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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
二大国家戦争
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避難誘導クエスト

 王都ウンディエネは広い。

 都市の総人口は軽く一千万は超える程だ。その四分の一を避難させなければならないと考えると、シンジは頭を抱えるほどだった。


「被害はだいぶ広範囲に及んでるみたいだよ……」


 ミーナの言葉に、シンジは更に頭を抱えた。


「避難民を見つけるだけでも、大変そうですね……」

「だね……」


 二人は、途方に暮れる。


「私も、助力させていただきます!」


 アルフは銃を構えて見せる。その姿を見て、シンジは困った顔をみせる。


「三人だけじゃ……」

「兎にも角にも、動こう。やってみなきゃ、でしょ?」


 ミーナもまた、銃を構える。

 大きくため息を吐いて、シンジは覚悟を決めて行動を開始するのだった。




 王都東側はほぼ、帝国の手中に落ちた状態であった。

 指揮車では、ハービル・オレイン大佐がつまらなそうに大あくびをする。早朝からの出撃になったせいで、急な眠気が込み上げたのだ。


「不謹慎ですよ……」


 副官の言葉に、苦笑いで答える。

 だが、事実つまらない戦闘だ。いや、戦闘にすらなっていないのかもしれないとハービルは感じていた。現に、味方にも少なからず損害は出ている。

 だが、それは戦車が破壊されるほどの事では無い。人的被害ならば、回復魔法で何とでもなってしまうので、気にするほどの事でも無いのだ。


「だがなぁ……、こうも指揮官が暇なのは良い事では無いか?」


 ハービルの言葉に、副官はため息を漏らした。


「確かに、そう、なんですけどね……」


 現状、帝国軍第二機甲師団は、東地区を制圧しつつあった。皇帝からの命令では、ある時刻まで可能な限り被害を大きくしろとの命令である。

 時刻が過ぎたら、反転してウラジスに向かう事になっている。

 忠実に命令を実行するべく、ハービルは全体の指揮を執るのだ。


 魔導通信機に激を飛ばそうと、意気込んでいたものの、肩透かしを食らう程にミーティアラ兵は弱い。


「とりあえず、様子は?」


 副官は、ヘッドセットタイプの魔導通信機に耳を付ける。


「民間人にも被害多数のようですね。後は、亜人達にも……」

「はん? 亜人? そんなの、ほっとけ。皆殺しにして構わん」


 きっぱりと言い放って、ハービルは興味なさそうな顔を見せた。


 帝国では、亜人は特に忌み嫌われる存在であった。それ故の反応だと言える。


「了解です。歩兵隊、戦車隊にはそう伝えますが……、民間人はどのように?」

「まぁ、不可抗力なら、仕方ないな」


 ニヤリと笑うハービルに、副官は苦笑いで頷いたのだった。







 シンジ指揮の元、いつしか民間人の隊列が出来ていた。

 息を潜めて、路地から路地へと移動する一団。

 時折戦闘が起きたが、シンジのコンパウンドボウが静かに敵を撃ち、ミーナのM4モドキが三点バーストで確実に仕留める。アルフも負けじと銃を撃って、応戦する。

 敵の武器を奪うと、一般人に持たせる。


 怪我をしたミーティアラ兵を見つけると、かつてタクローがやってのけた弾丸摘出を行い、回復魔法をかけて、一団に加えた。

 こうして、次第にシンジを中心とした一団が膨れ上がるのだった。



 戦いは、よほどでも無ければ、必ず巻き込まれる者達が居る。それが、例え個人同士であってもそうだ。

 そして、この戦いは国同士。大きなもの同士がぶつかると、大きな二次被害が生まれる。

 今が、正にそうだ。

 代理として戦う、軍隊。だが、実際に被害は民間人にまで及んでいる。

 それは、どこの世界でもそうだ。

 この世界が特別なのではない。

 シンジは、それを痛感している。

 中東、アフリカ大陸――――。

 他にも沢山ある。

 リアルで見た光景が、フラッシュバックするかの様にシンジには映り、力がある今は手を出さずには居られなくなっていた。

 タクローもこんな気分だったのだろうか? と、考えながら弓を射る。


 とある路地裏に入った時だった。一匹、もとい、一人の犬の獣人と思われる少年と出会う。

 助けを求める少年に、シンジは手を差し伸べた。だが、人間達はそれを快くは思わなかった。

「捨てていけ」

「亜人にはかまうな!」

「自分達を最初に助けろ」

 と、身勝手な言葉が飛ぶ。


 シンジは、かつてのタクローの言葉を思い出す。


『見た目が違うだけで、攻撃するのか?』


 それは、狼の獣人である、トリス・ライナを救った時の言葉だっただろうか? それとも、八人の少女達を救った時だろうか? などと考え、苦笑いで少年に手を差し伸べた。

 それを、後ろからわめきたてる住民。

 シンジは、腰から魔導銃リボルバータイプを抜くと、上空に向かって撃つ。それは、敵に居場所を知らせる愚かな行為だ。

 シンジ自身、何故そうしたのか解らない。だが、やった。

 住民達は息を殺し、言葉を発するのを止めた。


「俺が助けたいと思ったんだ、文句あるなら、置いてくぞ……」


 静かに放たれた言葉に、異を唱える者は一人として居なかった。

 ミーナは、そんなシンジの肩をたたく。アルフは、驚いた表情の後、ニッコリと笑顔を見せた。


 それを見て、安堵した少年は仲間を呼ぶ。すると、エルフやらドワーフやら他の獣人やらが、わらわらと姿を見せたのだった。

 やや引きつった笑みを浮かべながらも、シンジ達は彼らも一団に加え、王城を目指す事にするのだった。

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