魔法活性機(マジックアクティベーター)
本を読むのに飽きてしまったタクローとミーナは、この世界で重要なアイテムとなっている『マジックアクティベーター』に注目した。
事前にアリーシャから聞いていた話で、魔法道具を売る店に置いてあるとのことだったので、彼等はソレを手に入れるために図書館を後にする。
店に入ると、独特な匂いが立ち込めていた。それは、魔法薬を生成する時の匂いらしい。
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
店員である若い女性に迎え入れられる。
二人は、とりあえず店内を見せてくれと言って物色して回る。
「へぇ、色々あるね。俺達が持っている昔のアイテムとは、色々と様変わりしてるみたいね」
「そだね、ポーションも瓶じゃなくて缶のボトルだよ」
「ジュース感覚かよ……」
「ミーナさん、コレが今の分析モノクルらしいですよ」
「モノクルっていうより、虫眼鏡だね……」
そこはまるで、不思議な雑貨屋さんとして二人の目には映っていた。
しかし、目的のアイテムは見当たらない。仕方がないので、店員に聞くと店の奥へと案内される。
店の奥の部屋には、若い男性が居て彼の後ろにはガラスケースに入った数種類の形をしたマジックアクティベーターがあった。ケース内のマジックアクティベーターには値札があり、値段も色々となっている。
「いらっしゃいませ、マジックアクティベーターのカスタマイズですか? お求めですか?」
「あ~、俺達マジックアクティベーターを持ってないので購入しようかと」
タクローの答えに、ニコリと笑顔を見せる男性店員。
「なるほど、では以前持っていた物の機種名はわかりますか?」
「いや、一度も持ったことないです」
その回答に驚いた顔をする店員。ソレほどまでにマジックアクティベーターが必需品となっているのだなと二人は思った。
「では、一度試しのマジックアクティベーターで、どのようなマナの反応があるか調べましょう。こちらを持って、魔水晶板部分をタッチしてみてください」
近くにあった机の引き出しから、見た目にも古そうなスマートフォンのような物を取り出してタクローに渡す。言われた通りに、左手に持って右手の指でタッチした。
バキリと変な音が聴こえ、その後マジックアクティベーター内部から光の小さな粒が、花火のようにタクローの左手に広がる。
「ん? ナニコレ?」
タクローが困惑の表情をしていると、男性店員は絶句して固まっている。ミーナがそんな男性店員に対して「どうなってるの?」と疑問を投げかけると、開いた口から苦悶の声が出ている。
「何万人だか何十万人に、一人いるかいないかというやつですね……」
「はい?」
「はい?」
店員の言葉に、タクローとミーナの言葉が重なる。
「極稀に、自身の魔力とマジックアクティベーター内の人工精霊石の魔力が相互干渉を起こして、壊れちゃうことがあるんですよ」
そう言って、サンプルとなるマジックアクティベーターを出した机の鍵の掛かっている引き出しの鍵を開ける。そして、引き出しの中から何種類かのマジックアクティベーターを出した。
「今持ってもらったのでも、結構良いランクの人工精霊石が使われているのですが、とりあえずここにある最上級ランクのモノで試してみてください」
そう言って、一台をタクローに渡す。すると、ソレは操作もすることなくパァンと音を立てて砕け散った。
「うっそぉ……」
酷くショックを受けたのはタクローだった。
「あれ? 店員さん、こうなると彼はマジックアクティベーターが持てないの?」
少し青ざめた顔の店員は、無言で首を縦に振り肯定する。
「俺に一台貸してみて」とミーナが手を出す。少し震える手でミーナに適当な一台を差し出した。
受け取ったミーナは、最初タクローに言われた操作をしてみる。魔水晶板が淡い光を見せると、様々なアイコンのようなモノが映し出された。男性店員は、大きな溜め息をついて安堵感を露わにした。
「おおぅ、俺は使えるのか」
軽く嬉しそうにミーナは、スマートフォンの要領でいじってみた。それから、店員の説明が始まる。
マジックアクティベーター(魔法活性機)は、内部ある魔石に各種魔法術式を書き込んでから、様々な魔法が使えるようになる。
魔法は基礎的な魔法を組み合わせることで様々な効果を発揮できる。
基本的に書き込める術式は、下位魔法だとコストが低い分多く、中位魔法だとコストが高めなために、下位魔法よりも少なくなってしまうらしい。また、高位魔法ともなれば大きすぎるコストのために一握りしか書き込めない。
一般的には、中位魔法を二つ三つ書き込んで、後は全て下位魔法を入れるのが主流となっている。
余談として、軍用は一般のものよりも書き込める量は少し多くなっている。また、内蔵されている人工精霊石というものにより、魔法が使用者のマジックポイントを使用することなく行使可能となっているが、人工精霊石のランクによって使用後から再使用に掛かる時間の幅がある。
ランクが高いものほど、再使用可能時間が短い。だが、値段もそれなりに高いものとなっている。
簡単な説明の後、ミーナはこの店に有る最高値の機種を選択し、購入することにした。その値段は、ルクセン金貨で千二百枚。
破格ともいえる代物らしくこの町で購入する者はおらず、数年間眠っていた物だと店員は話す。購入の際には、魔石に術式を書き込むことになる。
スマーフォンを契約する際のように、机に向かい合って座り、各種設定の説明と書き込む魔法術式のカタログを見ながら手続きのようなことを行う。
とはいえ、コレはタクロー達の世界のスマートフォンではない。
ミーナが通信的なやり取りができるか確認すると、簡易的な相互通信を行う機能は有るが、トランシーバーのような短い距離でのやり取りしかできないという答えが返ってきた。
つまり、電話機のように月額料金が発生するようなことはない。では、何故このような店の形態を取るのかというと、買ったらそれまでではなく、必要に応じてマジックアクティベーター内の魔法術式の書き換え等のアフターサービスがメインとなるためにあるのだと、タクローは考えた。
ミーナが一通りの手続きから、購入を終えてタクローと共に店を出た時にはすでに日が暮れていた。
宿屋にて、シンジとヒカルと合流し夕食となった時に、ミーナはおもちゃを手に入れたかのようにマジックアクティベーターについて語り、手にすることさえできなかったタクローはやけ酒を呷った。




