第十六話 共闘
魔術師。
俺達をそう呼んだゲームマスターは、アバターの見た目を信用するなら二十代前半の若者だった。
たった今、俺達を弾いた見えない壁は、彼の仕業――管理者権限による通行不可設定あたりか。ひょっとすると周辺エリアごと、進入不可設定にされている可能性まである。
そのぐらいの暴挙はしてもおかしくないと思える程度には、彼の気配は殺気立っていた。
「まさか本物の魔術師だったとはな。道理で通常のセキュリティーが仕事をしないわけだ。ミュトス領域からの干渉じゃ、ログにも残らないからな」
独り言のように呟き、彼は俺達に向けて手をかざした。
途端、鎖のエフェクトが俺達を絡め取る。見た目はバインドと同じだが、体をまったく動かせない。ゲームのシステムを流用した、ゲームマスター専用の拘束スキルだろう。
抵抗を考えなかったわけではないが、相手はゲームマスター。ゲームの中に限れば、それこそ神にも等しい存在だ。逆らってどうにかなるものではない。
それに――そもそも、話が噛み合っていない。
俺達はAIがいきなりバグったと思っていたのに、彼はそれが俺達の仕業だと思っている。この誤解を解くことができれば、穏便な話し合いも不可能では……あれぇ?
――事態を把握してもいないのに、決めつけている相手をどう説得すればいいんだ?
「どうする姐御、逃げるか!?」
「ちょっと待ってください、考えてます!」
「逃がすと思うのか?」
そう言いつつ、ゲームマスターの眼光が姐御をロックオン。姐御を主犯格だと認識したのか。力関係では頂点に君臨しているので、あながち間違いではない。
ゲームマスターは油断なく姐御を見据えながら、こちらへと歩を進めた。
「度重なるデータ改竄はお前らがやったことなんだろう?
魔術師なんて都市伝説だと思っていたが……まさかこうして、俺が追い詰めることになるとはな」
彼の手元に表示フレームが投影される。管理用のUIか、俺達のステータスといったところだろう。
悠長に思えるが、それだけ拘束スキルを信用しているのかもしれない。いざとなれば脱出することは可能だと思うが、相手が荒事に訴えないのなら、まだ様子見でいい。
表示フレームに目を通した彼は、うんざりしたように顔を顰めた。
「秘跡調査団のタルタル・ステーキ……大手じゃないが有名人だな。こんなの公表したら炎上するぞ。まったく、いつからデータ改竄に手を染めて……」
愚痴をこぼす彼に、思わずといった様子で、姐御が声をかけた。
「え、あの」
「待て、大人しくしていろ。そっちの二人のデータも照合しないと――」
「そうじゃなくて、後ろ」
「うん?」
怪訝そうに振り返るゲームマスター。彼の背後には、ゆっくりと迫ってくるサルゴンがいた。
体は相変わらずバグっている。無茶苦茶に生えた手足は、無理矢理に立ち上がる蜘蛛のよう。どこにあるんだか分からない顔は、しかし言葉を発する妨げにもなっちゃいない。
「余の城に――どうして神の手先がいるのですかぁぁぁ!?」
金切り声を上げた直後、複数の手が剣を握ったものにすり替わる。
まともに動ける筈のない異形で、しかし昆虫のような機敏さを発揮したサルゴンは、ゲームマスターへと襲いかかった。
ゲームマスターは驚きの声を上げながらも、跳んで躱そうとする。だが反応が遅い。剣先が掠める程度だったとはいえ、胸元には朱色の一文字が鮮やかに刻まれていた。
「っ――おい、これは」
痛みに呻きを上げ、俺達の仕業なのかと疑いの眼差しを向けるゲームマスター。
その言葉と同時に、俺は自らを拘束する鎖のエフェクトを振り払っていた。
――単純に抜け穴があっただけの話だ。これの効果はおそらく動きを止める、抵抗不可、解除不可の三つ。ならば破壊のイメージを強く思い描き、確信することで解除ではなく破壊すればいい。
ゲームマスターの専用スキルであっても、それがただのシステムである以上、システムの外側にある魔術の力なら通用しないわけがない。
問題は遠隔でぶっ壊すイメージまでは、流石に確信できないこと。
姐御とツバメも解放したいところだが、そっちまで対処している暇はない。俺はインベントリを操作して瞬間的に大戦斧を装備すると、ゲームマスターに追撃しようとするサルゴンを迎撃した。
渾身の力で――とまではいかないが、それなりの力で斧を叩きつけたにも関わらず、剣の一本で受け止められる。いや、当然か。データがどこまで無事かは怪しいが、設定上、こいつは神域とやらに到達した神殺し。少なく見積もっても、そのレベルは六十オーバーの超人なのだから。
とりあえず足は止められた。それでよしとするが、ヘイトはゲームマスターに向いたまま――かと思っていたら、予想外の角度から斬撃が放たれ、咄嗟に斧を盾にしてバックステップ。
や、やり辛ぇ……! 多腕多脚で機敏に動けるってだけで厄介なのに、関節が機能していない。設定にある動作をあの見た目で行おうとした結果か、奴の関節は三百六十度フリーの全方位仕様に化けていやがる。
「姐御!!」
防御に徹しながら声を飛ばす。霊体看破で何かを視たらしい姐御だけは、サルゴンの現状が分かる筈だ。
その説明を頼むという意思に応じて、姐御の声が響いた。
「条件は不明ですが、魔術的な干渉が行われ続けています!
王様を管理するAIの行動原理を改竄し、神に関係するものへ敵対するように!」
「狙われてんの姐御じゃねぇの!?」
「そうですけど!? でも私より、あちらの方が優先っぽいです!」
あちらってのは、ゲームマスターのことか。
ゲーム内では神にも等しいと言ったが、AI的には運営を神と見なして、ゲームマスターはその手先と判断したわけだ。
どうしてそうなっているのかは分からないが、彼がやられてしまうのはまずい。
「聞いてたよな、ゲームマスターさん!
そういうわけだから、話は協力してこいつを倒してからだ!」
「芝居をしているようにしか見えんが……まあいい」
猜疑の目を向けながら、ゲームマスターは表示フレームを投影した。
彼は何らかの操作をしようとしたが、
「――馬鹿な、弾かれた? 管理者権限だぞ、そんなわけがあるか!」
愕然とするゲームマスター。UIから直接、サルゴンを弄ろうとしていたのか。
そこへ干渉を感知したのか、サルゴンは捻るように身を向け、ゲームマスターへ飛びかかった。
「余の魂に触れるない!!」
「ぐっ……!」
ゲームマスターは掲げた両腕で身を守るが、複数の剣はフードプロセッサーのようにそれを斬り刻む。致命傷ではないだろうが、無視できないほどのダメージが通っているのは、彼の顔色からも明らかだ。
とりあえずスキルで加速して突っ込み、斧を叩きつけてみるが、剣でがっちりガードされてしまう。文字通りに手数が違い過ぎて、ステータス差がどうでもよくなるレベルで手も足も出ない。
まあ手数が違うってんなら、防ぎようのない攻撃をするまでのこと。剣を滑るように斧を落とし、足元を打撃する。戦士スキル、グラウンドストライク――その打点から扇状に衝撃波をぶっ放し、面の圧力でサルゴンを押し飛ばした。
さて、ゲームマスターの方はと目を向ければ、痛みを堪えながら声を上げるところだった。
「痛覚カットまで機能していないのか……!
おい、本当に芝居じゃないんだな!? 偶然居合わせただけなんだな!?」
「だからそうだって言ってるじゃん!」
「なら逃げろ!」
言うが早いか、彼は表示フレームを素早く操作する。
同時に姐御達の拘束も解除されて、
「通行制限は解いた! あれの対処は運営の仕事だ!
早く逃げろ。痛覚カットが機能していない以上、安全を保障できない」
「――と言われましても、お一人でどうにかできるんですか?」
自由の身になった姐御が、守られやすい位置に動きながら言う。
「個人的にはここで、恩を売っておきたいなー、なんて思っちゃうんですけど」
「っていうか、見捨てるのはなし!」
右手に剣を、左手に杖を構えながらツバメも言う。
その言葉に姐御は苦笑しているが、ま、お前はそういう奴だよな。駆け引きなんかよりも、襲われてる人を助けることが最優先。その善性にはもう慣れっこだ。
「つーわけだ! 共闘しようぜ、ゲームマスターさん」
「……仕方ないな」
不機嫌そうに応える声は、やはり本意ではないからだろう。
彼は彼なりに、職務と自分の正義を果たそうとする人なのだ。どんな状況であれ、プレイヤーは守る対象。そこを曲げたのは、異常事態に自分だけでは対応できないと悟ったからだ。
数瞬の間を置いて、表情を引き締めた彼は言う。
「弄ることはできなかったが、サルゴンのデータは閲覧できた。
見た目や動作こそ変わっているが、ステータス自体に変化はない。レベル九十の前衛、筋力重視タイプだ。小細工は警戒しなくていい」
「そりゃどうも、っと!」
会話へ割り込むように襲いかかってきたサルゴンを、斧で弾く。タイプとしては俺の上位互換ってわけか。いや、増えた手足が既に小細工を通り越して、ただの反則なわけだが。
それでも対応できないわけではない。こっちは姐御の支援もあるし、即死しないように大技には注意して、削っていけば勝てるだろう。
そう考えたところで、ゲームマスターから追加情報。
「厄介なのは――俺の無敵属性まで貫通してダメージを通した点だ」
「姐御ぉ!? 思った以上にチートくせぇんだけど、これ勝てっかな!?」
言われてみれば当たり前だ。ゲームマスターがうっかり事故死でもしたら笑えない。
ゲームのキャラクターとしてのデータはあっても、普通はダメージが通らないように無敵化している。MMORPGは、二度とロード・ブリティッシュ殺害事件の悲劇を繰り返してはならないのだ。
だがサルゴンは、その無敵化を貫通してダメージを与えてしまった。
その事実は、奴が既にシステムの支配下に置かれていないことを表している。
「問題ありません! こちらのダメージが通るなら殺せます!」
動揺してしまった俺に、恐ろしく頼もしい姐御の見解が届けられた。
へへっ、その通りだぜ。俺としたことが本質を見誤っていた。
殺されるかどうかなんて、実に些末なこと。重要なのは、殺せるかどうかの一点だ。
ゲームマスターが微妙に引いてる気がするが、なに、分かり合うのは後でいい。
「ツバメ!」
「バインド!」
打てば響くといった感じで、ツバメは定番のバインドを使用。出現した鎖のエフェクトが、サルゴンを絡め取り――弾け散る。
ま、仕方ない。レベル九十って話だし、レジストされるのは織り込み済みだ。
だがこれでサルゴンの意識は、ツバメにも割かれることになる。高性能なAIだからこそ、警戒対象が増えたことによる意識の分散までをも再現してしまう。
そこへ踏み込む。短距離ダッシュのスキル、スプリントで加速し、速度を攻撃力に上乗せするアサルトも使用。お決まりのコンボから、渾身のブレイクをサルゴンに叩き込んだ。
複数の剣でガードするサルゴンだが、流石にいくらかはダメージが通る筈。しかし即座に反撃へ転じる姿からすると、通ったダメージは雀の涙ほどか。
構わない。斧を押し付けるように手放して、初撃を回避。次撃が振るわれた時には、インベントリから取り出した盾が間に合って――嘘、一撃で割られた!?
驚愕しつつも、さらに長剣を取り出して続く攻撃を凌ぐ。斧がそうだったように、剣も壊されるということはない。なるほど、無敵貫通のおまけか。こいつの攻撃は防護を破壊する、と。
そこで回り込んだツバメが、サルゴンの背後からスキルで加速して斬りかかる。まともに入ったが、物理アタッカーを名乗れるほどの筋力ではない以上、ダメージは気休め程度。手応えでそれが分かったのだろう、ツバメは追撃せずに後方へ跳び、大きく距離を取ることにした。
だがこれで全員がサルゴンの基礎性能を理解した。
保有スキルはまだ未知数だが、脅威なのは攻撃よりもむしろ防御力。レベルとステータスの高さのせいいか、ひょっとしたら装備の効果によるものかもしれないが、デバフに対する高い耐性も厄介なところ。
となれば、俺達の戦術は自然と一つに絞られる。
「何でもいい、隙を作ることってできるか?」
距離を取りながらゲームマスターにそう尋ねると、
「演出用のスキルがある。単純なフラッシュだが、目眩ましにはなる筈だ」
「じゃあそれで。――仕掛けるぞ!」
合図と同時に踏み込めば、後方から閃光が放たれる。
視界を白に塗り潰すような光量。正面から浴びせられたら、目を焼いてもおかしくない。サルゴンのどこに目があるのか知らないが、怯んだように硬直したことから、効果はあったのだろう。
俺は強く地を蹴って跳躍すると、杭を打つようにサルゴンへ剣を叩きつけた。
咄嗟に腕の何本かで庇おうとしたらしいが、流石に舐め過ぎだ。一本を斬り飛ばし、他の腕には骨へ達するほどに食い込む。そこで剣を手放して着地し、サルゴンが反撃する前に追撃する。
狙うは足元。払ったところで転びそうにない安定感だが、踏みつけて縫い止めることはできる。
だがそれは俺の居場所を伝えたも同然。サルゴンは身を捻り、フードプロセッサーめいた多腕の剣で以て、俺を三枚下ろしにしようとした。
――躊躇いなく左腕を刃の渦へ突っ込む。痛覚カットが機能しない相手らしいが、元よりそんなものには頼っちゃいない。腕を膾切りにされる激痛も、即座に飛んできた姐御のヒールによって緩和される。
左腕を犠牲にした結果、サルゴンが俺を殺すにはもう一度、剣を振るわなければならない。しかしサルゴンが体勢を戻そうとした次の瞬間には、本命であるツバメのスキルが一閃していた。
「――テュルフィング!」
濃紫の魔力を噴き上げて、長大な光剣がサルゴンを袈裟懸けに両断する。
……崩れ落ちたサルゴンは何か、声を発しているようだったが、言葉になっていない。いや、よく聞いてみればそれは、神を呪う酷く汚い言葉のように聞こえたが、残念、差別用語が混じると聞こえなくなるのが神の摂理だ。
しばらく虫のように蠢いていたサルゴンだったが、やがてその体は灰となって消滅する。後にはモンスターを倒した時のように、アイテムキューブがドロップしていた。
「よし、どうにかなっ……いてて、落ち着いたら腕がめっちゃ痛いっ!」
「もぅ、また無茶して! ヒールしますから座っててください」
駆け寄ってきた姐御に言われて、素直に腰を下ろして治療してもらう。
その様子を見ていたゲームマスターは心配そうに、
「お前も痛覚カットが機能していなかったのか?」
「いや、元から使ってねぇだけ」
「うわぁ……マジかよ」
ドン引きしないでもらいたい。
ちょっとヘソを曲げそうになっていると、ツバメもやってきて彼に問うた。
「あのー。結局、どうして王様がバグったかって分からないんですか?」
「あ、ああ……いや、確かに異常だったけど、敵対すること自体は仕様だ」
ネタバレになるけど、と前置きして。
「サルゴン王はメインクエストが進行すると、悪魔憑きになって敵対するんだ。だから俺は、イベントフラグを改竄したんじゃないかと疑ったんだが」
「そう言われましても、私達はそんなことできませんよー」
俺の治療を終えた姐御が、自分達は無実だと主張した上で言う。
「あなたの言う魔術師でしたっけ?
それがどういうものなのかも、知らないぐらいですし」
「ん、聞いたこともないのか? ……まあ興味がなかったらそんなものか」
若干、寂しそうに見えるのは何故だろう。
これは姐御やカルガモが、濃いめのネタを話して誰にも通じなかった時の空気に似ているが。
「優れたハッカーのことを、ウィザードと呼ぶことがあるのは知っているか?
それの類語で、魔術的な手法を用いるハッカーのことを、魔術師と呼ぶんだ」
ああ、なるほど。今の世界での定義か。
魔術が実在すると認識されるようになった今、そういった魔術絡みの定義や言葉が増えているのは当然だろう。魔術師はマイナーっぽいから、ボロが出なくてよかったと思うべきか。
けど、実際どうなんだろうな。魔術が実在すると認識されていても、あくまでもその知識だけというか。魔術師そのものは増えていないんじゃないのか、という気がする。
だってゲームマスターはたしか魔術師について、都市伝説だと思っていた、なんて言ってた筈だし。
そこのところも確認しておきたいが、これは古橋さんに丸投げしておけばいいか。どう考えてもあっちの担当だろう。
それよりも――姐御に叱られるのも覚悟して、俺はゲームマスターに問いかける。
「なあ、一つだけ聞いておきたいんだけどさ。
このゲームが魔道書だってこと、あんたは知ってるのか?」
「…………は?」
唖然とするゲームマスター。オッケー、何も知らないっぽい。
運営側の人間全てが、このゲームの裏側に関わっているわけではなさそうだ。
ナイスな情報でしょ? と姐御の顔を見たら、頬をつねられた。がっでむ。
「もうちょっと探り探りやってくださいねー、そういうのー。
……はぁ。白状しますと、ゲーム内の魔術関係の事件は、私達も独自に追ってまして」
立っているのが面倒になったのか、俺の肩に腰かけて姐御は言う。
「私達は世間一般で言うところの魔術師なんですよ。新米ですけど」
はい? と首を傾げるゲームマスター。そろそろ理解が限界を迎えていそう。
だが姐御の前でそんな顔をしちゃいけない。思考が鈍ったのを好機と見て、畳みかけるタイプの悪魔なんだぜ。
「詳しく話すと長くなるんですけど、どうしますかー?
私達、これからも協力し合えるんじゃないかなって思うんですけど」
「あー……いや、待ってくれ」
姐御の提案に、ゲームマスターは気不味そうに目を逸らした。
「その、そろそろシフト終わりなんだ」
「あんたアルバイトかよ!!」
思わずツッコミ入れた俺を誰が責められようか。
結局、居残ると不審に思われそうだから、とゲームマスターはこの場を離れることになった。
彼とはまた後日、クランの拠点で会うことだけを約束する。
「――でもさぁ」
ゲームマスターを見送った後、腑に落ちない顔でツバメが言う。
「結局、王様がバグった原因って何だったのかな?」
「姐御という悪魔を連れてきたことで、イベントフラグがバグったんじゃね?」
「そういうことか……!」
「ヒール」
馬鹿を言い合っていたら、姐御の一点集中ヒールが俺達の下腹部を襲った。
気持ち悪さにへこたれていると、ご立腹の姐御が言う。
「人を癒やすことしかできない私を悪魔呼ばわりとは、心外ですねー」
癒やしの意味を辞書で調べて欲しい。迅速に。
だが俺達が恨みがましい目を向けるのを気にせず、姐御は言う。
「なんとなーく、仮説は立ってるんですけどねー。
私も専門じゃないですから、古橋さんに相談してからですね」
それと、と思い出したように。
「王様のドロップ回収しておいてくださいね! 絶対、貴重品ですから!」
やっぱ悪魔じゃねーのこの人?
えっ、ギックリ腰ってこんなに長引くの……?




