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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
第一章 異世界(ゲーム世界)転移
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続いていた世界

 食事を終えた一行は、改めて図書館を目指す。


 道すがら、タクロー達は目移りするものばかりであったが、ソレはまた後日と言い聞かせた。目的の場所には見覚えがある。そこは、ゲームだった頃とまったく遜色なく建っていた。


「すげーな、ここは変わりなしか」

「風化してるけど、あの時のままだね」

「なんか、懐かしいな……」

「俺、説明書読まない人だから、クエじゃなかったらここには来てないよ」


 タクロー達四人は、その建物にかつての思いを馳せる。

 ファストの町の図書館、それはゲームのあらすじや、操作説明などのデータ(書籍)が置いてあった場所である。はじまりの町にふさわしい仕様といえよう。


 アリーシャを伴って、タクロー達は図書館へと入っていく。中は自分達の世界の図書館と似たような紙独特の匂いが立ち込めている。

 内装はゲームのグラフィック同様の造りとなっていた。見慣れた景色にホッと息をつく四人。

 ファストの町は名前はゲームと同じであったが、景色はまるで違っていた。しかし、ここだけは当時のままだったため、安堵感を覚えたのだ。


 アリーシャの存在を忘れたように、四人は各々物色を開始する。当のアリーシャは、タクローの後ろをくっついて歩く。適当な本、気になるタイトルの本、手当たり次第持てるだけ持ち寄り読みふける。


 数時間後、最初にツッコミを入れ始めたのはタクローだ。


「なんじゃこれ、チュートリアルじゃねぇか!?」

「こっちは、見た目やばいくらい古い本だが内容はキーボードとマウスとコントローラーの説明だぜ……」


 リリースされた当初はPC専用であったが、やがて家庭用ゲーム機でもサービスが行われたこのゲーム。そのために、PC用の説明書と家庭用ゲーム機用の説明書が存在する。それが、そっくりそのまま図書館の、古書部門に残されていたのだった。

 そして、彼等は今まで多少なりとも引っかかっていた部分、『本当にゲームのアフター世界なのか』という疑問が遂に解決したのだった。


 それから、タクロー達は片っ端から本を読み漁る。案の定、ゲーム以前の資料は皆無であった。また、ゲーム時代の資料も無いに等しかった。

 この世界の住人達が意思を持ち、世界として完全に独立したと思われる時期、それは、ゲームのサービスが終了した頃と見て間違いないように感じる。

 ゲームが一つの世界として成り立ったとき、敵となる『魔王』は存在せず、過去のものとして扱われていた。しかし、モンスターはそのまま存在したため、人々はそれに怯えて生活することを余儀なくされたようだった。

 ゲーム時代には無かった町や、村を守るための壁等の建設。モンスター戦闘のために戦う文化の構築と進化。数百年に渡り、創意工夫が織りなされていった。

 そして、ゆっくりではあるが今の文明へとたどり着いたのである。


「なるほどね、モンスターの脅威か。俺達の世界では考えられないことばかりで、この世界の歴史話にはややついていけない感じだわ」


 タクローの言葉に、仲間たちは苦笑いで返事をした。

 彼等がこの世界の歴史について、ザックリと把握した頃には夜になっていた。


 次の日は、アリーシャを伴わずに四人だけで書籍との睨めっこが行われる。


 二日目に彼等が注目したのは、魔法についてだ。

 ゲーム時代では、魔法使いの職業でなければ習得も使うこともできなかったモノ。アフター世界では誰でもが使えるようになった。それが発覚したのは、この世界が成り立ってから数十年後と書籍から読み取れた。

 それまでは魔法使いがちゃんと存在しており、魔法を行使していた。しかし、ふとしたきっかけがあったようで、魔法使いではない者が魔法を使えたことから、様々な研究が進められた。

 そして、長い年月の末に導き出された答え、それは伝説とされていた『フェアリーストーン』の存在であった。ゲーム時代のあらすじの資料が残っていたために、人々の間では伝説の石とされるもの。ゲームのタイトルともなっているソレは、正に世界の重要なキーワードとして存在してた。


 ルクセンドル大陸中央から、北の端にそびえ立つ『世界樹』。その根本にあったとされるフェアリーストーン。

 ゲーム時代では魔王が、世界を手に入れる足掛かりとして、その石を狙っているという設定であった。その石は、ある時に砕け散ったという史実が残されている。それによって、世界には『マナ』という目には見えない微細な粒子が満ちた。マナは時折様々な言葉に置き換えられている。魔法を行使する力、魔力。魔法を発現させるための力、マジックポイント(MP)など、総称して『マナ』と呼ぶようになっていった。


 ファストの町の図書館に有る資料では、マナの存在とマナをどのように扱って魔法を使うかといった内容の上澄み部分といえる物しかないと、その日の夜にアリーシャに言われた。しかし、その上澄み部分を四人で分担して読みふけるだけで一日が終わってしまい、結局帰るための情報は一つも見つけられず終いだった。


 そして、三日目の昼頃にはタクローと、ミーナが最初に本を読むという作業に飽き始めたのだった。

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