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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
二大国家戦争
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工房から図書館へ

 工房で作業するミーナの元に、帝国が強襲して来たとの知らせが届いたのは、東門が突破されて約一時間が経過した頃だった。


 工房内の作業者達が、慌ただしく動き出す。

 避難させなければならない道具や図面は、指定の場所へと移動する。

 しかし、これまでこの様な事は無かった為に、全員の動きは最悪であった。

 アチラコチラで、怒声が聞こえる。

 ここもまた、戦場なのだなぁとミーナは考えながら、自分の道具をアイテムボックスに放り込む。

 最後に大きな黒いコンテナに手を伸ばす。

 黒いコンテナは、成人男性一人入り込めそうな大きさだったが、アイテムボックスはまるで物ともせずにコンテナを収納する。


「さてと……」


 ミーナは辺りを見回すと、工房内の戦争は激しさを増している。

 巻き込まれては事だと考え、努めて静かに工房を抜け出すのだった。


 工房は広い。

 そんな広い工房の敷地内に、見張り台の様な建物が有る。

 火事などの際に、どの区画で火の手が上がっているかを確認したりするのに使われている塔だった。

 自分の魔導車を走らせ、その塔にやってきたミーナはその天辺を目指す。

 長い螺旋階段をただひたすら上り、見える景色は都市部まで完全に見渡せる。ただ、それよりも高い王城の影になる都市部は死角となる。だが、ミーナが見たい場所では無かったので、特に気にはしない。


 アイテムボックスから取り出した少し変わった形の単眼鏡を覗き、東門に向ける。

 上部に付いている調節ネジを捻り、倍率を上げる。単眼鏡内部には、十字の目印と合わせて下に毛が生えた様な短い線が描かれている。

 それは、ライフル銃に付けるため試作された『スナイパースコープ』だ。

 そして、ミーナは視線の先に戦場を捉えた。


「はぁ!!? M1戦車!!? なんでぇ!?」


 深い緑、オリーブドラブとも呼ばれる独特なミリタリー色に染められたモノを見た。

 素っ頓狂な声を上げて、スコープにかじりつく。

 攻撃は、主砲である戦車砲のみで上部には機銃は付いていない。


「おかしい……。ディーゼル独特の黒煙は吐いてない……。そもそも、排気管が無い……。形は似ているけど、別物?」


 視界に入った一台を注視し、観察する。


「魔導エンジン!?」


 魔導エンジン独特なマナ発光を後部で確認する。


「焦った……、アメリカが侵略して来たかと思ったよ……。にしても、すごい細部はやや微妙だけど、形はほぼM1戦車じゃないか……」


 ほっと一安心したが、緊急事態で有ることには変わりない。

 ミーナが最初に考えたのは、仲間の安否だ。幸いにも、この都市に仲間はシンジしか居ない。

 不幸中の幸いと考え、ミーナは直ぐに塔から降りる。


 自身の魔導車に来ると、アイテムボックスから黒いコンテナを出した。コンテナを開けると、中には近代装備が満載している。

 その中には、服などもあった。

 ミリタリー好きのミーナが、ある程度権限を持たされている事を幸いと、自分の趣味となる道具も工房内の各部所に作らせていたのだった。

 全身黒い服に着替えると、コレまた黒い金属板が入ったベストに袖を通す。

 特殊魔法繊維で織られた衣服と同等で、伸縮性に富んだモノで作られた目出し帽をかぶると、コレもまた黒い、金属ヘルメットをかぶる。

 さながら、地球世界の特殊部隊と言った容姿となったミーナは、武器を手にする。

 M4カービングライフルを模して作った、魔導銃を手に取り、マガジンをセット、スライダーを引いて、弾丸を装填する。

 スリングを装着すると、魔導銃を肩から下げ、黒いベストには予備マガジンをマガジンポケットにしまう。

 ヒップホルスターには、シンジにも渡した魔導銃リボルバータイプを装備する。

 更に腰には、アレク兵の目を盗んで手に入れた帝国式手榴弾のコピー品を二個下げる。


「実戦かぁ……。タクロー君は、あの時、どんな気持ちだったのかなぁ……」


 一人つぶやき、ミーナはM4モドキのグリップを握りしめる。

 魔導車に乗り込むと、一路、王立図書館を目指した。


 王立図書館付近に来ると、戦火は既に近くまで来ているのが解る。

 なるべく人目につかない様に魔導車を停めると、徒歩で図書館へ向かう。

 アチコチで発砲音や悲鳴、砲撃の音に爆発の音、魔法発動されたと思しき音も聞こえる。

 壁から壁に背中を預け、半ば戦場に一人行動する特殊部隊隊員にも似た動きで、ミーナは動く。

 図書館裏口にたどり着くまで、戦闘は避けられた。

 裏口の一角に小さな扉を見つけると、ゆっくりと扉を開く。警戒体勢で、銃口を扉の隙間に差し込んだ。


「しんじく~ん……」


 声を掛けるが、返答はない。

 仕方がないので、ゆっくりと扉内に侵入を試みる。

 視界がはっきりしない状況は、サバイバルゲーム時でも緊張する。

 だが、コレは実戦だ。

 絡みつく唾を無理矢理飲み込むと、ミーナは前進する。


「ミーナさんか?」


 小さな声が聞こえる。

 直ぐに警戒は解かずに、ミーナは声の方に銃口を向ける。


「シンジ君!?」

「ああ、俺だよ……」


 両手を上げ、片手には魔導銃リボルバータイプを掲げ、シンジが顔を出した。


「良かった……、無事だったんだね……」


 安堵して、ミーナは銃口を下げた。シンジもまた、一息吐いて手を下ろす。


「ミーナさん、その格好……」

「格好いいでしょ? 特殊部隊の――――」

「しっ! 近くで、物音!」


 シンジに促され、ミーナは姿勢を低くする。


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