表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
14/713

襲撃

 夜が完全に明けきる前、ファストの町から南西の林に粛々とテントを畳む一団がいた。彼等はアレクシア帝国の記章を着けた軍服を身にまとっている。


 オルス・ガイエ率いる第五三特別小隊。

 特別小隊と名付けられた隊員達は、皆正規兵ではなく傭兵上がりやはたまた犯罪者集団などによって作られた小隊だ。

 尚、小隊以上の隊は存在せず、また、正規の兵士達からはゴロツキ小隊などと呼ばれている。

 彼等小隊は、主に雑用的な使い捨ての戦闘要員として扱われていたが、正規の軍人ほどではないものの、きちんと給金や食事、寝る場所まで与えられる。

 そのために、彼等は帝国の一軍人として与えられた命令をなんとかこなしているといった感じである。

 また、正規軍ではないために部隊長という肩書き以外の階級は存在しない。皆、一般兵と言われていた。

 正規軍であれば、二等兵に始まり、上は元帥までのしっかりとした階級に分かれている。


 昨夜、正規軍であるグレクセン・オーデヴァル伍長よりの命令を受け、ファストの町の襲撃に備えて準備をしている第五三特別小隊。

 一方、正規軍であるグレクセン・オーデヴァル率いる辺境監視部隊の偵察隊は別行動を取るべく準備をしていた。


 本来、町の襲撃は夜に行う方が効率が良いといえる。しかし、それができない理由が二つあった。

 一つは彼等の持つ武器である。

 夜の戦闘となると暗闇で視界が悪くなる。すると武器の長所となる中距離での戦闘が困難になるのだ。闇に紛れて、背後を取られ接近戦に持ち込まれてしまっては、彼等が持つ『魔導銃』での戦闘の意味がなくなってしまうからだ。

 もう一つは、グレクセンの戦闘観察だ。夜であると、遠くから戦闘の状況を観察するのは極めて難しい。

 ミーティアラ王国か、はたまたファストの町の何者かが戦闘行為の際に見せる力をしっかりと見極めることができないのだ。そのために、戦闘行為は日中に行わざるを得ないのである。

 ある程度準備ができると、第五三特別小隊総勢三十九名と辺境監視部隊の派遣兵士三名は、それぞれの目的を果たすために別々の方向へと歩き出した。



 ひときわ大きな欠伸と共に、タクローは目覚める。

 体に倦怠感が漂うのは、昨晩飲み過ぎたためだと思って周りを見回すと、服が放り投げた形で脱ぎ散らかしてあった。

 扉をノックする音に、生気の抜けた返事をすると友人である三人が入ってくる。タクローの心情を理解していた三人であったが、部屋の状況を見てやや呆れ気味であった。


「タクローさん、朝ごはんですよ」

「全く、昨夜は大分荒れてたなぁ……」

「まぁ、俺が言うのもなんだけどさ、気にしないで」


 友人達、ヒカル、シンジ、ミーナの言葉にタクローはだるそうな返事と共に服をかき集める。そして、この町で購入したばかりの真新しい服に袖を通した。


 宿屋の一階にある食堂へとやって来た四人に声を掛ける者がいた。この町の自警団に所属するトリス・ライナ。その隣には、同じく自警団に所属してるアリーシャ・ドロセルの姿もあった。


「よぅ、タクローさんよ、昨日は色々散々だったな。まぁ、気を落とさずに今日も張り切っていこうや」


 トリスは昨晩の食事の席に居た。トリスだけではない、自警団の団員七名中、アリーシャを含む四名が居た。他には、団長であるカインツ・カーバニとストラ・フィーアである。

 彼等は、昨日の出来事を色々聞かされた。それ故に、トリスはもちろんアリーシャもタクローの事情を理解していたのだった。

「はぁ」と深い溜め息で返事をして、タクローは食事を取るために席に着く。

 仲間たちも、共に席に着いて朝食が用意されるのを待った。


 宿屋の主人兼、料理人のテイガ・オルトナが朝からボリュームたっぷりの食事を用意した。テイガも、昨晩の会話の内容を聞いていたので「気を落とさずに食え」と一言告げる。


 タクローを除き、他愛の無い世間話をしながら食事をする仲間たち。ここ数日の間に、この町の住人達と打ち解け始めていた。


「シンジさんは、今日も図書館かい?」

「いや、あらかた調べたし、町をぶらつこうかな」

「じゃぁ、俺もシンジくんに同行しようかなぁ。ヒカルちゃんは?」

「私は、マジックアクティベーターを買いに行ってみようと思ってます」

「じゃあさ、シンジさんミーナさんは俺らと一緒に外の見回り行かねぇか?」


 トリスの提案にシンジとミーナは顔を見合わせる。「どうする?」とお互い判断を決めあぐねいていた。


「あんたらの腕前ってやつを見てみたい、ってのが正直な話さ。夕食の時に、色々聞かせてくれたが、俺達は実際にその戦いを見てないからな。まぁ、一人はその力量を見せてくれたけど……」


 チラリとタクローに目をやると、ふてくされ気味に食事を摂る姿が映る。


「タクローさんはどうするの?」


 朝の挨拶以外で初めて口を開いたアリーシャの言葉に対して、タクローは食事を止め腕を組んで考える。


「どうするかなぁ……。それこそ、俺は町中ぶらついてみるかな? 戦闘に参加したらどんなことになるか解らない訳だし……」


 その言葉に、ヒカルが何かを閃いて明るい笑顔を見せる。


「じゃぁさ、私の買い物に付き合ってよ。ついでに、色々見て回りたいし」


 最初は軽く嫌な顔をしたタクローだったが、少しの間を置いて「仕方ないか……」と了承する。


「私も非番だから、一緒に行って良い?」


 アリーシャがヒカルに告げると、こちらも少しの間を置いて了承した。

 トリスの方の話も、シンジとミーナが自警団の町の外の見回りに同行することで話がまとまった。


 朝からボリュームのある食事を平らげた一行は、宿から出て町の広場までやって来た。そして、軽く挨拶を交わしそれぞれの目的に沿って行動を開始しようと歩き出したその時だった。

 バーンと大きな破裂音が一つ町に響いた。少しの間を置いて、また破裂音が複数響く。

 ドーンと大きな爆発音まで聞こえた時、今正に別々に歩き出そうとしていたタクロー達の足が止まる。


「魔法? この爆発音は」


 ミーナが深刻そうな顔で音のする方、町の南側に目を向ける。


「銃声に似てないっすか!?」


 バーンという音は、タクローにとっては映画などで聞く銃の発砲音に酷似していた。そして、同じことをシンジも思ったようで、三人が顔を見合わせる。


 町の南側から人々が押し寄せてくる。彼等は口々に「帝国が攻めてきた!」と大きな声を上げている。その中には、悲鳴なども混じり混乱の様を呈していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ