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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
二大国家戦争
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樹海の復活

 タクロー達一行は、丸一日寝ていた。

 よほど疲れているのだろうと、誰も彼らを起こすことは無くそっとしていた。


 時間が経つと、一人、一人と目覚めていく。

 最初に目を覚ましたのは、アリーシャ。隣で寝る、トリスのいびきが煩かったからだ。

 アリーシャは手持ちの布で、大口を開けていびきをかくトリスの口を封じる。

 一息入れると、他の面々も起き出した。

 未だ起きそうに無いタクローを気遣うように、静かに家を出た。


 それから暫くして、トリスは息苦しさに目を覚ます。

 気が付けば口が開かない。獣人故に前に突き出した口が、布で縛られていた。

 布を外して、大きく深呼吸をする。

 周囲を見渡せば、女性陣の殆どが居なくなっていた。

 タクローの方に目を向けると、小さな少女達が寄り添うように寝ているのだった。

 そんなタクロー達を起こさぬよう、トリスもまた、そっと家を出たのだった。


 更に時を置いて、ようやくタクローが目を覚ます。

 見慣れぬ天井に、ぼんやりとした頭で周囲を見渡す。

 胸に重さを感じて見れば、三人の少女がニコニコとタクローの顔を見ている。


「よう……」


 ムツミは犬の獣人らしく、しっぽを振って挨拶をする。

 ナツキはやや恥ずかしそうに、タクローの胸に顔を埋めて、挨拶をする。

 ヤエはタクローに顔を近づけてくる。ソレは、お互いの吐息を感じられる程の距離だ。


「他の連中は?」


 三人は無言で、『解らない』と首を振る。


「そうか……、取り敢えず、三人共どけてくれないか? 起きれない……」


 三人は、顔を赤らめてゆっくりとタクローから離れる。

 鎧が完全に外されているのを確認したタクローは、室内を見渡す。

 見慣れぬ構造の建物と、調度品を見て、意識を失うまでの事を思い起こす。


「寝落ちったか……」


 意識を失う、もとい、寝落ちするその瞬間の記憶を呼び起こす。

 急激な眠気に襲われた事により、目を閉じた瞬間一気に意識が飛んだところまで、しっかりと覚えていた。

 勿論、それ以降の記憶は無い。

 気が付けば、見慣れぬ部屋の中に居たのだ。


「あ、起きた……」


 ラフな格好をした、アリーシャが部屋に入ってくる。


「よう……」


 アリーシャの格好を見たタクローが、何処に行っていたのか聞くと、水浴びと回答が返ってきた。


 アリーシャの話で、タクローは戦闘での汗を流すべく、水浴びをする事になる。

 エルフが住む集落には、温水が出る泉があった。

 家には備え付けの浴場は無い為、集落の者達は全て温泉を利用している。

 タクローがソコヘ向うと、三人の少女達も共についてくる。

 ため息混じりに、温泉の脱衣場へ行くと、部屋は一つしか無い。

 確認すると、そこは混浴となっているのだ。

 要するに共同で使用されているのだ。

 一応、集落に住むエルフ達は、時間で男女と区切っているらしいのだが、日が高い時間は特に区切られてはいない。

 三人の少女達を無下にする訳にもいかず、タクローは三人の少女と温泉に入る。

 アイテムボックスから、タオルを出して少女達に渡すが、羞恥心が皆無なのだろうか、服を脱ぎ捨ててタクローに抱きつく。

 タクローは対応に困りつつ、浴場へ行くのだった。


 入浴の前に体を洗うのは、日本人の風習のような物。

 タクローは、手持ちの入浴セットで体を洗い、また、少女達にも体を洗う様に促す。

 こうして、温泉に浸かり、戦闘の疲れを癒やす。

 周囲の景色は、まるで秋模様。

 やや細みがかった、木々が赤い葉をヒラリハラリと落とす。

 三人の少女達が無邪気に、温泉内を行き来するのをタクローは苦笑いで見た。


「あ、タクロー様……。お目覚めなられたのですね……」


 声がする方に目を向けると、タオルで半身を隠したミセリルアの姿があった。

 湯けむりのおかげで、全体を捉える事は出来ない。


「ああ、おかげさんで……な」


 顔を赤らめ、タクローはミセリルアを直視しないよう努める。


「この度は、本当にありがとうございました……」


 バシャリと音を立てて、ミセリルア深々とお辞儀をする。

 しかし、タクローはその姿を見ない。


「あ、ああ、気にするんなよ……。ってか、色々隠してくれないか? 目のやり場に困る……」


 ミセリルアは、消え入りをうな声で「気になさらないで下さい」と言うものの、タクローは気にせずにはいられなかったのだった……。


 少しの時、疲労と汗を温泉で流し終えた後、タクロー達はミセリルアの家に戻る。

 道すがら、エルフ達がせわしなく動き回っている姿がタクローの目に入る。


「なぁ? ミセリルア。みんな、どうしたんだ?」

「皆、移動の準備に追われているんですよ……」


 ミセリルアは現状を移動しながら、話した。

 イビル・ツリーのせいで、樹海のほとんどの木のマナが吸いつくされ、樹海は死の森となりつつある現状を。

 マナの枯渇は、大地を枯らせてしまう。

 この場所が、荒野へと変貌してしまう前に、エルフ達は隠れ住める森を探して、旅立とうとしているのだ。


 本来、エルフは『森の民』という意味がある。

 エルフが生きていくには、森は必要不可欠なのだ。町に行き、人間の様に暮らすエルフも居るが、それは、本来のエルフの生き方とは異なるため、長い寿命であるはずの彼らの寿命は極めて短いものと成って居るのが現状だ。

 そうならない為、ミセリルアの住む集落の者達は、死んでいく森を捨てて新天地を探す旅に出る事にしたのだった。


「マナの枯渇……ねぇ……」


 タクローは考え込む。


「世界樹の半身が力をつければ良いのですが……、遅かったようです……」


 ミセリルアはがっくりと肩を落とした。


「取り敢えず、マナを地中に注げば良いのか?」

「そうですね……。ですが、失ったマナの量はあまりにも多いのです。今は、大気に溶けてしまっている為、それを大地に送ることは世界樹でなければ困難かと……」


 タクローは鼻で笑う。


「なら、俺に任せな」




 タクローはミスティック・アーマー・ナイトを装着して、集落の中心地に立つ。

 いつしか、集落のエルフ達が集まっていた。


「そんじゃ、やってみますかね……」


 体をほぐす様に、軽く動くと鎧に意識を集中する。


「チャージ……、オーバーチャージ……」


 ミスティック・アーマー・ナイトは、タクローの指示の元、大気中のマナを一気に吸収し、鎧内部に貯め込む。

 フェアリーストーンが強く輝き、マナをMPへと変換する。

 タクローのMPゲージが一気に限界を越える。

 かがみ込んで、地面に手を当てると、タクローはサンダーストームにマナを注ぎ込んだ要領で、地面にマナを送る。


「きたきた、マスターの力だ!」


 地中にあったドライアードは、タクローのマナを受け取り、一気に地中へマナを拡散させる。

 まるで、大地が活力を取り戻したように、地面から草木が芽吹く。

 それはまるで、早送り画像の様に。

 木々にも変化が訪れる。

 赤かった葉は、徐々に緑に変わり、終いには青々しい葉へと変わっていった。

 これまで同様、季節にあった色合いへと変わり、風で葉がこすれる音が全体にこだまする。


 エルフ達は、静かに涙を流し、タクローに跪く。

 誰かの声が聞こえる、「彼は、救世主だ」と。

 タクローはありったけの、マナを注ぎ、樹海は本来の姿を取り戻したのだった。

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