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英雄にはなれないな  作者: 石田 一興
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日常

日常って言葉を僕は使うことはないと思っていた。だって、日常なんでものを特別意識したことなんてそれこそ普通に生きててないもんだ。

せいぜい、日課の薪割りが退屈で嫌になった時に嘆くときに使うくらいだ。

それでも、僕は心のどこかでは明日も明後日も薪を割っているんだろうなと思っている。




だから、日常の大切さに気が付いたとき。それはもう手遅れの時なのだろう。


「はぁ~……しんどっ。」


容赦ない日差しの中、日課の薪割りを終えた少年は切り株の上に腰を置き一息つく。腰紐にぶら下がっている水筒を手に取ると、中の水を口いっぱいに含み、水分をカラダへ補給していく。

祖父からは一週間に一本の木を薪にするように言われている。そのためには毎日計画的に切っておかなくては週末に地獄を見る羽目になってしまう。二年前に経験した、豪雨の中の薪割りは文字通り地獄であった。あの時は祖父のみならず、天に対しても罵詈雑言を吐いたものだ……もちろん心の中でだが。

この世界では一定の経験、努力、研鑽をすると等級というものを得ることができる。等級を得るとどこからともなく声が聞こえ、加護を与えてくれるのだ。祖父曰くそれは天啓だそうだ。

かく言う僕、アイザック・ブレイヴも一度だけ経験している。鐘の音のようなものとともに脳内に直接語り掛けてきたのだ。それによると「斧術の加護」を得たらしい。確かに、そのあと試しに斧を振ってみるといつもより少ない回数で木が切れるようになった。


「まあ、だから何だって話なんだけどな。」


別に斧は木を切る以外に振るったことはない。たまに祖父の狩りに付き合うことがあるが、基本的に弓しか使わない。動物の解体もナイフがあれば十分だ。


「そろそろ帰るか。じいちゃんも戻ってるかな。それに雨も降りそうだし、服入れなきゃ。」


薪を担ぐと、帰路に就いた。

家に帰るも、中には誰もいなかった。


「じいちゃんまだ帰ってないのか…。」


祖父は基本的には家からあまり出ない。それは体が弱いわけではない、むしろ2m近くある猛獣、ベアーガーを一人で仕留めて持ち帰るくらいだ。祖父はというと薬や毛皮を鞣したものを森の外へ売りに行く。そして、塩や香辛料やいろんなものを手に入れてくることが多い。だから、数日は家を空けることもあった。


「そろそろ帰ってきてもおかしくないんだけどな~。」


日が暮れてなお、祖父が帰ってくる気配がなかったため、一人食事を済ますと早々に床に就いた。

結局、一週間が経っても祖父が帰ってくることはなかった。

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