王都、強襲
シンジは静寂の中に居た。
調べ物をする為にと、個室を借りていたのだ。
王立図書館には特別に設けられた、個室がある。
気が利いた事に、完全防音仕様になっている。
魔道具のボトルに入れた紅茶は、その効果のお陰で淹れた時の温かさを保っている。
地球世界では考えられない事だが、この世界ではそれが当たり前なのだ。
優雅に紅茶をすすりながら、シンジは文献を読んでいた。
外ではけたたましいサイレンが鳴っているとも知れずに。
ミーナは喧騒の中に居た。
鳴り響くサイレンは、人や工作機械の音にかき消されていた。
王立工房は、サイレンを鳴らす場所には入っていない。
それほどにに、緊急のサイレンは鳴らされなくなって久しいのだ。
工作機械を巧みに操り、彼は自身が設計した魔導銃の部品を一心不乱に削りだしていた。
王城に知らせが届いたのは、サイレンが鳴って直ぐの事だった。
城内全体は、知らせを受けても余裕をみせている。それが帝国が攻めてきたと、言われれば尚更だ。これまで、帝国はイースタル要塞を割って来た事は無かった。
現在はラジラの町まで、陥落している知らせは受けている、だがこの都市を守る壁は最強なのだと信じ切っているのだ。
だが、ソレは信じた壁と共に容易く打ち砕かれる事になる。
東側の壁に強烈な振動が起きる。続いて大きな爆発音。
見張りの兵士達は、悲鳴を上げた。
それを皮切りに、都市東側から騒ぎ立つ声が次第に聞こえ出す。
「帝国の旗だ! 帝国が攻めて来た!」
誰かが大声を上げる。
戸惑う王都の人々の声が、次第に大きくなっていった。
やがてその声は、王城の内部にまで響き渡る。
ようやく事態の重さを知った宰相、トーマス・ロッツ・アクリバルは王都の残存勢力をかき集める。
大半をウラジスへと送ってしまった為、現状の兵力は二万程である。
東門を重点的に攻撃されたのは、痛手になった。
ウラジスへの派兵で、出入りがあった為にやや手薄になっていたのだ。
悪態を付きながら、トーマスは将軍達を筆頭に、各軍役職の人間に怒声を投げかける。
そして、現在製造中となっている魔導銃の導入も指示した。
この判断は正しかったと言える。
何故なら、敵もまた魔導銃で武装しているからだ。
だが、昨今のミーティアラ王国は軍縮の真っただ中にあった。
兵の数は減らされ、戦争用の魔道具は制作を見送られるのもしばしばであった。
魔導銃が製造、量産される事になったのは、リリーアとアルフの進言が大きかった。
だが、それでも、製造されたのは五百を満たない数であり、これから戦闘に挑む兵達のほとんどは、剣とマジックアクティベーターだ。
独特の構えで、敵を迎え撃たんと兵士達が東門に集結していた。
その時であった、門は破られ帝国の兵士達と共に、ミーティアラ王国では全く馴染みの無い魔導車が乗り込んで来たのだ。
砲弾が、銃弾が飛ぶ。
家の窓ガラスを割り、壁に大穴を開ける敵の攻撃はひとたまりもなく、兵士のみならず、都市の人々にまで被害が及ぶのだった。




