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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
二大国家戦争
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王立図書館内の静寂

 ウンディエネ東門には、細工がなされていた。

 細工を施してたのは、アレクシア帝国皇帝直轄特別部隊ゴーストと呼ばれる者達。

 潜伏しいた者達数名が、東門に爆発術式を組み込んだ魔石と、起動用の人口精霊石を組み合わせた物を気付かれぬように設置していた。

 おかげで、アレクシア帝国軍第二機甲師団は難なく門を突破したのだった。


 飛び交う怒声、行き交う悲鳴――――。

 発砲音に、爆発音。

 それは正に地獄絵図である。

 壊されるのは何も建築物や人工物だけではない。

 並木道の木々、近くに停まっていた魔導車、そして、王都で暮らす人々――――。

 全てが、破壊の対象だ。


 木片、瓦礫、金属片、肉片と様々な欠片が飛び散る。

 だが、アレクシア帝国にも、多少の犠牲は出ていた。


 情報は入手していた。

 ゴースト・ワンがもたらした事前情報で、魔導銃の完成形が独自の理論を追加して、投入されているという事だ。

 ミーティアラ王国軍は、魔導銃を牽制の道具にした。

 アレクシア帝国兵の攻撃が緩んだすきに、魔法を叩き込む。

 魔法で翻弄すると、剣や槍を持った者達が突っ込んできた。

 だが、機甲師団の歩兵隊のみならず、アレクシア帝国の兵士達はこういった戦闘を想定した訓練が、既に行われていた。

 各所に居る、部隊長達が口々に大きな声を上げる。


「着剣! 着剣だ!! 近接戦闘用意!!」


 アレクシアの歩兵達は腰に挿していた短剣を抜くと、銃身に取り付ける。

 すると、魔導銃は近接戦闘可能状態に変わる。

 魔導銃の長さと、取り付けられた短剣の長さが相まって、剣よりもリーチが長くなった。

 剣の攻撃は魔導銃剣で牽制し、槍の相手には銃弾を見舞う。

 市街地戦において、これ以上理にかなう戦法は無いと言うように、圧倒的なまでにアレクシア帝国に戦況が傾いていくのだった。


 シンジは軽く伸びをして、備え付けの時計に目をやる。

 時刻はちょうど、昼を少し過ぎた辺り。

 不思議なもので、これまで集中していたせいか、気にならなかった事が、時間を見て急に気になりだす。


「腹が減ったな……」


 独り言をつぶやくと、部屋を出る。

 午後もまた、本と格闘するつもりで居たため、部屋はそのままだ。

 図書館内部は、いつの間にかシンと静まり返っている。

 全員が昼食を取りに行ったのだろうかと思うが、そうでも無さそうだった。

 不思議に思い、辺りを見て回るとようやく、異変に気がつく。

 それは、ちょうど外を見渡せる窓辺に来た時だった。

 窓ガラスが、何かの衝撃を受けたかのようにガタガタと音を立てる。

 次いで、爆発音が何処からともなく聞こえてきた。


「ん? 爆発音?」


 シンジは窓を空けると、音が一気に飛び込んでくる。

 いくつもの発砲音、いくつもの爆発音、いくつもの怒声、いくつもの奇声、いくつもの叫び声……。

 それはまるで、音の洪水だ。


「なんだ!? 何が起きてんだ!!?」


 窓から真っ直ぐ見える家の角から、ミーティアラ王国の兵士が一人走り出すのが見えた。

 だが、次の瞬間には背中から体をくの字に曲げて、地面に倒れる。

 兵士が倒れる瞬間、シンジは兵士の体から吹き出る赤いモノを見た。

 かつて、地球世界での出来事がフラッシュバックする。

 シンジは直ぐに、窓から離れて体を床に這わせた。


「戦闘!? ゲリラ……いや、そんな規模の音じゃない……。内戦……、いや、この都市にそんな空気は微塵も……」


 シンジは、見た光景と聞こえる音を頼りに現状を分析する。

 だが、思考はグルグル回り、要領を得ない。


「くそぅ、タクローとか居ない時に……」


 ソコで、一つの事を思い出していた。それは、ファストの町の事だ。

 状況は違うが、光景がダブる気がした。


「帝国が攻めてきた!?」


 確信を捉え、シンジは窓から慎重に顔を覗かせる。

 聞き慣れない音が聞こえる。いや、正確には、この世界では『聞き慣れない音』だ。

 キュラキュラと音を立てて、一台の魔導車が片鱗を見せる。


「う、嘘だろ!? なんで、あの国が出てくるんだ!!?」


 シンジには、見覚えが有るものが目に入る。

『M1エイブラムス』、米軍が保有する戦車だ。


「でも、エンジン音が違う気がする……」


 シンジの狩人ハンターの能力は聴力を上げるものがあった。

 かつてシンジが、出張先となる中東で体験した経験が甦る。


「いやいやいや、おかしいだろ……、なんで!?」


 事態を確かめるべく、なるべく姿勢を低くした状態で移動を開始する。

 図書館は『王立』と名乗るだけあって、かなり広い作りになっている。

 出口を探すのも一苦労だ。

 メインとなる出入り口は、危険だと判断したシンジは裏口を探す。


 壁伝いに、時には物陰に移りながら移動する。

 人の気配は依然無いが、それでも、慎重に行動する。

 ふと思い出したように、先日ミーナから渡された魔導銃リボルバータイプを取り出す。それは、入り組んだ場所で弓矢を使う事がナンセンスだと判断したからだ。


(弾は、予備で50だっけ? ……まぁ、戦闘にならない方がありがたい。変なゲーム補正でクリティカルショットなんてかましてしまったら……)


 人が死ぬ様を思い浮かべ、頭を振る。


(とりあえず……)


 近くに見えた、扉に近付こうとした時だった。

 ガチャリと静かに音を立てて、扉が開く。

 シンジは咄嗟に、近くの物陰に滑り込む。

 開いた、扉から黒い金属の筒が顔を覗かせる。

 シンジは、険しい顔をする。

 その形にも、見覚えがある。かつて、自分や他の日本人達を救出に来たアメリカ軍が装備していた銃口に似ていたからだ。

 不思議と湧き上がる警戒の色を強め、シンジは身構えた。


「しんじく~ん……」


 消え入りそうな声が、扉の外から聞こえた。

 そして、地球世界の特殊部隊の様な格好の人物が、地球世界の物と思える武器を手に、図書館内へ侵入してきたのだった。

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