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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
二大国家戦争
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悪夢の始まり

 アルセリア歴2017年、6月20日。


 空にはどんよりとした雲が厚くかかり、太陽の日差しを遮っている。

 雨が降りそうで、降らないといった天気は、かれこれ27日続いていた。

 ミーティアラ王国、王都周辺とウラジス周辺では日照不足により、農作物の成長に影響を与えていた。



 ミーティアラ王国から北の空に、ポツンと浮かぶ島があった。

 その名はシルフィアーナ。

 天空の島と呼ばれるソコは、かつては地上にあった一つの国だ。

 地下に『浮遊石』と呼ばれる、特殊な魔法石がふんだんに埋蔵していた。

 ゲーム時代には、キーアイテムの一つであった浮遊石。

 それが、世界が変化した頃から少しずつ空へと向かう様になっていった。

 度重なる地震と地割れを繰り返すこと85年……、シルフィアーナは空へ昇ったのだった。


 天空の島はかつての王国であるため、未だ多くの人達が暮らしている。

 地上から離れた為に、不便な部分もあったが、魔法のおかげで生活するには不自由が無かった。

 そんな天空の島シルフィアーナの一角、島の端で二人の少女がミーティアラ王国の方を見ている。


 二人共、服装はゲーム時代にあった一般メイド服や戦闘用メイド服を着ている。

 一人は車椅子に座り、一人はそれを押す取っ手に手を掛けている。

 車椅子に乗る少女は、片足が包帯でぐるぐる巻きにされている。片腕は動かないと言った様子で、だらりと下がっていた。

 車椅子を押す少女は、一見普通に見えるが、表情は一切動かない。


「南の雲、ずっとあんな感じで漂って……。変ね」


 車椅子の少女は、目を細める。


「変、ですか?」


 車椅子の取っ手に手をかける少女は無表情で、首をかしげる。


「おまけに、雲上面には変なマナの流れが見えるわ……。アレは、大規模な魔法よ、絶対……」

「どんな魔法?」

「う~ん……解らない! でも、良い魔法では無いわね!」

「そうですか……」


 少女達は、空の向こう、ミーティアラ王国を眺めていた。



 早朝から進めた準備を終え、アレクシア帝国第二機甲師団は現在、装備点検を行っている。

 師団長ハービル・オレイン大佐は、ゴースト隊からもたらされた、王都ウンディエネの簡単な見取り図を眺めて、突入箇所を副師団長と話している。


「やはり、北門は硬そうだな……。ウラジスへ向かう連中が出入りする、東門が一番か……」

「ウラジスには、増援として一万五千の兵が出てますからね……。今は何処も手薄だとは、思いますが……」

「副長、俺達は、単体での戦闘はコレが初陣だ……。おまけに、五万以上を第一……スコーピオに相手してもらうんだぞ……。失敗は許されない」

「そうですね。王都を壊滅に追い込んだら、我々は直ぐにウラジスへ行かねばならない訳ですし……」

「ああ、挟撃でウラジスを一網打尽にするのだ」


 真剣な表情で頷く二人のもとに、一人の一般兵がやってくる。


「大佐殿! 全準備、完了しました!」

「よし、全員に通達! ウンディエネに攻め込むぞ!!」


 周囲に居た兵達が一斉に「了解!」と声を上げた。


 土煙を上げ、戦車隊と歩兵隊が王都ウンディエネを目指す。


 ラソネル平野では、ミーティアラ王国兵五万とアレクシア帝国第一機甲師団が睨み合っていた。

 圧倒的な数の差に、ミーティアラ王国兵達には余裕が生まれていた。

 対して、アレクシア帝国兵達には緊張が走る。

 前回の戦闘では、先制攻撃はアレクシア帝国であったが、今回は受けに徹する。

 じっと、ミーティアラ王国が動くのを待っていると、ようやくミーティアラ王国側が前進した。

 一定の距離まで来ると、アレクシア帝国の戦車と魔導銃の雨が降り注ぐ。

 一方のミーティアラ王国は、前面に盾と防御魔法を厚く展開させ、コレを防ぐ。

 完全に防ぐ事は出来ず、何人もの兵が倒れるが、前回ほどの被害は出ない。

 また、ミーティアラ王国側は軍団を三つに分けた。

 中央が銃弾の雨を防ぎ、両サイドに広がる兵達が、ゆっくりとアレクシア帝国側を北と南から挟み込む形を取ろうとする。

 アレクシア帝国側も、無敵という訳ではない。

 武器が、魔導車が特別で、戦術が違うと言うだけで、中身はただの人間だ。

 攻撃が当たれば、怪我もすれば血も流れる。

 そして、少しずつではあるが被害がアチコチで出る。

 多勢に無勢とは、正にこの事であった。


 王都ウンディエネには、これまで聞いたことの無いサイレンが鳴り響いた。

 本来は、強力なモンスターが王都に接近した事を知らせるものであったが、使われなくなって久しい。

 そして、今回それが鳴ったのは、モンスターの接近を知らせる為ではない。

 人間の一団を知らせる為に、鳴らされたのだった。

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