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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
二大国家戦争
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フェアリーストーン

 光の粒である精霊達が、タクローの周りを一頻り飛び回ると、まるで導くかのように世界樹の若木へと飛んでいく。

 不思議と誘われている感じを覚えたタクローは、世界樹の若木へと向う。

 足元は澄んだ水がアチラコチラから湧き出て居るが、底は浅い。

 八人の少女達も、置いて行かれるのが嫌でタクローの後に続く。


「世界樹……ねぇ……」


 タクローは世界樹の若木に手を伸ばす。

 世界樹の若木に触れた瞬間、鎧から上半身大の魔法陣が展開される。


「な、何だ!?」


 HUDには奇怪な羅列が流れる。それはヒカルがよく弄っているモノ、魔法術式だ。


「あ、アレは!!?」


 ヒカルがタクローの元へ駆け寄ろうとする。


「待った!」


 トリスが、ヒカルの腕を掴んだ。

 間一髪だったのだろう、世界樹の若木の周りの水が光り出した。


「な、何!?」

「クソッ、イツキ達、戻れ!!」


 トリスの声で、光の中でいつの間にか放心状態になっていた八人の少女達が我に返る。


「ま、マスターの側に……」


 動揺しながらも、タクローの元を離れようとはしない。


「馬鹿野郎! 皆、アイツ等を水のない場所へ!」


 トリスの言葉に訳も解らず、困惑するが必死さは伝わった為、言う通りにそれぞれが動く。


 タクローから引き剥がされ、泣き出しそうになるのはムツミ、ナツキ、ヤエの歳の低い少女達。

 ある程度歳が上の少女達もまた、悲しげな表情でタクローを見る。


「マスター!」


 少女達の呼びかけにこの時、タクローは一切反応を示さない。


「トリス、何なの?」


 アリーシャが問いかける。


「世界樹が、マナを吸い上げてるんだ……。水はその結界だよ」

「タクローさんが危ないんじゃ!?」

「いや、おかしいんだ。タクローさんの固有マナと世界樹の固有マナが同化してるんだよ」


 特別な能力が無い者達に、トリスの言葉の意味はよく伝わらない。

 だが、彼がタクローの危険を口にしないという事だけは理解できた。


 しばらくした後、光が世界樹の若木に集まり収束していく。

 ミスティック・アーマー・ナイトに展開された魔法陣は、未だ展開されたままになっている。


「コレだよ!」


 ヒカルが一枚の紙切れをメンバーに見せる。


「コレは……、シンジさんが賢者関連で見つけたヤツかい?」

「どっかで見たと思ってたけど、今展開されててようやく思い出したわ。用途不明の魔法陣。起動方法も解らない上に、どの術式とも連動どころか、関連付けさえされていない、独立した術式。頃合いを見て、細分化してみようと思ってたやつだよ」

「それが、今起動したのだな?」

「世界樹が起動の鍵?」

「解らないわ、だけど展開されっぱなしで、おまけにタクローさんは動かない……。大丈夫なの……かな?」


 心配そうにタクローを見つめる少女達をよそに、ヒカルを中心にしてセルヴィナ達が首を捻る。


 HUD内に様々な魔法術式が流れた後、急な虚脱感に襲われる。


「MPが減ってる!?」


 体を動かそうとしたが、ミスティック・アーマーが固定された様になっているため、指一本すら動かない。


「くそぉ、何だこれ!?」


 すると、HUDに文字が出る。


「何だこれ? 四大魔法術式の細分化と……再合成!?」


 急な頭痛が襲ってくる。そして、脳に直接焼き付けるかの様に、追加される機能の使い方が強制的に脳内に入ってくるのだ。


「世界樹とリンク? なんだ、この機能は? 一体どうなって――――!?」


 タクローの目の前に一際大きな緑の光の玉が現れる。


「……ま……か? ……え……ます……か? 聞こえますか?」


 少女の様な、少年の様な幼い声が聞こえる。


「なんだ!? 声? 頭に直……、いや、ヘルム内に響いてる?」

「ああ、良かった、聞こえますね?」

「あ、ああ、聞こえるけど……、誰?」

「私はドライアード、木の精霊です」


 タクローはその名に、覚えがあった。

 精霊は魔法を扱う者にとっては切っても切れない存在の一つだ。

 魔法を習得する際は、『精霊の加護』と呼ばれるアイテムを必要とする場合がある。

 殆どの魔法は、レベルアップと共に習得可能なのだが、強力な魔法に関しては、アイテムが必要なのだ。だが、対価を支払う価値は大きい。

 MP消費が通常の魔法より少なかったり、または、何らかの特殊な効果がついたりするのだ。


「なるほど……。で、精霊が俺になんだってんだい?」

「貴方の力を少し分けてもらいました。これで、大樹と貴方がリンクし、精霊石はフェアリーストーンへと昇化しょうかします」

「はぁ!?」

「フェアリーストーンは、マナが凝縮し、結晶化したもの。精霊石もまた同じですが、一つ違います。精霊石では大気からマナを受けて、人へ還元しますが、フェアリーストーンは全てに還元出来ます。これは、誰も出来なかった事……。貴方の力を使ってでしか出来ないことなのです……」


 タクローは動かなかったが、首を傾げたい気持ちでいっぱいだった。


「意味が解らねぇなぁ……。要は、どんなモノにもマナを使える?」

「概ねそうですね、精霊にマナを分け与えれば精霊は本来の力を行使できますし、また人に与えれば人は自身の持つ以上のマナを受け、死ぬでしょう……」

「物騒な事もありなのか……」

「大きな力は大きな祝福と、それとは逆に大きな最悪、または代償を支払う事になります」

「拒否権は無いんだな?」

「力は、既に行使されました。そして貴方は、代償を支払った。これは、終わった話です」


 ドライアードの言葉はタクローにとって、意味が解らない話であった。


「とりあえず、俺は、何かの代償と共に大きな力を手に入れた……、で、良いのか?」

「はい!」


 喜んだような声が聞こえた。


「で? 動けないのは、いつ解消する?」

「間もなくですよ、マスター」


 ドライアードの言葉に疑問を抱く。


「ま、マスター!?」

「はい……、え? 嘘、もう? 話が違います、皆で抑えてる約束でしょ!?」


 ドライアードは、他の誰かと話をしているようになる。


「それは散々話し合ったじゃない! ああ、もう、ホント皆自分勝手なんだから! 解った、解りましたよ私も直ぐに加勢しますから……」

「なんだ?」

「ごめんなさい、マスター。悪魔の樹がもぅソコまで来ていて……。取り敢えず、私達が食い止めます! 後は、お願いします。……ああ、それと、これからですが、私にとってはあの時ですが……、その節は本当にすいませんでした!」


 そして、緑の光は世界樹の若木に消えた。

 するとタクローに自由が戻ったのである。

 HUDを確認すると、MPのバーゲージが限界値ギリギリまで下がっている。



「フェアリーストーンねぇ……」


 物語の中心である、世界樹の根本にある不思議な色を見せる石。中心である為、アイテムとして持てることはない。ソレが今、手元にあると言われる。

 胸部のアウタースキンを外し、インナースキンに組み込まれた精霊石を見ると、それは全く別物の輝きを魅せる。


「はてさて、どうした事やら……。おまけに、変な事も最後に言ってたな……」


 タクローは世界樹の若木を見上げた。

 日の光が燦然と輝く中、樹は立派な形でタクローの目に映ったのである。

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