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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
二大国家戦争
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悪魔の樹討伐クエスト3

 暗い闇の中、八色の光が震えている。


「皆、頑張って! マスターが来てくれたよ!」

「感じた! マスターだ!」

「むぅ、遅いですぅ……」

「こらー、そこ、今力弱めたでしょ!?」

「だってぇ……疲れたぁ……」

「私達がちゃんと支えるの! マスターの為に!」

「頑張りすぎでしょ、マスターはまだ世界樹に来てないんだから」

「ずるいや、ドライアードばっかり……」

「そうだそうだ」

「皆、勝手なこと言ってないで、マスターを困らせないの!」


 様々な声だけが、闇にこだまする。

 八色の光が抑えているのは、世界樹の若木に手を延さんとする、悪魔の根だった。


 タクローが戦闘モードに意識を移行した時だった。

 イビル・ツリーが、タクロー達と自身を囲うように地中から根を地表に出す。

 巨大な悪魔の樹は、地上に突き出させた根に枝を伸ばして絡める。それはまるで、巨大な鳥籠。


 ゲームではお馴染みと言える、ボスバトルが始まるとエリアを限定させるギミックだ。

 この世界でも、ソレが適用されたのか、はたまたイビル・ツリーが狙ってそうしたのかは定かではない。

 センターで戦った、グレート・デーモン戦ではそういったギミックは発動されなかった。


「おいおい、逃さないってか!?」


 トリスが吠える。


「アイツは、多くの仲間を捕食しました……。気をつけて下さい!」


 ミセリルアは弓を構える。


「ふぅ、主様の行道は覇道だな……」


 強張りながら笑みを浮かべて、剣を抜くセルヴィナ。

 そんな仲間達を背後に控えたタクローは脳みそをフル回転させている。

 味方の安全確保、敵のほぼ未知数と言える戦闘能力、天秤に掛ける物が多すぎる。


(くそぅ、どう見たって割に合わないぞ……。鎧の新しい力……、フル活用してみるか……!)


 タクローは全身に力を込める。


「行くぞ!」


 タクローの号令で、一斉に動き出した。


 タクローはエアロダッシュで突進する。

 他の三人は散開して、援護の体勢をとった。

 驚くべき事に、ミセリルアの動きもタクローに呼応するかの如き完璧な動きだ。

 アーチャー(射手)としての感性的な動きなのかもしれない。

 だが、あまりの完璧な位置取りにセルヴィナとトリスが舌を巻く。


「ミセ……の嬢ちゃん、良いね! いい動きだ!」


 トリスの声掛けに、険しい表情で弓を射る。


「無駄口は後です! 今は眼前の目標に!」

「そうだぞ、主様の覇道を遮る者はねじ伏せよ!!」


 セルヴィナは剣の能力とスキルの合わせ技で、襲い来る枝を薙ぎ払う。


「言ってくれるじゃないの……」


 不敵な笑みを浮かべたトリスもまた、セルヴィナと同様の攻撃を開始する。

 イビル・ツリーの枝は、まるで触手の如き動きでタクロー達に襲いかかる。

 タクローはこまめに、エアロダッシュの推進力であるエアロ・ブラストの魔法を発動させ、右左に動きながら、イビル・ツリーの懐を目指す。

 丁度タクローを捕らえようとした、イビル・ツリーの枝が光を帯びた矢が遮った。


「銀の騎士、援護はお任せ下さい!」


 ミセリルアから発せられた言葉は、タクローの背中を押す。


(俺がびびってちゃ、示しがつかない……か……。なら、いつもの様にやるだけだ! アスカ、お前が居なくても俺はちゃんとやれるぜ!!)


 かつてのギルドマスターの名を呼び、タクローは身を時には反転させ、翻してはイビル・ツリーを目指す。


「フレイム。追加、ヒュージ。追加、バースト」


 ミスティック・アーマー・ナイトの右手に魔法陣が展開、更に一つの魔法陣が重なり、また一つの魔法陣が重なる。


「木には火! じょうしきだろぅ!」


 タクローがイビル・ツリーの顔面めがけて魔法を放つ。

 巨大な火柱が上がった。

 イビル・ツリーの枝を焼き、樹皮を焦がす。

 だが、トリスにはそれが有効打では無いとニオイで悟った。


「だめだ! ソレじゃねぇ!!」


 トリスの声がタクローの耳に入ると、タクローは咄嗟に身を引く。

 タクローが居た場所へと無数の葉っぱが飛来した。

『リーフ・カッター』、木属性の魔法の一つだ。

 間一髪、タクローは回避に成功した。

 ミスティック・アーマー・ナイトには、オリジン同様の魔法防御は健在だ。

 だが、無数の魔法攻撃を喰らえば何処かにほころびが生まれる。


「ちぃ!」


 タクローは、下がった体をエアロダッシュでブレーキを掛け、再度懐に侵入する。

 イビル・ツリーは、銀の鎧を最重要ターゲットと認定した様で、必要以上に攻撃を始めた。


(ヘイトは取った、なら!)


「トリス、左へ! セルヴィナは右だ! みせ……、エルフのアンタは引き続き援護を頼む!」

「ミセリルアです! かしこまりました!!」


 ミセリルアは、かなり険しい表情でタクローを睨みつける。

 トリスと、セルヴィナは苦笑いで指定の位置に移動する。


(ぶっつけ本番だなぁ……、ってか、ナイトにバージョンアップした時もそうじゃなかったっけ? あれ? その前もそうだ……、ってかコイツを着るようになってからそうだったような……)


 タクローは、鎧を手に入れてからのこれまでの事を軽く思い返す。

 新しい機能、新しい力を手に入れたと思うと、急にソレを使わなければならない状況になっている事に気が付いたのだ。


「まぁ、アレだな……。『やらないで後悔するより、やって後悔』だな!」


 兜の下で笑うと、タクローはイビル・ツリーを睨みつける。

 タクローの気配に気が付いたのだろうか、イビル・ツリーは何十本という枝をタクローに向ける。


「全身に意識を向けて……、MPを鎧全体に……」


 内蔵された、精霊石から変化したフェアリーストーンが輝く。


「MPを魔法に変換……。火と風の魔石の魔法を合成……」


 コアとなる、フェアリーストーンを囲むようにある、四大属性の魔石の内、二つが輝く。


「フレイムとストームを結合……」


 ミスティック・アーマー・ナイトから、バチバチと音を立て青いスパークが巻き起こる。


中位魔法ミドルスペルクラスだなぁ、コレ……。なら、名前は……)


「サンダーバースト! 追加、バースト。追加、ヒュージ」


 タクローが叫ぶと、魔法が発動する。

 術者を中心に、稲妻が落ちて爆発したかの如き閃光と強大な音が周囲に鳴り響いたのだった。


 イビル・ツリーは、全身を黒く焦がし、煙を吹き上げる。


「行けたか?」


 タクローがイビル・ツリーを観察する。

 ふいに、風切り音が聞こえた。


「パワー・シュート!」


 ミセリルアが吠える。

 光を帯びた矢が、タクローに向かってくる一本の枝を射抜く。

 枝は張り裂け、ボロボロになって霧散する。


「主様、油断はっ……たいってきぃっ!」


 セルヴィナは向かい来る枝の攻撃を、正面から迎え討つ。


「死んでねぇ、ってか、全然っだ!」


 トリスもセルヴィナ同様に枝の処理の追われていた。


「ちげぇよ、削りだよ! こんなデカイ図体、一発でいける訳ねぇだろ! レベル40クラスで四十人単位の戦闘でもなきゃな! もしくは、核爆弾でも持ってこいってんだ!」


 冗談のつもりで発した一言に、タクローはハッとする。


(まてまてまて、ミーナさんは俺になんて言った? 俺が核爆弾だって……なんで……だっけ?)


 タクローの思考は一気に加速する。

 直ぐ様、ガントレットを外して、アイテムボックスに手を突っ込む。

 取り出したのは、ヒカルから貰ったカードデッキだ。


(コイツは、スペル同様の魔法が使える……。魔法付与効果は無いが……いけるか?)


 一枚のカードを抜き出すと、ソコに書かれていた術式は先程使ったサンダーバーストと似た魔法、サンダーストーム。

 竜巻で敵を包み、内部に発生した電撃で敵の体力を削る魔法だ。

 この時、ミスティック・アーマーの機能INTブーストが強く発動される。


(あ? ああ……、ああ! そうか、現実理論が反映されれば、これで!)



 日は既に落ち始め、夕日が西の山脈へ消え掛かろうと言う時刻。

 タクローは遂に必勝の一手を、見つけたのだった。


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