表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
34/713

鎧と工作(クラフト)1

 機械に詳しい者達三人が、全身鎧ことミスティック・アーマー・オリジンの分解を始める。

 ミーナは可動部分関係、タクローは動力関係、ヒカルは配線関係だ。

 ソレ以外のメンバーは興味深そうにソレを見つめている。そこにはスパッタ・メルトの姿もある。


「うーん、魔法で動くもんだから結構単純なのかと思ったけど、意外としっかり作り込まれてるねぇ……」

「精霊石は、一旦外しちゃいますよ。これ、思った以上にしっかりとした動力源になってるみたい」

「うわぁ……、なに? この配線達は。旧式のPCかよって話」


 ヒカルはいつの間にか兜部分に手を掛けている。


「おいおい、ヒカルちゃん。後で戻せなくなりましたじゃ、しゃれないならないから下手に弄らないでよ」

「だぁいじょうぶですって、最悪タクローさんが何とかしてくれますって」

「おい、こら。そう言って、前にPC一から組み立てさせられたの誰だっけ? なんだ、『私PC組むくらい大丈夫』とか言って相性がどうたらのたまわった癖に、結局ピン数が合わないの買ってきやがって……」

「ああ、それでヒカルちゃん二日間ログイン出来なかったね」

「いや、だって……、雑誌で読んだら簡単そうだったし、それに最悪タクローさんが助けてくれるから問題ないかなって思って。えへへ……」


 三人は昔話で盛り上がりながら、着々と分解を行っていった。

 そんな三人の話をアリーシャとトリスに問われて、シンジは説明にすこぶる困っていた。


 スパッタは一人、分解されていく鎧を興味深く観察していた。そして驚愕の事実に気がつく。

 彼等が弄っているソレは、鎧と言うよりも魔導機械そのものだからだ。


「ちょっ、ちょっと自分にもよく見せて下さい」


 スパッタは眼の前に居る体の大きなトリスを押しのけ前に出る。そしてかぶつかりそうな勢いで鎧の足から頭へとゆっくり観察する。


「す、凄い。全身くまなく魔導伝達回路が組まれてる。

 おまけにこのヘルムの内側は精神感応金属が網の目の様に張り巡らされて……、一体これは何なんですか!?」


 興奮気味のスパッタに対して三人は顔を見合わせる。


「えっと、確か魔導全身鎧だっけ?」

「ミスティック・アーマーとか書いてあったような……」


 ミーナとタクローが馬車の中での出来事を一生懸命思い出そうとしていた。

 スパッタは「ミスティック・アーマー」と言うワードを何度も繰り返す。そして「あ!?」と大きな声を上げた。


「ミスティック・ボードと関係ありますかね?」


 スパッタの質問に二人は首を傾げた。

「知りませんか? マジックアクティベーターの原型と言われてる物なんですが……」


 首を横に振るタクローとミーナ。そこにアリーシャが話に割り込んでくる。


「この鎧はマジックアクティベーターと同じ様な力を持っているみたい」

「なるほど、どおりでこれだけの魔法合金が使われている訳ですか……」


 難しい顔で腕を組み、スパッタはそれからじっと鎧を見つめる。

 一方で、ヒカルは着々と分解を進めていた。

 ミーナとタクローも作業を再開する。


「取り敢えず、関節部分から確認作業に移ろうか」


 ミーナは右の肘関節部分を持ち上げ、曲げてみる。一定の所までは動くのだが、曲げきろうとすると急に動きが悪くなる。


「たぶん、インナー部分のアクチュエータじゃないかな?」


 タクローが帝国兵士達との戦闘後に意識を失っていた際、ミーナ達が鎧を調べた内容を聞かされていた。

 後に自身でも、軽く調べてみたので構造はある程度理解している。


 外装アウター部分と、内装インナー部分の二層構造になっているこの鎧。

 外装部分は基本的には守りを固める鎧の要素が強いが、裏面には所々魔法術式が刻まれている。

 内装部分は主に体を動かしやすくする為の駆動系と、魔法を行使する魔石、また後から装着された精霊石を中心とした動力系があり、ほぼメインとなる部分だ。

 各関節部分には、折り曲げを補助する形でアクチュエータが備わっている。他には、足には高い所からの着地に備えるためだろうか、小型のショックアブソーバユニットも付いていた。


 タクローの言葉で、内装部分を取り外し関節用アクチュエータと思われる部分を外す。取り付けは様々なネジで固定されていたが、それは工作室の工具で十分分解可能であった。

 特殊な工具を必要としない事に、ミーナは少しホッとする。


「げっ!? コイル焼き付いてる。構造自体は単純明快だけど、オイルと思われる物は固まってるわ、ギアは一部欠けてるわで酷いなぁ……」


 ミーナは替えとなる部品が無いかスパッタに聞いたが、首を横に振られるばかりだ。


「大体、皆さんこれに使われている素材解っているんですか?」


 スパッタはやや不機嫌そうに声を上げる。


「鎧全体の色合いから見ても、ミスリル。しかもただのミスリルどころか何らかの特殊合金ですよ、これ。おまけに精神感応金属。これだけの量となると、それこそ魔導車一台は買えちゃう程です。おまけに魔導伝達回路は、これを組むのに必要とされる魔石やらなんやらも相当高価ですからね!」


 スパッタの話から、この鎧がどれだけ高価なものかと言う事を知った一同は、苦笑いしか出なかった。


「ミーナさん、部品の替えは無いと思ったほうが良さそうっすね……」

「そうだね、タクロー君大事に使わなきゃ駄目じゃん」


 言い合った二人は、「さて、どうしよう」と声を合わせる。


「取り敢えず、補修が出来るかどうか考えたいけど、金属の材質が解らないならねぇ……」


 ミーナが欠けた歯車を眺めている。


「難しいですよ、国営工房にでも持ち込まない限り。この工房じゃ、四級錬金術師しか居ないですから……」


 スパッタは肩を竦めて見せる。

 タクローが「錬金術師ねぇ……」と、視線を宙に向ける。


「ん? 錬金術師?」


 タクローはゲーム時代を思い出す。


 ゲームでは戦闘用のメイン職業と、工作クラフト用のサブ職業が用意されていた。

 サブ職業は複数選択出来るようになっているが、レベル上限が10と低いものの上げるのには相当な時間を要した。そのため、時間が取れない者達は仲間と助け合いながら、それぞれ違うサブ職業を極めるようにしていた。タクロー達もそうである。


「ミーナさん、ミーナさん」


 タクローがミーナの肩に手を回し、小声で話しかける。


「サブ職って、この世界でどうなんスかね?」

「サブ職って?」

「ゲーム時代のやつですよ」


 タクローの言葉にピンときたミーナは、「どうなんだろ?」と返した。


 ゲーム時代では、工作クラフト画面を開いてアイテムを選択、すると別のアイテムが生成出来たりした。

 しかしこの世界では、工作画面どころかメニュー画面も出てこない。

 魔法は意識すると、詠唱する言葉が現れた。


「ミーナさん、ギアかして」


 タクローはミーナの持つ歯車を取ると、目を閉じて意識を集中してみる。

 タクローのサブ職業は『錬金術師』。しかも最高レベルである。


 錬金術師のレベル8で習得可能なスキルに『素材鑑定』と言うものがある。

 金属装備を生成する際、多種に渡る金属が必要とされる。高位アイテムには、素材鑑定を行わないと複製や新しく生成する事が出来ない物がある。

 その為に必要とされたスキルだ。

 かつては戦士職のミーナを始めとするあらゆる近接タイプの仲間から重宝されたスキルの一つだ。

 またミーナは『鍛冶師』の最高レベル持ちであり、タクローが素材鑑定を行った物を一から生成する為のレシピ作成に必須であった。


「ああ、いけるわ。マジか……」


 タクローは今握っている歯車の材質が頭に浮かんできていた。そしてミーナは何が必要かと聞く。


「ニッケル……クロムに……鉄……炭? あ? す、炭って何だコレ!?」

「ちょっ!!? タクロー君それ、マジかい!?」


 タクローは目を閉じているので、ミーナの反応は解らない。

 ミーナの地球世界での職業は金属加工。金属に対する知識は人一倍にあった。


「マジも、マジ……みたいです」


 タクローが目を開けると、不気味な笑みを浮かべたミーナがそこに居た。


「ええと、君、名前なんだっけ?」


 ミーナはスパッタの肩を叩く。

 スパッタはもう一度、自分のフルネームを口にした。


「スパッタ君、タクロー君が今言った素材はあるかい?」

「あるには、ありますが……、え? 素材鑑定ですか、今の」


 タクローは照れ笑いで、「そうだね」と答える。スパッタの表情が固まった。そして、「今から取ってきます」と無表情で部屋を出た。


「しかし、何なんですかね? 炭って?」

「おそらくってか、間違いない。正確には炭素だね。ニッケル、クロムが少々と鉄と炭素……こんなの、俺達の世界じゃ当たり前の素材だよ?」


 ミーナの言葉に、同じ世界に住む三人は首を傾げる。


「最近だと、包丁によく使われてるね。錆びにくいし、お鍋にも良いね」


 満面の笑みを見せる、ミーナだが三人は皆目見当も付かなかった。

 首を傾げる三人にをよそに、ミーナの中では邪な考えが浮かび上がる。そして「これなら、銃の改造もやり放題だな……」と小さく独り言を言って、ニヤリと笑った。

 その光景を見たトリスとアリーシャは、四人の反応が全く解らずお互いの顔を見合わせていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ