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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
二大国家戦争
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悪魔の樹討伐クエスト2

 アレクシア帝国軍、第一機甲師団は一路真っ直ぐ西へ向う。


 ミーティアラ王国王都ウンディエネは、イースタル要塞からはやや北寄りの西側に位置している。しかし、ウンディエネへと至る道中には二つの町が存在する。

 そこはカリウス・アルムニア・メイッシュ公爵が治める領地であった。

 公爵が住む町、ウラジスには帝国が進軍している事など気がつくことはなく、日々平穏な空気が流れている。

 イースタル要塞から、近いラジラの町にも同様であった。それは、イースタル要塞から帝国の襲撃の知らせが出なかった為である。

 イースタル要塞では、よもや帝国が壁を突破するなどとは思っていなかった為による行動の遅れが、こういった形になったのだ。

 壁を突破され、ようやく伝令を出そうとした時には全てが終わりを告げようとしていた。

 要塞から出ようとした魔導車は、帝国の戦車砲によって金属片に変えられ、中に乗っていた者達は金属片にこびりつく一片となってしまったのである。

 また、モンスターから身を護る為の構造が仇になる。

 これはイースタル要塞だけにとどまらず、町や村、巨大な都市でもそうだ。巨大な壁で身を護る構造が、この時ばかりは牢獄と化してしまったのだった。


 次の帝国の軍の目標は、ラジラの町。

 イースタル要塞同様に、平穏な空気が一変して、阿鼻叫喚となるのは言うまでも無い。


 タクロー達は八人の少女達をヒカルとアリーシャに預け、国立公園から更に奥へと進む。

 警戒心を露わにしながらも、ミセリルアは悪魔の樹の元への案内を務めた。

 最初は多かったモンスターも、樹海の奥へと進むに連れ数が減っていく。また、周辺の景色も大きく様変わりしていた。


 初夏になる季節になり、木々の葉が生い茂っているのが普通であったが、いつしか木々の葉は赤く色づくモノや、葉が全て落ちかけているモノもある。

 地面には落ち葉が敷き詰められているその様は、まるで秋真っ盛りといった光景だった。

 タクロー達は周囲を見渡すも、一言も出ない。それは、あまりの変化に只々驚くばかりであったからだ。


「ここまで、木達が侵されてるなんて……。もぅ、猶予は無いですね……」


 ミセリルアは独り言を呟きながら、タクロー達の前を歩く。


「地面から、嫌なニオイがする……。これが悪魔の樹のニオイか?」


 トリスは鼻をヒクヒクさせて、地面のニオイを嗅ぐ。


「恐らくそうだと思います……。今ではこの光景が樹海の殆どを占め始めていますから……」

「って、事はあんたの里も?」


 ミセリルアは無言で頷いた。


「これは、悪魔の樹を何とかすれば、どうにかなる話なのか?」


 タクローは一本の木に触れて、木の上部を見上げる。その木もまた、赤や黄と言った色の葉を落とそうとしていた。


「解りません……。こうなったのは、初めてだと言う話ですので……」

「なるほどねぇ……」


 タクロー達が目指すのは樹海の奥の奥と言った場所。樹海の先には山脈がそびえている。その麓付近に、それはあった。


 ミセリルア達エルフが悪魔の樹と呼ぶソレは、ゲーム時代にも居たモンスターだ。

『イビル・ツリー』と呼ばれるレイドボス。

 正に、悪魔の樹と呼ばれて相違無い外観をしている。樹の幹には巨大な穴のようにも見えるソレは目と口であり、枝や根、枝に生った不思議な木の実と、はたまた魔法で攻撃してくる厄介な存在である。

 攻撃の範囲は広く、また、受けるダメージも大きい。



「で、でけぇ……」


 タクローは目の前にそびえ立つ悪魔の樹を見て、呆然と立ち尽くす。

 いや、タクローだけではない、その場に居た者全てがそうだった。

 樹齢が何千年も経過したような巨木と言うよりも、もはや近代建築ビルと言った方がしっくり来るような大きさであった。幹の長さだけでも、十メートル以上はあるだろう。

 根が樹海全体に及んでいると言う言葉にも、納得のいく大きさだった。


「イビル・ツリー……だよな? でも、こんな大きいのは見たことがない」

「大樹の半身です。アレがもたらすマナを吸収して、急激に成長したと聞いています」


 イビル・ツリーのレイドクエストは40人体勢の大型イベントだ。だが、これの大きさはその倍は必要だとさえタクローは思った。

 現状、タクローとセルヴィナ、トリスとミセリルアの四人。

 ミセリルアは弓矢の扱いに長けている。

 セルヴィナは疾風聖剣ストーム・スラッシャーに手を掛け、何時でも抜けるようにしていた。

 トリスは神槍雷音を既に構えている。


 本来必要な人数の十分の一のメンバーで戦うこの状況を、誰も異を唱えないのは、やはりタクローの存在があったからだ。


(なるほどぉ? 俺が、37人分の働きをしろって事ですか……)


 兜で覆われ、タクローの表情をメンバーの誰も知るすべはない。

 引きつった笑みを浮かべて、イビル・ツリーを睨みつけ、タクローが大きく息を吸い込んだ。


「上等! やってやろうじゃねぇかぁ!!」

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