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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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その名は『H・Rソード』

 ヒカルは朝食を済ませて早々に工房へと急ぐ。

 道すがら眠そうにふらつきながら歩くミーナと会ったが、彼も工房に行くという。

 ヒカルはタクローに光魔法を使わせられないかと持ちかける。

 共に歩きながら、お互いの意見の述べ合いとなった。


「難しくない? タクロー君がマジックアクティベーター持つと爆発するんだよ?」

「でも、昨日の魔導銃は壊れなかったですよね?」

「そこね、そこ少し気になった。鎧を着てたからかな?」

「鎧自体魔石が付いてる訳だから、爆発の原因は他にあるのかも。例えば人工精霊石とか」


 ミーナは腕を組んで考える。「その可能性はあるかも……」とだけ言って、言及はしない。

「あと、私思ったんですけどタクローさんって魔法使いですよね? だったら、高レベル者が保持するのに必要なグレードが低過ぎだと駄目とか無いですか?」


 ヒカルの言い方はやや解りにくいものの、タクローの何気ない言葉とよく似ている。

「成る程、グレードか……」とミーナは納得していた。


 レベルが上がれば、それに見合った装備になって行く。金額は高価になり、生成や製作に必要とされる素材はレアリティが高くなる。そうなっていくと、装備品や所持アイテムにも高いグレードが求められる。

 タクローの魔力は限界を越えているため、ヒカルはそれ相応の高品質なアイテムが必要ではないかと考え付いたのだ。


「私、試してみて良いですかね?」

「試すって?」

「タクローさんの為に一つ武器を作ってあげたいんです。丁度、ラスダンでレア度高い魔石手に入れたから、これに光魔法組み込んでみようと思います」

「出来るの?」

「魔導演算機を使えば可能らしいので、そこの所は現場の人に聞いてみます」

「じゃぁ、手があいたらそれに見合ったなんかアイテムの製作を一緒に考えて見よう」


 ヒカルはミーナにニッコリと笑いかけ、元気良く「お願いします!」と言って二人は工房内に入ったのだった。



 午前中はずっと魔導演算機と格闘していたヒカル。

 作業者に最初の小一時間でやり方を教わった後は、一人で画面と睨めっこをする事になった。途中ミーナがやって来て、魔石を何に組み込むかと言う話となった。

 そこで昨日見た懐中電灯モドキを思い出す。


「光魔法で剣なんかどうですかね? ほら、『ホーリー・セイバー』見たいな感じで」


 ミーナは首を傾げる。


 光魔法での攻撃は中位魔法ミドルスペル以上から多くなっていた。その中で中位魔法『ホーリー・セイバー』は光で作られた剣を目標に飛ばすというもの。

 ヒカルはそれを手で持って戦える様に出来ないかと考えたのだ。だが簡単に出来るものではない。

 魔法を安定して常時発動状態を保持しなければ、光の剣は魔法効果を失ってしまう。そこはどうにかならないかヒカルが考えて話すと、ようやくミーナは話の意図が掴めた。


「要はアレでしょ? ライトセーバーとかビームサーベルみたいなのを作りたいって事でしょ?」

「そそ、何とか出来ないかな?」

「その手の話はタクロー君に聞いてみると良いと思うよ。そこら辺関係詳しいはずだから」


 ミーナは「また後で顔出すよ」と言ってその場を後にする。

 そんな事があった後に、ようやく魔導演算機の要領を掴み始めた頃、タクロー達がやって来たのだった。



 これまでの経緯を聞いたタクローは、腕を組んで難しい顔をする。


「要はアレじゃないか? 集光レンズみたいなので光を一点に集める形を作ればいいんじゃない?」


 ヒカルにはイマイチ理解できずに、首を捻る。


「まぁ、アニメとかの話だとビームを一箇所に集めて固定するフィールドを張って安定させるなんて話もあるけど……、んー……、そんな事が出来るなら……」


 タクローは宙を仰ぎ見る。そして何かを思い出したように部屋を駆け出した。

 取り残されたアリーシャとヒカルはお互いの顔を見合わせる。


 暫くすると、部屋の外からやかましいくらいにガッチャンガッチャンと音を立てながら、鎧を着たタクローが走って戻ってきた。


 ヒカルが「なにしてんの?」と聞くと、「鎧を着てると頭が冴える」と言う返事が返ってきた。

 タクローは咳払いをして、「さて、本題に戻ろう」とヒカルに告げる。

 やや冷ややかな視線を送る二人をよそに、タクローは至って真面目に考えをまとめる事に集中する。


「あ、そうか……そうすればいけるか……」


 タクローが装備するミスティック・アーマー・オリジンは、INTブーストが常時発動状態にある。

 正式名『インテリジェンス・ブースト』は知能の数値を大きく向上させる魔法だ。

 これによりタクローは普段よりも脳が活性された状態となり、脳内に仕舞い込まれている情報が効率よく引き出せるようになっていた。


「特性付与魔法の『フィックス』と組み合わせて『ホーリー・レイ』の術式を組めば良いと思う」


 タクローの言葉にヒカルはやや疑問を感じ、「ホーリー・セイバーじゃ駄目なの?」と聞く。


「アレは一種の召喚系だと思わない? 光の剣が現れて、目標に向かって飛んでいくんだぜ? その場に固定させてもいいけど、手持ち装備の上に剣を召喚って見た目的におかしいじゃん。要は懐中電灯から剣が生えてる感じになっちゃうよ。なら、手持ちの装備を含めて一本の剣にした方が見た目的に良いと思うよ。正にビームサーベルだ!」


 ヒカルは成る程と納得する。


「でも、特性付与の術式かぁ……。また資料探さなきゃ……」


 ヒカルはダルそうに腰掛けていた椅子から立ち上がろうとすると、アリーシャがそれを止める。


「特性付与に関する術式資料なら、私が。特性付与は頻繁に使うから……」


 そう言って数台並ぶ魔導演算機の間にある資料の束から、一つのファイルを取り出してヒカルに渡す。

 感謝の言葉と共にファイルを受け取り、目を通す。すると簡単に魔法現象固定の特性付与魔法『フィックス』の術式を発見した。

 そしてタクローの案そのままに、魔石に術式を書き込んだ。


「出来たー!!」


 ヒカルの歓喜の声は部屋中に広がった。

 丁度その時、ミーナが魔導演算機のある部屋へとやって来る。


「びっくりしたぁ……。急に大声が聞こえるんだもん」


 ミーナに気が付いた三人は、事の顛末を話した。

「成る程」と納得して、武器転用の為のアイテム製作の話となる。道具としては概ね懐中電灯モドキを改造する事で同意される。しかしタクローには一つ目論見が生まれていた。


「ミーナさん、集光レンズって出来る?」

「集光レンズ? 何に使うの?」

「魔石にかぶせるのさ。光の棒よりも剣ぽくなるように」


 ミーナは暫く考えて、工房の作業者に聞いてみると話した。


「ほい、タクローさん。魔石」


 ヒカルに魔法術式が組み込まれた魔石を投げ渡され、見事にキャッチするタクロー。

 手にした魔石は黄色とも金色とも取れる見事な輝きを見せていた。


 魔石の基本色は白か灰色で、術式を組み込むと属性に合った色へと変わる。

 火属性なら赤、水属性は青、風属性は緑、土属性は茶色、そして光属性と相反する闇属性は紫に変化する。ただ魔石の質によって色合いは若干変わってくる。

 タクローの手の中に収まる魔石を見て、アリーシャはため息を漏らす。


「凄い綺麗……、まるで宝石みたい……。聞いた事がある、最上位の魔石は宝石より美しいって」

「一応、最高グレードの魔石なはずだよ。なんてったって、ラスダンでゲットしたやつだし」


 ヒカルは自慢げな表情をする。

 アリーシャは最後の言葉の意味が理解出来ないものの、魔石の輝きを見て目を輝かせていた。

 タクローはミーナに魔石を渡すと、自身のアイテムボックスから精霊石を出す。そしてこれも合わせて渡す。


「なんで精霊石? ってか、何個持ってんのよ?」

「ラスダンで五個ゲットしたんだ」

「五!? 相変わらず変な事に運がいいのね……」


 タクローはミーナに精霊石を渡す真意を伝える。

 マジックアクティベーター等は人工精霊石によって魔法が発動されるようになっている。

 これではタクローの魔力に耐えきれずに爆発してしまうと、タクローは考えていた。

 つまり人工精霊石よりもグレードの高い精霊石を触媒として、魔法発動の為の要は『バッテリー』として使えば鎧同様に使えると考えたのだ。

 タクローの説明はミーナが驚く程に納得の行く噛み砕かれた内容となった為に、二つ返事で了解した。


 こうしてミーナはタクローの新武器の製造にも着手する事になった。案外簡単に出来上がった様で、翌日にはタクローの元に手渡される事になった。そしてそれは光の刃を持つ剣であった。

 制作に携わった三人でその名を考える。

『ホーリー・レイ』の魔法を剣にした事ということで、当初はホーリー・レイ・ソードと安直な名前になった。しかしタクローが、それは「長くて言いにくい」との事で、『HollyホーリーRayレイ』のスペルを取り、『H・Rソード』と名付けられたのだった。


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