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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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銃完成と鎧のアップデート

 魔導銃製作を開始して、三日目。


 アルフが設けた期限となる日。

 ミーナの助力と、タクローのアドバイスのおかげで試作品となる三丁の銃がようやく完成したのは、その日の午後になった頃だった。


 アレク公爵の兵士訓練所。

 そこにある一角で銃の試射が行われる事になった。

 ミーナの言葉で広い場所が選ばれる事になっていた。

 当初は弓の訓練施設が使用される予定であったが却下された。そして選ばれた場所は団体騎馬戦を想定しての訓練場所となった。

 トルツェの町の端に位置するために、広大な敷地が確保されている。


 試射の為に集まった、アルフと兵士達や工房作業員は「ここまで広い場所が必要か?」と口にするがその考えが直ぐに間違いであると知ることになる。

 ミーナが試射の為に最初に標的にしたポイントは、約二〇メートル地点。その後、飛んで五〇メートルと八〇メートルに標的を置いた。

 三丁の銃はバレルに加工が行われている。基本的な機構もある程度見直され、元の設計とされたマガジン取り付け位置等、多種に渡るテコ入れが成された。

 そして完成形はアメリカのライフル銃『M14』に近い形となった。

 それらの銃は、バレルに特殊加工を施し球体状の弾丸に縦回転を起こす仕様になっている。

 またマガジンが下に付いたことにより、照門照星からなる照準器が取り付けられ狙いが付けやすい構造に変わった。

 ミーナはスコープやレーザーサイトの様な物も考えていたが、時間の都合で断念せざるを得なかった。

 また暴発等の事故を防ぐために、安全装置も作られた。


 最初の一丁を取り、ミーナが構える。

 狙いを澄ませて、引き金を引く。引かれた引き金から、魔法を起動させる流れが起き、内部の魔石にそれを伝える。

 銃床内に収められた金属の爆発室で爆発が起き、膨張した熱と空気が爆発室内から圧縮される形で弾丸を押し出す。長いバレルから出た弾は目標に向かい、目にも留まらぬスピードで飛んでいった。

 弾丸は当初の設計通りに一発一発装填する形式のままとなっている。

 けたたましい発射音に、工房の作業者並びに兵士達は耳を塞ぐ。

 ミーナは、自身とタクローの目論見通りに動作したことに喜んでいた。

 三丁全ての銃の試射が終わる。

 どれもなかなかに完成された出来で、どれ一つとして暴発などという問題には至らなかった。

 その後ミーナ指導の元にアルフと兵士達、工房作業者達の試射会が行われる。

 そして最後に三丁の銃の評価が行われた。その中で一番の飛距離と精度となった銃がミーティアラ国王献上、そして、正式に生産される物になったのだった。



 一方タクローは、ヒカルとアリーシャにトリスといったメンバーと共にH・Rソードの起動確認を行っていた。

 工房内にある少し広い区画でミスティック・アーマー・オリジンを装備したタクローがH・Rソードの本体を持って構える。

 魔石の魔法術式構成プログラミングと術式転用はヒカルが行った。本体となる部分はミーナが加工し、内部構造は工房の人間であるスルト・ブロケンがそれぞれの空いた時間で作ってくれた。

 タクローの願いどおり精霊石を内蔵したソレは未だに起動実験すら行われていない。


 タクローは握りしめたH・Rソード本体に魔力を込めるように、意識を集中する。HUDに変わったアイコンの表示が出て、まるで最初から想定されていたかのようにあっさりと鎧がソレを認証した様に思えた。そして先端にある魔石が輝き、集光レンズを介して光の刃が現れる。


「おお、すげー。出来たよ……」


 一番最初に驚いたのは発動させたタクロー本人。そしてそれに続く形で他の仲間達が一斉に驚きと喜びの声を上げる。

 タクローは試しに振り回してみる。ブンッブンッと音を立てるそれは、正にアニメや映画で見るようなビームサーベルだった。

 魔力を込める意識を離すと、光の刃は霧散するように消えた。そしてミーナが用意してくれた腰のホルスターにH・Rソード本体を収める。


「凄いな、申し合わせた様に完璧じゃないか?」

「私もここまで、上手くいくとは思わなかったよ……」

「あ、そうだついでだし、この鎧もちょっとアップグレードしてみたいな」


 タクローとヒカルのやり取りをに対して、トリスとアリーシャが顔を見合わせる。


 ヒカルは魔法付与師エンチャンターである。

 魔法付与師は触媒となるアイテムを使用して、武器防具に能力を持たせる事が出来る。持たせられる能力はアイテムによって多種に渡る。

 そこでタクローはミスティック・アーマー・オリジンに何らかの能力を持たせてみようと考えたのだ。しかし能力を持たせると言っても無限に出来るわけではない。武器防具には能力保持スロットがあり、スロットの数しか能力を付与できない。

 タクローは一個くらいはいけるだろうと、思ったのだった。

 ヒカルに説明をすると、「えー?」と少し嫌そうな顔をする。しかし少しの間を置いて、諦めたように「仕方ないなぁ」とアイテムボックスを探る。


「最終決戦だからって、皆大体の素材は置いてきたでしょ? ろくなアイテムは無いと思うけど……」


 そうしてアイテムボックス内を少し調べると「あれ?」と言って一つのアイテムを取り出す。それは金属で出来た打ち出の小槌の様な形をした物だ。


「多分ラスダンでドロップしてたみたいね。『破壊魔の鉄槌』だって」


 そう言って、ヒカルは自身のマジックアクティベーターを取り出し、アイテム鑑定を行う。


「えーと、なになに? 『破壊魔の鉄槌』は……、一定確率で武器レベル関係なく武器破壊かぁ……。鎧にコレいる?」


 怪訝そうな表情のヒカルに対して、タクローの表情は兜の下で見えない。しかしヒカルには目を輝かせているタクローの顔が想像できた。


「よし、それで行こう! 銃弾だって武器かもしれないぜ? 破壊出来れば、プロテクションの無駄張りを防げるかも知んないぜ」


 何を言っても無駄だと悟ったヒカルは、仕方なく魔法付与を始める。

 タクローが金属の錬成を行ったように、タクローの前にアイテムを置いて手をかざす。

 意識を鎧と小槌に集中すると、小槌が光の粒となり鎧に吸い込まれていった。どうやら追加能力は上手くいった様に思える。しかしミスティック・アーマー・オリジンはアイテム鑑定が行えない為に、確証は無かった。


 魔導銃は完成した。

 タクローも新たな力を手に入れた。

 こうして王都へ出発する一つの工程がクリアされたのだった。



 その日の夕刻に、タクロー達四人とアリーシャとトリスの計六人は、町に出た。王都に行く準備をする為の買い出しだ。着替え等必要なものは多岐にわたる。


 アリーシャとトリスは大荷物を持つ為にカバンを用意しようとしたが、タクロー達がそれを制する。無限に近い容量を誇る小さな小箱がある彼等は、代わりに自分達が持つと言った。

 アリーシャの私物は、同じ女性のヒカルが持つことになった。トリスの荷物は当初タクローが持つと言い出すが、戦いになると真っ先に前線に飛び出すから駄目だと、ミーナとシンジからダメ出しがあり、ミーナが持つことになる。

 こうして六人は手ぶらに近い形で旅が出来ると言う、異様な形が出来上がった。


 全ての買い出しが終わる頃には、既に遅い時刻になっていた。

 時間を取られた要因の一つにレアル金貨の換金もあった。もう一つには、女性二人の服選びもあった。

 どの世界でも共通らしく、女性二人は様々な服に目移りしてなかなか決められなかったのである。

 アレク邸に戻り遅めの夕食をいただいた後、風呂に入って就寝となった。


 翌朝、遂に王都に向けて出発の為の馬車が、アレク邸宅の玄関前にやって来たのだった。


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