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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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モンスター集団戦

 アルフ・フォルン・アレクは自分の兵士達に隊列を組むように命じる。兵士達はその指示に従い、馬車などの身動きが取りづらいモノなどを守るように立つ。


 遥か先に見えていた筈のモンスター達が、いつの間にかもう近くまで来ていた。


 兵士達を掻き分け、シンジとミーナとトリスが前に出る。

 シンジは弓を、ミーナは魔導銃を、トリスは馬車に忍ばせていたハルバードを持っていた。


「シンジくん、モンスターなら気兼ねなく戦えるね」

「ミーナさん、油断は禁物ですよ」

「へっ、おかしな武器相手じゃないんだ、俺の腕前見せてやるぜ」


 三人共意気揚々と武器を構え、ゴブリンの集団とそれに伴うオークにオーガ達を待ち構えた。


 彼等の後方から、風の轟音が響く。

 足元に影が見え、上を見ると、太陽の光で輝く銀色が眩しかった。

 ミスティック・アーマー・オリジンを装備したタクローが一人、風の魔法を自身に掛けて大きくジャンプする。続いて水平方向に動く推進力として、もう一度風魔法を使った。

 後にエアロダッシュと名付けられたその動きを見せたタクローは、モンスターの集団に一直線に突っ込んでいった。

 その動きの意味を理解できたのは、ずっと共に戦ってきたメンバーのみ。

 シンジは走り出す。


「あの馬鹿、またいつものパターンかよ!?」


 ミーナもシンジに続く。


「なんか、えらく懐かしいねぇ……」


 後ろから、アルフの兵士達を掻き分けヒカルがシンジとミーナの直ぐ後ろに付ける。


「四人パーティーでどうにかなる数じゃないと思いますけど……」


 それぞれがタクローに対して悪態をつく。しかし何故か笑顔だった。

 シンジが弓を射ようとした時、横で射撃音が響く。先頭にいたゴブリンに命中した。


「あ、ミーナさんずっこい」

「当たるもんだねぇ……」


 特に狙い澄ました訳でもなかったが、ミーナの撃った銃の弾は目標に命中したのだった。


 タクローは銃の音を聞いて、後方を見る。


「最初のヘイトは、ミーナさん? ハハハ、銃持ってはしゃいでますなぁ」


 独り言を呟くと、笑いながらモンスターの大群に向かって再度エアロダッシュを行った。

 タクローのダッシュ軌道上にオーガが居た。

 ほんの数メートルの所で、垂直に風魔法によるジャンプをする。高く上がりきると、地上に自由落下を開始する。落下する際に、右の拳を構える。


「フレイム、追加バースト!」


 そして、丁度下で待ち構えていたオーガに向けて拳を叩きつける。

 拳が当たる直前に魔法陣が大きく展開され、オーガとその周りに居たゴブリンや他のオーガとトロールを巻き込む炎が広がり、弾ける。

 モンスター軍団はその数を一気に減らされた。

 しかしタクローもまた、自身のMPを一気に減らしてしまう。だが焦りはしない。

 今は胸に取り付けた『精霊石』がある。それが失われたタクローのMPを徐々に回復させている。

 また、タクローが意識を集中させれば回復を早める『チャージ』をする事も可能であった。しかしコレを行うと、その間が無防備になってしまうのが難点だ。

 その事を計算に入れながら、タクローは戦闘を始める。


 メインとなる戦法は『ファイヤーボール・ショット』。右手から素早い炎弾を撃ち出す。時折左手の『エアロスラッシュ』で近づく敵を切り裂く。

 タクローだけに敵が集まらないように、シンジとミーナが中・遠距離から援護。

 二人を狙うために向かって来る集団を、トリスとアルフと兵達が各個撃破していく。

 ヒカルとアリーシャは、傷を負った者達を癒やすために右に左に走り回る。

 いつしかタクローを中心とした布陣が出来上がる。


 タクローが前衛となり、ミーナとシンジが後衛。

 トリスとアルフの兵達半分は左翼、アルフと自身の兵達半分で右翼。

 アリーシャはトリス側を援護し、ヒカルはアルフ側の援護をする。

 戦闘をする皆が全て、余裕の表情であった。

 時折兵士達の一人が、「モンスターの集団戦闘ってこんなに楽だったか?」と疑問の声を上げる。

 彼等はそれこそ、この世界においては戦闘のプロに近い。しかしモンスターの集団との戦闘においては、苦労をさせられて来た。

 連携など皆無なモンスター達。それぞれが好き勝手に暴れまわり、それこそ一つの所に集めて倒すなど難しい話だった。

 おまけにここには、自分達より大きなオーガとトロールが居る。苦戦は免れない、はずだった。

 しかし襲いかかるオーガにトリスの豪快な一撃が入ると、すかさず横から発砲音と共にオーガに致命的ダメージを与える。

 アルフの華麗な剣さばきと魔法でトロールを翻弄すると、矢がそれを確実に仕留めに来る。兵士達は雑兵となるゴブリンを狩っていけば良い。

 モンスター達はほぼ、中央で立ち回る銀の全身鎧に群がっていた。そして全身鎧はそんなモンスター達を相手に舞うように魔法という『武器』で戦っていた。


 モンスター達が数を減らし、あと少しとなったところでタクローは自身に異変を感じた。鎧の動きが重く鈍く感じられはじめる。

 原因を探るようにHUDを見回すと、関節部に異常を示す表示がある。右肘の関節部分からは、火花のようなモノが時折見られる。攻撃を受けたのだろうかと思ったが、そんな感覚を感じた覚えは無い。

 左膝もまた同じような症状が見られる。

 そこでタクローは脳をフル回転させ、原因の究明に努める。もちろん戦闘をしながらだ。

 これまでの情報を洗い出し、精査する。するとある一つの仮定、いや、これは確定事項と考えて良い事象が思い浮かんだ。


『魔導鎧』、これは一体何時作られたものだろうか?


 答えは出ている、賢者と呼ばれる存在が居た時代だ。

 そして武器屋に預けられたのはその頃、そう考えるとこの鎧は百年以上放置されていたことになる。鎧とは言うが、ミーナが発見した機械的な部分。関節のアクチュエータや各種可動ギミックが可動し始めたのは、タクローがこれを装備してからとなる。


 機械が百年放置されて、まともに動くだろうか?


 答えは、否だとタクローは考える。

 オイルは固まり、場合によっては錆ついてしまう。現状鎧に錆は見られないものの、内部は解らない。これまで普通に動いていたのが奇跡に近いと考えた。


「マジかぁ……、関節って一番酷使する部分じゃん……」


 タクローは手っ取り早く戦闘を終わらせる行動にシフトする。

 最初に中位魔法ミドルスペルを派手に使用して以降は下位魔法ロースペルで敵を各個撃破していた。これは何もMPを温存するだけのためではない。

 中位魔法は威力が高い分、周囲への影響も大きい。下位魔法は敵単体に対しては確実にダメージを刻める。そして何よりも仲間による連携攻撃があったからこそ、中位魔法を連発するほどでも無かったのである。

 しかし事態は刻一刻と悪化の一途を辿る。

 タクローは現在のMPの量を計算し、今の戦闘状況で最も最適な魔法を選択する。


「グレイブニードル、追加マルチ!」


 タクローが叫ぶと、地面に多数の魔法陣が展開され残った全てのモンスター達に土の槍が突き刺さる。


 戦闘は終わった。

 一時間も経たずに。

 兵士達だけではない、トリスもアリーシャもアルフもこの世界の者達全てが呆気に取られていた。

 だがタクローの仲間達は違った。ごく当たり前のようにタクローの元に歩く。


「タクロー、最後に大技やるなら合図しよろな」

「手柄独り占めですかぁ? タクローくん相変わらず容赦ないなぁ」

「タクローさん、どうしたの? なんか焦った感でてたよ」


 タクローは「悪い悪い」と右手を上げようとする。バチバチと火花を出して、上げようとした腕が途中で動かなくなる。


「ちょっと、どうしたの!?」


 三人はタクローに駆け寄ると、兜の中から乾いた笑い声が聞こえた。


「金属疲労ってか、多分メンテ不足? なんにしても、一回オーバーホールしないとヤバいかも……」


 そう言って、タクローは兜を脱いだ。

 タクローが最初に放った炎魔法で、トロールが持っていた木の棍棒に火がくすぶっている。そこにタバコを近づけて、火を点けて一気に吸い込む。

 大量の煙を吐いて、タクローは三人に事情を説明する。


「なるほど、メンテ不足か……。ってか、よく考えれば放置された機械的機構がよく動いたもんだと感心するよ、実際」


 機械関係に詳しいミーナは、引きつった笑顔を見せる。


「取り敢えず、皆と合流しよう。タクロー、ちゃんと動けるか?」

「ああ、まぁ何とかな。激しい動きは難しくなってきてるが」


 不調を訴えるかのような音を出しながら、タクローの動きに合わせて鎧が動く。しかしどこか身重な様子を見せていた。


 アルフ達と合流し、ミーナはアルフに事情を説明する。

 アルフは最初に感謝をタクローに述べた後、自身の住む町にある魔導機械の工房に鎧を持ち込むよう提案する。

 それから戦闘の後片付けをした後、ようやくトルツェの町へ再度歩みを進めたのだった。

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