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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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全身鎧(フルプレートアーマー)

 タクローは一人、苛立っていた。

 ヒカルが見せた詠唱魔法が使えない事実。

 魔法が使えない、マジックアクティベーターも使えない、何もできない自分に対して。

 そして、ほんの少しであったが共に食事をし、笑いあったカインツ達のこと。仲間の怪我。

 今置かれている様々な事柄に対して次第に大きな憤りを募らせていく。


 一方シンジは、見たことを冷静に分析し始める。


「ミーナさん、連中の武器見ました?」

「へ!? いや、とっさだったからね、よくは見てないよ」

「あれ、銃ですよね?」

「そうだね、あと、おそらくだけどグレネードもあるみたいだね」

「グレネード?」

「手榴弾だよ。地面が大きく焦げた跡があったでしょ? あれは、多分そうだよ」


 シンジは酷く険しい表情になる。武器が違いすぎるのだ。距離をもって攻撃するのであれば、シンジの持つ弓しかない。魔法で攻撃したいが、今現状であるマジックアクティベーターはミーナのを含めて四つ。


「タクロー、スクロールは持ってるか?」


 シンジの問に、低い声で「持ってねぇ……」とつぶやくように答える。それは、当然の答えだとシンジは思った。

 タクローは魔法使いだ、マジックアイテムであるスクロールは通常であればよく持ち歩いていた。それは自分のマジックポイント(MP)が切れた際に回復の繋ぎで使用するためだ。

 しかし、彼等がこの世界にやってくる前に行おうとしていたのは、『最終決戦(ラスボス戦)』だ。

 無駄にアイテムを持ってくる必要がないと、タクローだけではなくメンバー全員が必要以外のアイテムを全てギルドハウスに置いてきてしまっていたのだ。

「だよなー」とつぶやいて、頭をかきむしる。


 数十名の銃で武装した集団と戦うのにはまず、この世界の情報が欠けまくっている。

 戦うにしても、逃げるにしても、もう一度敵と対峙することになると考えたシンジは考えを必死で組み立てようとしていた。


「リザレクションがあれば、復活ワンチャンで行けないか?」


 何気ないタクローの一言に、ミーナ以外のメンバーの顔が凍りつく。その様子を見た、タクローは不思議な顔をしてみせた。


「てめぇ、何言ってやがるんだ!!」


 瞬間的に頭に血が上ったトリスが吠える。とっさに、シンジが割って入った。


「タクロー、お前とミーナさんはがマジックアクティベーターを買いに行った後の話だ。俺とヒカルちゃんで、ある魔法の説明文を見つけたんだ」


 シンジの暗い表情。ヒカルもまた、視線を落としてうなだれる。


「この世界にワンチャン……、いや、復活は無い」


 至って真面目な表情、目には冷徹な光が宿っているシンジの顔を見た時、タクローは嘘や冗談ではないと悟った。


「リザレクションや他の復活魔法。それは、この世界では葬送の魔法と記されているんだ」

「そうそう?」

「葬式の葬に送るだ。つまりは、死者を送るための魔法だ」


 タクローの頭には疑問符しか浮かばない。

 それから、掻い摘んでシンジはタクローに説明する。


 ゲーム時代での復活魔法は、この世界では使用した相手の肉体を元の状態に戻すことは可能であるが、魂まで戻すことはなく、二度と起き上がることはないらしい。また、死体を放置すると死霊系モンスターとなってしまうが、復活系魔法を使用するとモンスターとはならずに済むという。

 それらを語って聞かせ終わると、タクローは「何故言わなかった!?」激怒した。しかし、シンジの申し訳なさそうな表情で「言えなかった、申し訳ない……」と言われてはソレ以上の言葉が出なかった。


 闇雲に時間は過ぎる、帝国の兵士達は直ぐ目の前まで迫っていた。

 それぞれが、どう行動するか考えている。

 ヒカルとミーナは逃げることを進言する。

 武器屋に店主は居なかった。後ろに続く扉が一つあり、そこから逃げようといった話であったが、ソレをトリスが一蹴する。

 後ろはただの倉庫らしく、逃げ道は無いらしい。

 そうなれば、出入り口は一箇所のみとなる。扉を睨みつける一同。そんなさなかで、タクローがふと思い出したように声を上げる。


「そういや、攻撃ではないけどスクロール持ってた」


 その言葉にタクローを睨みつける、仲間達。

 気にせずにタクローは、アイテムボックスから一つのスクロールを取り出した。


「ラスボスの攻撃が全体魔法ばかりだって攻略サイトに書いてあったから、マジックシールドを全員にかけるスクロールならある」


 一同は、絶望から深い溜め息をつく。

 しかし、「とりあえず」とタクローはスクロールを使用する。魔法術式の書かれた巻物を広げると、書かれている文字が光りだした。


 パリンッ


 武器屋の窓ガラスが割れ、室内にはゴロゴロと黒い球体のようなものが転がる。ソレは、スクロールを使用し始めたタクローの前に転がってきた。


「ヤバい!!!!」


 ミーナの大きな声が室内に響くと同時に、黒い球体はまばゆい光を放つ。刹那、広がる熱波と衝撃波。同時に起こる爆音で、脳を揺さぶられるような感覚。

 体が強く押されて起こる浮遊感が、武器屋に逃げ込んでいた七人それぞれに襲いかかってきた。


 全身に痛みが走る。巻き起こる煙で視界は悪い。しかし、痛みは体を打ちつけた痛みだと全員が感じていた。

 実際に各々自分の体を見ると、軽傷を負っているものの五体満足であった。声を掛け合う。

 タクローのみ返事は無かった。

 次いで、破裂音もとい発砲音が響く。直ぐ様、タクロー以外のメンツは、爆発でかろうじて残っていた武器屋のカウンターに身を隠す。

 流石にこうなると、シンジは戦う決意を決め、弓を射る。

「がぁ!?」と声を上げて、一人の兵士が身を捩らせる。矢が兵士に命中したが、致命傷には至っていない。

 自警団員はシンジに合わせて、マジックアクティベーターで応戦。

 一人、恐怖で身を縮こまらせていたヒカルからマジックアクティベーターを返してもらい、ミーナも戦闘に参加する。シンジは、隠れて弓を引き、飛び出して射るを繰り返す。

 しかし、思うように当たらない。一方の帝国の兵士達は、武器屋の外に集まり始めていた。


 どうしようもない、正に追い詰められた状態である。

 帝国の兵士一人に怪我を負わせたものの、直ぐに矢を抜かれ回復魔法を使われてしまい、戦力を削ぐことも敵わなかった。

 ヘラヘラと薄ら笑い声が聞こえる、挑発する声が聞こえる、脅しを掛ける声が聞こえる。帝国の兵士達は、反撃してきた相手をあざ笑いながら包囲を固めた。

 シンジは、思う。


(さっきのヤツが、また投げ込まれたら今度こそおしまいだな……)



 ガチャリ……ガチャリ……ガチャリ……

 武器屋の奥にある、倉庫の方から不思議な金属音が聞こえる。

 ドンッ! ガギャッ!!

 武器屋奥の壁に一つの大穴が空いている。そこから、何かが飛び出してきた。

 飛び出して兵士一人にぶつかると、兵士は変な声を上げて武器屋と反対側にあった建物まで吹っ飛んでいく。


 煙を孕んだソレは、人の形をしていた。


 全身ほぼ銀色をした人形ひとがたは武器屋から通りへと出ていく。その手に武器は持っていない、正に手ぶらな状態で。


「な、なんだコイツ!? 全身鎧フルプレートアーマー着てやがんのか!!」


 一人の兵士の大きな声が通りにこだました。

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