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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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旅立ちの朝に

 早朝、鳥の声で目が覚めたタクローは窓を開ける。


 朝日がまだ東の空に昇りきらず、ファストの町の城壁の上チョコンと顔を出していた。少し冷たい風が眠気を払っていく気がした。

 タクローは昨晩のことを思い出していた。


 トリスが棺桶を持ち込んだ時に、丁度シンジ達がそれぞれのマジックアクティベーターを購入して戻ってきた。ついでにと、タクローに投げ渡したのはこの世界にも存在していた『タバコ』である。

 とはいえ、基本は薬草を乾燥させた物らしく体に対する害は少ないらしい。だが医療技術がないこの世界、実際のところは定かでないのだろうと、愛煙家であるタクローは思う。

 しかし、ここでもタクローのあの問題がまた浮上した。タバコに火を付けるのには、マジックアクティベーターが必要であるということだ。

 全身鎧では基本的に攻撃魔法のみしか使用できない。生活魔法と呼ばれるモノは設定されていないのだ。そのため、仲間の助けがあって初めてタバコを吸うことができる。


 ようやく場が落ち着くと、ミーナは床に帝国兵士の武器を置いた。

 ライフル銃に似た物が三丁、グレネードのような物が二つ。ミーナはその前にあぐらをかいて、品物を睨みつける。


「これが、帝国兵の使っていた銃だけど……。全くもって変な作りだねぇ」


 一つの銃を手にとって、部品一つ一つをバラし始める。


「ミーナさん、それどうしたの?」


 帝国兵の武器はアルフの兵士達が回収していた。それを知っていたタクローは疑問に思う。


「譲ってもらったんだよ。道の片隅に並べてあって、気になるって言ったら何丁か持っていって良いって。ついでに未使用のグレネード二個も拝借してきた」

「拝借って……」


 タクローも銃を一丁手に取る。


「何だこれ?」


 見た目は古いライフル銃のような形をしている。しかしマガジンは上に付いてるため、照準を合わせることができない。銃身の横にはレバーが付いていて、そこを引くことで給弾される仕組みになっていた。

 発射の反動で自動給弾されることはなく、一発一発手動で給弾するその仕組はボルトアクションライフルに近い。しかし、ミーナが最も注目したのは銃そのものではなかった。


「弾丸が鉄球、大きめのパチンコ玉って……」


 弾丸は球体であった。タクロー達の世界で弾丸というと、楕円形のような形状や三角錐に似た物となっていた。


「まるでタネガシマ……もとい、火縄銃とかだね」


 完全にバラバラにした銃をミーナとタクローは眺める。

 二人で構造を話し合っているのを、他のメンバーはただただ眺めていた。


「魔石による爆発を圧縮させて、弾を撃ち出すのか……。エアコッキングかガスガンかよ……」


 ミーナは自分の言った言葉にタクローと二人で苦笑いをする。

 グレネードの方は、怖くて手が出せなかった。

 そんなことをやり取りして、いつしか夕食の時間になった。



 夕食時にシンジから提案が出される。それはアルフの屋敷に行く件であった。

 屋敷があるのは隣町となる場所である。だが距離からすれば、日本でいうところの隣県ともいえる場所だ。そこでこのファストの町から離れ、アルフの屋敷のあるトルツェの町を次の拠点にしようとの話だった。

 宿代となる資金は、レアル金貨であれば潤沢に持っている四人。そのため資金繰りを気にする心配は無いとの判断であった。


「とりあえず、この町で調べることは大体調べたと思う」


 シンジの言葉に、図書館での調べ物をサボり気味であったタクローとミーナが顔を見合わせ、「シンジがそう思うなら」と二人が口を揃えた。

 かくして、ファストの町を後にすることを決めた四人は夕食を済ませた後に早い就寝を取ることになったのだった。



 朝の日差しを浴びるタクローは、ふと思い立って鎧を身にまとう。


 窓から飛び出し、町の北を目指して魔法を使ってダッシュする。

 北の城壁まで来ると、ダッシュに使用した魔法『エアロブラスト』をジャンプの推進力として使った。突風を身にまとい、一気に城壁頂上にたどり着くと、ファストの町の北に広がる大地を見つめる。

 林や草原、大地がむき出しになっている部分もある。

 よく見ると、小さくうごめく存在がある。それはモンスターだと、判別できた。スライム種だろうか、ぶよぶよと半透明に蠢く存在。牛のような存在は、ランドバイソンというヤツだろうか。日が昇るにつれて、次第に見えているモンスターが増えていく気がした。

 後ろに目をやると、ファストの町が見える。

 ゲーム時代は『始まりの町』と言われていたその場所は、奇しくもタクロー達がこの世界に来て、正しく始まりの町になった。


「全く、一体全体何がどうなっているんだか……」


 タクロー達は自分達が置かれている状況に、未だに馴染めてはいない。

 四人はそれぞれ同じことを言うだろう。「自分達の世界に帰りたい」、と。

 昇る日の光を浴びて、銀の全身鎧が輝く。

 HUD越しに見る町の景色は、どこか懐かしくも映っていた。


 たそがれるタクローに、一人の人物が近づく。足元に見えた影に気がついたタクローは、その人物に顔を向けた。

 アリーシャ・ドロセル、何かとタクロー達と行動を共にしていた彼女。そして、これから行くトルツェにも共に行くことになっていた。


「どうした、こんな朝っぱらから?」


 タクローの質問に、顔をややうつむき加減で「町を見ていた」と答えた。

「そうかい」と返すと、共に町を眺めた。

 暫くの間があって、アリーシャはタクローの名を呼ぶ。


「タクローさん、お願いがあります」

「ん、なに?」

「私とトリスを、お供に加えさせてもらえませんか?」


 急な申し出に、答えに困った。タクローの頭の中では、「なぜ?」「なんで?」と浮かぶが、言葉にはならない。

 それに一人で判断して良い話でもないと思った。


「シンジ達が良いって言うなら、俺は構わないよ」


 そう告げると、アリーシャはタクローに寄り添う形を取る。


「もし、こんな私でも良いのなら……その……」


 顔を赤くして、アリーシャはモジモジと体をくねらせる。これまで、ほとんど無表情に近かったアリーシャ。その急な変化に、流石にタクローも違和感を覚える。


「なんかよく解んないけど、俺一人で動く訳じゃない。シンジが居て、ミーナさんが居て、ヒカルが居る。四人で考え、判断するから……」


 タクローは空を仰ぐ。

 何故、アリーシャが自分達を供にしてほしいなどと言ったのかはさほど気にならない。一番の目的が脳裏に浮かんだからだ。


(そう、四人で帰るんだ……。俺達の世界に)


 タクローは、本来の目的をもう一度改めて胸に刻みつけた。



 アリーシャへの返事は保留にしたまま、タクローは宿に戻ることにする。アリーシャも戻ると言うので、彼女を抱きかかえて城壁から飛び降りる。

 恐怖の声を上げるかと思ったが、アリーシャはにこやかにタクローの体にしがみついていた。

 気分を良くしたタクローは、更にダッシュ移動で宿に戻ったのだった。



 朝日が空に完全に昇り町が目覚め、人々が起き出す。

 宿に戻ったタクローを仲間達が出迎える。

 朝食を取り終える頃、アルフ・フォルン・アレクが準備した馬車が虎屋の前にやって来たのだった。

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