禁忌の魔法
一式トランスポーターへ戻ったタクロー達を、心配したように仲間達が待っていた。
何処へ行っていたのかと聞かれ、簡単に説明すると、「行くなら、一声かけて」とタクローはアリーシャに怒られてしまった。
タクローとヒカルは、アリーシャと他の仲間達に謝罪した後、戦利品である手甲を一式トランスポーター内休憩室の机の上に置く。
「これは?」
アリーシャが手にとって観察する。
「賢者様からのプレゼントっぽいぞ……」
タクローの言葉に、トリスとミーナがアリーシャが持つものに興味を示した。
アリーシャがくまなく手甲を観察していると、急に動きが固まる。
「こ、これは……!?」
「ん? どうした?」
トリスがアリーシャに顔を近づける。
真っ青な顔になり、アリーシャがタクローとヒカルに顔を向けた。
「これは捨てたほうが良い! これは……、これには、禁呪が使われているわ!」
普段は無口で大人しいアリーシャが、この時初めて大きな声を上げる。それに、全員が驚いた顔を見せた。
「ちょっ、ちょっと待って。アリーシャ、捨てたほうがって……、てか、禁呪って何!?」
ヒカルが半ば強引にアリーシャから手甲を取ると、全体を観察する。
「見た目は完全にガントレット……。禁呪?」
それは、手のひらとなる部分にあった。
魔法術式が刻み込まれた小さめの部品が組み込まれている。
「アリーシャ、禁呪ってこの部品に刻印されているやつ?」
「そう。魔法を学ぶ際、術式に付いても学ぶ分野がある。その際最初に教わるのが、禁呪。その一つがそれ、『ディスペル』よ……」
「はぁ? 『ディスペル』?」
タクローはあまりにもポピュラーな魔法名が出てきたと思い、思わずずっこけそうになる。
「ディスペルってあれだろ? 魔法効果を打ち消す魔法。俺も、詠唱なら普通に使えるぞ?」
タクローの言葉に、アリーシャは手のひらをタクローに向け、制する態度を取る。
「だめ! どんな事があっても、使っちゃ!」
「え? ええ?」
タクローは意味が全く解らず、首をかしげるのみである。
「この魔導車だけじゃない、タクローさんの鎧も只の鉄くずになる」
「え? なんで?」
「ああー!!」
ミーナがひとしきり大きな声を上げた。
イツキ達がビクリと体を震わせ、怯えた顔を見せる。
「解った、そうか !魔法効果を打ち消すって事は、魔法で動いてる全ての機械がダメになるって事か!」
アリーシャは、ミーナに目をやると頷いて見せた。
「でも、それってステータス関係とかの魔法だけじゃないの?」
未だ理解出来ないタクローは、困惑の表情を見せる。
「なるほどねぇ……。こりゃ、ある意味この世界ならではの『禁呪』だわ……」
ヒカルは机の上に手甲を置いて、ミスティックボードで調べる。
「このガントレットに施されている魔法の深層部分を調べようとすると、分析魔法が機能しなくなる……。これ、タクローさんがMPを流したら完全にプログラムが崩壊するんじゃない?」
「え? マジ?」
「マジっぽいよ……」
引きつった笑顔を見せるヒカルの言葉を受けて、タクローもだんだんとことの重要さに気が付いた。
「タクローくん、この世界はゲーム時代と違う所って何だと思う?」
「なに? ミーナさん、唐突に……」
「ゲームだった頃の魔法って、基本的に戦闘する為の一つでしか無かったよね? でも、現在は魔法が生活基盤を支えている。この車も、君の鎧も魔法の力で動いている。魔法の効果を打ち消すって事は、それらにも作用するって話だよ」
「あ!?」
完全に理解したタクローは、驚愕の眼差しを手甲に向けた。
「凶悪のアイテムになるって話か……」
「だね、なんでコレが賢者がもたらしたアイテムなのか……。コレがあった場所に、他に何か無かった? 以前貰った魔法の手紙みたいなのは……」
タクローはヒカルと顔を見合わせる。
「無かったっすね……」
「ありませんでしたよ」
二人の言葉はどちらも同じことだった。
話について行けなくなったトリスと、イツキ、サツキ、シズクは車外で朝食の準備を始めた。
車内では、未だ手甲についての話が続いている。
「つまり、コイツは危険な代物だと……、そう言う訳だな?」
タクローがアリーシャを見ると、無言で頷く。
「でも、MPを入れないと魔法として発動されない訳だろ?」
タクローが手甲を手にして、いじると案の定ミスティック・アーマーに接続するのであろう魔導伝達金属のケーブルが現れる。
「やっぱり、俺用か……」
最初から解っていた事だが、改めて確認して、全員が深刻な表情になった。
「何だって、こんな代物が……」
「解らない、でも、必要なんじゃない?」
「必要かぁ……。どんな形で発動するかも分からないのに?」
「タクローさん、ちなみにゲームで『ディスペル』ってどんな感じで発動するの?」
「選択者に発動するって感じだよ。ヒカルの回復魔法と一緒」
「範囲魔法じゃないんだね?」
「ああ、だけど、MPの消費量は結構高いな……。高位魔法だしな」
「なら、現状は持ってても問題ないんじゃないかな?」
こうして意見がまとまり、タクローは自身のアイテムボックス内に手甲を入れる。
処分に付いては、今後改めて検討する事となった。




