長かった一日
ミーティアラ王国南部ファストの町より北にある町、トルツェ。
そこにアレク領、領主の屋敷がある。
屋敷の主である貴族、ライクラ・フォルン・アレクの元に「帝国に動きあり」との情報がもたらされたのは、二日前。
息子であるアルフ・フォルン・アレクの指示で造られた監視塔からの知らせであった。
アイン村に帝国が砦を造ったとの情報を得て、アルフが監視塔を造るよう民に命じたのだ。
帝国の動き次第では、現在起きている戦争の火種がこのアレク領にもやって来ることを懸念していた。そのための監視塔である。
ライクラは直ぐに、アルフにそのことを伝えると兵を貸し与えた。
町の男達が半分、自分達の私兵として雇い入れている者達が半分で構成されている。
彼等を引き連れてアルフが出立したのが一日前のことであった。
アルフは帝国兵達に悟られぬよう、回り込むように移動した。
それゆえにグレクセン・オーデヴァルの偵察部隊と遭遇することになったのだ。だが、結果としてファストの町に帝国兵士達による襲撃を許してしまうことになった。
ファストの町には人と戦うための戦力は一切無い。主にモンスター討伐をする自警団が居るくらいである。
自警団で対処不可能な場合、狼煙を上げるなどしてトルツェに居る領主に救援を要請するようになっていた。
ファストの町に兵士達が進行した知らせを受けたアルフは内心穏やかではなかったが、三名からなる帝国兵士達を見つけ、彼等が見つめる視線の先を知った時、少し安堵した。とはいえ、自分が先に帝国兵士達の前に出ていれば町に被害は無かったのかも知れないと感じていた。
町に着くと直ぐに、兵士達を復興の手伝いに充てる。そして自らも、その輪に加わった。
現場で指揮を取る形になっていたテイガに声を掛け、戦闘の内容を聞いて、戦った全身鎧の人物に会いたいと思ったが、先に町の人を助けることを優先させたのだ。
怪我人が多く居たので回復のために兵を貸すと、彼等はなかなか戻ってこない。
事情を聞けば、回復魔法が効かないとの話であった。
「どうにかしないと」と、奔走していたが結果は言わずもがな、良案が見つからなかったのである。
そんなところに、また全身鎧が助けたという知らせで、彼は言い得ぬ感謝の気持ちでいっぱいであった。
怪我人が収容されている家へと向かうと、丁度テイガと出会う。そして共に向かうさなか、全身鎧を着た人物についてあれこれ質問する。
彼等がやや得体の知れない四人組であること。冒険者と名乗り、レアル金貨を所持していることなど少々雲を掴むような話であった。
家に入り人々から称賛を受けるその人物を見た時、テイガが『英雄』と言った意味が少し解った気がした。
群がる人を掻き分け、アルフはタクローの元に向かう。
アルフの存在に気がついた町の人達はその道を開けた。
「やぁ、初めまして英雄さん」
軽い挨拶を受けて、タクローが首をかしげる。
少しの間が空いて「どうも」という返事が返ってきた。
アルフはニコリと笑うと、自己紹介を行う。
「私はアレク領領主が息子、アルフ・フォルン・アレクです」
丁寧に挨拶をしたつもりだ。
この町を救い、あまつさえ怪我人達も救った人物に対して敬意を持って。挨拶と自己紹介を受けて、タクローはヘルムを外した。そして、自身の紹介を行った。
その後、これらの状況についてだったり、タクローがして来たことへの感謝の言葉をアルフから受ける。
タクローの反応は、今まで彼が見てきたどの人とも違い、謙虚という印象であった。また、謝礼をということに対しても首をかしげたり、首を横に振るなどする。
タクローは言う、「当たり前のことをしただけだ」と。
またその場に居たタクローの仲間達も、彼と同じ反応を示した。
そこで更に話をしようとした時、テイガに制止される。
「つもる話は、ウチで飯でも食いながらしな」
(改行不要)
その言葉に「賛成です」と答え、舞台を虎屋へと移した。
ファストの町の長い一日がようやく終わろうとしていた。
テイガの店、虎屋の一階の食事場では大勢による酒盛りが行われた。
タクローと仲間達四人を中心に、皆が酒を酌み交わす。テイガ自慢の手料理と、店の酒をありったけといった感じであった。もちろん、そこにはアルフと彼の連れてきた兵士達の中で私兵以外の者達の姿もある。しかし、ソレ以外は町の見回りや監視に当たらせていた。
生き残ったことへの喜び、また、失われた者達への悲しみ。それぞれの思いを胸に酒盛りは深夜まで続いた。
宴の際に、アルフはタクロー達を自分の屋敷へ招待する。
シンジの進言もあり、四人はその言葉に応じることにした。




