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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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動き出す帝国と、平和な王国

 ミーティアラ王国王都ウンディエネに平和な空気が流れる中、アレクシア帝国にはやや不穏な空気が流れていた。


 帝国の城にある、王の執務室で皇帝グラディオーレ・ティーワイ・アレクシアが日々の職務に追われていた。

 そんな彼の元に、宰相であるナグルス・ヴァン・オルスキーがやって来たのは、昼少し前だった。


「皇帝陛下に置かれましては、ご機嫌麗しゅう……」


 いつもの挨拶にいやいや返答すると、ナグルスはご機嫌といった表情を浮かべていた。


「で? 一体どうした?」


 雑務と書類の束に、ほとほと嫌気がさしていたグラディオーレの機嫌はすこぶる悪い。


「東の小国を陥落させたお知らせを……」


 頭を下げつつも、ナグルスはこれから来るであろう称賛の声を待ちわびている。


「ああ、そうか……」


 しかし、グラディオーレからもたらされた言葉はそっけないものだった。


(アレだけの装備と、おまけに新開発のアレを出したんだぞ? 当たり前だろう……)


 ため息混じりで、書類の整理に追われる身としては、騒ぐほどではないといった様子だった。


「なるほど、流石ですね。陛下は既にご存知でしたか……。いやいや、私が最初のご報告かと思ってましたよ」


 普段は温厚なナグルスは、皇帝への賛辞も忘れない。


「いや、アレだけの装備なら問題無いと思ってな……」


 ナグルスは、グラディオーレを見てニコリと笑顔を見せる。


「で? 被害は……、多分、少ないのであろうな……」


 ナグルスの表情から推察すると、また、賛辞が送られた。


「流石ですね、その通りです。陛下のご指示通り、五百の歩兵と十二台の魔導車で楽に落とせたそうです」

「そうか…」


 グラディオーレは、少し口元を緩め、一息つく。それをナグルスは見逃さなかった。満面の笑みでグラディオーレを見つめた。


「お次は、いよいよですか?」

「ああ、そうなるな。その前に、魔導車……いや、戦闘用特殊魔導車『エム・ワン』の指揮担当並びに、戦車長にの話を聞こうか。改善点があれば、設計した私も聞かねばなるまい」

「なるほど、確かにそうですね……。解りました、直ぐに手配を」

「頼んだぞ」


 去って行くナグルスの背中を見つめ、執務室から完全に出ていった所で、グラディオーレは大きなため息を吐いた。


「元々、『帰る』為に始めたんだけどなぁ……。どうして、こうなっちゃったんだろう……。まぁ、賢者達の記録では、大陸を巡らなきゃいけない訳だし、まぁ、大陸統一なんてのも……良いか……な? 大アレクシア帝国構想か……。漢字だと、『大亜帝国』……なんちゃて……」


 グラディオーレは、独り言を言って一人で、笑い出す。

 普段、人前では滅多に笑う事は無い。いや、含み笑いや、苦笑いなどはあっても、大いに笑ったりする事は、一国をまとめる王として、許されないと自分に言い聞かせて居たのだ。

 一方のナグルスは、王の次の計画を進行させる為に意気揚々と城内を歩き回った。



 変わってミーティアラ王国、王都ウンディエネにある王立魔導研究所内にある魔法試放室まほう・しほうしつ

 そこは衝立で仕切られ、一人一人が個別で、的に向けて魔法を放つ場所。射撃場にも似た場所で、自身のマジックアクティベーターの性能を確かめる為に研究員達が試し撃ちをしたり、目標に向けて的確に魔法が当たるかを見る場所だった。


 研究員、リルヒア・アーミンバスも自身が改造したマジックアクティベーターの性能を調べていた。


「ファイヤーボール! 付与魔法発動、ショット!」


 ゴルフボールよりもやや小さめな火の玉が、素早く的に命中する。


「良し、いいぞ!」


 自分が改造を加えたマジックアクティベーターの反応に、ガッツポーズで喜ぶ。


「ようし、次だ……」


 マジックアクティベーターを操作し、次に使う魔法を選んでいる時だった。

 試放室内に、聞いたことの無い金属音が響く。

 ガチャンともガシャン聞こえる音と、ガキンガキンと石床に金属が当たる音も聞こえる。

 何気にリルヒアが、衝立から外を見ると、そこには何人もの地位の高い研究者達と見慣れぬ女性、ソレに王国随一と言われる魔法の権威、オリヴァレ・フランケルストリア・アーリーの姿があった。

 驚いたリルヒアであったが、偉い人達が囲んでいては近づく事が叶わないと思い、自分の作業に戻る。


 ズドドン! ズドドドン!


 試放室に一際大きな音が鳴り響く。

 十数名が思い思い魔法を放っていたが、音に驚いて誰しもが魔法を放つのを止める。

 衝立から身を乗り出し、音のする方に目をやると、銀色の右のガントレットがニョキリと出て、魔法陣を展開させている。

 耳をすませば、魔法の名称を言っている。


「フレイム、追加、ショット、追加、バースト」


 大きな火球、いや炎球が的に向かっていき、一気に弾けた。

 それを見た、一般の研究員達は一体どんな人物が撃ったのか気になりだす。

 次いで聞こえてきたのは、聞き慣れないモノだ。


「ファイヤーボール、追加、ショット、追加、ラピッドファイア、追加、バースト」


 同時三個の付与魔法など、聞いた事が無かった研究員達は、固唾を飲んで的を見つめる。

 ズドドドドと、リルヒアよりも何倍も強力そうな火球が勢い良く何発も出る。その後、的に当たり一気に破裂したのだ。

 驚異的な威力に、的として用意されていたミスリル合板が砕け散った。

 一斉に驚きの声が上がり、誰もがその存在を確かめようと、発生源へ飛び出す。

 それは、見事なまでの銀色に輝く全身鎧フルプレートだった。

 高位の研究者達と一般人に思える格好の女性、そして、この場所では最も偉いとされるオリヴァレに連れられて、銀色の全身鎧は試放室を後にしたのだった。


「おいおい、なんだよアレは……」


 リルヒアの仲間と言える研究員の一人の言葉を皮切りに、その場に居た全員がざわめき立つ。


「王国の新兵器かな?」


 リルヒアが近くに居た研究員に声を掛けると、両手を肩の位置まで上げて、解らないのジェスチャーをした。

 こうして、王立魔導研究所内にあっと言う間に試放室での出来事が、ニュースとなって駆け巡っていったのだった。

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