私の光
…………20××年 5月 β世界線……………………………………………………
!!
契約の証のリングが強い光を放っている。これは何か重大な 前触れだ。
天使が私に何か語りかけている。私は深呼吸し、意識を1点に集中させ、る。
何だ、何が起きている…?
東の、本部の法学から強力な時空の歪みを感じる。何かこの世界とは違う異質なものが入り込んできたようだ。
悪魔か?地獄と現世の境目がまた開いたのか?
パソコンを開きエクソシスト協会のホームページにアクセスする。何か大きな瘴気や事件が起きた後はエクソシスト協会から何かしら掲示板に連絡があるだろう。
いつも通りだ。特に1点に悪魔やエクソシストが集まっている様子は…ない
突然鳴り響いた
インターホンに肩が跳ねた。
今日は非番で、教会に出向く用事は無い。家族は長期休暇で一昨日から実家に帰っている。
一体誰だ、こんな朝早くに
「…はい、葛城です」
インターホンを取るけれども応答がない。
面倒に思いながら階段を降り玄関先に立つ
扉を開けた先には誰もいない
悪戯か…?そう扉を閉めようとした刹那、
背後に 悪寒と戦慄が走った。
振り向きザマ、
ゴッ という鈍い
鳴り響き、少し遅れて 形容しがたい 強烈な痛みが 襲いかかる
そのまま地面にひれ伏し
朦朧とする意識の中、何とか相手の顔を
暴漢…?いや、違う この気配、この瘴気、は……
再び狂気が高く振り上げられ、
その直後、私の視界は真っ暗になり、
「俺は、2人も要らない、」
………………………………………………………
「ドルジ神父!今まで何処へ言ってらしたのですか!?電話もメールも通じない、挙句の果てにエクソシスト協会に尋ねたら居場所は分からない、突然疾走したというじゃないですか!」
「…葛城か。ああ、ちょっと向こうの世界で用事があってね、朔夜と共に」
「だからって何も言わずに消えられては困ります!私の任務は記憶を受け継ぐだけで他の使徒と違って身体の移動は出来ないんですから。」
「あはは、悪かった悪かった」
「もう…」
彼らしい至ってマイペースなところは本当に変わっていない
たまに実年齢もこの見た目通りの少年なんじゃないかと、たまに錯覚しそうになる。
彼は、私がエクソシストを目指すきっかけとなったエクソシストの恩師のような存在だ。
高校生の頃、突然両親が悪魔結社の魔人に殺された。接点などなかった。ただ、2人が見られては都合の悪い取り引きを見てしまったから、ただそれだけで、
だけど俺は何の感情も湧かなかった。俺の両親は2人とも共働きの海洋研究所で、昼夜忙しく働いていて、家に帰ってくることはめったになく、ほぼネグレクトに近い状態で育ったから。
警察の犯人捜査は難航し、結局、3年後に打ち切られたが、その後、魔人の仕業かもしれないと、エクソシストと名乗る彼が突然俺に接触してきたのだ。。どうでもよかった、正直。誰が犯人だろうがなかろうが、殆ど赤の他人だったから。
だけど、そんな冷めた態度を通していた俺に、エクソシストとしての素質を見出したのかもしれない、エクソシスト協会併設の寮に住まわせてやる代わりに、エクソシストにならないかと言われたのだった。
住む場所も金もなかった俺は、あっさりとその案に乗ってしまった。
それから目まぐるしくエクソシストになるための訓練が1年以上続いた。
まずは、メデューサでもなんでもなく見ることすら出来ない俺が、エクソシストたちと同じ目線にたつまでに半年かかった。
この天慶は、実力で得たものではない。そう、これはドルジ神父が俺に、条件付きで仮に与えてくれたもの。
あの頃、実力の見込みのあるイデアの使徒を募っていた。
ドルジ神父は、クリアしたら天慶を得られる試練を用意したのだ。
何百ものエクソシスト予備生らが参加した中で、俺はたまたまクリアしてしまった。
試練の内容は本人のトラウマや弱みだという。だけど俺にとってのそれはなかった。事件のことは忘れられはしないけれど、ただの人生の通過点に過ぎなかったから。
俺は試練をただ1人クリアし、熾天使リヴァイアサンの加護を得た。
「1年以上もですか?…あ、あなたに伝えなければいけないことが山ほどあります、任されていたエクソシスト病専門の研究所のこととか、」
「分かっているよ、ユナンが仕切るようになって君は出入り禁止になったのだろう?」
「…っすみません。ですが、あそこは今まともな研究所ではありません、大変なんです。」
「…ああ、そのようだな」
「そ、そのようだなって…神父はそこの深刻な現状を全然分かってませんよ、研究所は今すぐにでもー」
「研究所の話は後だ。今はそれどころじゃない、葛城、円城寺君の、半数が死んだ。この世界の彼も、年内に必ず死ぬだろう」
「え?そ、そんな…まさか…」
「君に天慶を与えたときに、交わされた契約は、まだうら若きエクソシスト円城寺斗真を守り続けること
悪魔から、魔人から、人間から、あらゆる敵からあの子を命をかけてまもり、あのこの死が、たとえ確定した未来となっても、最後まで、あの子のために闘うこと、お前はそれをずっと忠実に守り続けてきた。
本当に、感謝しているよ、
でも、もう中立でいられる期間は終わりだ、葛城。
悠長に天慶を受けるまでエクソシストを待っている時間はなくなった。現在熾天使以上の天慶を受けたエクソシストと、天慶を受ける見込みのある闘えるエクソシストをふるいにかけてできるだけ多くのエクソシストを集めなければいけない。」
「も、もう少し待って下さい、ドルジ神父、
今、彼は、不安定な時なんです。とても、」
「ああ、分かってるよ、結衣のことだろう?だがこの時間軸の彼女は駄目だ。諦めろ」
「………」
電話はそこで一方的に切れた。
手から力が抜け
受話器が床に落ちる。
作戦通り、不信感は抱いていないな
………………………………………………………………
…それは、本当に小さな異変だった。
結衣といつものように学校から帰ってきて、夕食を食べて、夜の祈りを済ませ、消灯時間が過ぎ、誰もが寝静まった頃に、本当に小さな、物音。今日は悪魔狩りの依頼もないし、気配すら感じない。
だから誰も寮に出入りするわけがないのに、
いつもなら見過ごしていたことだったかもしれない、だけど今日は、何故だか嫌な予感がして、部屋を出た。
辺りは薄暗く、非常灯の明かりだけが照らしている。
私は音を立てずに何とか結衣の部屋までたどり着き、開いた。
「と、斗真さん?」
結衣は寝室のベッドの上で何かの本を読んでいたらしかった。
「突然すみません、でも緊急事態です。誰かが結衣を狙ってます、すぐに逃げましょう」
「だ、誰かって?」
「分かりません。でも、とにかく今すぐに」
「逃げても、もう遅いのよ、」
背後から冷たい声が響いた。
音もなく彼女は現れた。全身黒を基調としたローブに身を包み、頭はフードを被り目元を覆い隠している。サングラスをかけており、表情を見ることは出来ない。
私は結衣を庇うようにその女の前に立ちはだかった。
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私は生まれた時からこの協会併設の孤児院育ちだった。幼い時からメデューサで、エクソシストたちにいつも守ってもらっていた。だから、エクソシストの隣で過ごしてきた私は、自然といつかエクソシストになるのだろうと思っていたし、どちらにしろ20歳で能力が消えるまで守り続けてもらうわけにはいかない、私には自己防衛のことも考えると、エクソシストになる、それ以外考えられなかった。特に他にやりたいこともなかった私は、宿命のように感じていし、疑問に思ったことも、別の道に進もうと思ったこともない。
その時からもう、私はおかしかったのだろうか。
私にとって小学時代はできるならばあまり思い出したくない。血の繋がった親族に3回引き取られたが、私は彼らのお荷物でしかなく、邪魔者だった。特に3度目に引き取られた、三鷹の両親の兄夫妻は、私をエクソシストから遠ざけようとし、監禁もされた。結局、私は孤児院に戻ってきたけれど、最初はよくしてくれていたし、ある程度は信用していた葛城神父も、ルーエン神父も、助けてくれなかったからかな、私は誰に対しても信用せず、冷めた態度で、周りからは可愛げのない子供だったという自覚はある。そして天啓が降りて私が前線で戦い始めてからも、それは変わらなかった。私たちがほとんど無償で、どんなに寝る間を押しんで悪魔憑きを助けても、感謝してくれる人間なんてひと握り。見えない一般市民には、私たちが意味のわからない危ない宗教団体だと言って陰口を言われていたし、実際にエクソシストの力を借りたくないという理由で長い間患者を野放しにし、そして失敗したら私たちを責める。戯言、妄想だと後ろ指をさされ、そうでない人々も 人々から多大な金額を巻き上げている悪徳商法だ詐欺だと軽蔑したし、悪者扱いだった。
学園でもエクソシストは異質で、予備生の私たち生徒にも風評被害は酷かった。
だから私は一人だったし、それでも構わなかった。
それなのに、、彼女はいとも簡単に私の心に踏み込んできた。
「お前が昨日早退した後よ〜俺らめっちゃ良い奴だからよ〜トイレの掃除、してやったんだよな〜、これ、捨てるの持ったいないからさ〜飲んで。」
「掃除当番、サボったんだから、これくらいしてもらわねえとな〜、エクソシストさんよぉ」
「……哀れな人達ですね」
「は?」
「人は、自分より不幸な人間を求める。自分はそいつよりマシだ、有利だと思い込ませて心の平穏を保っている。あなたたちは私をクラスの最底辺に位置づけて、弱者にしたいのですね」
「何意味わかんねえこと言ってんだよ、いつも上から目線で、何様だよ!」
「エクソシストだからって特別とか思ってんじゃねえよ!」
………………………
泥水の入ったバケツがひっくり返り、足元の制服に跳ねる。
「あ〜あ、これじゃ、またトイレ掃除ね〜、どうしていつも火に油を注ぐようなこと言うのかな〜円城寺君は」
男子トイレだというのに掃除用具を手に平気な顔で入ってきた彼女は開口一番にそんなことを言う。
「その名前で呼ばないで下さい」
「あ、ああ、斗真君って言った方が良かった?」
「…いや、そっちではなく…」
「まぁ名前なんていいじゃない、それよりああいう奴らにはさ、あまり突っかからないのが1番良いのよ、あいつらは反応を面白がってるただのガキなんだから、難しいこと言って、理解させようなんて考えるだけ無駄よ」
「…余計なお世話です。私が彼らに何を言おうとあなたには関係ないことです。」
「そんなことはないわ、同じクラスメイトだもの。困っていたら助けるのは当たり前でしょ?それに私、委員長だし。クラスの風紀が乱れないようにクラスメイト全員に気を配るのが、私の役目よ」
「すみませんでしたね、風紀を乱すエクソシストがいて、」
彼女の名前は松永結衣、私と同じクラスメイトで、明るく友達の多い活発な子だった、という印象がある。
クラスメイトの名前など殆ど興味がなく覚えてはいなかったけれど、彼女を覚えていたのは、誰かが虐められていたり、からかわれていたり、悪口でも言われていようものなら真っ先に止めに入る、やたら正義感の強い子だったから。別に尊敬していたり、憧れていたわけじゃない。ただ変わった人だったから、覚えていただけ。案の定、エクソシストを忌み嫌う生徒らに虐めに近い攻撃を受けていた私は、その日から、彼女は私によく話しかけてくるようになった。
初めは、正直鬱陶しかった。ことある事に私を勝手に庇って、私の何も反抗もしない態度に文句を言いたいだけ言って、勝手に消える。
余計なお世話だった。誰の同情などいらなかったし、助けてほしいとも思っていなかったから。
エクソシスト科のない学園などどうせ卒業できればそれでいい。
私はエクソシスト以外に何の興味もなかった。
言ってしまえば、私のサンダルフォンの能力を少し使えばクラスメイト、いや、学園中の生徒の思考を思うままに操ることだって出来た。だから、偏見どころか、崇拝され、皆の神のような絶対的存在になることも可能だった。
だけど、一般市民に思考誘導は絶対に使ってはいけないと神父に言われていたし、自分の私利私欲のためにそれをすれば、天使はそれを許さない。それを続ければ最悪エクソシストを波紋になる。それくらい強力であると同時に危険な力だった。
でも私がどんなに冷たくあしらっても、彼女は執拗に接触してきた。
その日も放課後、勝手に私の後ろをついてきて、今日の給食は今朝の朝食と同じだっただの、返ってきたテストが散々だっただの、1人でひたすら話し続けていた。
「ね、そういえば、あなた林の奥にある協会の隣の寮に住んでるんでしょ?」
「それが何か?仕事の依頼なら協会に直接電話して下さい」
「雨が振りそうだから、これ、届けようかな、お兄ちゃん傘持ってってないだろうし。
実はね、お兄ちゃんがそこの協会のクリスチャンで、今日は今朝から明日の祝言のお手伝いに行ってるんだけど、私場所分からなくて、一応地図はあるけれど迷っちゃいそーだったんだ。お願い、連れてってくれるよね?」
「私は巡回があるので無理ですよ
それに、協会に行きたいなら葛城神父に頼めばいいじゃないですか、彼も協会に帰るんですし」
「先生は、まだまだ仕事でしょ〜遅くなってもいいから、お願い!」
「巡回は遊びじゃないんです。駄目なものはダメです」
「ケチ」
「……」
「……どうして私の後をついてくるのですか?」
「だって協会の場所分からないし、どうせ協会に帰るんでしょ?邪魔にはなってないでしょー、?」
「はぁ……分かりましたよ。案内しますよ。ただし巡回の後でね」
「やった、ありがとう!」
「巡回ってこんなジメジメしたとこ歩くの〜?」
「はい、悪魔はこういう路地裏に潜んでいますので」
「悪魔か…」
「…どうせあなたも信じていないんでしょう?」
「私は信じてるよ。もちろん、だって、私の家系メデューサだし」
「え?」
「一応お兄ちゃんが聖水とか御札、もってきてくれるし、それにね、うちはね、メデューサなのはお母さんだけ、だからなかでも血が薄いから、私は今まで襲われたことないんだよね」
「じゃあ、あなたは…見えないのですか?」
「うん、お兄ちゃんも見えてないよ。」
「あ、、」
「雨、降ってきちゃった!!はい、」
「え?」
「え?じゃないでしょ、入ってって言ってるの、斗真傘ないでしょ?」
「別に濡れてもいいですのでお気になさらず」
「も〜私が構うの、一緒に帰ってるのに一人だけ指してたらおかしいでしょー?それに、斗真に風邪でも引かれたら、私、神父たちに顔向け出来ないよ」
「……分かりました。」
「あ〜やっぱり小さいから鞄も制服も濡れちゃうね」
「……私のもので良ければ、」
「え?ありがとう!助かるよ〜いい所あるじゃない、いつもこれくらい格好よく柚ちゃんも守ってやんなさいよ」
「どうして柚を、私が…」
「知らないの?私、柚ちゃんと友達になったの、素直ですごくいい子だよ、あんたも見習いなさいよ」
「五月蝿いですね、放っておいてください、私が誰といようとあなたには何の関係もー」
「この指輪…凄く綺麗…」
「…あ、ああ、これは契約の証です、天使と契約を交わしたものはこのリングを通して力を 供給しているんです」
「天使と?すごい…ねえ、それって、闘うとき変身したりするの?よくアニメとかである呪文を唱えたら」
「服は変わりませんよ。闘うのは私ではなくほとんど天使ですから。」
「今度私にも見せて!」
「遊びではないんですよ?それに、隊員以外は同行出来ない決まりですから無理ですよ」
「じゃあじゃあ、協会で訓練したりするでしょ?その時でもいいから!ね、お願い、今度ケーキ奢るから!」
「……はぁ、仕方ないですね。次に機会があればね」
「ありがとう!」
「あ、止んだみたいですし、行きましょうか」
「……ねえ、もし、私が、悪魔に襲われそうになったら、守ってくれるん、だよね?」
「え?はい、それが私の役目なので」
「良かった。あのね、私…」
「はい?」
「ううん、なんでもない、また明日ね」
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馴れ合いなど鬱陶しいだけだと思っていた。
小学校の頃は、必死で愛想を振りまいて、誰かのご機嫌取りばかりしていた、だけど、あの円城寺家に引き取られてから、ある日ばったり嫌になった。そんな虚しい生活が。
いや、円城寺家の人々はわかりやすい悪意だっただけ。実際は、私がどれだけいい子を演じようと、私の周りは至る所に悪意が満ちていた。それに気づいてから、全てが無意味に思えた。
だから、彼女のことも、何の感情も湧かなかった。あの日、までは。
「どうせ同じ場所に向かうんだし、一緒に登校しようよ、お兄ちゃんと私と、斗真の3人でさ!」
「仕事の邪魔になるだけです、」
「学校に行ってるあいだはお互い学生じゃない、そ、エクソシストが嫌われてるとか、そういうことじゃないよ、確かにエクソシストを嫌う人もいるけれど、それはあなたにも問題があるわ」
「私に一体何の罪があるというのですか?緊急の依頼があれば授業中でも早退するのは学長公認の規則です。それを不平等だとか、言われて後ろ指をさされてもー」
「分かってもらおうとしなくてもいいの。私たちはまだ中学生だし、理解できる人は少ないわ。だから、普通の、皆と同じ生徒として見てもらえばいいのよ。」
「何がいいたいのですか?」
「つまり、こういうこと、友達になりましょ、私たち。」
「え?」
「朝は一緒に登校して、お昼は寮の皆も誘って皆で食べましょう、そうねえ、優馬は1学年上だから教室には来れないから…中庭がいいわ!それと、皆は門限があるから部活は難しいか、、だから帰る時間は合わないかもしれないけれど、出来れば一緒に帰ること、同じクラスの私たちなら大丈夫よね?」
「どうして私がそんな面倒なことを私はすぐにでも協会に帰らなければならないのに」
「別に寄り道したいとか言ってないでしょ〜、」
「どうして、そんな奇特なことを、?」
「別に、変なことじゃないでしょう?それに、私ね、あなたたちには感謝してるの」
「感謝?」
「メデューサの私を守ってくれた。お兄ちゃんだって、この協会のエクソシストたちには本当に感謝してるって。」
「だから、私、許せないの。変えたいのよ、エクソシストに対する偏見や差別をー。」
「エクソシストを、、?無理ですよ、そんなの、出来るわけない」
変わったことを言い出すと思った。どうして自分には何の得もないのに、エクソシストの悪評は長年に縛られたレッテルだ。簡単に打ち消すことは難しいだろうから。
「エクソシストはもっと理解されるべきよ。葛城先生にも協力を頼んだの。私が生徒会に入ったら、エクソシストの見方を変えるわ。怪しい宗教団体だなんて、考えは私が消してあげる。」
「だからさ、もっと自信もってよ、皆に、希望を与えられる、その力が、君には充分、あるんだからさ。」
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彼女は本当に週に1度礼拝に訪れるクリスチャンになった。礼拝の後はエクソシスト予備生の私たちの講義の後、神父から防衛術などを教わり簡単な悪魔との戦い方や身の守り方などを教わっているようだった。
だがはっきりいって2人は先祖がメデューサだったというだけで、見ることもできない、祖先をたどってもエクソシストはいない、家柄もごく普通で、体力も剣術の腕も明らかに平均以下、見るからにエクソシストになれる才能はなかった。血が濃くないから、それほど執拗に追われたり、狙われたりということはないが、何も見えない彼らには身を守る手段も難しく、とりあえずは、僅かな瘴気と、
憑かれる前の前兆や防衛方法を教えた。
私の隊に同行させて、可能な限り簡単な動物についた悪魔や、低級悪魔を、狩る訓練を受ける稽古が数ヶ月続いた。彼女には特別な力があるわけでもない、普通の女の子だった。
彼女は学園でも有名人で、人気者だった彼女はやがて生徒会長になり、そしてエクソシストを全面的に擁護した。
そしてわずか半年足らずで、エクソシストの見方を本当に覆した。彼女の前では、少なくとも表立ってはエクソシストを批判する人がいなくなったし、私たち寮生への陰口や虐めも無くなったのだった。
私に手を差し伸べてくれたあの日から、彼女は私の光だった。
幸せだった、
でも彼女の兄を私は嫌いだった。
『楽しいか?学園中の生徒を操るのは』
『…だから、私は生徒に能力は使っていないと何度も、この結果は全て結衣の努力の賜です』
『結衣を翻弄させるな、結衣は、優しくて、正義感の強い子だが、君と親しくなる動機も、接点もなかった』
『接触してきたのは結衣の方です。そんなに妹が大事なら、あなた一人で守ればいいでしょう。私のエクソシスト隊に勝手に参加して、一体何度足を引っ張ったと思っているのですか?』
『お前がエクソシストの中でも特別な力を持つNo.IIIだということは聞いている。悪魔結社絡みのある大きな計画を企てていることも。だけど、お前のその絶対的な力は無限じゃない。お前のその能力は危険だ、
悪魔結社を甘く見るな、計画が何なのかは分からない。だけど、その計画に結衣は関係ないのなら、結衣を巻き込むのはやめろ』
『はっ何一つ役に立っていないただの居候風情が、分かったような口を聞かないで下さい』
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『悪魔結社に両親が殺された』
『はぁ?』
『次は俺だ、その後結衣を攫って、仲間にさせるつもりなんだ。』
『何を言ってるんですか?ご両親のことはー、本当に残念でしたが、不慮の事故でした、それに、悪魔結社って、』
『お前は知っているはずだ。悪魔結社、ハルフィアを。ずっと追ってきたのだろ?』
『……どうしてたかが一般市民のあなたたち1家が狙われるのですか?何か関わりがあったんですか?じゃなきゃ明らかに怪しいですよね、』
『違う。目的は本当に分からない。でも、ことが始まる前、結衣が、1度知らない怪しい男と会話しているのを見た。』
『それのどこがおかしいのですか?』
『真夏なのに、黒ずくめの奇妙な服だった、顔も隠して、何より、家の前で待っていたんだ、知らない奴がどうして俺たちの家を知ってる、理由は分からない、でも、俺たちは、確実に目をつけられたんだ。』
『ただの不審者なのでは?巡回に毎日出ていますけれど、悪魔の気配など感じませんでしたし、それに、仮にあなたたちを襲って雇用としたら、私が助けてあげますよ、いつものようにね、この街は日本で1番優秀なエクソシストが多く集っているのですから、』
『違う…ハルフィアを甘く見てはダメだ、そんな生易しい連中じゃない、お前の能力は通用しない、きっとエクソシスト協会長ですら厳しい戦いになるだろう。』
『最近メデューサの子供が失踪しているのを知っているだろ?本部はそれがハルフィアの連中だと分かっていながら足取りが掴めず悩ましている。もうすぐ奴らは恐ろしい実験を始める。多くの犠牲が出る』
『どうしてあなたはそんなことが分かると?まさか未来を見通す力でもあるとでもいうのですか?』
『俺は何の加護もない、ただの人間だ、だけど、親友が優秀なエクソシストだ。エクソシストの未来がかかっている、力を貸して欲しい』
『その親友とやらは誰なのですか?』
『それはー』
『…はぁ、いい加減にして下さい。2人を守るとは言いましたけれど、そんな根も葉もない妄言ばかり、私だって暇ではないんです。』
『…妄言、だって?』
…………………………………
『ハルフィアの本拠地が分かった。住所を貼り付けたから本部のエクソシストに伝えてくれ、それから北九州の元食品サンプルの廃工場で ある大悪魔の召喚実験が開始される。月食が始まる7時にはメデューサの子供は生贄として全員殺されるぞ!本部とアトランティス協会には連絡を入れたけれどダメだ、全然信じてくれない。斗真、お前から神父達に伝えてくれ、このままじゃエクソシストは滅んでしまう!頼む、お前だけが頼りだ』
結衣の兄からの留守番電話だった。
これが最後のやり取りだった。
その日は朝から難しい悪魔祓いに長時間挑んでいて、メッセージを見たのは夜中、だけど私は、その真偽を疑い、神父達に話さなかった。
その2日後、強力な時空の歪みと凄まじい数の悪魔の瘴気を感知したエクソシスト協会は、全国の協会に緊急要請を出し、戦える天慶を受けたエクソシストを募り、北九州の現場に向かった。だが、大悪魔カロンの召喚実験は成功してしまい、全国で行方不明になっていた子供たちが変わり果てた姿で見つかった。検死の結果全員が 膨大な量の血を抜き取られたことによる失血死、そして全員がメデューサの血を持っていた。そして、闘いに向かった20名のエクソシストのうち、
ほとんど誰も悪魔を操る人間と戦った経験などなく、
悪魔を封印することに失敗した挙句、半数以上が犠牲になり、さらにエクソシスト協会の一人が寝返るという最悪の結末だけを残し、ハルフィアの圧倒的勝利で終わった。
結衣の兄はこの日に殺され、結衣はハルフィアに連れて行かれた。
あのとき、駆けつけた時の参上ことを思い出そうとすると頭が酷く痛み、モヤがかかったかのように鮮明には思い出せない。だけど、最後に、私が意識を失う直前に、血溜まりに沈む変わり果てた兄の姿と、
ハルフィアの魔人の手を取ってどこかへ消えてしまった結衣のことだけは覚えている。
あのとき、私がお兄さんの話を信じて、一緒に調べていたら、こんなことにはならなかった。
………………………………………………………………
だから私は、結衣を救わなければいけない。これは私の罪滅ぼしだ。
私は、今まで結衣に何もしてあげられなかった。天慶を受けていたあのときも、あのときも、私は約束を、守れなかった。
ようやく、結社から救い出すことに成功したんだ。私の全てをかけた計画を、こんなところで、諦めたりなどしない!




