンとの距離は目測550メートル。

 ゆっくり後ろに下がっていけば見つかる事なく、逃げる事が出来ると思う。

 最も、普通に隠れていてもばれる事は無いだろう。

 隠れる?

 そういえば何でロックドラゴンは何故姿を現したのだろうか。

 光学迷彩なんて難易度の高い魔術が使えるなら、確かにオーク相手に手こずりはしないだろう。

 しかし、強大な存在が現れたら、オークのような弱い存在は逃げ出してしまうはずた。

 実際気配遮断を使っていた僕からですら逃げ出してしまうのだ。

 つまり、ロックドラゴンがわざわざ光学迷彩を解く必要は全く無いはずなのだ。


 ロックドラゴンがオークの集落にゆっくり近づいていく。

 オーク達だってそれに気づいて居るはずなのに、全く逃げる気配は無い。

 その光景は僕からしたらかなり異常な物だった。

 オークには、幾つかの種族進化先があり、この集落は大きい為、間違いなく上位個体がいるだろう。

 それでも、ロックドラゴンには勝てない。


 オークの集落から五匹のオークが出てきた。

 その個体は武器を持っておらず、よく見るとツタのようなもので手首を縛られている。

 ああ、なるほど。

 ようやく理解した。

 つまり生け贄だ。


 なんて事は無い話だ。

 オークのお肉は美味しくて、それを定期的に食べる為に生け贄は最適だというだけだ。

 とは言え、見ていて気持ちいい物では無い。

 僕だってオークは沢山狩ってきた。

 それでも、それは弱肉強食という自然の摂理で、ただ運がなかったから僕に食べられたのだ。


 しかし、生け贄は違う。

 運がなかった訳じゃなく、死ぬ事を選ばされたのだ。

 いや、ロックドラゴンという脅威に目をつけられたのはある意味運がなかったのかもしれない。

 それでも、味方に味方を殺す選択をさせる行為が僕は嫌いなのだ。


 想定はしていた。

 奴隷も神の裁きを名乗る断罪も貴族による圧政も。生け贄も。

 ここが異世界で前世の、人としての記憶がある僕は、人がやりそうな事はある程度想像していた。

 あくまで人が対象で考えていたのだか、まさかオーク相手にここまで嫌な気持ちになるとは思わなかった。


 ロックドラゴンは強い。

 でも勝てない訳じゃなないし、速度は僕のほうが速い。

 ある程度安全に格上と戦えるチャンスでもあるのだ。

 だから戦う。

 ただただムカついたと言う理由で。

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