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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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ミーティアラ王国の姫

 シャンナ村に戻った男達とタクロー。

 男達を待っていたのは、寝ずに居た家族達。タクローには女性二人が、仁王立ちで待っていた。


 家族と抱き合って無事を喜び合う者達をよそに、タクローはひたすら説教をされていた。トリスには出掛けてくるとしか伝えなかったからだ。

 心配したヒカルとアリーシャは、寝れずにいつしか二人で待つことになった。

 一方の男性陣は全員爆睡中である。彼等曰く、「まぁ、タクローだし」との事らしい。


 救助の為に岩の撤去作業でヘトヘトなタクロー。

 説教を適当に受け流し、宿の部屋に直行する。ミスティック・アーマー・オリジンを脱ぐと、電池が切れたようにベッドに倒れ込んだのだった。

 ヒカル達もそんなタクローにため息を吐いて、部屋へと戻った。


 村全体が眠りから覚めて、シンジ達男性陣は事の詳細を村の人達から聞かされた。

 アルフの連れという事で、アルフに感謝の言葉が述べられる。


 アルフはタクローに配慮する為に、一日出発をずらす事にしたのた。

 これにより、男性陣はシャンナ村でのんびりとした時間を過ごす事になった。


 夕方、タクローが起き出すと村全体がお祭りの様になっていた。ダンジョンに行った男達は死すら覚悟していた状況から、生還できた喜びに湧いていた。

 そしてその夜は、村の広場で大宴会が催される事になった。

 主役は生還者とタクローだ。

 主にタクローが中心となって、皆が騒ぐ。酒を食事をと勧められ、疲れを一層増すような状況下に陥るタクロー。

 いつしか村で数少ない若い女性達が、とっかえひっかえタクローにお酌をする。その中には宿屋の娘、スーリアも居た。


 トリスは酒と食事の最中、強い殺意じみたニオイを感じて出処に目をやると、鋭い視線を飛ばすアリーシャとヒカル。取り敢えず、見なかった事にしてミーナ達と食事と酒飲みを楽しんだ。

 こうして宴会は夜遅くまで繰り広げられたのだった。


 次の日、タクローは酷い二日酔いで目を覚ます。

 アルフがチェックアウトを済ませて、馬車は入り口に停めていた。

 一頻り村人と挨拶を交わした一行は、セコルの町に向けて出発するのだった。



 ミーティアラ王国直轄町、セコル。

 王国鉄道、通称『国鉄』と呼ばれている鉄道の終着駅。町を一歩外に出ればそこは、レウラ伯爵領となる。

 そんな変わった町の一番高級とされる宿に、二人の女性が泊まっていた。

 一人目の女性の名はリリーア・ニルス・ミーティアラ。

 白無垢のワンピースを身にまとい、20歳と言う年の割にかなり幼く見られてしまう可愛らしい顔立ちで、スタイルもスラリとしていて見る者達を魅了する。

 そんな彼女は現ミーティア国王の一人娘である。


 リリーアの後ろには護衛として、常に控えている女性がいる。黒い女性用のスーツを華麗に着こなし、モデルの様に長身でスラッとしたボディーラインと整った顔立ち。

 腰には特殊なベルトとそこに下げられた、『爆風聖剣・ストームスラッシャー』。王国内で『剣聖』の称号を父に持つ彼女の名は、セルヴィナ・ストーリス。


 リリーアの護衛は、何もセルヴィナだけではない。

 黒いスーツの男女が六名いる。これは、セルヴィナの部下でリリーア姫親衛隊と言われている。

 そんな彼女達がセコルの町に来ているのは、レウラ領領主レズール・ホルナ・レウラに会うためだった。


 高級宿の一室を貸し切りにして、レズールと会う。

 リリーアの部屋の外にはセルヴィナの部下が控え、リリーアの後ろにはセルヴィナが控える厳戒態勢が敷かれていた。


「姫様に置かれましては、ご機嫌麗しゅう」

「こんにちは、レウラ伯爵。今日も良いお天気ですね」


 優しさがこもった様なリリーアの笑顔に対して、机を挟んで向かいに座るレズールはやや卑猥な目つきでリリーアを観察する。

 一瞬セルヴィナが殺気立つが、リリーアの咳払いで気を静める。


 レズール・ホルナ・レウラ、かなり小太りの中年男性。着ているスーツのシャツにはやや汗が滲み、清潔感には欠けている様な感じだった。


「姫様がこちらにおいでになるとは、思いませんでしたよ」

「宰相のトーマスが、暇な私を指名しましてね。まぁ、旅行がてらこちらに来たのです」

「なるほどぉ、ですが良いのですが? 政にはあまり興味が無いかと思ってましたよ」

「無関心ではありませんわ。ただ、そうですね……、私には知識が不足していると思い、あまり口出ししないだけです。ただ、トーマスがどうしても言うから……」


 レズールはニヤリと笑い、納得したように頷いた。

 レズールは王国に武器製造に関する案件で、使いを寄越すよう王都の貴族に働きかけていた。しかし来たのが姫様、しかも何故か宰相閣下の直々の指名でやって来た事をやや不思議に感じていた。


「大変ですなぁ、トーマス・ロッツ・アクリバル宰相閣下の頼みとは言え、この様な南の果てまで」

「まぁ、先程も言いましたが、暇にしてましたから」


 ニッコリと笑うリリーアを見て、レズールは思わずよだれが出かかる。それを見ていたセルヴィナに、この男を切り伏せたい衝動が何度も込み上げた。


 他愛のない話がそれから少しあって、リリーアは本題を切り出した。

 忘れていたように、レズールは驚いた表情を見せる。

 直ぐに、共の者に布で包まれた細長い物を持ってこさせる。机の上に置き、布を外すとそこには木と金属で出来た杖のような物が現れた。


「これは?」

「帝国の武器を、独自に入手しましてな。我が工房にて量産させた一つにございます」


 ソコにあったのは、帝国が開発した『魔導銃』であった。

 木の本体に金属の筒、構えると上には打ち出される鉄球の入った箱。スライドを右手で引いて装弾する機構もそのままだった。


 ミーティアラ王国は、アレクシア帝国と戦闘状態にある。

 モンスターの襲撃などの影響のおかげで、現段階はまだ小競り合いを繰り返す程度でいたが、最近では『魔導銃』の存在が大きくなってきていた。

 しかし離れた位置からの攻撃のみで、ミーティアラ王国軍は敵の武器の入手には至れていないのが現状である。

 それをレズールは、量産させることが出来ると言ってきたのだった。


(なるほど、トーマスが私に行けと言ったのはこれか……)


 リリーアは、レズールの事について考えていた。

 レズール・ホルナ・レウラには様々な噂がある。それは大体が悪い噂だった。

『帝国と内通している』や『貴族に金をばらまいている』、はたまた人間ですら奴隷扱いして非人道的な事をしているなど様々だ。


 リリーア・ニルス・ミーティアラ、彼女には特殊な能力がある。それは見るもの全てのマナを『色』として認識出来る。

 この能力は、嘘をついている者や、邪な考えを持っている者などを『色』で見分ける事が出来るのだ。またその場に不穏な動き、例えば『モンスターの集団が迫っている』や、『暗殺されようとしてる』などの事も『色』で識別可能なのだ。そして、この能力を知る者はごく少数と限られていた。

 王国宰相、トーマス・ロッツ・アクリバルがリリーアを指名したのはこの能力があったゆえである。


 そしてリリーアが見た、レズールは嘘偽りの色で染まっていたのだった。

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