王都での戦闘
東門付近を制圧したアレクシア帝国第二機甲師団は、部隊を三つに分ける。
北側に進行する部隊と、南側に進行する部隊、そして、中央から王城を目指す部隊である。
戦闘開始から、終了指定時刻はおよそ二時間を予定されていたのだが、開始早々あっと言う間に東門を制圧出来てしまった為、帝国兵達は拍子抜けしていた。
ミーティアラ王国兵は、急遽民衆から戦闘要員を募り、民兵として戦闘に参加させる事にした。住宅街に帝国兵が進軍してきた際に、各住宅内部から攻撃をさせる伏兵要員とされた。
正規兵部隊は、敵の攻撃に対応するため、急遽王城の武器庫から、埃の被った古臭い盾を用意し、銃弾に備えさせる。
これにより、防御魔法と盾で物理攻撃である銃弾に耐える事は出来るようになった。
だが、現在王都を守る兵は二万を満たない。民兵を合わせてやっと三万弱といったところだ。
一方のアレクシア帝国軍の兵士は歩兵だけでは一万程だが、戦車の攻撃が二万以上に匹敵する事になっている。
魔法で応戦するミーティアラ王国軍に対して、魔導銃と戦車砲による圧倒的な破壊力で攻撃するアレクシア帝国軍。始まって早々に、軍配はアレクシア帝国に上がったのは言うまでもない。
仕切り直しを図るため、ミーティアラ王国宰相、トーマス・ロッツ・アクリバルは住宅地の一部を戦場として切り捨てる。それは、石造りの建造物である建物を、ある意味『盾』として戦う作戦だった。
また、建物内部からだと、銃と魔法の撃ち下ろしも可能である為、地の利はミーティアラ兵に有ると考えたからだ。
しかし、狙いが功を奏したのは、最初だけだ。なぜなら、戦車砲が全てを吹き飛ばし、砕き、破壊してしまうから……。
そして、瓦礫の山を物ともせずに戦車は進む。ある程度悪路であれば、難なく走破してしまう『足』、キャタピラーが有るからだ。それは、トーマスの誤算となり、一区画とするはずであった戦場は、次第に王城付近にまで、戦線を下げなければならなくなってしまう。
いつしか、王城前にある広場にミーティアラ兵達が追い詰められて行く形になってしまった。
これまでの戦闘で、アレクシア兵の損害は一千五百近くに成る。だが、ミーティアラ兵は三千に及び、アレクシア兵に追い詰められている状態だ。
総数では圧倒的に有利なはずのミーティアラ兵だが、力量では確実に負けている。
魔導銃を装備した兵も、初戦から投入されてはいたが、訓練不足による低練度が、被害を拡大させる要因ともなっていた。
一方のアレクシア兵にも、誤算があった。
ミーティアラ兵が使う魔導銃が、自分達の銃より飛距離、精度共に格上になっている事だ。
アレクシア帝国の魔導銃の弾丸は、一定距離を飛ぶと一気に減衰して、飛距離を確保できない。おまけに、ある距離まで到達すると、当たってもダメージにならないのだ。
だが、ミーティアラ王国の魔導銃は形こそアレクシア帝国製と似てはいるものの、飛距離、威力共に格段に上となっている。それは、弾丸が縦回転を加えられている事が大きかったのだ。
縦回転が加わった弾丸は、当たれば服を、そして、その下の人体の肉をも削り、確実なダメージに変わる。そして、体内に侵入してしまった弾丸により、回復魔法が効かない。
アレクシア帝国は、魔導銃で攻撃するのが当たり前となる昨今だったが、自分達が攻撃を受ける側に成ったのは今回が初めてのケースである。それゆえに、体内に弾丸が残っていると、回復魔法が効かない事を知らないで今日に至っている。
無論、これはアレクシア帝国に大きな動揺をもたらせた。
一方のミーティアラ王国側は、アルフ・フォルン・アレクの報告と、現在の活躍も相まってか、被害を最小限にとどめている形に成る。だが、死亡してしまった兵の数が多いのは、戦車砲による所が大きい。また、戦車砲の二次被害として、崩れ落ちた瓦礫の下敷きに成ってしまった者達だ。
魔導銃を持ったミーティアラ兵は、アレクシア兵の半分程しか居らず、不利な状況は一向に変わらない。
ミーティアラ王国の強みとされていた魔法攻撃は、戦車の前ではあまり役に立たつ事は無く、歩兵戦ではかろうじて互角に渡り合えるくらいにまでに成ってしまっていた。
こうして、いつしか、ミーティアラ王国は確実に追い詰められた形に戦闘が進むのであった。




