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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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センターでの一幕

 センターの高級宿、タクロー達からみればもはや高級ホテルと呼ぶにふさわしいソコの名は、『ミリオレ』という。

 八階からなる都市でも一、二位を争う宿の一つだ。

 床は総大理石で、壁の到るところには多種の高級石材をふんだんに使っている。各所には様々な装飾が成されており、高級感を一層引き立てていた。一階であるロビーの中央には噴水があり、人の目をなごませている。

 またこれまた高級そうなレストランも一階に有る。最上階には展望バーがあり、センターを見渡せる作りになっていた。


 アルフ・フォルン・アレクが受付にてチェックインの手続きをしていると、共に泊まるタクロー達が現れた。

 彼等はセルヴィナ・ストーリスと決闘をしたはずであったが、見た目からしてもその気配は一切なかった。


「あれ、受付中?」


 タクローの問いにアルフはニコリと笑顔で返した。


「リリーア姫のお口添えのおかげで安く済みそうなんですよ」

「そなの?」


 タクローは辺りを見回す。後ろに続く仲間もキョロキョロと宿のロビー内を見回している。


「お泊まりは何名様でしょうか?」


 可愛らしい見た目の受付の女性がニコリと笑顔で、アルフに問いかける。


「えっと……」


 アルフは、タクロー達を見た。

 ミーナ以外は全員揃っている。ミーナ不在の理由はアルフも知っていたので、ミーナを含めた人数で登録するのだった。


「今ここに居る人数と後から一人合流するので、八人です」

「かしこまりました」


 受付の女性はチラリとトリスを見る。トリスはその視線を気づかぬようにしていた。

 タクローはその様子を見て、少々不快感に思った。


「なぁなぁ、皆で宿代はいくらになるの?」


 ズイとアルフを押しのけて、タクローがカウンターに身を預けて受付女性を見つめる。女性はやや引きつった笑顔を見せながら、対応する。


「一泊ですと、安くても御一人様金貨五十枚からとなります」

「そっかぁ……」


 タクローは困ったような笑顔を見せた。そんなタクローに女性はどう思ったのか解らないが、彼女もまた困ったような笑顔を見せた。


「タクローさん、私が払いますのでお気になさらないで下さい」


 アルフがタクローの横に立つ。そんなアルフにタクローはニッコリと満面の笑みを向けた。


「なになに、いっつも払ってもらってるんだから……。今回は俺が持つよ。お姉さん、安い部屋で金貨五十枚なら高い部屋は?」


 タクローの質問に対して女性は怪訝そうな顔を見せる。今回は流石に『コイツ払えるのか?』と思ったのだろうと解った。

 苦笑いと共に皮肉を込めて返答を返した。


「それはそれはかなりお高いですよぉ。金貨三百十二枚ですからぁ」


 その返答を聞いたタクローは真顔で「あっそ」と返した。

 そして、金貨入れから三百十二枚のレアル金貨を出してみせたのだ。

 受付の女性もそうだが、アルフと常に共に居るエンディも凍りついた様に固まる。


「あれ? 俺一人分だけになっちゃうかな?」


 苦笑いで受付の女性に問いかけるタクロー。

 勿論彼女が言った『金貨』はレアル金貨の事ではなく、一般通貨であるルクセン硬貨の金貨で有ると解りきっていた。

 受付女性は口をパクパクさせながら、タクローと金貨を何度も見比べる。


「どうしましたかな?」


 受付の後ろ側、バックルームであろう部屋から一人の中年ぐらいのホテルマンと言った風の男性が現れた。

 受付の女性は泣きそうな顔で、タクローの出した金貨を指差す。男性は目が飛び出る勢いだった。

 真っ青な顔と強烈に引きつった笑みをで固まる。


「こちらは、どなたが?」

「そ、そちらの方が……」


 女性がタクローを示すと、男性はタクローの容姿を見つめる。タクローの格好は革のジャケットにシャツとジーンズといった出で立ちだ。とても大金を持っている人間には到底見えない。


「早くしろよぉ」


 痺れを切らしたタクローが誰ともなくボヤくと、男性も女性も体をビクつかせた。


「な、何泊ご希望でしょうか? それとも、当宿の経営権利とか……」


 男性は体を震わせながら震えた声で問う。


「一泊だよ。ここに居るメンバーと後一人で。リリーアから聞いてないの?」


 男性は、事前に受けていた知らせを思い出す。

『リリーア姫から大事な人物が泊まるからとの知らせがあったので、粗相が無いように』といった内容の話だった。


「君、ちょっと来て。あ、すいません、もう少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」


 男性は受付の女性を連れて強引にバックルームへと連れていく。

 暫くしてから男性が戻ると、ニコリとタクローとその仲間達に満面の笑みを見せる。


「当方の受付に不手際がありませんでしたでしょうか? お話は伺っております。アルフ・フォルン・アレク様御一行でよろしいでしょうか?」

「ああ、そうだよ。ちなみに俺じゃなくて、こっちがアルフね」


 タクローは不機嫌そうにアルフを親指で指し示す。


「貴方様は?」

「俺はタクロー、一緒に王都に向かう仲間だ」


 男性はドッと汗が出る。何故なら、『特にタクロー様には不備の無いように』との話もあったからだった。

 知らせに来たミーティアラ大使館の人間は「その人物は何故か、姫のお気に入りらしい」と怪訝な顔で言っていた事を思い出していた。


「当方の受付嬢に何かご不手際でも……」

「あぁ? んなこと今は良いから、さっさとしてよ」

「かしこまりましたぁ! あ、お代は全員でルクセン金貨で二千四百九十六枚です」

「んじゃ、レアル金貨九枚出すよ。釣りはいらねぇから」

「は、はひぃ」


 受付の男性は真っ青な顔で受付をこなしていたのだった。

 こうしてタクロー達は、一番良い部屋を宛がわれる。そして、タクローだけは何故か個室になったのだった。


 一悶着あったが無事受付を済ませた一行は、宛がわれた部屋に荷物を下ろすと、昼食となった。

 昼食は宿のレストラン。後からやって来たミーナと合流しての食事となった。

 高級そうな食事を取りつつ、アルフは決闘の結果をシンジに聞く。

 シンジはタクローを見て呆れた様な表情と共に、経緯を語った。

 アルフは食事の手を止めて、タクローを見つめる。苦笑いで返すタクローだった。


「力を見せて屈服させるとは、タクローさんは鎧を着なくてもお強いのですね」

「まぁ、力を制御出来ないから、鎧はあった方が良いけどね……」


 仲間達は笑い声を上げる。


「そういやミーナさん、頼んだやつはどう?」

「ああ、上手く出来たよ。ああ、それで思ったんだけど鎧を貸してくれない?」

「鎧って俺の?」

「そぅ、少しいじってみたいんだよね。丁度簡単にいじれそうな設備が有るからさ」

「良いよー」


 タクローとミーナは淡々と話しを進めていく。


「ああ、それでヒカルちゃんとトリスに付き合ってほしんだけど……」


 ミーナは指名した二人を見た。当の本人たちはお互いを見て、目をパチクリさせる。


「トリスは申し訳ないんだけど、鎧運びをお願いしたいんだよね……。ヒカルちゃんは俺の手伝い、なんだけど……」

「こっちは構いませんぜ。俺みたいなのは下手にうろつけませんしね」

「私は、買い物に行きたいんですけど……」


 ヒカルはチラリとタクローを見る。


「俺の為に、頑張ってくれ!」


 タクローの言葉に深い溜め息をついた。


「ミーナさん、私は何をすれば?」

「簡単なプログラミングだよ。H・Rソードを作った感じかな」


 ややふてくされ気味に「はーい」と返事をする。そんなヒカルにタクローは後で何か埋め合わせをしてやろうと考えたのだった。



 ミーティアラ大使館。

 リリーア・ニルス・ミーティアラは応接室にて、一人の男性と向かい合う。


「ラルフ、調査の方はどうでした?」


 長身でガタイの良い男、ラルフ・グエウ・フォーリナはため息混じりで報告書をリリーアに差し出した。


「詳細はこちらに……。でも、参りましたよ、正直真っ黒でしたね」


 リリーアは数枚からなる報告書に目を通す。


「かれこれ三百年は続いてるのね……。奴隷売買から……、なにこれ? 娼婦の調教って」

「ああ、すいません。包み隠さずって話だったので……」


 リリーアは強烈な嫌悪の表情を浮かべた。ラルフは苦笑いでため息を吐く。


「こんなの彼が見たら、皆殺しとかになりそうね……。って違う違う、それにしても年間でヒトの入りと出の数が合わないのは……」

「多分、そういう事かと」

「教会か、そういった適切な処置をする場所には?」

「申請は出てませんね」

「なら、不法投棄されているケースも考えられるわね。もしくは内々に処置しているか……」

「おそらく、前者かと思われますよ。僧侶系の職業の者は確認出来ていません……」

「そう……」


 話をしながらリリーアは報告書の全てに目を通したのだった。それから今後の方針をラルフと話し合い、丁度話が終わる頃セルヴィナが部屋に入ってきたのだった。


 商業区画の一角に古い飲み屋が有る。

 その地下の通路を歩く二人の巨漢の男達。それぞれに布で包まれたモノを担いで歩く。


「おい、今日は『二人』か?」

「今の所な……」

「最近多くないか?」

「何時も通りだろ?」

「そうかなぁ、まぁ、地下に空洞が有るから良いけど、溢れたら事だぜ?」

「定期的に炎魔法とか光魔法で浄化してるんだから大丈夫だろ?」

「なんかよう、下から呻き声が絶えないって奴隷の奴が怯えてて……」

「気にしすぎだよ、お前は臆病だなぁ」

「う、うるせぇよ」


 二人はノシノシと地下通路の突き当たりまで行く。

 突き当たりには小さな部屋があった。小さな部屋の床には扉が有る。ソコを開くと真っ暗な空間が広がっていた。男達は自身の抱えている布に包まれたモノを放り投げる。

 一人目はすんなりといったが、二人目の男は布から中身が出てしまった。ソレはエルフのやせ細った幼い少女の亡骸であった。


 闇の中では、小さな赤い光がポツポツ見え隠れしている。

 その中に、亡骸は落とされていったのだった。

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