王都へ
王都に向かう列車の中、タクローの周りは騒がしく成っていた。
八人の、自称タクローの奴隷少女達。
タクローはそれを認めなかったが、彼女達は頑なに自分達をそう言って聞かなかった。そして、いつしかタクローが先に折れる形になってしまった。
少女達には名前が無かった。
奴隷として買われて、初めて名前が付けられるという事らしい。
タクローに名前をせがむ、少女達。名を得て初めて、正式な奴隷になれるらしく、是が非でもタクローに名を付けるように哀願した。
他の仲間達が、名をつけようとすると酷く嫌がり、何人かは泣きながらタクローに抱きついて来たので、酷く困り顔で名を付けていく。
最初に助けたエルフの少女が、イツキ。
彼女は、八人の中では一番年長であり、それ故に一番酷い扱いを経験していた。
タクローがリリーアに全員を預けようとした際には、「私だけでも……」と言ったのは彼女である。
その次に名付けられたのが、ニコ。
彼女は人間で、あまり食事を与えてもらえなかったらしく、かなり痩せこけている。それは、彼女のような姿を好む者に売るために、その様な仕打ちを受けたためだ。
三人目はサツキ、猫の獣人だ。
獣人は主に労働力として使う事が多いらしいが、彼女もまた、愛玩奴隷として調教を受けていた。
四人目がシズク、エルフである。
イツキよりもかなり年齢は低い。エルフは長寿な為見た目が少女と変わらなくても、実年齢は意外と高い場合がある。しかし、彼女はまごうことなき少女という年齢であった。
五人目には兎の獣人、コズエ。
ファストの町に居た、ストラ・フィーアと見た目が似ている。ただ、左の耳は三分の一が切られてしまっていて、見た目的にはやや不格好と言える。
六人目はムツミ。
犬の獣人である彼女は、コズエとは同じ時期に組織に連れてこられた様で、仲が良かった。
七人目がナツキと名を付けられた。
八人の中では最も身長が低い彼女は、ドワーフであった。本来ドワーフは、金属加工などで奴隷として、または普通に一般人として扱われる事があるのだが、彼女は父親のトラブルのせいで組織に連れて来られたらしい。
八人目、最後となる人間の少女はヤエと名付けられた。
年齢順に名をつけられた為、彼女が正に最年少となる。小さい体で、様々な暴力にさらされていた彼女だが、他の少女達の中では一番明るかった。
トリスは、そんな彼女達を眺めていた。
組織が壊滅した後、数百もの被害を受けた者達の遺体を埋葬した。その傍らには、タクローと少女達が居た。
少女達が連れてこられたのは、遺体の身元確認のためだ。
組織の人間達は、自分の罪から逃げるために、嘘ばかりを並べ立てる。そのために、少女達の解る範囲で確認を取るために連れてこられた。
無論、彼女達にはきちんと拒否権を与えられたが、タクローが埋葬に出向くと知ると、付いて来たのだった。
案の定、遺体の殆どは彼女達と同じ境遇にあった者達だ。
他には、組織に敵対していた者達や組織を調べていた者達と、男性の遺体なども多数あった。
センターの壁の外の開けた場所に遺体は積み上げられた。
一斉に埋葬手順を取るためだ。
数人からなる司祭と呼ばれる者達が、祈りを捧げた後、浄化の魔法を掛ける。続いて、焼却となる時にタクローの出番と成った。
タクローはロック・クラブを焼いたのと同様に、火と風魔法を同時に使用して、炎の竜巻を起こした。
何人もの哀れな遺体が燃えるさまを、八人の少女達はただ、呆然と見ている。
トリスが彼女達の感情をニオイとして感じると、そこには喜びや安堵感で包まれていて、遺体に対する悲しみなどの感情が一切なかった。
その事にトリスは、少女達の心の傷は深いと言うことを改めて知ったのだ。
その事はタクロー含め、仲間全員に話した。
やや腫れ物に触れる様な対応になる仲間達の中、タクローだけは特に気にした様子もなく少女達と接していたのである。
「どうしたの? トリス」
ヒカルに声を掛けられ、慌てた様子を見せた。
「い、いや、あの子達は本当にタクローさんだけに懐いてるなと、思ってな……」
「ああ、あれはタクロー君が助けてくれたことに対する、一種の刷り込み見たいなもんじゃないかなぁ……」
ミーナもまた、別席で少女達と戯れるタクローの姿を見ていた。
「しかし、どうにかしないとなぁ……。タクローじゃないけど、動きが制限されちゃうよ……」
シンジは遠い目でタクローに目をやる。
アリーシャは何も言わずに、流れる景色を眺めている。
アルフと、エンディもまた特に何も言うことは無い様だった。
ミーティアラ王国、王都ウンディエネはかつて水の神殿があった場所に作られている。
現在の水の神殿は、王城の地下にあった。
水の神殿がある地のため、豊富な水がアチコチで流れている。城の周りは堀が有り、そこから町に蜘蛛の巣のように水路が伸びる。
王都を守る壁のアチコチからは水が吹き出し、周辺を流れる川に繋がる。
全体的に川の中州と言ったような形に見える王都は、他の国の人間からは『浮島』と呼ばれるくらいだ。だが実際には、王都の北から流れる細い川が、王都から溢れ出る水で巨大な川に見える形になっているのだ。
王都にアクセスする為に、陸路も鉄道にも巨大な橋が架けられている。
トラブル続きだったタクロー達が、ようやく王都にたどり着く。




