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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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戦う全身鎧

 風魔法を自分自身に掛けたタクローは、弾丸の如く壁の穴から飛び出す。

 そして、着地点となる場所に居た兵士を足蹴にした。風魔法の力とタクローの鎧の力と重量も相まって、帝国の兵士は驚くほど吹っ飛んだ。


「おお、まじかよ……」


 自分の力にびっくりしたが、とにかくこの武器屋から敵の注意を自分に向けねばならない。仲間を一瞥し、無事を確認したタクローはゆっくり外へ歩き出す。


 通りの中央へと来た時、帝国の兵士達がタクローを取り囲み、銃を向ける。

 何一つ武器を持たずに出てきたタクローに対し、帝国兵士はやや小馬鹿にした様子だった。

「鎧を着ただけで何ができる」、「守りだけ固めて何がしたい」など、様々な言葉がタクローの耳に入る。だが、タクローはその反応を鼻で笑う。

 そして、右の掌を一人の兵士に向けた。


「選択、ファイヤーボール。追加術式、ショット」


 HUDにアイコンが表示される。

 差し出した右の掌に小さな魔法陣が展開され、さらにそれを囲む形でもう一つ魔法陣の輪っかが上書きされ、一つになる。

 狙われた帝国兵士は、銃を構えて発砲。それに合わせて、仲間の兵士達も順次発砲する。

 しかし、タクローの鎧に傷をつけることはできない。何故なら、防御魔法が常時展開されているからだ。別の兵士が、マジックアクティベーターで魔法攻撃を仕掛ける。

 放ったのは、アイスニードル。鋭利なつらら状のモノがタクローに勢い良く飛来するが、それもダメージにならない。


 タクローは魔法術式を展開させていたが、撃たない。撃つことを躊躇っていたのだ。


 攻撃魔法は間違えば……いや、間違えずとも人を殺してしまう。

 タクローは人殺しなどしたことも、ましてやこのように多人数と戦う状況なったこともない。人殺しをしてしまう、それで良いのだろうかと自問自答を繰り返すが、答えは出ない。

 しかし、気持ちの奥底では既に決まっていた。仲間を傷つけた怒り、守れなかった者達、そして、今は守れる力を手に入れたという事実。


「やらずに後悔するより、やって後悔か……」


 自分がよく友人達に口癖のように言っている言葉をつぶやく。そして決意を固めて、改めて自分の敵となる者達を見据えた。


 帝国兵士達は、魔法攻撃と射撃で波状攻撃を仕掛けている。そこへ、展開させていた術式を起動する。弾丸の如き速さで、野球ボール大の火の玉が帝国兵士一人に命中。衝撃で吹き飛んだ。


「今の術式を、固定。さらにラピッドファイアを追加。ダブルアーム!」


 両手の平から、次々とファイヤーボールが撃ち出されていく。一人、一人と敵が吹き飛ぶ。

 与えるダメージは大きかった。皮膚がえぐれ、深い所までやけどが及ぶ。

 最初に攻撃を受けた兵士は、半ベソをかきながら必死に回復魔法を連続使用する。

 一度の回復魔法では、ダメージが完全に回復できない。他に倒れた者達も同様だった。

 中には当たりどころが悪く、既に絶命している者もいた。


 危険を察知した一人の兵士が笛を鳴らす。町に散らばりつつある味方がそれに反応する。

 それは、集合の合図。


 帝国兵士が次々と、笛の音の響いた所に集まりだす。そして、目にした光景に驚きを隠せない。味方がバタバタと倒れる中心に居るのは、全身鎧を着て魔法を行使する存在。

 銃によるダメージは皆無。

 魔法によるダメージも受けているのか解らない。


 これまでの対人戦は、銃があれば楽に戦えていた。何故なら、全身鎧は動きにくいためと廃れた過去の防具。

 現在では、軽鎧に魔法効果を付与された物が一般的とされていた。

 帝国兵士が着ている軍服にも、ダメージ耐性やら魔法耐性などの魔法効果が付いている。更に、防御魔法を上掛けすれば、かなりの、それこそ全身鎧に匹敵する防御効果をもたらす。

 しかし、敵となる全身鎧は違う。

 いともたやすく魔法防御を砕き、あまつさえ貫通させてしまう。これは、魔法を行使する力が桁違いであること示していた。


 銃が支給されてまだあまり時は経っていないものの、その戦闘力に溺れた兵士達はかつてのように多人数での連携を重視した戦いをしなくなった。三、四人一組での戦闘が主体となっていく。

 おまけに、現在タクローと対峙してる者達は正規兵ではないためにまともな訓練など受けていない。そのため、戦い方はバラバラであり、後から駆けつけた兵士達も攻撃に参加するものの、タクローに対して有効打を与えられずにいた。


 タクローは動き回りながら、帝国兵士達に対してファイヤーボールを当てていく。途中から参戦した帝国兵士と、元々対峙していた者達と合わせて合計三十一名がたった一人に翻弄される形になっている。

 そして、その中で既に戦闘不能者が十数名を超えようとしていた。

 

 少し離れた場所から、状況を窺う者達が居た。オルスとその昔なじみの部下八人。


「どう思う?」とオルスの問いかけに、昔から頭良さに評判のある一人の部下が答える。


「アレが、この国の最新兵器と見て間違いなですな。ありゃ、着るマジックアクティベーターだと言って良いと思いますぜ」


 それから、部下は淡々と説明しだす。

 魔法を使って戦う様は正にミーティアラ王国の特徴的な戦い方だ。ミーティアラ王国のマジックアクティベーターは、アレクシア帝国と比べて優秀なのは昔からの知られた話だ。

 一方のアレクシア帝国は、魔導機械や現在彼等が所持している魔法を利用した武器などのを用いることでミーティアラ王国に対抗する形になっていた。


「あれは、戦闘に特化した物、しかも最上位の精霊石自体を使っていると見て、間違いないですな。時間を掛けて戦えば、こちらが不利だ」


 敵となる全身鎧を観察しながら、オルスの部下はソレを分析している。しかし、彼以外の仲間と、オルスに取ってみてはチンプンカンプンといった様子で生返事を繰り返すばかりだった。


「で、どうする?」

「ちょうど後ろから、家々の路地伝いに後ろに回り込めます。二手に分かれて、後方から強襲を掛けやしょう。あの全身鎧、動きながら町の入口の方に俺達を誘導してやがるみたいだし、町の方から行ってこのグレネードってヤツを一斉にお見舞いしてやりましょう」


 オルス達は了解と頷くと、四人ずつに分かれて行動開始した。

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