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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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センターの長い夜5

 魔導通信機により、タクローの声を聞いていた他のメンバーがタクローの元へ急ぐ。


「一体何がどうなっている!?」


 シンジの問いかけに、タクローは淡々と状況を説明する。


「はぁ!? グレート・デーモンが、ゲーム時代の記憶を持ってる?」


 シンジは混乱する。そして、これはチャンスではないかと考えた。

 歴史の生き証人として、聞きたい事が沢山あるからだ。


「タクロー、一気にケリをつけるなよ。ソイツには聞きたい事が沢山あるから」


 タクローからは、気のない返事が返ってきた。



 メンバー全員が下水道中央部にたどり着くと、そこは異常な熱気と臭気に包まれている。

 暗闇に支配され、状況がよく解らない。

 解る事は、H・Rソードの光で銀色の全身鎧がいる場所くらいだ。

 シンジが通路から中央部に入ろうとすると、あまりの臭いに吐き気を覚えた。それはどうやら、メンバー全員の様で皆が皆鼻を抑えている。

 密閉空間で汚水を炎魔法で煮立てているのだ、臭いがきつくなるのは必然と言える。


「悪い、コイツ全く話にならないわ……。会話にはなるんだが、まるで攻撃の手を緩める気は無いらしいぜ……」


 周囲に様々な音が、フラッシュに似た光が突発的に発生する。


「なんとかならないか?」

「っう……、無理、なんじゃないかな」


 ドゴンと大きな音がした。

 青い光の盾で身を護るタクロー。そこには薄っすらと、真っ黒い大きな拳が映る。



「フハハ、人間。一人でよくやるな。かつては、何人もが一斉に向かって来たものだが……」


 悪魔の声がドーム内に響く。


「何人もで一斉にいじめちゃ、可愛そうだと思ってね」


 タクローは努めて軽口を叩く。しかし、余裕はあまりない。

 詠唱魔法を使えば、余裕なのかもしれないと考えるが、鎧のおかげで高速で回転する思考が、ソレは駄目だと判断させる。

 タクローの詠唱魔法は、ゲーム時代とでは発動の規模が全く違う。不用意に魔法を放って、周囲にどんな被害をもたらすか解らないからだ。


 エアロダッシュを器用に使って、悪魔に素早く近づきH・Rソードで斬りつける。反撃が来るよりも早く、悪魔から距離を取るよう素早く離れる。

 ヒット・アンド・アウェイ戦法でなんとか、悪魔にダメージを蓄積させてはいた。実際、悪魔の体からは血液と思えるモノが、アチコチから垂れている。

 しかし、決定打が足りない。このままでは、ジリ貧になると思っていた。



「ねぇ、苦戦してる?」


 ふいに、ヒカルの声が聞こえる。


「あ? ああ、悪魔に有効ダメージ与えられる魔法がこの剣しか無いからな」

「ああ、光魔法はその鎧に無かったね」

「何とかなんねぇ?」


 ヒカルはため息を吐いた。


「仕方ない、まだ実証試験もしてないけど、アレを試してみますか……」


 臭いで中央部に入れないヒカルは、通路の腰を下ろせる場所に座り込む。

 アイテムボックスから、ジンナイに貰ったタブレットを取り出し、操作を始める。


「よし、後は魔石で作ったカードを……」


 アイテムボックスから半透明なカード状の板を取り出す。そして、タブレットの上に置いて、さらに操作する。


「タクローさん、よく聞いて。その鎧の盾部分にはもう一つ機能があるの。今から、ソレに必要なパーツを渡すから使って」

「お? 新機能?」

「ああ、アレか……」


 ミーナが自身の作成した機構の一つを思い出していた。それは、まだ未完成な部分があったため、タクローには話していない機能だ。


「もぅちょっと、待っててねぇ……。コレをこうして、後は術式の転用、書き込み……インストール……。ってかさぁ、今思ったんだけど、ミーナさんと私って皆より今日の時間長くない?」


 タブレットを操作しながら、ヒカルがややふてくされた様な声で呟く。


「ん? ああ、そうか、ジンナイさんの所で午後半日で、鎧を作った上に更に、午後をもう一度買い物で時間をある意味繰り返してるからね……」


 ミーナは道理で疲労感が酷いと思った。


「だよねぇ、早く帰って寝たいよぅ……」

「もぅ少しだろう、頑張れ」


 タクローは他人事の様に言う。


「酷い……。コレが終わったら、寝てやる! 一日中ベットでゴロゴロしてやるぅ!」


 ヒカルはタブレットと格闘を加速させる。

 一方のタクローもまた、悪魔相手に悪戦苦闘していた。



「人間、面白い。面白いな、我も本気を出させて貰おうか!」


 悪魔の声がドーム内に響く。

 ソレは、攻撃パターンが一段上がった事を表している。


「いでよ、下僕達!」


 悪魔の使い魔達が闇の中にヌルリとその姿を現す。そして、更にアンデットもまた湧き上がってくる。

 グレート・デーモン戦の最終戦闘パターンが今始まる。



「皆は、通路に出ようとする連中を各個撃破!」


 タクローの指示が飛ぶ。

 全員が武器を構えて、迫り来る敵を待ち構える姿勢になる。


「ちょちょちょ、ちょっとまって、まって……」


 ヒカルは焦った様に、タブレットの操作を急いだ。


「ヒカルさん、任せて。私がなんとかします」


 アリーシャが、中央部の出入口となる場所の中央に剣を構えて立った。


「ごめんね、後、ちょっとだから……」



 集団戦闘が開始される。

 中央部に近づけば、吐きそうになるのをこらえてメンバー全員がアンデットやら、悪魔の化身と戦う。

 グレート・デーモンが召喚するモンスターは、全てがザコと言うほどに弱い。しかしながら、数が多ければそれはそれで厄介なモノとなる。

 数の暴力と言う奴だ。


 ゾロゾロとタクローの周囲を囲む様にザコ敵が群がる。それとは別に出入口付近で、ライトボールの光に向かう集団もある。

 ライトボール発生源は勿論シンジ達だ。

 暗闇の中で、唯一の光源がライトボールとタクローの剣のみだ。そして、それらが照らし出す景色はあまりにも狭い。

 シンジ達通路組は、目の前にやって来る敵を倒すことに専念せざるを得ない状況になってしまう。

 一方のタクローは、一人でザコ敵と悪魔を同時にこなすハメになる。

 範囲魔法攻撃で、簡単に倒すことが出来るが、それでも敵は多い。下手にドーム全体に魔法を使えば、仲間を巻き込み兼ねない事を懸念していた。


 フレンドリーファイアの有無は、既に対峙する悪魔の黒い炎が味方となるアンデット等を焼き払った事で確認済みだ。それ故に下手な事が出来ないのである。


「ヒカル、まだか?」

「後、ちょっと……、あとちょっと……。高位魔法ハイスペルって必要言語多すぎだろう……。よし、出来た!」


 皆が一様に苦戦している時、ようやくそれは完成した。


「タクローさん、出来たよ! 取りに来て!」

「無理!」


 即答だった。

 タクローは光源から、ヒカル達が居る場所を特定してはいたがザコの始末に追われていてそれどころではない。


「ヒカルさん、私が行きます」


 ザコを切り伏せながら、アリーシャがタクローの方を見る。


「大丈夫?」

「何とかします!」


 ヒカルがアリーシャを見ると、真っ青な顔色になっている。それは臭気に当てられ過ぎて、限界を迎えている顔だ。

 ヒカルは、ため息を吐いて覚悟を決める。


「タクローさん、後ちょっとまってて」


 ヒカルはアイテムボックスから、自身の装備の一つ『神々の法衣』を取り出して布の部分を噛み、裂け目を作ると一気に引き裂く。

 そして、それで口を覆うように巻いて後ろに縛り付ける。

 簡易の布マスクを作った。

 無論、コレで臭いがどうなるわけでも無いだろうが、無いよりはマシとの彼女なりの判断だった。


「アリーシャ、援護して。他の皆もお願い!」


 魔導通信機から了解の返答を確認すると、ヒカルは一枚のカードを手に走り出した。


「タクローくん、ヒカルちゃんからカードを受け取ったら、左の手甲をスライドさせて! スロットにカードを差し込んで戻せば、カードの魔法が使えるようになるはずだから!」


 ミーナの言葉にタクローは試しにと、戦闘の合間に手甲をスライドさせる。そこには、正にカードを差し込むようなスリットが現れた。


「了解!」


 タクローも、ヒカルのライトボールを目指して戦いながら移動を開始した。


 ほんの十数秒ではあったが、人混みを避けて走るのは困難なように、ましてや、襲ってくるモノ達を時には避け、時には倒して進むのに体力を根こそぎ奪われていく。

 ようやく二人が合流出来ると、二人共一様に息を荒げていた。


「はぁはぁ……、ほい、これ……」

「ふぃぃ……、あいよ……、さんきゅー……」


 タクローは受け取ったカードを、早速スロットに差し込んだ。

 手甲に魔法陣が現れる。


「これ、術の発動は?」

「多分、普通で大丈夫だと思うよ……。それは、カード内に書き込んだ魔法しか使えないから」

「解った、どうなるか解らないから、少し離れてろ」

「無理かなぁ……」


 タクローが周囲を見ると、周りにはいつの間に追加されたのか、ザコ敵に囲まれている。


「はぁ……、ヒカル、俺から離れるなよ!」

「了解!」


 タクローは左手に展開された魔法陣に、意識を集中する。


「これって……、まぁ、いいか。行くぞ、グレート・デーモン!」


 タクローは左手を高々と掲げた。


「ホーリー・マジェスティ!」


 それは、光の高位魔法ハイスペルの一つだ。味方には軽い状態異常回復効果と、敵には光属性の攻撃となる全体魔法。

 タクローを中心に眩いまでの光が広がっていく。

 あまりの眩しさに、全員の目が開けていられないくらいだ。ただでさえ、暗闇に目が慣れているのだ、普通に光を見れば眩しいと思うのは当たり前。

 それが、フラッシュにも似た光ではどうだろう。失明しないでも、それに一時的に似た様な状況になってしまうだろう。

 魔法を放ったタクローは、常にHUDが光量調整している様でさほどキツイと感じる程ではなかった。

 しかし、他の全員が悲鳴を上げる程に眩しいものだった。


「うわぁ……、なんか思ったよりも光強いなぁ……」


 ゲームであれば、術者を中心に光の帯が放射状に伸びる演出であったが、そうではなかった。


「ひ、ヒカルちゃん何入れてんのさ!?」

「むぐぐ……、ここまでとは思ってなかったですよ……」

「タクローの魔力値考えて! ただでさえ、プロテクション・フィールドでアレなんだから」

「ここまで、ダイレクトだとは考えてなかったです……」

「んあ? みんな、大丈夫?」


 ヒカルに、ミーナとシンジ以外の仲間全員が一斉に「大丈夫じゃない!」、「だいじょばない!」、「見えねぇよ!」と怒声を飛ばす。

 タクローは苦笑いで、全体を見渡す。


 ザコ敵は一掃され、悪魔は目を抑えてのたうち回る。

 これをチャンスと見たタクローは、一気に悪魔にエアロダッシュで距離を詰めると、悪魔の胸にH・Rソードを突き立てる。

 悪魔は青い炎を全身から吹き出させて、断末魔の声を上げる。

 そして、遂に悪魔はその身を闇に還したのだった。


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