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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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広がる波紋

 帝国軍辺境監視部隊。

 帝国領の北部と東部、そして南部に特別に設けられた砦に彼等は居た。


 ルクセンドル大陸中央部にある『グレートウォール要塞』。こちらを前線基地として現在多くの正規兵がそこに詰めている。

 そのため、辺境監視部隊の砦は小規模であり中に控えている兵士達の数も少ない。

 彼等は『監視』が目的であり、小高い山の上を拠点としていた。


 南部のサウスン砦内にある一室で、タバコを吸いながら外の景色を眺めている男が一人。それは帝国軍辺境監視部隊、南部方面隊隊長スーウェル・フラナ・リードバル少佐。

 貴族の出である彼は前線に赴くのを嫌い、辺境監視という任務を希望したのは、出世には興味が無く、ただ軍属としての実績のみ欲しかったからである。

 スーウェルはタバコの煙を吸い込み、溜め息と共に大きく吐き出す。


「オーデヴァルを出してここ数日、全く連絡が来ないのは異常ではないか? 厄介者とはいえ五三特別小隊まで付けたんだ、音信不通になるのは考え難い……」


 じっと遥か西の方を見つめる。目線の先にある山々が、ミーティアラ領への視界を防いでいる。

 監視といっても、彼等は直接見てどうのというものではない。部隊内から数人を派遣し、内情を探らせるスパイ的活動が殆どであった。

 実際派遣したグレクセン・オーデヴァルと他二名には戦闘行為へ参加の指示は出していない。むしろ、戦闘行為を避けるよう指示を与えてある。

 戦闘行為は特別小隊に任せ、彼等三人には正確な情報の収集に当たらせた、はずであった。

 しかし実際監視部隊からの命令と、グレクセンが第五三特別小隊に伝えた内容は異なっていた。


 当初は監視部隊内で話し合って出した命令は、『ミーティアラ王国、アレク領のファストの町周辺と町内部の調査』であった。そして『不明瞭な点が多い場合は町中にて戦闘行為を行い、目撃された魔法現象の出処を探す』というものだった。

 だがグレクセンは後半の命令を違う内容で解釈してしまっていたのである。

 内容が間違って伝わっているなど、スーウェルは思いもしていない。

 実際グレクセンは、オルス率いる第五三特別小隊に戦闘行為を行わせ全滅させた。挙げ句には部下を死なせ、自身も拘束されることになったのだ。

 彼がちゃんと命令内容を把握していれば、調査に時間を割き精査してからオルス達を使うか否かとなったはずであったが、そうはならなかったのが現状である。


 何も知らないスーウェルは、数日連絡が来ないことに苛立ちを覚え始めていた。アイン村に部下を数名を派遣したが、オルス達は戻っていないという話を聞いて、彼等が何らかの形でミーティアラの者達の返り討ちに遭ったのではと予想はつく。

 しかし、戦闘行為に参加しないようある意味厳命されているグレクセンが戻らないことは、想像していなかったのだ。

 オルスの部下が持ち込んだ話の内容は、正に荒唐無稽だった。

 だが部下が戻らぬ以上、スーウェル自身で話を止めておくのは不味いと判断した。それ故に状況を説明する文章を認め、部下をアレクシア帝国の帝都にある帝国軍本部に送り出したのだった。


 それから数日後、帝国軍本部はスーウェルからもたらせられた情報で分裂することになる。

 再度監視部隊の派遣を求める声と、現在の武力を更に高めて今後に備えるといった内容の話だった。軍の上層部は知っている。

 ミーティアラが魔法を得意とする国であると。

 それ故に、事態を重く考えたのだ。しかし、それはあくまでも上層部だけであり、下の者達はスーウェル達同様に「バカバカしい」と鼻で笑っていた。

 だが、これをきっかけに軍は王に更なる軍備強化の嘆願をし、それが受理されることとなった。


 アレク領トルツェの町にある領主の館では、事の発端となった人物の説明が行われていた。

 彼は思いつきもしなかったのだ、ここまでの大事になるとは。


 説明を受けた領主ライクラ・フォルン・アレクと、後からやって来た息子アルフと、二人で困った顔を見せる。


「彼等は偵察を兼ねての進行だったらしいですから、今回はこの程度で済んだということですかね」

「ふむ、しかし偵察に出した者が帰らぬとなるとどう出るかだな」


 二人はタクローを責めることはしなかった。全ては偶然が重なっただけだからだ。

 偶然戦争中にやって来て、偶然モンスターに襲われて、偶然魔法が強大に発動してしまった。そして、それを敵である帝国軍に見つかってしまった。

 それだけのことである。

 だが今後はそうは行かないだろう、戻らぬ仲間を捜すため帝国は兵を出すかも知れない。そう考えたライクラとその息子アルフは、自分達の兵力でどう対応するかと話し合いを始める。


 タクロー達は、ただ呆然とその話を聞いていた。

 やがて時が経ち、夕食の時刻になってもこの議論は続く。それこそ正に、食事の席でもだった。

 タクロー達が各々部屋に戻ると、彼等もまた今後のことについて会議を始める。

 シンジの提案は、『賢者探し』一択であった。だがどうするかは決まっていない。会議に参加するアリーシャの提案は、ミーティアラ王都へ行くことだった。

 ミーティアラ王都には、沢山のヒトがいて沢山の情報が集まっているという。

 そこでタクロー達は王都へ行くことを決断する。

 ただ、トリスの一言「王都へは最短でも十日は掛かる」の言葉で少し挫けそうになった。

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