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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
人間と亜人とドラゴン
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賢者の残した物

 普段着で外に出るのは、町や都市以外では初めてだとタクローは思い、大きく背伸びをする。

 鎧に包まれていると、外界とは完全に隔離された状態なので、外の空気や匂いを改めて感じて、開放感に満たされた。

 周囲を見渡せば、土と石造りの遺跡群。HUD越しに見る風景とは全く別物に見えて、新鮮な気分になりながら歩く。後ろからはミスティックボードを小脇に抱えたヒカルが続く。


 三階層に降りると、直ぐに目に付くのは自分達が作った墓だ。

 ギルドハウスの地下倉庫で静かに眠っていた者達。そんな者達に、キチンとした土のベットと布団をかけて永久に安らかに眠れるようにと、願いを込めた。

 日本人の習性なのだろうか、墓の前に来るとつい手を合わせたく成る。昨日も、手を合わせたばかりだと言うのに、タクローは再び墓に近づくと、両手を合わせて目を閉じる。


「よぅ、今日も少しお邪魔するよ……」


 一声掛けると、隣でヒカルも同じ様に手を合わせていた。


 お参りが終わると、目的の場所を目指した。

 一式トランスポーターが駐車されている付近を調べると、岩肌に岩を削り出した入り口があった。

 ゲーム時代ではこの奥に祭壇があり、その祭壇の上にイベントアイテムである『水神の聖杯』があった。

 お使いイベントの一つで、現在では涸れてしまっている川の上流から毒が流れてきてしまっているので、アイテムを使って浄化して欲しいと言うのが、このイベントだ。


「ここだな……」


 タクローは入り口を見つめる。

 高さは人一人と半分程の高さで、幅は二人が余裕で並んで入れるくらいに余裕がある。


「とりあえず、入ってみよう」


 暗がりを怖がるはずのヒカルが、先陣を切る。


「おいおい、平気なのか?」

「何が?」

「いや、ほら……幽霊とか……」

「だって、モンスターの反応が無いんでしょ? この世界だと、幽霊もモンスターとして設定されてるから、大丈夫」

「はぁ……、そうですか……」


 変な理屈をこねられて、やや疲れたようにタクローはヒカルの後に続く。


 少し歩くと、目的の祭壇が見えてくる筈であったが、タクロー達の眼の前には、土壁が道を塞いでいる。


「崩落……かな?」


 タクローがヒカルのライトボールで照らし出された場所を眺める。

 天井を見上げれば、人の手が入った痕跡がしっかり残っており、崩落した様子は一切なかった。


「おかしいわね……。これは、天井が崩落した訳じゃない……」

「ああ、天井がそくっりしてるしなぁ……」

「じゃぁ、下から?」


 二人は地面に目を向ければ、何かが隆起した痕跡が見られる。よく見れば、足元の石床が下から持ち上げられた様に、バラバラになっていた。


「ストーン・ウォールか?」

「魔法で、道を塞いでるって言うの?」

「ああ、多分そうだろ……」


 タクローは、土で出来た壁を観察する。

 すると、壁の一部に不思議な模様が見えた。それはまるでハンコを押したかの様であり、かすかに発光している。


「これは?」

「なになに?」


 タクローが見つけたモノを観察していると、ヒカルが後ろから覗き込む。


「あ、あった……。これに反応していたんだよ……」

「じゃあ、これが賢者の?」

「うん、ワイズマン・レコード……の、一部だね」


 タクローが生返事と共に、紋章の様なモノに触れた瞬間、強く輝き出した。


「え!?」


 二人の驚愕した声が、小さな洞窟に響き渡る。



 アリーシャが目を覚ますと、変な体勢で寝ていたせいか体のアチコチに痛みを感じた。

 体を動かすと、ポキポキと音が鳴る。


「ベッドが恋しい……」


 周囲を見れば、自分よりも若いイツキ達少女が気持ちよさそうに未だ寝息を立てている。

 一息吐くと、立ち上がり洗面所に向かう。

 簡易で作られている為、狭いがアリーシャはあまり気にしない。むしろ、有ることが自体に感動を覚える程だった。

 洗面所がある部屋に入って最初に気が付いたのは、鎧の存在だ。


「これは、確か……、いつもなら裏手に有るやつ……。ヒカルさん?」


 洗面所には行かずに、鎧のある部屋から出るとヒカルを探す。

 中二階のオペレーター席の床には、キチンと畳まれた厚手の布が置かれている。

 首をかしげて、一階に降りるとタクローも居ない事に気が付く。

 再び鎧の部屋に戻り、鎧が収められているケースを反転させるとそこには現在使用されているミスティックアーマー・ファイターの姿があった。


「二人共、何処へ?」


 首をかしげた時、一式トランスポーターが微かに揺れた気がした。



 タクロー達の眼の前から土の壁が突如崩落して、祭壇が現れる。


「びっくりした……。なんだったんだ、一体?」

「タクローさんの魔力に反応して道が開いた?」


 二人は顔を見合わせ、お互い首を傾げる。

 そして、祭壇に目をやるとそこには、本来あるべきはずのアイテムは無く、全く別物が置かれていた。


 二人が近づき確認すると、それは鉄甲の様に見える。


「ガントレット?」

「しかも、片方だけだよ、これ」

「だな……。右手用か……」


 タクローは祭壇に置かれた物を手に取り、自身の右手にはめる。


「またまたぴったり……」


 ミスティック・アーマーの件があったせいか、さほど驚きはしなかった。


「つまり、またもタクローさん用に作られた物って事だね」

「みたいだな……。全く、賢者さんはどうしてこうも俺に色々手助けしてくれるのかね? しかも、ノーヒントで……」

「試してる? それとも……」

「まぁ、どっちにしても調べるのはトランスポーターに戻ってからにしよう」

「賛成」


 二人は、手に入れた手甲を手に、一式トランスポーターへと戻った。

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