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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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救助活動

 ダンジョン『ガルア洞窟』。


 ガルア渓谷北の山の麓近く、林の中にポッカリと開いた洞窟がある。鉄道の為に掘られたトンネルからは左手に暫く行く形になるが、シャンナ村からとなるとさほど遠くない位置にある。


 何度かのエアロダッシュ使い、タクローはミトゥーアから教えられた林を目指す。

 HUDの『ダーク・ビジョン』のおかげで、視界は開け夜の闇も軽快に移動が出来る。

 酔いが少し残っているせいか、若干体の平衡感覚が怪しいがそれでもタクローはダンジョンを目指す。


 心配そうに項垂れていた親子を見た時、タクローの体が勝手に動いた。

 しかし暫くしてから、何故村を飛び出してしまったのだろうかと言う考えや、トンネルの戦闘の疲れによる眠気などで後悔が押し寄せてきた。

 それでも脳裏に浮かぶ、不安気な女性と少女。それを見たら、居ても立っても居られなくなったのだ。

 おそらく同じ不安を抱えているのは何も、ミトゥーアやスーリアだけでは無いだろうとタクローは思う。

『何人かの男達』という事は、ミトゥーアの夫以外にも複数人存在するという事だ。その者達の帰りを待つ家族がいるだろう。その人達もきっと不安がっている、そうタクローは思ったのだ。


 この日の夜はやや雲が多かった。

 時折雲が月を隠す。

 地球世界と違い、月はやや青みがかって見える。そしてその月は重なり合う様に二つ存在していた。

 ダッシュの効果が切れ足が止まる時、タクローは何度か空を見上げる。天気を気にしている訳でもなく、ただ何気なく空を見上げた。

 ミスティック・アーマー・オリジンは気密性がしっかりしているのか、夜風の寒さも気にならない。エアロダッシュ中も、鎧の中は快適であった。

 ダンジョンへの道中には、モンスターも少数だが確認できる。しかしわざわざ戦闘をする必要がないので、それを回避しながら進んだ。


 林の入り口へとやって来た。

 木々の間から月明かりがうっすらと林の中を映し出している。林の入り口は荷馬車が通るための道が出来ていた。

 タクローはその道にそって移動する。

 暫くすると、小屋が見えた。小屋には荷馬車が三台と、牽引用の馬が六頭小屋近くに繋がれている。

 小屋に人の気配は無かった。

 馬たちには水桶が置かれており、中にはしっかりと水が入っている。

 小屋の中を伺ったが、中を荒らされた形跡は一切無い。村の男達は皆、ダンジョンにいるのだろうとタクローは考えた。ダンジョンの入口は小屋の直ぐ側にあった。


 タクローはダンジョンへと足を踏み入れる。

 低レベルと思われるモンスターが少数確認できる。帰りの事も考えて、それらを倒しながら進んだ。

 まっすぐの通路を進むと、二手に分かれている。どちらに行くか迷い、タクローは何気なく足元を見た。何人もの靴跡が一つの道を示していた。

 足跡を辿るように進んで行く。

 しかし暫く歩くと、タクローは足を止めることになった。行き止まりになったのだ。

 岩がゴツゴツとしていて、上から崩れたように見える。道を塞ぐ岩の一つ、人の頭ぐらいの大きさのモノを一つ持ち上げてみる。鎧の肘関節のアクチュエータのおかげか、簡単に持ち上げる事が出来た。

 これはいけると思ったタクローは、地道に岩をどかしていく。


 岩を持ち上げては邪魔ならない位置に置く、そしてまた持ち上げては置くを繰り返す。

 何度か崩れて自分の方へと向かってきたが、鎧のおかげで下敷きは免れた。

 暫くすると鎧の中は体を動かしたせいによる熱気で充満し始めた。汗が滲みそうになると、不思議と鎧内部に涼しい風が優しく吹く。おかげで汗だくにはならずに、タクローは黙々と撤去作業をこなす。


 半分くらいは撤去出来ただろうか、ガラガラと音を立ててまた崩れ始めた。すると奥から光が差し込んだのが見えた。


「そこに誰かいるのか!?」


 光が差す方から、男の声が聞こえた。


「シャンナ村の方達ですか!?」


 一人作業をこなしていていた為に、タクローは久し振りに人の声を聞いた気がした。


「そうだ、いきなり天井が崩れちまってな……。今皆で岩を取り除いてたんだが、アンタは?」

「アルフさんとシャンナ村に来た者です。宿のミトゥーアさんから、皆さんの帰りが遅いと聞いて来てみたんです」

「そうかい、アルフ様の所の人か。すまない、自分達の領地でもないのに……」

「いえ、気にしないでください」


 タクローはアレク領の人間ではないと伝えようとしたが、説明が面倒になったので彼の言葉をそのまま流した。

 それから話をしながら、タクローは声の主と共に岩をどける。


「怪我人はいませんか?」

「いや、なんとか大丈夫だ。怪我人は回復魔法で回復させたからな」

「下敷きになったりとかは?」

「運が良かったよ、一人も居ない。全員無事だ」


 タクローはその言葉に安心して、作業の手が更に進む。


「ミトゥーアには心配かけちまったな……。アンタをよこしてくれて、アイツには感謝しないといけないな……」


 男のしみじみとした言葉に、タクローは彼がミトゥーアの旦那だと感じた。


「ミトゥーアさんの旦那さんですか?」

「ああ、グレッチルってんだ。アンタは?」

「タクローです」

「そうかい」


「ヘヘッ」と笑い声がした。気がつけば、奥から次第に人の声が多くなって聞こえてきた。

 ゴールは近いと、タクローもグレッチルも黙々と作業を進めていった。


 岩の撤去作業からどのくらいの時間が経過したのかは解らなかった。だが、ようやく分断されていた道が繋がったのだった。


 グレッチルを含むシャンナ村の男達八人がようやく、その姿を現した。

 彼等はタクローの姿を見た時、驚きの声を上げたが、タクローの声を聞いて安心感に包まれる。

 話を聞くに、彼等は塞がれた道の奥で採掘作業をしていたら、急に上で爆音が聞こえてきたとの話だった。不安に駆られた彼等が、戻ろうとした矢先に天井が崩落したのとの話だった。


「上は確か、鉄道のトンネルがあったはずだが……。爆破作業でもしてたのか?」


 グレッチルの言葉に、タクローは思い当たる節が痛いほどあった。


「さ、さぁ……。俺達が来た時にはそんな事なかったですよ……」


 取り敢えず、しらばっくれる事にしたタクローであった。



 シャンナ村の男達と共に、採掘した鉱石や魔石の原石が入った布袋を抱えタクローはダンジョンの外を目指した。

 来る道すがら、タクローがモンスターを倒していたおかげで、楽に進むことが出来た。

 ダンジョンから外に出ると、シャンナ村の人々は手早く荷物を荷馬車に載せ、馬を荷馬車に繋げる。

 夕食前に帰るはずだったために、夜の食事を取っていない彼等は休む間も無くシャンな村を目指したのだった。


 林を抜ける。村に向かう道の護衛はタクローが買って出る。しかしモンスターとの戦闘になること無く、タクローとシャンナ村の男達は村にたどり着いたのだった。


 東の空はうっすらと明るくなっていた。

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