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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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敵に背を向けて

 ファストの町南の出入り口に来たタクロー達は、壮絶な光景を目の当たりにした。

 倒れている町の人々。

 先だってやって来た自警団のメンバーが二人片膝をついて、剣を杖代わりに体を支えている。仲間を庇うように、前に立つ二人。タクロー達の目に映る人々全てから赤い液体がこぼれ出ている。


 タクローがふと近くで倒れている町の人を見ると、顔には生気が宿っておらず、目を開けたまま二度と動くことがない。

 ソレだけではない。地面のあちこちが広範囲に黒く焦げており、身に着けていた服の色が違う手足が大小、いや、体のあちこちが転がっている。


 ヒカルは口を押さえうずくまる。

 ミーナは膝から地面に崩れ落ちる。

 シンジはアイテムボックスから、武器となる弓矢を取り出すがその手は震え、矢をつがえようとしたが落としてしまった。

 タクロー自身も頭が真っ白になった。


 タクロー達は、この世界の住人ではない。

 地球という星の、日本という国に暮らしている。

 日本は法治国家であり、また、銃刀法という殺傷武器の所持を禁止する法律がある国だ。

 国の中では内戦など無く、他国との戦争もしていない。

 戦争文化は既に過去の話であり、今は人々が平和に過ごせる国なのだ。そんな中で育ったタクロー達は非日常的光景を今目の当たりにした。


「どうする?」と考えても、答えは出てこない。ふと、町の南の出入り口たる門に目をやると数十人はいる男達が、ニヤニヤと笑いながら、ライフル銃のような物を構えている。前面で戦っているのは、自警団の団長たるカインツ・カーバニとジュド・グラニス。

 後方で、苦しそうに片膝をついて今にも倒れそうなのは、トーニャ・ベルハウとナッツ・グラニス。彼等は大きな声で話をしている。

 しかし、タクローには何を言っているのかよく聞き取れない。耳に入ってくる音は、心臓の鼓動音だろうか。


(やばい、やばい、やばい……)


 ヒュンと耳元を何かがかすめる音。「熱っ!?」と後ろから声が聴こえて、振り返るとまるでスローモーションのようにミーナが肩から血を吹き出し、崩れ落ちるところが見える。

 破裂音、破裂音、破裂音……。

 崩れ落ちる、自警団団員達。


「逃げろ!!」


 一際大きな声を上げたのは、シンジだ。

 タクローの服の襟元を掴んで、引っ張る。

「逃げんだよ!!」と、シンジの声を聞いた時、タクローはやっと正気に戻った。


 何か、魔法を使おうかと考えたが遅い。詠唱を行ってる間にやられてしまう。

 そう悟ったタクローは、直ぐ様ヒカルを抱えて走り出す。同時にシンジはミーナを半ば引きずるように、町の中心部に走り出した。後ろに目をやると、自警団の団員四人が倒れた姿があった。


 後ろから、破裂音と共に耳元をかすめるように聞こえる空気を切り裂く音。鉄の筒から火を噴くソレは、正に『銃』そのものである。

 直線的に逃げては駄目だと、直感的に判断したタクロー達。しかし、いつまでも逃げることはできない。

 そんなさなか、目の前に走ってくる三人の人影がある。残りの自警団のメンバーである、トリス・ライナ、アリーシャ・ドロセル、ストラ・フィーアだ。

 驚いた顔でこちらを見ている。そして、次の瞬間タクローが進行方向をやや右に逸らすと、嫌という程聞いた風切り音が聴こえ、目の前に居たアリーシャの右腕が何かで後ろに引っ張られたようになり、倒れる姿が目に入った。


「ぶきやぁぁぁぁぁぁ!!」


 タクローは大声を上げて、ちょうど近くにあった武器屋の入り口を蹴破り、中へと飛び込む。それに反応してシンジもタクローに続く。


「トリス! アリーシャを連れてこい!!」


 タクローの怒鳴り声とも取れる言葉に、慌てて武器屋へと滑り込むトリス。続いてストラも飛び込んできた。


「ミーナさん、大丈夫!?」


 シンジの大きな声に、真っ青な顔で「めっちゃ、痛い」と返事をする。

 トリスは、アリーシャを心配し酷く気遣っている。そのアリーシャの右腕からは、血が流れていた。


 タクローがメンバー全員に目を向けると、無傷な者は誰もいない。自分自身も、いつの間にか切り傷を数箇所負っている。


「やべぇ、ありゃ銃だろ? なんだよ、銃は無いんじゃなかったのか!?」


 タクローがシンジの胸ぐらを掴んで怒鳴りつける。


「知るか! そんな、記録載ってなかったんだよ!!」


 シンジも負けじとタクローに掴みかかる。

「止めて!!」と大きな声。

 二人が目をやると、ヒカルが両掌を前面に出して魔法の詠唱を開始する。ソレは、回復魔法の詠唱だ。光の魔法陣が展開されていく。そして、「キュアライト・オール」と言ったその時、魔法陣が光の粒となって霧散した。


「あれ!? なんで!!?」


 もう一度と、ヒカルは詠唱を開始しようとする。「無駄です」のアリーシャの一言が、ヒカルに絶望を与えた。


「人が多い場所は、巨大なマナスポットになってしまっているから、詠唱魔法は使えない」


 昨日の話をタクロー達は思い出していた。

『マナスポット』大気中のマナが集まる場所。そこは、詠唱による魔法の構築ができないとされていた。


 アリーシャ達、自警団員はマジックアクティベーターを取り出すと、回復の魔法の術式を展開させる。そして、メンバー全員の傷を治していった。


「これがやっぱ、必需品って訳か」


 ミーナは、アイテムボックスに入れていた自身のマジックアクティベーターを取り出す。

「これ持ってみて」と、ヒカルに手渡す。受け取った、ソレをヒカルはまじまじと見つめた。

 タクローのような反応は起きない。

 ミーナの簡単な説明で、ソレを起動させることができたヒカルは、マジックアクティベーターが使えることを示した。

 そんな様子を見たタクローは、胸が締め付けられる思いを抱いたのだった。


「とりあえず、どうするか……」


 シンジが入り口を閉じて、窓から様子を窺うと。町の人々は皆、逃げたのだろう。

 人っ子一人居ない光景が見える。

 少し、離れた先で帝国の兵士達が、あちこち物色していた。家に押し入り、悲鳴が聞こえた。

 その後から破裂音。


「くそがぁ……」


 牙をむき出して唸るトリス。

 トリスにしがみついて震えるアリーシャ。

 耳を手でギュッと押さえて縮こまる兎の獣人ストラ。


 ヒカルは、ミーナからマジックアクティベーターの使い方の説明を受けている。そして、メンバー全員がほんの少しずつ冷静さを取り戻しつつあった。


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