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竜と信仰の奇譚  作者: 長月十九
第一章 冒険の始まり
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第十五話 遠い背中


 コアなファンこそいたが一般受けしなかったVRゲーム、Iron Islandというタイトルがあった。

 事前に参加人数を決め、最大二十名で争うゲームだ。

 プレイヤーは冒険者となって、魔の島と呼ばれる邪神の眠る島に挑むのだが――ゲームの目的は邪神を倒すことではない。目的は冒険者として成功すること、早い話が最も金と名声を得たプレイヤーの勝利となる。

 島はそう広いものではないし、他のプレイヤーの居場所を知る手段も豊富にある。制限時間まで真面目に金と名声を稼いでもいいし、他のプレイヤーを襲って脱落させてもいいというわけだ。

 Iron Islandは入手した資源で装備やスキルの強化ができるため、序盤は協力プレイになりやすい。しかし勝利のために、必ず誰かが裏切る時がやってくる。その緊張感と駆け引きが面白いゲームだった。

 俺達島人は、そんなIron Islandの国内サーバーで遊んでいた連中の集まりだ。

 Iron Islandの国内サーバー人口は、最も多い時でも四百人ぐらいだっただろうか。常連は自然と顔馴染みになり、俺達はサービス終了後も一緒に遊んだり話したりする、緩い繋がりのゲーマー集団――島人になった。

 島人の正確な総数は誰も知らないが、他のゲームから流れてきた人もいるので、今は二百人前後だろう。それだけいれば誰もが仲良しというわけにはいかず――ぶっちゃけた話、カルガモとロンさんは犬猿の仲だった。

 ……まあカルガモは気に入ってるので、ロンさんが一方的に噛み付いてるだけとも言うが。原因は島時代、カルガモがロンさんを裏切りまくったせいなのだが、どうも相性の問題か、ロンさんだけ綺麗に騙されてたんだよな。

 しかしロンさんがこちらへ合流する以上、嵐の予感がしないでもない。

 姐御はもちろん承知しているが、クラレットとツバメには予め話しておいた方がいいだろう。


「あー。これからゲーム仲間のロンさんって人が来るんだけどさ。

 そこの害鳥が絡まない限り、面倒臭いところもあるけど常識人だから安心してくれ」


 言われて、二人はカルガモに目を向けた。

 害鳥はうきうきした様子でスクワットなんぞしており、大人しくする様子が微塵もない。

 この困った最年長の男に二人は半笑いで呆れの目を向けていた。


「けど常識人ってさー。それ、ガウス君基準で?」


「そうだけど?」


 答えると、ツバメは眉に唾を塗る仕草を取った。

 あ、これ知ってる。眉唾の語源になった、古のおまじないだ。


「大丈夫ですよー。ロンさんは適度に構ってあげれば、基本無害ですからー」


「あの、タルタルさん。それ、扱いを間違えると何かあるって風に聞こえるんですけど」


 指摘されて姐御は下手くそな口笛を吹いた。

 いや、まあ……きっと大丈夫だって。ロンさんは確かに面倒臭い人だけど、扱いが難しいわけでもないから。カルガモが何度となく騙していることからも分かるように、基本ちょろいから。

 俺達がそんな感じで話していると、ついにその男はカフェに現れた。


「待たせたねガウス、タルタルさん」


 やって来たのは長身の美男子だ。艷やかな黒髪は腰元にまで届き、切れ長の目はどこか不思議な温かみを帯びている。誰もが口を揃えて美青年と形容するだろう容姿は、しかしやり過ぎの感が強かった。

 だってさぁ、用意されたキャラってわけじゃなくて、自分で作るアバターだぜ? それなりの美男美女にする人が多数派とはいえ、ここまで全力で「私は美しいです」みたいな造形にするのって、普通は躊躇うんだよ。

 あーあー、しかも服がやばいって。胸元の大きく開いた黒のシャツに、黒革のズボン。イケメンにしか許されない服装を、ごく当たり前のように着こなしている。

 ここまでやるとネタ臭くなりがちなんだが、そういった空気もない。この男、まさかの自然体である。


「そちらのお嬢さん方は話にあった人かな?

 私はガウスらの友人で双龍。よろしく頼むよ」


「あ、はい。ツバメです、あたし」


「クラレット、です。よろしくです」


 見た目のインパクトが強過ぎたか、二人はやや呆然とした様子で名乗っていた。

 それに気付いていないのか、ロンさんは別の席からイスを引っ張り、俺達の席に加わって腰を下ろした。

 彼はその長い黒髪をかき上げて、


「しかしソロだと中々に苦労させられるゲームだね、これは。

 幸い、どうにか最低限の装備は揃えられたが、この先も大変そうだよ」


 と、苦労を感じさせない声で言う。

 俺達は曖昧に頷いて誤魔化すが、どうやら皆、言葉の裏には気付いているようだ。

 ――つらいからPTに入れて。

 意訳するとそんな感じだが、自分からはあえて切り出さない。

 とにかく誘われることを待つ――それがロンさんの基本的なスタイルなのだ。

 だが忘れてはいけない。この場にはその意訳をわざわざ言っちゃう外道がいることを……!


「ほうほう、苦労しておるようじゃなぁロンロン。

 PTに入れて欲しいのなら、素直にそう言ったらどうかの? んん?」


「っ……、何度も言うがその呼び方はやめたまえ。

 それに何を勘違いしたのかは知らないが、私はPTに入りたいだなんて口にした覚えはない」


「おやぁ? じゃが、ソロを続けたいと言っているようには、とても聞こえんかったがのぅ」


「そ、それはそうだろう。これはMMOだぞ?

 ソロ専ならばともかく、普通は望んでソロを貫かない。それは不合理だ」


 言いつつ、ロンさんはちらちらと視線を送ってくる。

 ……誘うなら今だぞってことでしょ? 分かってるけど面倒臭いんだよなぁ。

 あ、っていうか確認しておかなきゃいけないことがある。


「なあロンさん。ちょっと話変わるけど、ジョブは何にしたんだ?」


「ああ、ジョブか。それは、まあ――まだその、転職はできていないが、戦士がいいかなと」


 なるほど無職。しかもこの言い淀み方、たぶん転職クエに一度は失敗してるな。

 これをネタにするのは哀れと思ったか、黙っていてやる優しさがカルガモにもあった。


「ふーん、けど戦士か。俺と被っちまうな」


 タンクなら別にいいんだが、ロンさんにタンクは似合わないってか無理だろうし。

 ロンさんはハッとして、


「まだ戦士に決めたというわけではない。

 そう、魔法職をやるのも悪くはなさそうだからな」


 なお魔法職は神官、魔道士、呪術師の三種類。俺らはコンプリート済みである。

 このどうしようもない間の悪さ、実にロンさんって感じ。


「私達、魔法職は揃っちゃってるんですよねー。

 猟師になってもらえたら、嬉しいなって思うんですけど」


 誘いやすいように姐御が誘導をかける。

 まあフォローなのは間違いないだろうけど、単純に猟師が欲しいってのも大きそう。

 しかしロンさんは困ったように眉を下げて、


「猟師か……弓職だろう? 私にできるかは、正直怪しいな」


「器用で命中補正かかりますよー?」


「……恥ずかしながら、補正があっても当たる気がしないのだよ」


 あー。銃撃戦するようなゲームだと、クソAIMだったもんなぁ。

 弓と銃ではまた扱いが違うと思うのだが、苦手意識があるなら強制するべきではない。

 だがそうなると、他のジョブで適正がありそうなのは――――。

 考え込んでいると、カルガモがからかうような声音で言った。


「商人なんてどうじゃ? ロンロンは守銭奴じゃからな」


「誤解を招くような言い方をするな! 私は金が好きなだけだ」


 いいのかそれで、と皆が若干困惑する中、彼はうむ、と頷いた。


「しかし商人か。戦闘能力に疑問はあるが、サポートキャラというのも悪くないな。

 私自身は決して戦えないわけではないが、そういうのも得意分野だ。実に悪くない」


「そう言えば露店を開けるのも商人だけみたいですねー」


「ほう、露店か! MMOの華ではないか、俄然やる気になってきたぞ!」


 そして彼は席を立ち、


「よし、善は急げだ。時は金なりとも言うからな!

 これから商人ギルドに行き、転職してくる。諸君、また会おう!」


 勝手にテンション上げて、止める間もなくカフェから出て行ってしまった。

 ……え、いいの? フレンド登録もしてないよ?

 皆が何とも言えない顔をしていると、一人だけ、カルガモが笑っていた。


「くっくっく、あやつは戦わなくていい言い訳を探しておったんじゃよ。

 こうも見事に踊るとまでは思っておらんかったが、よっぽど苦労したんじゃろうな」


 あー。言われてみればそんな気がしないでもない。

 ロンさん、得意分野は計算や交渉とかだし、あるいは初めから商人も考慮していたのかもしれない。

 だがいきなり商人になると、度胸がないと軽んじられるかもしれないので、この展開を待っていたのか。

 俺はうんうんと頷き、さすがにカルガモはロンさんをよく理解しているなぁ、と感心した。

 そんな俺に白い目を向けて、ツバメが口を開いた。


「ねえ、常識人って言ってたけど」


「別に変なことはしてなかったろ?」


「そうだけど! そうだけどさぁ!」


 はて、少なくとも奇行はなかったと思うんだが、何が不満なのか。

 首を傾げていると、クラレットがぽつりと言う。


「……キャラが、濃かった」


 それは否定できない。しかしロンさんの名誉のために、あれだけは話しておくべきか。

 話していいかな? と、俺は姐御に目配せを送る。どうでもよさそうに頷かれたので、遠慮なく話そう。


「一応言っておくけどロンさんのアバター、あれってリアルそのまんまだぜ」


「「えぇ!?」」


 正確に言うと髪型は違う可能性もあるが、顔や身長はそのままだ。

 あの人、どうせなら自分の分身として、完璧に自分を再現したいとか言ってるからな。


「ま、あれはああいう生き物じゃと思っておけばよい。

 中身があんな感じじゃから、別にモテたりもしておらんしな」


「ああそっか、だからあんな自然体だったんだ……」


 遠い目をするツバメ。残念なイケメンってのは、無常感があるよね。

 しっかしロンさんが商人なぁ……狩りに誘っても大丈夫なのか? ぶっちゃけ今のPTだと、戦闘能力のないメンバーを護衛するほどの余裕があるかは怪しい。

 つーか姐御がほいほい背伸び狩りしようとするし、経験値効率という名の甘い蜜に俺とカルガモは抗えない。適正レベルの狩り場だったら、まあギリギリ大丈夫かなとは思うんだが。

 そんなことを考えつつ、俺達は明日からどうしようかと雑談を交えつつ相談する。

 もう少しゴブリン狩りを続けてもいいのだが、どうせなら他の場所にも観光がてら行ってみたい。その方針にまとまったところで、じゃあ下調べをしておきますねと姐御が言った。

 ……激しく不安なのだが、さすがに全滅確定の無茶な場所は避けてくれると信じよう。

 それとは別に、俺は少し気になっていることを提案してみる。


「ああそうだ。金に余裕ができたらでいいんだけどさ、いくらか手持ちが欲しい」


「それは当然ですけどー……何かやりたいことあるんですか?」


「いや、ちょっと教会にお布施してみようかなって」


「あー。カルマ値の調整ですかー」


 そういうこと。まだ衛兵の態度が悪いぐらいなので、多少の余裕はあると思う。

 しかしそれこそギリギリまで追い詰められても困るので、余裕がある内に改善しておきたいのだ。


「? ガウス、何か悪いことしたの?」


「強いて言うなら世の中が悪いんだよ、世の中が」


 ちょっとカルガモを殺したり、街中で暴れたぐらいじゃないか。実質無罪ですよこんなもん。


「おう、他人事みたいに笑ってるけど、お前の方がやばいと思うからな」


「む。じゃが俺の場合、ジョブ補正が原因よ。

 お前と違って無意味な騒ぎは起こしておらんからな」


 そう言いながら、ごく自然に席を立つカルガモ。

 俺も同じように腰を上げて、


「はっはっは。やだなぁ、俺はお前と違って無辜の市民を襲ってないよ」


「はっはっは。それよりも命の価値が重い俺を襲っておるじゃろう?」


「命の価値は平等だぜ? あ、ごめん。無価値なお前っていう例外を忘れてた」


「平等か……聞こえのいい言葉じゃが、そんな綺麗事を信じておるとは青いのぅ」


 穏やかに言い争いながら、俺達はカフェの外へ。ほら、店内で暴れるわけにいかないしね?

 表に出た俺達は周囲をぐるりと見渡し、衛兵の姿がないことを確認。

 よし、問題ねぇな死ねやオラぁ!!


「待って待って! なんでケンカしてるの!?」


 遅れて外に出てきたクラレットが、何故と叫ぶ。

 それに対して俺達は、男臭い笑みを浮かべて異口同音に答えた。


「「殺らなきゃ殺られる」」


「なんで!?」


 闘争の根源へ問いかける叫びに、しかし俺達は答える言葉を持たなかった。

 不思議なものだ。こんなにも殺したい相手なのに、同じ思いを抱えているのだと信頼できる。

 俺とカルガモの間には――今すぐ死ねクソ野郎と通じ合う、奇妙な友情があった。

 あ、ツバメと姐御が精算してるのが見えた。あざーっす。


「オラぁ! ちょこまか逃げてばっかじゃ殺せないぜ!?」


 斧を振り回す俺を相手に、巧みなステップで距離を保とうとするカルガモ。

 流石に昨日と違ってレベルも上がった今、俺の攻撃力は侮れないと見ての行動だろう。

 だが甘い、甘いぜカルガモ。黙っていたが俺の直感にはエンハンスが開放されている! その項目名は未来視! 意識して起動すれば、ゴブリンアーチャー戦でやってみせたように、世界から色と風景が欠落する。

 そして視える。ほんの僅かな気配から読み取った、お前の未来が!


「――っ、完全にモノにしおったか……!」


「ハッハァー! ついてこれるとは、流石じゃねぇか!」


 未来を視る俺の攻撃を、カルガモは短剣で捌く。

 ステップだけでは対処し切れないと判断したのだろうが、実力差が埋まったことの証左だ。

 そもそもこの未来視、本当に未来が視えているわけではない。そう呼べる次元にまで高まった、ただの予測。本来、達人が膨大な経験から実現するそれを、俺はスキルの補助を得て気配を読み取り、暴力的な演算で可能にした。

 技術そのものはカルガモが上。だが精度の点では負けていない……!


「くっ……!」


 ついに斧の刃が掠め、カルガモにダメージが入る。

 おおっと、もっと必死で避けた方がいいんじゃないか? 俺のブレイクにはイメージトリガーがある。当たると思ったなら、その段階でブレイクを乗せればいい。通常攻撃が必殺の一撃に化けるんだぜ!

 ――刹那、カルガモが何かの確信を得てニヤリと笑った。

 脊髄が煮え立つような不快感。未来視でも視えない何かを、本能的に察知する。

 俺は先に叩き潰せと斧を振り――――


「――スティール」


 カルガモの手が閃く。蛇のように伸びる腕が、俺の胸に突き刺さる。

 ダメージはなく、衝撃もない。ただ、何かを掴まれたという気持ち悪さがあった。

 その腕が引き戻され――途端、俺はバランスを崩して転倒した。


「っ……!? 馬鹿な、何をした……!」


 この目で見た現象と、この体に起きた変化が一致しない。

 振っている斧が急に重くなったせいで、俺はバランスを崩したのだ。

 その答えを――俺を見下ろし、カルガモは告げた。


「スティールの本質は、アイテムを盗むことではないんじゃよ。

 そう定義されたデータを盗むスキル――分かるかの? 本質は、データを盗むことじゃ」


 まさか。まさか、まさか!?

 俺は立ち上がるのも忘れて、ステータスウィンドウを開いた。

 確認するのは筋力の項目。その数値は、記憶にあるものより十も低かった。


「盗んだのか……! 俺のステータスを!!」


「今はまだ、この程度が限界よ。

 しかしいずれ、この腕は魂さえも盗んでみせよう」


 くそっ、ふざけるな……! やっと追い付いたと思ったのに!

 また引き離すのか! また遠くに行っちまうのかよカルガモ……!!


「――クラレットさん、今です」


「ファイアーボール!」


 ちょっとシリアスやってたら、姐御に命じられたクラレットにまとめて吹っ飛ばされた。

 あ、未来視の弱点発見。集中してないものへの注意が、すっげぇ疎かになってた。

 いい感じに焦げてぷすぷす煙を上げる俺達を、姐御は足先で蹴りながら言う。


「別にね、ちょっとケンカするのはいいんですよー?

 だってガウス君とカモさんですもん。それはもう、仕方ないと思うんですよ。

 私が許せないのはですねー、身内のケンカでなんか覚醒しちゃってることなんですよー」


 いやでも、強敵との戦いで新しい力に目覚めるのって王道じゃん?

 そこに関しては俺達、何も間違ってないんじゃないかな。


「なんでタルさんがPTリーダーなのかなって、ちょっと不思議だったんだけど。

 この光景見たら超納得した」


 しみじみと頷くツバメ。隣では同じようにクラレットも頷いていた。


「おう、姐御を舐めちゃいけないぜ。

 俺らの飼い主が務まんのは、この人しかいねぇからな!」


「そうじゃそうじゃ! もっと敬意を払ってもらおうか!」


 騒ぐ俺達を姐御は無言で踏み潰した。

 あ、HPゼロになった。けど姐御、怒りに身を任せ過ぎじゃない? 別に殺されるのはどうでもいいんだけど、カルマ値の悪化が加速しちゃうよ?

 俺とカルガモが噴水広場でリスポーンした後、案の定、姐御もリスポーンした。


「おいおいカルガモ、この人あれだぜ、また衛兵にぶっ殺されてるぜ」


「おお怖い怖い。善良なプレイヤーとしては通報した方がいいかもしれんのぅ」


「もー!! どうしてこんなことになってるんですかー!

 違うんですよぅ、私はお二人を殺したかっただけで、自分まで殺されたくはないんですよ!!」


 うん、落ち着こう姐御? そのセリフ、流石に俺らもドン引きだから。

 荒ぶる姐御を宥めつつ、俺達はクラレット達と合流して、明日の方針を決定する。

 ちょっと洒落になってないから、少し稼いだら懺悔しに行こう、と。

 そう約束して、今日はこれで解散となった。


     ○


【カルガモの発言】

 姐御の殺戮衝動が半端ない件について。


【八艘@飛行中の発言】

 詳細知らないけどカルガモが悪いに一票。


【のーみんの発言】

 あたい思うんだけど、どうせがっちゃんも悪いに一票。


【カルガモの発言】

 そうじゃよ、のーみん。主にガウスが悪いんじゃよ。


【ガウスの発言】

 その件に関しては同罪だろが!


【うどん貴族の発言】

 やっぱりお前らが悪いだけじゃね???


【あやせの発言】

 と言いますか、なんでMMOなのに殺し合ってるんですかこの人達。


【好きの気持ちわ切ない……の発言】

 僕が思うに歪んだ愛だね。


【八艘@飛行中の発言】

 愛か……愛なら仕方ないな。


【うどん貴族の発言】

 ああ、そりゃ仕方ねぇわ。


【暮井の発言】

 だって愛だもんなぁ……。


【大勢の発言】(9人)

 尊い……。


【タルタル@ゲオル始めましたの発言】

 え。なんですかこの流れ。

 っていうかカモさん、また殺していいですか。いいですよね。


【カルガモの発言】

 あ、姐御ぉ!? おぬしさっき、ゲオルで寝ると言っとったじゃん!


【タルタル@ゲオル始めましたの発言】

 寝る前にちょっと島チャン見ようかな、と思ったらこれですよ?


【八艘@飛行中の発言】

 謝れ、早く謝れってカルガモ! 今なら半殺しかもしれん!


【のーみんの発言】

 ここであたいのターン! 手札からこの前カモさんが言ってた音声ログを召喚!

 「わりと真面目に心配なんじゃが、あやつゲームばっかしとるけど恋人とか作らんの?」


【カルガモの発言】

 おまっ、お前えぇぇぇぇ!?


【タルタル@ゲオル始めましたの発言】

 カモさん。明日、覚えてろ。


【のーみんの発言】

 まだあたいのターンは終わってないぜ! その時のがっちゃんの音声ログを追加召喚!

 「姐御は可愛いけど、作ろうと思って作れるタイプじゃないべ」


【ガウスの発言】

 なんで!? なんで俺まで飛び火してんの!?


【のーみんの発言】

 良かれと思って☆


【タルタル@ゲオル始めましたの発言】

 のーみんも殺します。


【のーみんの発言】

 あれぇー!? こっちぃ!?


【タルタル@ゲオル始めましたの発言】

 どうせのーみんも、ろくでもないこと言ってたんでしょ? ねえ?


【のーみんの発言】

 いやいや、あたいは好き勝手言う二人を止めてました!


【カルガモの発言】

 はい! ログまで残しておらんが覚えとるぞ!

 たしか「あの子は隙だらけで逆にモテない」とか!


【ガウスの発言】

 なあ姐御、聞いて欲しいんだ。

 俺はさ、姐御って純粋だから……そういうの、苦手かなって。


【八艘@飛行中の発言】

 俺その場にいたけど、こいつ笑ってたよ。


【ガウスの発言】

 いきなり裏切ってんじゃねぇよハゲ!


【八艘@飛行中の発言】

 それを言ったら戦争だよなぁ!?


【タルタル@ゲオル始めましたの発言】

 もうまとめて殺すってことでいいですよね。


【大勢の発言】(4人)

 ごめんなさい。



 いやまあ、俺らが悪いのは間違いないんだけどさぁ。

 姐御の殺戮衝動が半端ないってこと、まったく否定できていないのでは……?

 深く考えてはいけない気がしたので、俺はそのまま寝た。グッナイ。

第一章はここまで。

明日からは第二章となります。

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