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怨恨渦巻く聖地






【絶対に、殺してやるーー!!!!】


未だかつて聞いたことがないような、恐ろしい憎しみに充ちた声色、魂が震えるような悲鳴のような絶叫が、辺り一帯に響き渡り、静まり返っていた空気が、一瞬で変貌した。


0時頃、いつものようにイデア神への祈りを終え、自室に戻るために聖堂をあとにし、廊下を渡っていたときだった。

見渡してみるが、もちろん、夜中は部屋からの外出を禁じているためこの当たりには私の他に誰もいるはずがない。


その声はどこから聞こえてたのか、すぐに分かることになる。

外部には聞こえるはずもないもの。なぜなら、それは思念ー、誰かの感情だった。



いつもはノイズ混じりに単語や短い文体で様々な人間の声が入り交じって、流れ込んでくる。でも、今回のそれは、比類が違う、他の小さな思念をかき消す程の強力な、

たった一言に形容しがたい比類なき感情が渦巻いていた。

その感情はとてつもなく巨大な憎悪、 怨恨、

私の能力の効果範囲はそう遠くは及ばない。ここの中で暮らす誰かであることは間違いない。

誰だ?一体、誰がここまで…?



ピーン



エレベーターの真横を通り過ぎようとした刹那、軽快な音が響き不意に立ち止まる。そしてエレベーターのボタンが赤く点灯し、利用されまさにこの階に止まったことを意味している。 こんな時間に、誰が?と思案するのもつかの間、

開いたと同時に走るように突然飛び出してきた誰かとぶつかりそうになり、否、軽くぶつかった。


私は無意識にその人物を制止するように軽く 肩を抱き引き止める。


それは、結衣さんだった。

だけどいつものような格好でなかったことに一瞬、誰だか分からなかった。

漆黒の足元まで覆うローブは全体的に切り刻まれたかのように歪な形でボロボロに破れ、いつも纏められていた長い金髪も、解れ、3分の1くらい、裾が不自然に切れている。

更に泣いていたのだろうか、目は赤く染まっており、1番目を引いたのは、足と腕にかけて何か鋭利な刃物に切られたかのように細かな裂傷が無数に出来、血が滲み、今も滴り落ちている。

どれも致命傷になるものではなく、極めて陰湿で、悪質さを感じる。



「一体、何がー」


彼女も予想だにしていなかったのか、驚き目を見開くような表情で固まっていたのもつかの間、、彼女は途端に私の手を振り払って、

、ふいと顔を背けて、そのまま逃げるように後にしようとする



「ま、待って下さい!酷い怪我です、一体誰に、、、手当もしないと』



私は慌てて腕を引き止める。

刹那、意識が突然分断されるような激しい 目眩を覚えた


これはー、


「あっ」



その 一瞬掴んでいた手が緩んだ一瞬の隙に、するりと抜け、彼女は走り去っていってしまった。




「……」


酷い頭痛と明滅する視界の中、彼女を追うことを諦め、

意識に身を任せる。

暗転し、少しづつ光が戻ってくる。現実ではない、別の空間の光景が、ぼんやりとだが私の視界に映る。

そうだ、これは予知夢ー、最近見ていなかったから、油断していた。



荒廃した大聖堂ー、入口の扉は破壊され、瓦礫が積み重なり、窓のステンドグラスはことごとく割れ、燭台は倒れ、倒れた蝋燭から火が燃え移り、火の手が至る所で上がっている。


奥の祭壇のあたりに、純白の真っ白な 羽を左右から生やし、

鋭い短剣を手に、誰かに覆いかぶさり、まさに振り下ろそうとしている、誰かを見た。


髪の色は金に染まり、瞳も紅く染まったそれが紫音寺さんだと私には分かる。イデアの使徒であった頃の、天啓を得ていた頃の、彼の姿だ。

そこには憎しみの 炎だけが宿った 真紅の瞳があった





その先を見せることなく途端に視界は暗転し、次のビジョンに切り替わる。


見たことも無い部屋、研究所のようなー、人が入院できそうなポッドのようなものやベッドが並び、大きな機械が立ち並んでいる。


ここは、、何処だ?

この教会の中なのか?


彼の服装は見覚えのある制服で、その至る所に血が滲み、怪我をした身体で、ポッドの中に眠っていたのだろうか?意識のない誰かを抱き抱えるように してたち、鋭い視線を向けている。


彼らを庇うように、前に立ちはだかる、誰かの後ろ姿がある。


その入口付近で、私が戦っている、 召喚陣はあるのに天使の気配がしない、ボロボロに敗れた制服のまま、血に濡れた短剣を両手に持ち、引きずるようにし何とか肩で息をしている


相手は、、長い黒髪に、 明らかに異質な瘴気を放っている、彼女は悪魔遣いだ、



この人はー ー


痛っ


相手の方に意識を向けたとたん、

ぷっつりと予知夢はここで終わりを告げた。

まさか…… 敵襲?この強固な結界を越えて?信じられない。ならば、、内部の反抗か?


裏切り者?だとしたら、あの長い黒髪……どこかで…それにしても私1人がここまで追い込まれるなど、一体誰だ…?それに、ウリエルがいなかったのもおかしい、


ウリエルに何度問いかけても、戦闘が必要ない今、召喚を許されていないし、答えがあるわけもない、もうあの予知夢を見せることもなかった。



……結衣さんへの攻撃ー、裏切りか敵組織の侵入か、、誰かの強い憎しみの感情、立て続けの予知夢、

今朝から予想外のことが立て続けに起こっている。

私はすぐに無線機を取り出し、連絡を取ろうとした。

だが、いつもはすぐに繋がるはずのコール音が鳴り止まない。そのまま、留守電に切り替わってしまう。

ドルジ神父は…昨日の明け方から今日の朝まで長崎の教会に出張に出ている。

幹部候補を選定する年に一度の大事な会合だ、当然、四六時中電話に出られる状況だとは思っていない。おまけに今は夜中だ。現地のエクソシストを視察するとも言っていたし、補佐しているのかもしれない。


たまたま手が離せなかっただけ。そう、こんなことはよくあることなのに、何故か今日に限り

不安ばかりが渦巻いていく。

何かあれば葛城神父に、そう言われているが、私はあの人がどこか、苦手だ。

ルーエン様が謀反を起こしてから彼はイギリスの教会へ講演会に行ったまま半年近く帰って来なかったり、帰ってきたと思ったら気が狂ったかのようにエクソシストは異端、排除すべきだと予備生達に持論を語って寮の予備生の大半が彼に影響されて去っていった。使徒を追放し、司祭を下ろそうとすれば急に掌を返して懇願してきて、エクソシストとして禁じられている教員免許をとって講師になって1日の大半を学校にいるようになり、 我々イデアの任務を放り出して勝手な行動ばかりしてきた。ドルジ神父は黙認しているみたいだけど、、私は許せない。

まぁ、何にせよ裏切り者がもしいるとすれば、それは、ほぼ確定で悪魔結社と通じている、あれだけ大きな気配を巧みに隠し、エクソシストに紛れるのはかなり至難の業だ。

上位の天啓を受けているエクソシストだろう。

だけど、候補者の12人は、斗真さん以外は、全員の過去や素性を調べあげてある。性格も、行動パターンも、

環境や、生い立ちから、悪魔に人生を狂わされ、憎むものが半数以上いる。そして我々エクソシストは彼らを救済し、希望を与えた。

我々に仇なす者がいるなど、考えがたい。



それより、斗真さんも心配だ。第1の試練は明日の明朝だ。 何かあったらあの人に顔向け出来ない


彼は、自室で静かに眠っていた。


「はぁ……良かった」


彼があてがわれた自室のベットで眠っているのを確認し、、近くのソファに腰を下ろした。


予知夢は今すぐというわけではない、明日かもしれないし、もっと先かもしれない。彼の身の安全が保証されたわけではないけれど、それでも、、降りかかる不幸から、死の運命から少しでも遠ざけてあげたい。


だけど、確実に分かることは、やはり紫音寺さんは、天啓を取り戻したとしても、私たちと敵対するということ。

やはり、私たちを受け入れられなかったのだ。

……昼間の喧騒など、なかったかのように安らかに眠っている。

また、今回も拉致するような形になってしまったことを後悔する。全て教会長の取り決めだから、私に権限はない。


結衣さんの記憶のデリートに失敗してから、彼の脳と精神には大きな負荷がかかってしまった。昼間彼に使ったヘッドギアは、結衣さんの記憶がないことが前提だ。この世界に彼女が生存していては、彼の記憶に彼女が存在していては、試練に大きな影響を与える。


正直、私も結衣さんの名前が彼から出たとき、久々に肝が冷えた。

教会長のあの強力な能力が効かなかった。教会長は予測済みだったらしいから、あまり取り乱してはいなかったけれど、、どんな優秀な天啓を得たエクソシストさえも彼の暗示には敵わないと言われているのに、本当に彼の中の結衣さんの存在が大きすぎる。


葛城神父も彼の説得に失敗したと言っていたし、しまいには教会長が脅しのように彼に能力を使って、それが元々苦しかった彼の現状を更に追い打ちをかけた。

今は、私の与えた強壮剤が、効いているのだろうか、

こうして眠っているだけを見ていれば、あどけなさの残る学生、周りの高校生たちと何ら変わらないように見える。

彼は…私が見てきたどの予知夢でも、救われない。


私のこの能力は、今の天使、ウリエルの加護を父から引き継いだ時に得たものだった。

予知夢といってもその予知夢はいつもマイナスな未来に限る。自分や身近な人間の不幸や死、、自分の生命の危機やこの世界線でのエクソシストの悲劇的な未来ばかりを移した。


漠然とした小さな危険や事故から、数十年後の大きな未来まで多種多様に、映画のカットのように映し出された。

この予知夢を見て、私はドルジ神父に報告し、事前に悲劇を防いだり、そのための 計画 を立てる。

時空を超えられる能力を持つドルジ神父と2人で間違った選択を選ばないように、悲劇の未来を防ぐため、或いは失敗した未来を書き換えるため、数多の世界線を旅してきた。数多の世界線を見てきたが、行き来するには代償がいる。飛ぶがわの寿命を削る、つまり、ドルジ神父の寿命だ。 神父には自分の寿命が見えている、だから今回が最後の挑戦だといった。

私たちは、失敗し、修正のしようがないほど絶望しか待ち受けない世界線を経験した。その全ての世界線は捨ててきた、エクソシストにとって破滅しか待ち受けない未来だ。

この世界線、β世界線が、最後、失敗したら、私たちの任務はこれで終わる、

イデアは崩壊し、第3の目で世界線を観測する人物が1人もいなくなり、エクソシストの未来を守る存在も、 何も分からなくなる。


私たちは、はるか昔から、悪魔結社討伐を最終目標に、ずっと、エクソシストを存続させ続け、根絶やしにならないよう、希少なエクソシストを育て、守り続けてきた。

ほぼ確定で発病するエクソシスト病のこと、特効薬がないこと、天啓を得るにはあらゆる雑念を払い恋愛感情すらも抱けない相当厳しい修行が必要なことを隠し、エクソシストを募り、ずっと騙してきた。


こんな私が、本当はこんなことをいう資格がないことは分かっている。

だけど、こんな監禁のようなやり方はしたくなかった。特に彼には、もう解放されてほしい、悲劇から、罪からー

葛城神父やドルジ協会長は彼は罪を犯した、そのせいで天啓を失った、償いとしてエクソシストで居続けることは必然だと口を揃えていう。実際、彼は多くの人間の記憶を改変し、我々を欺いた。 だけど、、私にはどうしてか彼はただ恐ろしい陰謀に巻き込まれただけの、被害者に見えてしまう。何故、そう思うのか、分からない、彼の試練を垣間見れば、分かるのだろうか…?


私と彼は、少し似ている、一心不乱に修行を続け、使命だけのためにあらゆる欲望を捨て、祈りを捧げていた昔の私に、

罪を嫌い、遠ざけ、周りを自分の信者で固めて、自己防衛し、自らも欺き、歪んだ信念を貫く彼は、 昔の使命に囚われていた私とよく似ている 。


彼は……



(何故蘇生を止めようとするのだ、朔夜)


(あなたの蘇生術は身体を元に戻せるわけではない、彼は相当思い詰めて自殺を測った、こんな状態で息を吹き返したりすれば、また同じ末路を辿るだけです!)


(この彼は契約内容を知っていた。この手紙が証拠だ。彼は天啓を使って改変する前の、本当の記憶を思い出しているはずだ。死なせはしない。見た目など後からいくらでも整形できる。それよりもまた次の世界線に飛び記憶も現実も脚色された世界で1からやり直す方がハイリスクだ。)


(この世界の彼はもう、駄目です。私たちには救えなかった。だから死を選んだ。それに、亡くなったのは彼だけじゃない。彼だけ助けられない。この人たちの、死者の尊厳を踏みにじってはいけない)


(…死者の尊厳だって?そんな一般人の倫理のために、君は、エクソシストを滅ぼすつもりなのか?もう我々イデアの使徒らには後がないんだよ?彼は全てを知っている、ようやく星の数ほどの数多の世界線から探し出せたのに、、)


(…今、彼を生き返らせ、全てを知ったとしても、もう何もかも手遅れです。3日後、八王子は壊滅する、結社の崩壊と共に、解き放たれたあの悪魔によって、、残ったエクソシストたちも、この八王子も、、我々はその悪魔を封印して、そして終わりましょう。もう、ここも、、失敗した世界です。)



「…!!」


気付けば、私は斗真さんの部屋でうたた寝をしてしまっていたようだった。

嫌な、記憶をおもいだしてしまった。


斗真さんを救えなかったこともそうだが、蘇生させようと言い出したことなど今までなかった。それだけ、寿命がもう、後がないと散々今まで聞いていたのに、私はどこか、現実味を帯びていなかったのかもしれない。彼が、全知全能の、神かのように、彼の能力に、頼りすぎていた。

実際、彼の時間跳躍の力は凄まじい。世界線を超えずに、同じ時間軸の中で、一定の時間を巻き戻すことができる。半刻と短いが、その力を使えば死をも覆すことができる恐ろしく強力な力だ。

蘇生に近い能力を有する天使の天啓を得ているエクソシストは、教会長、あなたしかいない。




ドルジ神父はエクソシスト存続と魔人や悪魔に対してはいくらでも非情になれる人だ。


ドルジ神父はイデアの使徒の最頂点にたつ歴史の守護神となる天使を三体以上身に宿している。ウリエルの読心もドルジ神父の能力には弾かれてしまうし、予知夢は彼の運命は見せることなどない。私は盾には強いが攻撃力やスピードは劣る。何より神父の加護の一体は強力な洗脳、思考誘導、幻覚を司る。一瞬で並大抵の天啓を受けたエクソシストは洗脳され戦力外になる。ウリエルの階級は熾天使だが序列は下の方で、むしろ大天使に近い。到底熾天使三体となど及ばない。


!…私は、何を考えているんだ?ドルジ神父と、闘おうとしていた?


こんなこと、私らしくない、私は、ただ命令に従ってイデアの任務を果たせばいいだけ。


そうだ、それだけなんだ、

……other side……………………………



「第1の試練の合格を認めます。」


機械的な音声が響く。世界が暗転して、

意識が混濁する。


冷たい、無機質な床に私は倒れていた。



過去と向き合う、それが第1の試練だと聞いたとき、

やはりと思った。

忘れたい過去やトラウマ、私にとっては14の時の、あのクラスメイト全員を巻き込んだ最悪の事件、それしかないだろう。

でも私にとって、それは忘れたいなどと簡単な言葉で表すことが出来ない、

一生の業だった。


最近は、考えないようにしていた。あれは私の浅はかな弱さが招いたこと 、

魔人を恨んだ。恐ろしく強い憎悪と感情を抱いたのは、あれが初めてだった。

恨み、憎しみ、苦しみ、 今もずっと、 忘れることなどない、赦すことなど有り得ない、おぞましい程に湧き上がる憎しみの感情は今でも胸の奥に渦巻いている。

でも、私だって馬鹿じゃない。復讐は復讐しか生まないことをあのとき私は身をもって知った。

葛城神父、ユナン神父、斗真に、瀬野に、大勢の皆に私は救われた。

だから、もう、記憶の奥底に封じるつもりだった。あの日まではー。

私が白百合寮に入って、最初の数ヶ月は散々だった。

仕方なかった。でも、皆には私がどれだけ説明しても無駄だったし、暴れて、備品もたくさん壊したのは事実、学校どころか自分の部屋からも出られない状態が続いた。

はたから見たら、ただの不登校生徒だろう。

でも神父たちは私に根気強く接してくれた。家族でさえ私に匙を投げて、入院させられていた私に、白百合寮に来ないかと声をかけてくれたのが葛城神父とユナン神父だった。

少しづつ、少しづつ皆が私の傷を癒してくれた。

特に瀬野には、本当に助けて貰ったな…

最初あいつに会ったときは、仏頂面で怖い男だと思った。

シスターの中には私の事情を知らず、私を気味悪がるシスターもいて、肩身の狭い思いで、毎日生きてる意味も分からなかった。

聖堂の済で、1人泣いていた私に、瀬野はいきなり自己紹介もせずに私の元へ早足で歩いてきて、真顔で私を ぶった。いきなり 平手打ちされたときにはびっくりしすぎて空いた口が塞がらなかったな。

皆が私は悪くない。全て不幸な事件だったんだ、って言ってくれたのに、あいつだけは、どうして復讐なんて望んだんだ、お前にも責任はあるって、

言われたとき、 腹が立った。何で当事者でもない見ず知らずの人にいきなりそんなこと言われなきゃいけないをだって、

あんたに私の何が分かるのかってついかっとなって喧嘩みたいになったけれど…あのあと、しばらくたって、あいつは救急箱と濡れタオルやら色々持って、私の部屋に来て、手当してくれたっけ。シスターに謝らされてた形で、無愛想だったけれど、すごく優しかった。

起きたことは変わらない。過去の私は弱かった。でも、今の私なら守るだけの力を手に入れた。だったら、皆を守るために、ここにい続けよう、そして、罪を償い エクソシストとして1人でも多くの人を助けよう、そう思った。



私の村は小さな田舎の集落で、誰もエクソシストや悪魔に理解のある人はいなくて、先祖代々メデューサの家計だった私たち桜田家は、祖母が、エクソシストに出会い、天使の加護を授かるまで、誰も長生き出来なかった。正体不明の敵から身を守る術はなかったから。

祖母はたまたま出かけた東京で偶然エクソシストに出会い、メデューサの強い血をかわれ、エクソシストになる素質を見出され、東京の教会へ上京した。そして瞬く間に才能を引き出し、天啓を受けた。だけど、祖母は東京から二度と帰ってくることはなかった。戦死した、と聞いている。

祖母は実家に帰り、エクソシストの存在を布教することはなかった。だから私たちは、村人たちに、桜田は、呪われた血族、 関わると不幸になる、などと迷信が行き交うようになっていて、私たちは間違いないも長い間、迫害を受けてきた。


祖母が亡くなってすぐ、教会から手紙が届いた。私が20歳に満たぬメデューサであり、天啓を得る素質があること、祖母が暮らしていたバルビナ教会は、エクソシストが特に少なく、天啓を受けたエクソシストは祖母と、神父1人しかいなかった。だから、私に補佐でも

構わないから助けて欲しい、更に、

そこで悪魔の存在、それを祓うエクソシストたちの存在、私たちのような悪魔が好む血をもつメデューサの存在など事細かく手紙には書かれていた。

ここにいても身を守る術がないと分かった両親は、すぐに私をその教会へ送ることを決めた。


バルビナ協会のエクソシスト予備生と言われる学生たちも、神父さんも皆優しかった。

何も分からない田舎者の私に 1から教えてくれたし、

貧乏だった実家を考慮して、神父様は学園にも通うための学費も、日常生活に必要な様々なお金を工面してくれた。

とても感謝している。

でも、そこの協会にはまだ天啓を受けた強いエクソシストは誰もいなかった。だから、呪いにも気づけなかった。

だから、最悪の結末になってしまった。


バルビナ協会の人達には手に負えなかった。別にあそこの人達は何も悪くない。

あのときの私を客観的に見たら、誰だってイカれてると思う、


「……っ 」



あの事件のあと…私は強制的に閉鎖病棟に隔離されて、その後、数週間後くらいだっただろうか?今の、アトランティス教会の人達に救われた。






「これは?」



「お土産です、修学旅行の、先週奈良に行ったんですよ」


可愛らしい堤とは裏腹に中から出てきたのは玩具の小型サイズの日本刀


「刀…?」


「これは 物吉貞宗といって、徳川秀吉のかつての愛刀で、これを帯びて出陣すると必ず勝利を得たことから幸運を運ぶ素晴らしい刀なんですよ!」


「そ、そうなの、、?物知りなのね。」



「歴史のことなら何でも私に任せなさい!」



「ふふっ…」


胸を逸らして威張っていた彼は、私を見ると小さな赤子を見る眼差しのような穏やかな笑顔で、


「良かった、やっぱり柚は、笑っている方が素敵です。柚には、幸せになる権利があります。だから、お守り」


そう、言ってくれた。

昔、私が塞ぎ込んで学園にも行かずに部屋に閉じこもっていたとき、同じクラスだった斗真は、よく私に学園の話を聞かせてくれた。

自分だって、楽しい学園生活なんかじゃなくて、あまり話したくなかったはずなのに、それでも、毎日のようにノートを見せてくれて、宿題を手伝ってもらった。

私が感謝している人達の中には、斗真、貴方だって入っているのに…


なのに……



(はい、彼女はもう、本当に見違えるほど強くなりました。だから、、ー

ご実家の村には、最近教会をお建てになられたとか、だけどまだ天啓を受けた力のあるエクソシストはいない、信仰者もあまり ーと聞いています。

是非ここは、 、ーでしょうか?エクソシストの貴重な価値を、途絶えてはなならない)


(いいえ、まさか、毛頭もありません。私は、 柚も、実家に帰りたいとよく私に漏らしておりまして…ええ、)




(指定校、推薦受験枠…合格者?こんなの、応募してない、、)



(凄くエクソシストに理解のある高校で、なんと講師はあの日本エクソシスト協会の、ドルジ会長が定期的に講演に来ていただけるんですよ!

日本の全ての教会の中枢、いわばエクソシストの本部、優秀なエクソシストやかつて偉大な力を持っていた元エクソシストも集まり、エクソシストとして1番の憧れのような場所で…)





! 会場を埋める突然の歓声に物思いにふけっていた思考を 現実に引き戻された。




『第1の試練を乗り越えた皆、おめでとう。そして、ありがとう。よくこの厳しい状況で残ってくれた。』



『君たちは、選ばれた者だ。』


神父の声に現実に引き戻された私はぼんやりしている頭を切り替えて祭壇に意識を向けた。


私を含めた第1の試練を合格した予備生達が、集められ、長椅子に座っている、昨日は、12名いたのに、今集まっているのは私を入れて6人、、大分少なくなったものだ。


つまらない演説…

そうやって言葉巧みに私たちエクソシストを閉じ込め、何処にも行かせないようにしようとしている。実際、学園には登校させず、最終試練が終わるまで外には出られない、出入り出来るのは聖堂と食堂と、自分の部屋と懺悔室、そして庭だけ、

監禁のような生活、、実際、悪魔から私たちに闘いしか与えず、

でも、そんなことはどうでも良かった。


私がここにいるのはあの罪滅ぼしのためー、

本当なら牢屋送りになっていた私はエクソシストに救われた。

彼らがいなければ、今私は表社会に出られなかった。

感謝している。特に、葛城先生と、瀬野には、、

アトランティス協会という居場所を、私に与えてくれた。

だから、この戦いは命懸けで臨みたい。私のことを使い捨ての駒だと言われても構わない。


説明会によれば、第2の試練が始まるまではすこし間がある。大掛かりな会場と設備が必要なため1人ずつ行うらしい。私の番まで、2日あった。

ぼんやりとした頭のままフラフラと歩いていた。

思い返すのは、あの日のこと、どうしてだろう、ここに来てから、やけにあの日の過ちばかり思い出す。

試練で再び目の当たりにしたからかな。

確かに、あの事件のせいで、私は全てを狂わされた。

あの事件さえなければ、私も、私の家族も幸せだった。

心の奥底で、絶対に許せない感情がある。

私は高校に入ってからはずっと、その感情を理性で押さえ込んで、表に出さないように務めてきた。

でも、彼女が再び目の前に現れたとき、初めて神を呪った。

忘れようとしていた思いが、変わることを受け入れていた 私を、絶望に突き落とした。



「葛城先生から聞いていましたよ、柚…随分、辛い思いを、したんですね。大丈夫、もう心配要りません。ここには貴方の見方しかいない、もう、苦しまなくて、良いんですよ。」


「…っ」


泣き出しそうになる感情を必死で抑え拳を強く握りしめる。

あの言葉は、確かに本心だった。皆、なのに、一瞬でそれを上書きした。


誰も信じてくれない。皆忘れている、ううん、なかったことにされている。


私だけが、それに染まっていない。

何で私は、あのときー、



でも、勝てないー、馬鹿な私だって、分かっていたんだ。

だから、もういいかなって、私も、皆みたいに、役割を、与えられて、 筋書き通りの、

歯車の1つになっても、いいかなって、

そう、思い始めていた、


『既に全ての世界線で半数の彼が死んだ。彼の死は確定した未来になった。今生きている彼も、年内に命を落とすだろう。だからその前に、我々本部の監視下においてあらゆる敵から守る。そして、期限までに天啓を取り戻させる、それしか、我々エクソシストが生き残る道はない。』



そうだ、こんなことを、聞いてしまったから、かもしれない。

確定した死の運命ー、それがどれだけ強力なのか、私は自分の天使から聞いていた。


ー盗み聞きするつもりは無かったんだ。ー


でも、試練に合格して、聖堂に戻るために歩いていたら道に迷った。

ぐるぐる歩き回っているうちに、私はいかにも頑丈な扉を見つけた。オートロックセキュリティで管理され、開閉にはパスワードか指紋認証か、特殊な

解除方法が必要なとてつもなく大きな扉

扉の前に部屋の名前はなく、

ただ立ち入り禁止の表示が至る所に貼られていた。


何故か私は半ば反射的に近くの死角になっている壁に隠れた。

後ろめたい気持ちからか、

ゆっくりと扉が開き、男女数名が話しながら数歩歩いて、そして立ち止まった。




「斗真は

彼の天使は始祖の第2位だ、始祖の天啓を得たエクソシストは、死の運命を打ち破れる。それを、あいつは、ルーエンは、その身を持って証明した。典型を取り戻すことが絶望的に不可能な状況にさえならなければ、彼は必ず助かる。だから君はそんなに危険を侵さなくてもいいのに』


何重もの聖衣を身につけた金色の輝く

ドルジ神父張と、やや赤みのあるセミロングの茶髪をし 若い青年、説明会の時、司祭側で慌ただしく準備していたのを見た、幹部だろう

そして、全身黒い ローブに身を包み、フードを深く被り、不思議な仮面を付けた女と、


この奇天烈な格好の女の人は、、誰だろうー、 エクソシスト…?でも、天啓を受けているなら同じ 気配がしない、空気が違うもの、




「…いえ、確かに私は無力です。力も、権力もない。だけどイデアに 自分の身くらいは守れるようにならないと、それに、魔人には手も足も出なくても、小さな脅威ならば私は彼を守ることが出来ます。


「幻想世界を見せたことで、、大分、、憎しみを買ってしまったようだがね、」


「それが狙いですから、平気です。彼を守るためなら私は、何にだってなる。」



「円城寺君は、、確かに類まれなる才能の持ち主だ。あの年齢であれほどの強大な天使の力を得、それをすぐにコントロールし最大の力を発揮した。彼か覚醒すれば、イデアの使徒は集結する。」


天啓を剥奪され、私は過去に遡る力も衰え、バラバラになった。今の我々イデアにはるフィアぬに対抗する力はない。だが、ようやく天啓を取り戻すシステムを構築に成功した次が最後だ。我々は必ず勝つ。何としても、彼に試練を乗り越えて、天啓を取り戻させる。』



彼らの1人がは扉に何やら手をかざし、

白い頑丈そうなオートロック らしき扉はゆっくりと開く、彼らはその中に入っていった。




心臓がうるさいほどに高鳴っている。

この人たち、2人は知っている。ドルジ教会長とその側近の幹部エクソシスト、

あと1人は?あのお面を付けた女ー、エクソシスト?違う、何の気配も感じなかった。



(あなたは知ってる?教会長のおそばにいつも控えてるあのお面の変な女性)


(ああ、あの妙な狐のお面の人でしょ、知ってる、でもエクソシストじゃないし、シスターでもない、不思議な人よね)


(何か、反エクソシスト組織、はるフィアから寝返った人物らしいの)


(え!?じゃあ悪魔遣い?)

(いや、悪魔は従えてないみたいだけど、エクソシストじゃないし、なる資格もない、この神聖な場所にどうしてそんな穢れた人間が側近扱いされて優遇されてるのかしら、私たちは必死に試練を受けているというのに)


(…私、葛城神父様とあのお面の人が話しているのを少しだけ耳にしたのだけれど、何せ姿を見せたらこの世界が滅びる、とか、お前の役目がなんとか言ってたの)


(世界が?何の冗談よ、 もしかしたら幹部の誰かの愛人だったり)


(アリエルかも、

だって何の戦いの役にもたたない女を侍らしてる要因なんて…

恋愛はご法度って散々私たちに吹聴しておきながら当人がそれでは世も末ね)



研修で聞いたたわい無い噂話が蘇る…

世界が滅びる… 私にはそれは比喩でもなんでもなく現実味を帯びた話にきこえた。

あの扉の向こうにある隠された真実、そして、招待を明かせない謎の女性、、

明かせば限りない危険が降りかかる人物、力もないのに、それでもこの協会に匿う理由、

私は、頭を働かせて考える。 エクソシスト協会の秘密

に興味はない、でも、、

とてつもなく、嫌な予感がする、これは、ううん、予感なんかじゃなくて、もっと確信めいた、恐ろしい仮説を、私は思い浮かべてしまった。


いくら、頭の中で否定しても、そうだとしか考えられない状況証拠ばかりが整っていく。


…… side other……………………………………………



いくら時間が経ったか分からない。

吐く息が白くなってきた。


-7度、いくら厚着をしてきたとはいえ、30分近くも冷凍庫に近い温度の場所にいたため、手足の感覚がなくなり、意識も覚束なくなってきた。

また体温設定を上げるのを忘れていた、

私の悪い癖、だな

それほどまでに、、思考にふけっていたことを認めざるを得えない。


そして、私は目の前の人一人分の大きさの酸素ポッドに目を向ける。

そこに横たわり、浅い呼吸を繰り返しながら、眠り続ける少女、、、。

内にこの教会を壊滅出来る程の強力な悪魔を飼っているとは思えないほど静寂に、、、眠り続ける。


これは高度な技術で人間の人口的な冬眠を可能にする冷凍ポッドだ。

-7度、この温度で人間は仮死状態に陥る、そこに、酸素と、栄養を送り込むことで、心肺停止させることなく、仮死状態を作ることを可能にする

脳死と違う点は、温度を体温と同じにし、栄養素の濃度を上げれば、回復するということ。

だけど、今は身体の全ての免疫力が極端に落ちているから、如何なるウイルスの侵入も命に関わる。必ずしも安全とは言いきれない。

人口冬眠は、現代の医学で既に用いられている最先端技術だ。

低音では活動の鈍いウイルスや、死滅するウイルスの病の進行を抑えるのに効果的だという。だが、

この冷凍酸素ポッドは、人口呼吸器や、莫大な費用がかかるため、取り入れている病院はまだ少ない。

エクソシスト病の進行を抑えるのに有効という理由で、エクソシスト教会にも、このポッドが数台置かれている。

アトランティス教会の地下施設にもあった。

エクソシスト教会が世に出している進行を抑制するワクチンの作用よりも効果は大きく、通常のエクソシスト病が3ヶ月〜半年で死に至るのに対して、このポッドで人口冬眠をさせた時間におよそ比例して、生き延びる期間が長くなる。

だけど、冬眠期間が長ければ長いほど体力も免疫力も奪い、回復後も元の身体能力にすぐに戻ることは不可能とされ、また、結局抑制するにすぎず、病の進行が、レベル5、羽が内蔵や脳にまで進行仕出したら、

ポッドを使ってももう、回復する見込みはない、

エクソシスト病のワクチンの開発は、アトランティス教会の地下施設で秘密裏に行われていた。

規則正しく単調に呼吸を繰り返し眠り続けるだけ…




ふと、廊下の向こうに気配を感じた。



来た、か、ようやくー、、




「やぁ、いらっしゃい、ここは暗いだろ?少々寒いが、中の方が安全だ、」


「!葛城、神父様」


私は手招きしながらオートロックの頑丈な扉の中へ入っていく。


「えっ、あの…」


てっきり、こんなところにいたことを、咎められると思っていたから、訳が分からなくなる。


そこは、随分寒い部屋だった。空調がかなり強く設定されているのか、天井を覆い尽くす巨大な空調から冷たい風が容赦なく吹いている。

窓もなく、閉鎖的な空間だった。


この教会の秘密、

とにかく強固なセキュリティで固められ、簡単には踏み入ってはいけない場所であることは分かった。


水晶…?いや、核…?の中心からポットのようなものがキラキラとエメラルドに光るそれを囲むように8個並んでいる。




「ゆ、結衣!?」


人一人分の大きさの機械に近づき、そこに横たわる人物を目にした刹那、飛び退いた。


「なんで、こんな、ところに?」


それは、アトランティス教会に居るはずの、結衣だった。制服姿のまま、少し霜の降りた冷たい機械の中に眠っている。眠っていると分かったのは、隣の心電図のような機械が波打っていたから。鼓動は小さく、血圧もかなり低い数値ではあったが、



(彼女は、とある目的のために時期が来るまでコールドスリープされている)


「コールド…スリープ?」



(その話は後、、)


突然手を引かれ奥の小さな制御室のような機械の立ち並んだカーテンの向こうの子部屋に連れて行かれる。


(君はここに隠れていてくれないか)



(え!?)



(今からここに、とある女性が訪れる。彼女は仮面で顔を隠しているが、私がそれを暴く。私たちは、これから物騒な話をする。場合によれば戦闘になるかもしれない。)


(ど、どういう意味ですか?)


(桜田君、私は君にチャンスを上げよう。

桜田君にとって全てを狂わせた元凶、

彼女を許すも許さぬも、君次第だ)



(その先にあるものが、最後に向けられるのは憎しみ、いや、それ以上のー。


最後にポツリと聞き取れない何かを呟き、

状況が読めないまま、固まった私を一瞥し、葛城先生は私を置いて戻っていく。


しかし、その真剣な表情に、私は何も言えなくなってしまった。


………………………………………………………………



ピーッ


入口が機械的な音を鳴らし入室音を知らせる。



「こんにちは、結衣、いや、久しぶり、かな」


居るはずのない人物と、聞くはずのない言葉に、時間が制止し、身体が硬直したように動けなくなった。


無機質な廊下を辿り、地下施設の入院病棟の扉を、いつものように開けた

ここにはもう1人の私が眠っている。

ここに入れるのは教会長と朔夜さんと私だけ。

なんで、葛城さんが、いや、それより、どうして私の名前を、、 ?


「どうして正体がバレたか、納得行かないって感じかな?」


「言っている意味が分からない。私は、リリアナ、そんな人、知らない…!」


「そういうことにしないと、神の禁忌に触れるもんね、世界に狙われたらそりゃあ一溜りもない、確実な死しかないもんね、」



「だから、私は…!」


「でも大丈夫だよ、結衣、 」


そういって、高貴な祭服に包まれた腕をまくり上げて

みせた。


「!」


あれは、、十字架の、刻印… まさか、、


「そう、私も、使徒なんだよね。そして、私はα世界線の記憶を受け継いでいる。」


「!!」



………………………………………………………………


「君はα世界線の私は死んだと聞いたから、微塵も疑わなかっただろうね、実際、肉体は確かに死んだしね

。君は私に疑いを抱いている」


「…一体何が言いたいんですか?」


「前の世界線で斗真が自殺したとき、、あの場にいた私と朔夜を疑っている。そう、能力が使えたエクソシストの私たちが、自殺に見せかけて殺した…とかね」




「……」


「どうして考えてることが当たったのか、って?もちろん、勘じゃないよ、読心が使えるのは、朔夜だけじゃないんだよね。朔夜のに比べたら劣るけどね」



「結論から言おう。私は何も手を出していない。何せ、あの場で高位の悪魔と1体1だったんだ。残念ながら、斗真たちに気をかける余裕はなかったね」




「……」



「結衣、私と少し手合わせしてくれないか」



「は、はぁ…?意味が分からない、どうして私が」



「訓練だよ、訓練 君はいつも1人で射撃場にいるけれど、たまにはアイテと手合わせしておかないと、実践で役に立たなくなるだろ?」




「…何故、実践用の剣を抜く必要、が…?意味不明です!」



「君の実力を測りたいんだよ、大丈夫、ただの練習だよ、君は大切な切り札だからね」



一瞬の隙に、虹彩認証にてただ1箇所の出口にロックをかけ、

固まったまま動く気配のない結衣の間合いに絶やすく入り込み、

神々と光り輝く大剣を容赦なく振り下ろす。


「!」



ふーん、咄嗟にハンドガンの柄で弾いた、か、ドルジが分け与えたという能力は伊達じゃないってことか。


多少の怪我は想定内だった。むしろ手負いの方が好都合だ。


だけど、まさか、聖堂内でこんなことをしだすと思わなかっただろうな、結衣。


だがこの女が今はどれだけ無力なのか一目瞭然だろう。


「辞めて下さい!、私たちは協力関係にあるはず…!あなたの行動の意味が分からない!」


何度目かの攻撃の末、銃を弾き飛ばした。銃はカラカラと軽快な音を立てて床を転がり、あらぬ方向へ飛んでいく。


彼女は完全に丸腰状態だ。



「…っ」


「これでイデアの使徒の仲間だって?笑わせる。ただの人間だから仕方ないって?教会長が、朔夜が、守ってくれるとでも?敵は1ミリも手加減などしてくれないぞ!」


彼女は涙ぐみ、血塗れになりながらも、逃げ出そうという気配は感じない、防戦にもならない、分かっていながら、何度も立ち上がり、私を見据える。



「辞めてください!こんなのは、私闘です!私に、なんの恨みが、、!」


「……」




「そうだね……こんな馬鹿げた攻防は終わりだ。」



私は一瞬、 彼女とすれ違い、決着はついたー、ナイフを腰にしまう、と同時に、


世界に、音が戻る。

カランと小さな音をたてて 彼女の付けていた仮面が真っ二つに割れて転がっていた。


初めから狙いはそれだったワケだけど。



ふーん、整形もせずにここに乗り込んだんだね、この女は。



「やっぱり、私の予想は正しかった。久しぶりだね、結衣、私にだけ隠すなんて、寂しいじゃないか。」


「……っ、こんなの、任務となんの関係が?ドルジ神父が黙ってないですよ!」


彼女は捨て台詞を吐くと、背を向け、逃げるように後をたった。



「ああ、私たちは協力者だ、約束しよう、私は君にもう二度と剣を向けたりしないよ。襲撃の日まで、訓練、頑張ってね」



自動ドアが完全に閉ざされて静寂が訪れる。



「……チッ、この、死に損ないが…!協力関係だと?笑わせる。」


ああ、忘れていた。最後の、仕上げをしなければ、


後ろを向けば柚がフラフラと、覚束無い足取りで出てきていた。




「柚、君の大切な人たちを奪ったのは誰だ?」




「柚、君を最後、見殺しにしたのは誰だ?」




「謝罪1つしなかったのは、誰だ?」



「私は君の願いを叶えてあげられる。君の復讐、手伝ってあげる」


二世に渡り、天使オリフィエルの加護を受けた選ばれし純血のエクソシスト、桜田柚ー。

君は選ばれし者だ。


柚、純粋な君を堕天させてしまわなければいけないこと、私の計画に利用するような形になってしまったこと、許してほしいとは、言わない。

でも、私1人では決して勝てない。

だから、手駒を増やさせてもらう。


ずっと、この時を待っていた。


今度こそ、、決着をつけさせてもらう!!


………………………………………………………………




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