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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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現実と非現実

 とある工場で、男はいつものように仕事に追われていた。各部署から聞こえる悲鳴。生産ラインの納期は刻一刻と迫っている。

 電子部品の下請け工場、それが男の働く場所。一作業者として、決められた通りに決められた作業をこなす。それが、彼の日常だった。

 彼は常日頃から思う、こんな世界で俺は何をしているのだろうか、と。

 周りを見れば、同じ作業服を着た仲間達があくせく働いている。

 男はとりあえず生活に困らないある程度の資金を得るためだけに働いているはずだった。しかし、残業と休日出勤を半ば強制され続けている。

 仕事に対する情熱も何もない。ただただ、一日一日のノルマをこなすだけ。ふと、手を止めて天井を見上げる。

 目に入った景色は見慣れぬ天井であった。


 まどろみの中、タクローは現状を考える。

 眼前に広がる景色は、普段自分が見慣れている景色とは違ったものであったからだ。そして、自分が体を何かに横たえてる感覚が遅れてやってくる。そう、自分は寝ていたのだと理解し、目をうっすら開ける前に見ていたものは夢だったのだと理解した。

 理解して、飛び起きる。

 首を左右に振ると自分の周りの景色は自分の家のソレではない。そう、彼は未だに自分達の本当の世界に戻れていないのだ。

 ベッドから飛び出し、近くの窓を勢い良く開け放つ。眼前に広がる景色は、昨晩とは違い賑わいを見せるファストの町の風景だった。


 泊まっている宿屋は、町の中心部分にほど近いため、町のある程度が見渡せる。人間の老若男女と、性別やら年齢やらがよく解らない多種の亜人達。

 タクローは軽いめまいを覚える。現実と思っていたモノを夢で見て、夢と思いたかったモノは現実となって舞い戻って来たからだ。

「まじかよ……」そう独り言をつぶやき、フラフラとベッドに戻り、腰を下ろす。


 深い溜め息と共にうなだれると、頭を抱え込む。これからどうするか、どうしたら良いのか皆目見当がつかない。そんな時、タクローの部屋の扉を叩く音がする。

 軽い返事をすると、タクローと同じような暗い表情でゆっくりと部屋に入ってくるヒカル。朝の挨拶を交わすと、お互いが深い溜め息をつく。


「戻らなかったね」

「そうだな……」

「これから、どうしようか」

「さぁ」


 会話の後にはまたもや溜め息。

 今後の話し合いを始めるも、何から手を付けるべきか解らない二人は「どうする?」と繰り返す。そして、幾度も溜め息をついていた。

 そんな二人に光明をもたらしたのは、仲間であるシンジとミーナだった。

 急にタクローの部屋に入ってきた二人は、朝の挨拶もそこそこに、今後についてどうするべきか語り始める。

 シンジとミーナは、タクローが起きるかなり前から目覚めて現状を把握した。二人が一緒の部屋ということもあり、直ぐにお互いの認識確認を行う。そして、暫く今後について話し合っていたのだ。

 ある程度話がまとまって、タクローの部屋に来てみると、ヒカルと二人でうなだれている姿を見る。ヒカルを呼ぶ手間が省けたといわんばかりに、直ぐに議題に入り始めたのだった。


 シンジの提案はまず、この世界の情報を集めることを重要視した。それは、かつての世界から様変わりしていることによる認識のズレがあるからだ。

 金銭面で彼等は既にそのズレに直面している。また、魔法が誰でも扱える安易な代物になっていることもまた然りだ。

 そう、彼等は時代がどう変わったのか全く知らない。彼等の世界でいうところの、平安時代から平成の世の中にタイムスリップした状況なのだから。

 それ故に、情報収集は必須となる。歴史、時代背景、政治に文化、様々な情報が欠落している状態で行動を起こすことはあまりにも愚策であり、また方向性すら見えない暗闇の中を進むようなものである。


 この町を始まりとし、情報の収集を始めることを四人は決める。

 シンジがメンバーの中心となって、行動を取り決めていくのだった。

 かつてファストの町は、ゲーム時代でも冒険の始まりとなる場所だった。偶然か、それとも必然か、かくして彼等はこの町から最初の一歩をもう一度踏み出すのだった。


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