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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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アリーシャ・ドロセルとトリス・ライナ

 タクロー達はミーナ達と合流して、センターの商業区に向かった。

 商業区は各国の様々な商品が売られている、超巨大なショッピングモールの様だった。

 二層構造になっていて、国や地域ごとに分かれている。

 一番多い店は国として大きなミーティアラ王国だ。

 衣料は最新のトレンドからこれから流行るであろう物が所狭しと並んでいる。ソレはどこの世界でも一緒なのだろうか、高級ブランドから量販店に至るまで多種に及ぶ。

 他の国もソレに負けじと様々なブランドを立ち上げては出店しているようだった。


 アルフ・フォルン・アレクが言うには、センターは様々な人達が行き来する場所で有るためにこの様な商業戦争の激戦区になっているそうだ。

 ミーティアラ王都にある各店が、ここに支店を置くのは当たり前の話らしい。それだけではない、王都には無い店もここには有るそうでここでしか買えない物も多種多様に有るとの事だった。

 おまけにここには各領地のアンテナショップもあり、アルフの住むアレク領の特産品も扱われている。


 アルフは最初にそのアンテナショップへ足を運ぶ。

 タクロー達は見たことの有る品揃えに、少し懐かしさを覚えた。主に農作物や食肉の加工品が多く並んでいるアレク領のアンテナショップ。それはアレク領が豊かな場所であることを表していた。

 アルフがアンテナショップの店員に挨拶と、近況の情報交換を行った後、他の店へと繰り出していく。


 ヒカルとアリーシャの女性二人の興味は服。

 ウインドショッピングよろしく、あちこちの店舗をはしごしては服を手にとって眺めている。

 他の男性陣は雑貨屋小物、またこの世界特有の武器・防具屋巡りだ。銃は流石に無いものの、剣や盾、はたまた鎧の最新作が並んでいる。

 タクローが身に着けているような全身鎧は、昔ながらの中世ヨーロッパ調の形のまま看板として利用されているくらいで、商品としては並んでいなかった。

『時代遅れ』と言う言葉がタクローの脳裏をよぎり、タクローは看板となっている全身鎧を見てため息と共に苦笑いを浮かべてそれを眺めていた。


 魔法道具屋には最新のマジックアクティベーターが、ガラスケースに入れられて並べられている。それは正にスマートフォンが売られている様に似ている。

 最新の機種はこういった機能が追加されているなど、手書きから印刷されたようなものまで、様々なポップが付けられていて、見る者に購買意欲を持たせる事も忘れてはいない。

 人によっては、マジックアクティベーターを数個持ち歩き、用途によって使い分けしているとアルフは言う。シンジとミーナはその話を聞いて、自分達も買い足そうかと考えたが、実際何に使うか浮かばずに購入を思い留まったのだった。


 別々に買い物を楽しんだ男性陣と女性陣であったが、気がつけばいつしか合流する形になった。

 女性二人は楽しかった買い物の話で盛り上がりをみせている。しかし、彼女達の手に荷物が無いのは全てヒカルのアイテムボックスに収められているからに他ならない。男性陣も同様である。


 メンバー全員がのんびりと歩いていると、ふと見知った顔のスーツ姿の人物達を見つけた。

 それは、女性物の服屋で目を血眼にして見ているセルヴィナ・ストーリス。彼女に付き添うようにしているのは、同じ女性の剣聖親衛隊の隊員数名だ。

 そんなセルヴィナにアルフが声を掛けると、不機嫌そうな顔でアルフを睨みつける。背後に居たタクローが視界に入ると、顔を赤くしてその視線をそらす。

 その反応にアルフは察するものがあったが、タクローは解らずに首を傾げた。


「どうしたのです? こんな所で」


 いつも浮かべている穏やかな笑みでセルヴィナに話しかけるアルフ。そんなアルフに「別に……」と返すに留まった。


「おしゃれな服ばかりですねぇ、このお店は。普段はこういった物を着るのですか?」


 少し意地の悪い口調で店内を見回すアルフを、セルヴィナは努めて無視した。


「まぁ、セルヴィナなら何を着ても似合いそうだがな」


 タクローの何気ない言葉に、セルヴィナの顔は一層赤くなった。


「ええい、貴様ら。お嬢様の買い物の邪魔をするな!」


 剣聖親衛隊の一人、フルーリア・ヨネムスがセルヴィナとアルフ達の間に割って入る。

 アルフは軽く謝罪をすると、その場を立ち去ろうと仲間達に提案する。一行は了承して、その場を後にしようとする。


「た、タクロー殿はどんな感じが好みなのだ?」


 消え入りそうな声でセルヴィナがうつむいたまま、言葉を吐き出す。


「おれ? 俺の好み……」


 難しい顔で首を捻るタクロー。急にそんな事を言われて、どう返せば良いのか迷っていた。


「そういや、私もそこら辺気になるわね」


 ヒカルがタクローの後ろからひょっこりと顔を覗かせる。無言でアリーシャもそれに続いた。



「ああ、またか……」


 シンジは苦笑いでその光景を眺める。


「自覚無いって罪だよね」


 ミーナも同様であった。


「よし、見てても腹立たしいから、俺達だけでどっか行きますか」

「そうだね」


 シンジとミーナはアルフ達を連れ立って、その場を後にする。


「え、ええ!? なんで?」


 背後からタクローが呼び止めようとするが、軽い挨拶をして歩みを止める事はなかった。

 一方のタクローは女性陣に囲まれて、服選びにつきあわされる事になる。

 ヒカル達にとっては第二ラウンドのゴングが、今鳴った。


 時間はあっという間に過ぎていく。

 メンバー全員が再度合流した時には、夕方になっていた。空は赤く染まり、次第に薄暗くなっていく。涼しい風が歩いた体を優しく癒やしていく。

 ただの買い物であっても、歩けば疲れるし腹も減る。

 女性陣に翻弄され、人一倍の疲労感に包まれているタクローを連れて、宿に戻るのだった。


 宿に戻ると、直ぐに夕食となる。

 高級宿のレストランで食べる料理は、どれも贅の極みと言わんばかりの食事であった。しかもタクロー達のものはその中でも最も高級な食材がふんだんに使われているのは、昼のチェックイン時の出来事に起因していた。


 買い物での出来事を振り返りながら、タクロー達の食事は進む。また、酒も欠かす事はしない。ダラダラと食事をして、酒を飲み雑談をして時間は更に過ぎていった。

 食事を終えて、各部屋で一休みをしようとすると、ミーナが全員を自身の部屋に集めるよう進言した。それは、昼の出来事を語るためだった。


 買い物の荷物の整理をすることも無く、タクロー達はミーナとシンジが泊まる部屋に集まる。そこで、『ジンナイ』と言う人物と彼の居た工房の話をして聞かせたのだった。

 ミーナは最後にトリスにその話に対する疑問を投げかけた。

 トリスは咳払い一つついて、アリーシャに声を掛ける。


「アリーシャ、そろそろ話しても良いんじゃねぇか?」


 アリーシャは目をつぶり、深く息を吸い込んでゆっくりと吐き出す。目を開いて全体を見回し、最後にタクローを見つめた。


「そうね、いつかは話さなきゃいけないものね……」


 真剣な面持ちになり、タクローを見据えた。


「私達は、今は無きさる小国の者です」


 その言葉に、シンジは「無き小国?」と疑問を口にする。


「はい、現在は帝国の領地の一部になっています。その国の名は『ランドール』と言います。現在ではその場所の名は国の名前そのままに、ランドール統治領と言われています」


 真剣な表情のアリーシャに誰一人として口を開かない。ただじっとその言葉に耳を傾ける。




 ランドール小国。

 荒野が多い帝国領の近くにあったソコは、緑が多く水も豊かな国だった。人間と主に獣人達からなる亜人種で構成されたその国は、互いに仲の良い関係を築き上げて生活していた。ランドールの王はそれを未来永劫続けるべく、代を重ねていったのである。


 国はのどかで、平穏そのものであった。時折モンスターの脅威にさらされる事もあったが、力自慢の獣人の兵士達によって撃退されたのである。

 トリスもその一人に数えられる。


 トリスは王国兵士長の息子として、厳しく育て上げられた。

 彼の得意とする槍は、父譲りであったのだ。

 アリーシャは王城に仕えるメイドの一人として、幼少の頃から働いていたとアリーシャは語った。

 しかし、平穏で穏やかな日々は突如として終わりを告げる。

 一人の魔神族の少女が、数本の剣の束を腰に装備して突然城内に現れたのだ。

 魔神族の少女は剣を宙に浮かせて、それを自在に操り兵士達を皆殺しにしていく。そして気がつけば王と対峙する事になった。王を守るようにその前に立ちはだかったのが、トリスの父親であった。

 少女は不敵な笑みを浮かべながら、王に言葉を投げかける。


「王よ、貴様が隠し持っているモノを皇帝は望んでいる」


 王は勿論拒絶した。そして、トリスの父共々殺されてしまう。

 王が死ぬと帝国の兵士達が一気に城になだれ込んできた。城の中を物色してまわり、動く者全てを容赦無く切り捨てる。場合によっては、若い女性を小部屋に無理やり連れ込む兵士もいた。

 こうして数百年続いたランドールは突如終わりを告げたのだった。

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