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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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旅の準備

 帝国兵士襲撃から一夜明け、町の人々は朝から後片付けに追われていた。


 グレネードをばら撒かれたことにより、人的被害もさることながら、建物の被害も多かったからである。

 一方タクロー達はというと、昨晩の宴会で町の人々に酒を勧められすぎたために二日酔いとなっていた。

 朝食はキャンセルして、それぞれ部屋でグッタリとしていた。


 ようやく回復したのは昼頃で、四人は軽めの昼食を取る。

 そこにアルフが訪ねて来る。昨晩話した、屋敷に招待するという話をするためだ。

 軽い挨拶を交わし、顔色の悪い四人を見て苦笑いを見せ、本題へと移った。

 アルフの話は、彼の屋敷に行くのは一日掛かりになるといったところから始まる。明日の朝、馬車を用意するのでそちらに乗って移動となるといった内容だった。

 タクロー達に異存は無く、二つ返事で了承する。

 旅の支度を整えるよう告げて、アルフは虎屋を後にした。


「旅の支度、か……」


 タクローはアイテムボックスを探る。最終決戦に合わせて、回復薬等は充実している。これといって、何が必要かも浮かばなかった。


「一日掛かりとなると、途中で昼食とかになるわけだから……」


 シンジはテイガの元に行き、弁当を頼めないか聞くと快く引き受けてくれることになった。

 この世界で購入した衣装関係もアイテムボックス内に収納されており、大荷物を抱える必要はなかった。

 昼食と軽い食休みを終えると、四人は別々に行動することにした。


 タクローは部屋に戻り、ミーナとシンジ、ヒカルはマジックアクティベーター購入のために道具屋に向かう。

 部屋に戻ったタクローは、銀色の全身鎧をアイテムボックスに入れようと試みる。全身が組み上がった状態で何とか入れようとしたが、アイテムボックスに展開されている魔法陣に拒絶されたようになり収納ができない。

 仕方がないので、部品単品にして入れてみようとしたが何故か駄目であった。

 床に座り込んでアイテムボックスと鎧を交互に睨みつける。すると、そこへトリスとアリーシャのコンビがやって来た。


「よぅ、タクローさん。何やってんだ?」

「鎧がバラバラ……」


 タクローは事情を説明すると、トリスとアリーシャはタクローのアイテムボックスの方に興味を示す。


「こんな小箱に色んなアイテムが収納できるってか? すげーな……」


 ひょいと、タクローのアイテムボックスを手に取ったトリスがまじまじと観察する。

 開くと魔法陣が展開されたのを見て、驚いていた。驚いたのは、トリスだけではない。アリーシャもまた、目を丸くしたが驚いた所は別である。


「こんな術式、見たこと無い……」


 トリス曰く、アリーシャは魔法の勉強をしているために人より詳しいとのことらしい。それゆえに、そんなアリーシャが知らないということはよっぽどのことだという話だった。


「アイテムボックスが無いなら、皆はどうやって荷物を運ぶの?」


 タクローの質問に対して、トリスとアリーシャは顔を見合わせる。


「どうやってって……、そりゃカバンとかリュックサックで運ぶだろう、普通」


 もっともな答えだった。タクローも内心では、「そりゃそうだ」と思った。

「成る程」と返事をして納得してみせると、トリスは困惑の表情を浮かべた。


「とりあえず、鎧がそいつに入らないっていうなら、何か他の入れ物に入れて持ち運ばなきゃならねぇな」


 トリスは「よっしゃ、任せとけ」と言って部屋を後にした。

 一人残されたアリーシャは、アイテムボックスを観察している。

 魔法陣に手を入れるとの説明をタクローから受けて、試しに手を入れようとするが、何故かそれは叶わなかった。持ち主にしか入れられない仕様にでもなっているのだろうかと、タクローは考えた。

 そこで、何個かのアイテムを取り出して見せるとアリーシャは更に驚いたのだった。


「ところで、どうしたの?」


 アリーシャ達がこの部屋に来た理由を聞くと、彼女達も明日共にアルフの屋敷に行くとの話をされる。

 自警団の方は良いのかと尋ねると、自分達は元々自警団には仮で所属しているだけなので、アルフの私兵の数人がこちらに残ることになったと告げられる。


「そういう訳だから、道中よろしくお願いします」


 ニコリと笑ってみせたアリーシャに、タクローはこれまであまり彼女の笑顔を見たことがなかったことに気がついた。だが、それに対して特に気にすることもなく「こちらこそ、よろしく」と返事をした。


 それから二人は鎧の話になる。

 昨日、トリスの言葉でヒカルと共に探した製作者の銘。見つかったのは、一つの印のようなものだった。紙に書き記したそれは、いつの間にかタクローの部屋にある机の上に置かれていた。

 アリーシャ自身は魔法に関する知識は豊富なようだが、装備関係類に関しては全くの無知である。

 それは自身でもよく解っているらしく、「トリスが戻ったら聞いてみましょう」と言ってこの話を終える。そしてアリーシャは、鎧自体の方に話題を変える。

 自分はこれを装備できるのか、ということだった。何故かタクローの体に合うよう作られていたソレは、アリーシャには合わない。

 試しにと、胸部パーツと兜を装備してみたが全くといっていいほど合っていなかった。

 残念そうな表情で、「これさえあれば……」とつぶやきながら鎧を外した。


 次にアリーシャが気になったのは、鎧が使用可能な魔法の数だった。

 昨今の魔法事情では、結構な数の魔法が生み出されているらしい。しかし逆に使用されなくなったという古い魔法も多数存在する。

 タクローは、脳裏に焼き付いている鎧の仕様書のような記憶をたどり、使える魔法はゲーム時代からよく知る魔法でもかなり数が限定されていることを、今改めて理解することになった。

 使用可能な魔法は、火・風・水・土の四属性魔法がそれぞれ八つ。四つは、低位魔法ロースペルで、残り半分は中位魔法ミドルスペルであった。

 それらを説明して聞かせると、アリーシャは難しい顔で考え込んだ。


「多分ソレは、特性付与魔法のことも考えて少なめに設定されているのかも……」


 アリーシャは鎧の胸部の内部装甲にある精霊石と、その周りの魔石を眺めて考え込む。


 しばらくすると、やや大きめな足音と共にトリスが部屋に戻ってきた。肩には大きな長方形の黒い木箱のような物を担いでいる。


「きばこ?」


 首をかしげるタクローに、ニヤリと笑い返すトリス。


「棺桶だ」


 唖然とした表情のタクローの顔を見て、大笑いをする。


「コイツは何気に頑丈な作りでな、鎧を入れて運ぶには丁度いいと思ったんだよ」


 どう突っ込んでいいかと頭を悩ませていると、そこにシンジ達が帰ってきた。

 トリスの担いでいる物を見るや否や、それぞれが「なんだそれ?」や「何に使うの?」といった疑問をぶつける。

 タクローが事情を話すと、呆れ顔で納得する形となった。

 トリスの「道中は俺が持ってやる」の言葉でタクローも仕方なく納得することにした。


 かくして彼等の旅の準備が終わり、翌日に備えて早めの就寝となるのだった。

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