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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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幽霊

 タクロー達がアレク領から次の領地へと出発する朝を迎える。


 次に行く所はレウラ領。レーズル・ホルナ・レウラ伯爵が治める領地である。

 アレク公爵領から北にある小さな領地だ。

 だがそこには『ミーティアラ王国鉄道』が来ている為に、南部と王都を繋ぐ玄関口としての機能がある。その為に、終着駅があるセコルの町は発展を遂げていた。

 セコルの町はレウラ公爵の領地としては登録されていない。

 鉄道が王国管理であるため、セコルの町は王国の管理下に置かれていた。しかしそこからほど近いミストラの町も大きな発展を遂げていた。その町こそレウラ伯爵の邸宅が置かれている町である。

 レウラ伯爵はセコルの町に自分の部下を配置し、物流等を管理することで財を得ている。また王都に近い貴族達とも繋がりを持っている事も町の発展に貢献していた。彼の治める領地はシャンナ村を始めとする三つ程の村落がある程度のものだったが、近くには比較的簡単に入れるダンジョンが数箇所点在している事でそこから魔石を採掘出来る為、彼は小さな領地に何ら不満を持ってはいなかった。


 トルツェの町を出ると、北に山々が見えてくる。

 南北に分かれた山の谷間に一本の川が流れていた。ガルア渓谷、山には怪鳥などの山岳系モンスターが多数居る難所の一つだ。

 トルツェの町から真っ直ぐセコルの町に向かうなら通らなければならない場所。そこに挑むのは、アルフとその従者エンディ・レイダス、タクロー達と御者一人の計九名。

 トリスが他に護衛は付かないのかとアルフに問うと、「兵は極力残さねば、いざという時に困ります」と言う回答が返ってくる。そう、現在アレク領は帝国の影に警戒しなければならない状態だ。おいそれと兵を出してはいざという時の防衛がままならないという心配があったためだ。

 そしてアルフは「それに、最高の護衛がいますから」とタクローを見て、トリスは納得したのだった。

「少人数で動いた方が良い」、これもまたアルフの案の一つであった。


 一台の馬車が北を目指して進む。

 道中では度々モンスターに襲われる事もあったが、楽に戦闘をこなす事が出来た。

 理由は二つ。タクローの存在ともう一つがミーナが自分用に作った銃だ。

 国王にも献上する魔導銃、名を『MG2017』と名付けられた。MGは『Magic・Gun』の頭二文字で、2017は年号だ。名を付けたのはミーナ。

 ミリタリーオタクなミーナが、自信を持ってこの名にしたのはとある有名な銃に肖ってだった。

 アレク領内である程度量産出来たら、兵士達に正式に武器として採用される事になる。その先駆けとなる一丁は、ミーナが後で自分用にカスタマイズを施した。

 照準器は見やすいよう、三ドットポインターで照門は角度が調整出来る仕様になっている。この為精度が上がり、命中率も高くなった。だが、命中率の高い狩人たるシンジが持てば照準器など無くても簡単に狙ったポイントに当てることが可能だ。しかしシンジは弓を扱う方が良いと、銃を扱うことを頑なに拒んだのである。


 シンジの弓はスキル攻撃などと組み合わせれば、下手な銃よりも的確かつ正確に敵に対してダメージを与えることが可能だ。ただ連射性が無く、銃よりも劣る点も多いのは確かであった。


 タクローの魔法攻撃、ミーナの射撃、シンジの弓矢で馬車の荷台に居ながらにしてモンスターを狩りながら進む事が可能な為、順調にガルア渓谷へと近づいて行った。



 タクロー達がガルア渓谷に移動していたのと時を同じくして、ファストの町の近くの林の中に、緑色を主体としたまだら模様のフード付きマントを付けた三人の影があった。二人は男性で、一人が女性である。

 男性のうち、一人は顔の右顎から頬にかけて傷が有り、もう一人は傷が有る者より少し背が高くガタイが良い。

 女性の方は標準的な身長で大した特徴は見られない。

 三人共フードを深く被って居る為、顔が解らない様になっている。


「ゴースト・ワン、ここに来るまでに野営の跡が数箇所。間違いなく、53特別小隊のモノと見て間違いないかと」


 後方に控えていた女性が、男性二人の内顔に傷のある男に声を掛ける。


「やっぱり、ちゃんと偵察に来てるじゃないか……。きちんと足跡残してるのに、帰らないってのは、やっぱり連中死んじゃったのかねぇ? どう思う、ゴースト・ツー」


 傷のある男、ゴースト・ワンがガタイの良い男に顔を向ける。


「どうでしょうね? あの町に潜入してみないと、どうにも判断がつかないですよ。ゴースト・スリー、他に解った事は無いですか?」


 女性は肩をすくめて見せる。

 ゴースト・ワンはため息をついた。


「やっぱ、潜入して情報収集するっきゃ無いか……」

「仕方ないですよ、皇帝陛下からの時間いっぱい調査せよといった命令ですから」


 彼等は帝国の人間である。

 皇帝直轄特別部隊『ゴースト』、数ヶ月前に正式に結成された新しい部隊である。

『ゴースト』は少数精鋭を旨とし、過酷な環境や状況下で隠密に作戦を実行する為の部隊である。その名の通り幽霊の如く夜の闇に紛れた暗殺や、昼間は人混みに同化して諜報活動などその任務は多岐に渡る。

 一人一人が卓越した能力を有しているだけではなく、知識の面でも人一倍と言っても過言ではない。正に帝国の兵士の中では、精鋭中の精鋭が集まった部隊だ。

 帝国の兵士達やその上の将軍達でも、その正体は知らされていない。その為、部隊の人数やましてや素性は一切が極秘事項になっていた。

 彼等の存在を把握しているのは、アレクシア帝国現皇帝と他数名の限られた人間のみとなっていた。


 林の中にいた三人の気配が音もなく消えた。彼等は夜になるのを待つ事にしたのだった。



 タクロー達がガルア渓谷近くに着いたのは、昼になる少し前だった。

 ガルア渓谷の南北の山にはトンネルが掘られ、渓谷をまたぐ形で鉄橋が架けられている。本来は鉄道を通す為のこれらだが、鉄道が来ていない現在は馬車が往来する為の道として機能している。

 南北の山には名が無く、『ガルア南の山』と『ガルア北の山』と呼ばれている形になっていた。南はアレク領で北はレウラ領と分かれている。

 アレク領側のトンネル前に着いた一行は、少し早いが昼食にする。トンネルに入ると薄暗く、またモンスターとの連戦が予想されるとのアルフの話により、早いが先に腹ごしらえを済ませる事にしたのだった。


 昼食を済ませた一行は、軽い食休みの後にトンネルに入る。

 暫く歩くと、昆虫系や死霊系、悪霊系モンスターが襲いかかってくる。

 トリスは馬車から飛び降りると、ハルバードで昆虫系モンスターを蹴散らす。

 ミーナ、シンジも実体攻撃の為に昆虫、もしくはゾンビやスケルトンなどの物理攻撃が通る敵を相手にした。

 一方のアリーシャとヒカル、アルフとエンディは魔法で応戦する。しかしヒカルに至っては、時折悲鳴を上げていた。後に彼女は大の幽霊嫌いなのだと、タクローがそれとなく皆に話したのだった。


 タクローはヒカル達と作った、H・Rソードが正にその真価を発揮する。

 物理攻撃の様に多彩な攻撃を見せると共に、死霊系大きな力を見せつけた。

 エアロダッシュでトンネル内を縦横無尽に動き回り、『ファイヤーボール・ショット』でダメージを与えつつH・Rソードで強力な必殺の一撃を加える。


 馬車の周りでは、マジックアクティベーターによる『ライト・ボール』で暗いトンネル内を照らしている。しかしタクローには、まるで関係なかった。なぜならHUDに映し出される画面が、まるで暗視装置の如く見えるからだ。

『ダーク・ヴィジョン』、ゲーム時代には無かった新しい魔法の一つ。暗闇を見通す事が出来る魔法が、鎧の機能として備わっていたのだった。これにより、タクローは独り先行して敵を倒し、舞い戻って仲間の援護や救援に戻る事が可能であり、トンネル内の戦闘を楽な方向に導いていた。


 南側のトンネルを抜け、ガルア渓谷の鉄橋に出たのは一時間半後になる。本来はもっと時間を要するとアルフが言って驚いていた。

 一行は鉄橋の真ん中で、休憩を取る。

 そしてある程度休んだ後、今度は北の山のトンネルに入ろうとした時だった。トリスが唸り声を上げて、トンネル入口を見る。

 その様子を見たアルフが、馬車を止める。


「どうしましたトリス?」

「ヤバいぜ、このトンネルの中にヤバい気配を感じる……」


 トリスはトンネル内の闇に潜む、得体の知れない危険な気配を感じた。しかしここを抜けなければ、他に行きようが無い。前進しか選択肢が無い以上、進むしか無いのである。

 一行は気を引き締め、トンネルに足を踏み入れるのだった。

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