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終わりの見えない闘いの始まり










………………………………………………………………



「彼の死が、エクソシスト病ではなく肺がんだったというのは本当ですか?ドルジ神父。今朝の東京の地域新聞に乗っていたんです。まさか、彼は…」


「ああ、そうだよ。年内までに彼は死が確定している」


「………」


予感はしていた。

前回の世界でも彼は不審な死を遂げた。実験開始は免れたものの、生き残ったアトランティス協会のエクソシストが斗真さんしかいない状態だった。もちろん天啓は戻らなかったし、追い込まれていて、かなり不安定だった。


確定した死ー、それほど恐ろしく強固な運命を私は知らない。

いくらパラレルワールドが無数に存在するといっても、世界線は無限ではない

例えば、その全ての時間軸で、とある1人の人間の半数以上が寿命以外の病死や交通事故、事件などで死んだとする。

そうすれば今生きている別の時間軸のその人間の死も確定し、確定した瞬間から遅くても一年以内には死亡するという形で世界線は収束する。

よくよく考えて見れば、彼と居て何度か身に危険を感じたことがあった。高確率で悪魔と出会い、関係ないと思っていたが前回、12月の後半頃からだったか、車に惹かれかけたうえ、工事中の鉄筋が降ってくるという事故があった。幸い避けられたものの…あれはやはり偶然ではなかったのだ。

神父達はきっと知っていた。 でも結局斗真さんはアトランティス協会の閉鎖後、我々本部で保護していたのだが、悪魔祓いを終えて帰宅するさなか、突然なんの前触れもなく倒れた。心臓発作だった。1月1日に、日付が変わるかどうかって時間だった。

持病持ちでもなかったのにどうして、とずっと疑問だった。神父たちも頑なに何も教えてくれなかった。


その世界線の収束はいわば世界、神が定めた運命であり、神の意思に反することになり、それを変えることは我々天使の力を持ってしても難しく、歴史上、まだ誰も確定した死を覆すことができた人間を知らない。


確定してからは一年以内、最初のうちは小さな事故や事件だ。自分でも守ることが出来るかもしれない。だけど、期限が近づくにつれその驚異は恐ろしいほど強力になってくる、世界そのものが彼を本気で殺しにかかるのだ。


「前回の世界線で彼の死が確定し半年以上が経っていた。運がいいのか誰かが彼を守っていたのかは分からないが、突然前触れもなく末期の病にかかった。身体の内部にまで不調を及ぼせるとしたら、それはもう誰にも止められない」



「……」



「時期の遅かれ早かれはあるがな。ルーエンもいない斗真君もいなくなるとなると我々も悠長にしていられないのだよ。前回も突然、同じような時期に心臓発作で……

結衣君には、このことは伏せておかないと。彼女は

受け入れられないだろう。……どうした?朔夜、」


「い、いえ…どちらにしろ、彼を味方につけないといけませんよね。彼が病にかかったのは、12月頃でした。とにかく一刻も早く我々本部に来て保護しましょう。協会にいる間は安全ですから」


「…そう、だね。だけど彼はイデアの任務を忘れている。そんな彼に洗いざらい素性と我々の目的を話して協力しろと言われてはいはいと協力などしないだろうけれど。」


「では、どうするのですか?まさか、実力行使で?」


「まあ、そうなるかもしれないな、その前に1度向こうの葛城に話を通してはみるけれど。」



結局前回と同じ手段で彼らを保護するつもりならば、辿る末路も同じではないのか?


今まで数えきれないくらい仲間の死を見てきた。エクソシスト病に倒れる者や、中には死が確定し、それを覆そうと決死の攻防のかいも虚しく、最後には悲惨な死を遂げた者もいた。

だから、どうしようもないことなんだ。これは運命だった。

私はただ任務を達成することだけを考えていればいいんですよね…?そうすれば、エクソシストは解放され、本当の意味で自由になれるんですよね?

ドルジ神父、、父さん……余計な感情を挟めば、私の天啓が切れてしまうかもしれない。そうなれば私は二度と予知夢を見れなくなり、イデアは破綻する。それだけは、避けなければ…




………………………………………………………………


机と椅子と、ライトしかない、狭く無機質な小さな部屋に私とドルジ神父は向き合っていた。


あれから一晩休み、翌朝、私は神父に呼ばれたのだ。



そして私の、気の遠くなる程の尋問と、イデアのとてつもなく長い説明が始まった。


「…葛城神父のことは、私もよくは知りません。

初めのうちは、エクソシスト隊から外れて、一人で悪魔祓いをしてたみたいです。エクソシストの話をしたがらなくて、別行動をとってました。最初は薄情な人だと誤解していたけれど、本当はエクソシスト病のことを、ずっと気に病んでいて、何とか解明できないかって、イギリスの協会に尋ねて回ってたって、」


「ああ、彼は元々は我々イデアの使徒の一人だった。

彼は元々正義感が強く、現実主義だ。一応、研究施設を作り改善はされてきてはいたが、当時はまだ延命にしかすぎず戦いに復帰することなく死を待つしかできない状態だった。そんな若きエクソシストたちを見ているだけなのが耐えられなかったのだろう。我々に断りなく勝手に出国したのには驚かされたよ。いなくなった人員を埋めるために、ユナンをアトランティス協会のエクソシスト件、地下施設の研究員として遣わしたのだよ

まぁ、当たり前だが何の成果も得られず、帰ってきた葛城は、自分の施設の代わり用を見て絶望したのか、日本中のエクソシストにエクソシスト病を洗いざらい話し、エクソシストから遠ざけようとした。それに同調したエクソシスト予備生が半数は辞めてしまったのだから、本当にあの時は困ったよ、」



「でも、私も葛城神父の気持ち、少し分かります。天啓を受けたエクソシストの八割がエクソシスト病になって、未来がないと分かってしまったら、、でも葛城神父は決して自分自身はエクソシストから去ろうとはしませんでした。

彼はまだ、天啓があります。彼は、決して悪魔結社のことも、イデアの皆さんのことも諦めてなんていなかった。だから、柚ちゃんと斗真さんが戦えなくなって、瀬野さんもいなくなってから、彼は一人でずっと

…」


「ああ、彼は、色々問題行動あったけれど、我々を裏切ったわけではない。斗真を傍で見守りたいと聞かなかったのと、エクソシスト病のワクチンが完成したらイデアの任務に戻ると約束していたしね」


「あの時、施設を訴えることに躊躇していたのは、それで…」



「ルーエン グレイ という神父を知っているか?」


「あ、はい、葛城神父の師匠のような方で、北九州の事件で、悪魔結社に寝返ってしまったって、もう一度会ってこちら側に引き戻したいって、言ってました。


「彼もイデアの使徒の一人で、元々イギリスの軍事施設で育った軍人で、戦闘力も桁違いだった。その中で天啓を得て戦闘能力が更に増大した彼の剣の腕は本当に優れたものだった。彼が敵につくと、朔夜と僕の力だけじゃ我々の勝算はほぼ0だ、

何故彼が裏切ってしまったのか、ずっと考えていた、でもどうしても分からない。彼は軽そうな男に見えるが本当は根の座った苦労人だ。一時の欲望に駆られて悪魔に手を染めるような人物じゃない。

ほぼ同じ時期に天啓を受けて、幹部に入ってからも、いつも一緒に稽古していた、信頼し合っていた、と思っていた。父から使命を聞いたとき、イデアの使徒に真っ先に選んだのも、彼だ。

ルーエンはあの召喚実験失敗の日、最期に葛城と戦って、2人とも…

あのときの葛城なら、何か、彼の心が分かったのかもしれないが、、こんな状況になっても彼は結社を裏切らなかったということは、説得は厳しいだろう。だから、当初、計画に名前のなかった円城寺君に頼るしかなくなったんだ。

とにかく、居場所も真意も分からない以上ルーエンの件は後回しにするしかない。」


「あの、、ルーエン神父、とは、どのような外見の方なのですか?何か、特徴とかありますか?」


「うん、神父に似合わず毎日和服の袴を着た変な奴だったよ。女癖が悪くて、任務を放り出してしょっちゅう朝まで遊んでるなんてのもザラだった、本人は茶会だと言い張るけれど、」


「和服姿の人って…まさか、名前は違うけれど、もしかしたら、あの人かもしれない。」


「何だって?どんな姿だった」


「まだ確証はないけれど、なんか、一昔前の和風な着物のような服を身につけた、髪の長い綺麗な男の人に、2回会いました。1度目は、私が記憶を無くしてすぐ、後ろ姿だけ、だったんですけど、胸騒ぎがして、私の記憶と関係ある人かもしれないって、ただの直感でしたけれど、でも2回目は、私を助けてくれました。円城寺家を1人で捜索していた時、突然玄関が壊されて、知らない見たこともない奇抜な格好の少年が、私を、生贄だって、リリアって呼んでいました。そしてその人をジョーカーと呼んでいました。そこに突然この間の彼がばったり現れて、逃がしてくれました。それからは、会っていないけれど…私は、彼がどうしてハルフィアへ行ってしまったのか、何も分からないけれど、悪い人じゃ、ないと思うんです。私には、彼が何かに苦しんでいるように見えました。彼は、多分、自分からハルフィアに入り、ハルフィアで何かを成し遂げようとしているのかもしれません。

推測ですけど…」


「なるほどね。だが彼がイデアの契約を解除し悪魔を従えている時点でイデアの敵に違いない。罠の可能性もあるから、直接出会うのは今は危険だ。悪魔の名前も分からないし、刃を向けてきたら相当な厳しい戦いになるだろう。だから情報が集まるまで、接触は危険だな。」


あの人は、確かにあのとき、生贄として捕まるはずだった私を助けてくれた。その後、彼がどうなったのか知る術はない。でも、きっと何か理由があったんだと思う。できることならもう一度ー、


「あの、もし、ハルフィアの襲撃が成功して、そこに彼もいたら、」


「抵抗するようなら闘うしかない。それに、どちらにしろ奴に未来はない。」


「それは、どういう…」


「次は円城寺君の話だ。」


「あ、、」


有無を言わさず話を変えられてしまい、仕方なく思考を切り替えることに集中した。


「かつて彼は我々と同格の熾天使を受けていた。

彼はとある理由で契約を強制解除させられたが、天啓を得る資格を失ったわけじゃない。だから、取り戻すことは不可能じゃない。」


「とある理由とは、やはり、彩香さんと、フィオナさんの…?」


「表向きは、そうだと言われているし、本人も疑っていないね。」


「表向きは?」


「朔夜は、その件と天啓を失った理由は関係ないと考えているみたいだ。実際のところ、誰かを手にかけたのならば分かるが、ただ憎んでいただけで失う理由にはならないし、橘君の件は確かに彼に非があるが、僕もずっと引っかかっていたんだよ。本当にこれだけが理由なのか?とね。


彼は天啓を得ていた頃思考を思うままに幻覚を見せて誘導させたり、記憶を消したり、上書きしたり、改ざんする能力があった。」


「思考を?すごい……」


「もしかしたら、何か自分に都合の悪い事実を、現実から目を背けるために、自ら記憶を改ざんしたのかもしれない、、」


「彼は、自分の出生と、両親を酷く憎んでいたのは確かです。家族について決して話をしようとしなかったし、彼は昔の養子にしてくれた老夫婦の旧姓、紫苑寺って、自分を呼ぶようにみんなにさせていました。

でも私が円城寺ていで彼の本名を知って、問い詰めた時、わざと隠していただけで、天啓のあったときのことだったけれど、それに対して能力は使ってなかったです。でもフィオナさん、、両親の受精卵を移植し、彼の代理母となったフィオナさんのことを、、本当の母だと誤解して、かなり憎んでいました。

でも実際にDNA鑑定して、2人はただの代理母と子の関係だったと知る前に、フィオナさんは不慮の事故で…

そのすぐに斗真さんと私は離れて暮らすようになって、学園でも顔を合わせることなく、だから彼がどう思ったのかは、実際のところは分かりません。天啓には直接的な関係はなくても、2人は同じ寮にいて、同じ隊に所属するエクソシストですから、いつまでも仲違いしたままは、良くないと思います。」


「なるほど、ね。母親と和解させることと、彩香君の、自殺の真相の調べ直しが必要か…」


「それと、、」


「ん?」


「いえ、大丈夫です。」


そう、私は忘れていた、否、考えないようにしていた。あの地獄のような日からずっと、思い出したくなくて私は目を逸らし続けていた。私の契約が切れた理由を。

私の契約は彼の亡くなったその直後に解けた。…私の契約した理由は、おそらく、高い割合で円城寺家の滅亡、円城寺の血を継ぐものの殲滅。

それを斗真さんは最後まで知らなかった。

彼は私の契約に関する事実を自ら忘れさせたんだ。と思う。なぜ私がこんな残酷な契約を交わしたのかは分からないけれど…

それも、突きつけなければいけないのだろうか、記憶も証拠もないのに、どうやって?私が嫌われるのはいい、憎まれて、蔑まれて、顔も見たくないと思われても仕方ない。だけどあれを彼に話したら、彼はますます自分を追い詰めてしまうんじゃないだろうか。それに、こんなこと、自分だって信じたくない。



「あの…こんなことを言ってはなんですが、、前回とその前は、どうして失敗、されたんですか?」


「前回は、、研究所を訴えたあの日、拘束されていたユナンがハンドガンを隠し持っていて、暴れたときに、、君が、巻き込まれて…その後、斗真君が錯乱して、ユナンを一方的に…そしてそこにいたアトランティス協会の全員が警察に捕まった。拷問及び殺人罪でね、我々も助けたかったんだが…警察の中にハルフィアのスパイが混じっていて能力が全く効かずに、助けられなかった。」


「……その前は?」


「……すまないが、話せない。」


「え?」


「最初の時間遡行は何もかもが試行錯誤だった。だから高確率で失敗するリスクがあった。」


「…分かりました。」


一体最初の世界で何があったのか、常に微笑を浮かべて掴みどころのない表情だったドルジ神父から笑顔が消え、一瞬、とても悲しそうな表情をしたのが気になった。


「とにかく、君には彼の封じた記憶を暴くのを手伝ってほしい、何を隠し、何から逃げているのか明らかにし、現実と向き合ってもらうんだ。

自分にかけた幻想を解いてほしいんだよ。それができるのは、君だけだからね。」


そんな大掛かりなことが、私にできるだろうか…?自分の記憶が、間違っているだなんて普通誰も考えない、自分だけじゃなくて、他社の記憶を改ざん出来て、証拠さえなければ誰も怪しんだりもしないのに、、

私も、あのときの彩香さんの話が、私は嘘だったとは思えない。彼は本当に、何も隠しているような素振りはなかったし、本当に自分でもどうして天啓が戻らないのか分かってなくて、ほとんど遊ぶことなく祈祷に並外れた時間をかけたり、断食までして、ずっと聖書の教えを誰よりも守ってた。怖いくらいに、、。


「残念ながら僕の能力は有限だ。この能力は強力な次元の歪みを生じさせる、そして身体に相当なエネルギーの負荷をもたらす、つまり僕の命を削る、寿命のおよそ半分を使用するんだ。既に3回失敗した。

私が死ねば、契約が切れてしまう。戻ってくる負荷も考慮して残りの寿命を計算すると、次が最後だ。」


「そんな…」


「君を生かしておいたのは、単なる同情じゃない。君が斗真君と強く関わりがあったからだ。もう君に頼るしかないからだ。簡単に諦めてもらっては困る。分かるね?」


「…やれることは、全てやりたいです。でも、私は天啓も来ないどころか悪魔憑きですし…私、あの制御なんてきっと出来ません。」



「それについては心配ない。もうひとつ重要なことを話忘れていた。僕が移動できる時間は最高でも1万時間、1年と55日までしか遡ることができない、それより前は僕の天使は現世にはいなかった、契約していない状態だからね、私や咲也は本当はこの時間軸の人間ではない。

だから今度飛ぶ世界に我々2人は存在していない

だけど君は違う、同じ世界線に同一人物が2人以上存在することは本来禁忌とされている、タイムパラドックスが起こり、世界は君ともう1人の君のどちらかを消そうとしてくる。

そのときあとから来た異分子の君が狙われる可能性が高いんだ。

だから過去についたらすぐにもう1人の自分を殺さないといけない」


「え??」


一瞬、言われたことの意味が理解できず呆気にとられた。


「もう1人の君を殺せば契約者の死によって契約は解除される。あの悪魔をハルフィアの元へおかせるのは心配だが、どちみち2人が出会うことは禁忌だ。出会えば2人とも死ぬ。だから早いうちに排除しておかなければいけない。

もし出来ないというのなら、我々が手を下す。

君が神の粛清に会い殺されては終わりだ。

この時間遡行は誰か1人でも欠けては達成できない。契約が破綻してしまう。

そうなれば僕も朔夜も天啓を失い、帰る術がなくなる。

あの大爆発までに悪魔結社を滅亡させ、その世界を確定した未来にしてしまうんだ。」



……


安安と表情も変えずにそんな言葉を口にしたドルジ神父の心が、分からない。理屈は分かったけれど、それでも簡単には信じられなかった。



「でも、その世界だけを救っても、失敗した世界線だってたくさんあるんですよね、

1つだけ歴史を変えても、、意味あるんですか?それに、私たちは元のエクソシストたちが多く犠牲になったここに戻らなければいけない。。そんなのって…」


「いくら無数に世界線が存在すると言っても、それは有限じゃない。いくつあるのか定かではないが、既にエクソシストが滅び悪魔結社が台頭した世界線が存在する。

倫理も秩序もない、めちゃくちゃな世界だ。

悪魔が世に蔓延ひ人間が悪魔を支配する恐ろしい世界ー、

悪魔の洗脳や強い衝動に打ち勝てる強い人間のみが生き残り、身体の弱い人間や、子供や高齢者は耐えられない。人口の3分の1以上が犠牲になった。

今、既にいくつかの世界線では成功してしまっていた、その未来が、増え続ければ…いつか半数に経っしてしまう。そうなればいくら我々が過去に遡ろうと無駄になる。

これはそんな大惨事が確定した未来となるのを防ぐための戦争だ、我々エクソシストと悪魔結社とのね。」


「ハルフィアは、本当にエクソシストを滅ぼそうとしているのですか、?少なくともアトランティス協会に直接接触してきたことはなかったのに…」


「それはアトランティス協会の権威が既に地に落ちていたから、だけど、日本中の教会を破壊し、メデューサを誘拐し、エクソシストを殺して回っていたのは確かだ。」


「…ハルフィアの、ことはどこまで知っていますか?」


「本拠地はここ八王子のどこかにある、朔夜が見たから間違いないと思う。構成員は幹部が10人程度、悪魔を操る力を持つ魔人は数十人程度、その他契約は交わしていないが孤児院の子供や社会に不満を持つものや改変を望むものなら誰でも勧誘しているみたいだから、末端の構成員まで含めると200人くらいの規模だ。」


「随分、多いんですね…確か、エクソシストで天啓のある人って…」


「25名だ。だけどハルフィアと互角に闘えるのはそのうちの熾天使と聖天使の加護をもつ8人だけだ。本部の人間は僕と朔夜を含めた5名、残りはアトランティス協会の葛城と、円城寺君と、桜田くんの3人だ。」



「ハルフィアの目的は分かりました。では、あなたたちイデアの真の目的は何ですか?ハルフィアを滅ぼして召喚実験を阻止することですか?」


「悪魔のいない世を作ることだよ」



「悪魔のいない、世界……?それは、まさか、」


「そう、エクソシストが必要なくなる世界を作ること、それが我々イデアの真の目的だよ。」


「エクソシストの、いない世界…」


エクソシストや悪魔が非日常であることは分かっている。、実際に信じていない人間の方が圧倒的に多い。

でも私はたった1年少し過ごしただけだけれど、それでも、そんな世界を、夢にさえ思わなかった。

想像などできなかった。


達成できる云々にかかわらず、、このとてつもない不安はなんだろう。

何も間違ってなどいない。理想そのものは、何も。なのにー、




………………………………………………………………




「こんな夜更けに、お1人でどうしたのですか?

結衣さん、、」


今日の午後、私たち3人と残りの3人のエクソシストを連れて、1年前に戻る、

丑三つ時、とても眠れる状態でなかった私は、縁側で

月を眺めていた。


この人にならば、話してもいいだろうか、そんな甘い考えが脳裏を過る。


「九条院さんは、、幼い時からエクソシスト協会で育って、物心ついたときから、エクソシストになるように育てられたんですよね。」


この人ならば、理解してくれるんじゃないだろうか、

わずかでも白百合寮で皆と過ごした彼ならば、



「斗真さんや、瀬野さんもそうなんです。幼い時に神父に出会って、エクソシストになるためにずっと、厳しい環境に身を置いて訓練してきているのを知っています。彼らは本当に、エクソシストの仕事が好きで、エクソシストに誇りを持ってるって、言ってました。

エクソシストは、まるで自分自身の半身のようになっているくらい、」


こんなことを言ったら、彼を困らせてしまう、だけど私は止めることができない、


「桜田さんや、瀬野さんは、エクソシスト以外にも生きがいを見つけられるかもしれない、でも、斗真さんは、、

エクソシストが彼の全てなんです!エクソシストでいられないくらいならば、死んだ方がマシだって、本気で思っているような、、彼の居場所は、そこにしかないんです。誇張なんかじゃなくて、本当に、彼はそれを選んでしまった

本当は分かっているんです、悪魔祓いなどする必要がなくなる方が一般市民にとっても私たちエクソシストにとってもずっといいことです。メデューサが狙われる心配もないし、魔人だって生まれなくなって、今よりずっと平和になるだろうって、、」



「結衣さん…」


「あなたは、大切な人が、犯罪を犯し、犠牲者を出しても、本人からそれを奪ったら死ぬかもしれないと、それを黙認するんですか?」


「それは…」


「結衣さん、エクソシストが常に毎回人々を無傷で悪魔から救い出せたと思っていますか?

無傷なんかじゃない。はらえずにそのまま亡くなってしまった人や、悪魔祓いに成功しても後遺症が残ってしまって、日常生活が送れなくなった人もたくさんいるんです。エクソシストだって命懸けです。悪魔狩りで命を落としたり、エクソシスト病に倒れたエクソシストも数えきれないほどです、

守ることが出来た人もいれば、助けられなかった人も同じだけ存在します。

最大多数の最大幸福と言う言葉があります。エクソシストは、悪魔さえいなければ多くの救えた命があった、そして悪魔のいない世の中を作ることが、私たちイデアならば不可能じゃないかもしれない、八王子の市民を避難させ、犠牲者を最小限に抑えられたのはたまたま咲也が予知を見て、警察や政府に警告し、予め何か起きたらすぐに動ける手配をしていたから。ひとつでも間違えたら、街の人々が巻き込まれていたかもしれない、それが分かっていながら、あなたはたった一人のエクソシストのために、何十万人もの街の人々を見殺しにするのですか?も、自分の命を削って天使の力を借りているエクソシストも、彼らはそうしなければ強力な悪魔に勝つことができないからです。

エクソシストが必要なくなる世が来ることは、私の出会ってきたほとんど全てのエクソシストたちの本望です。」


1点の非もない正論で糾弾され、私は何も声が出なかった。怖くて、彼の顔を見ることができなかった。


呆れただろうか、それとも哀れに思われただろうか。


ここを追い出されたら私には何も無くなるのに…誰も私を知らない、誰からも必要とされない、それは、死よりも悲しいことだった。

イデアの話を聞いてしまった以上、私が逃げることは許さない。

彼らならば何の躊躇いもなく両断するだろう。


「……イデアの理想の世の中が、本当に正しいのか、私には分からない。」



でも、過去へ飛ぶことができるのはドルジ神父の力があるから、朔夜さんの強さがあるから、私1人じゃ、悪魔結社と互角どころか、悪魔一体にすら勝てない。

向こうについたら半年間私をエクソシストの訓練をさせるといっていたけれど、あくまでもそれは自衛のための戦い方で、戦闘能力が増大するわけでもない。でも、、それでも、私を生かしてくれた2人のために、


今は、イデアの2人に従うしかない。

向こうの世界の私を殺さなければならないのも、受け入れなければいけないのだろうか、本当にそれは正しいことなのだろうか、もうよく分からない。


「結衣さん、これを、斗真さんから預かっていました。」


「これは…手紙?あなたが未来を変えることを決めた時これを読んで下さい…?」


「はい、事故が起きた前日に、私が斗真さんから預かったんです。結衣さんが、我々イデアの存在を知り、協力することになったらあなたに渡すように。それから、もうひとつ。こっちは、あなたの契約が溶け、八王子から出て、私たちエクソシストと関わることなく普通の女子高生としての道をあゆみ始めたときに渡してほしいと言われました。一応、両方渡しておきます。」


「いいんですか?」


「捨てるわけにもいきませんし…まあ、読むかどうかは、あなたが決めてください」


「ありがとう、ございます。」


「それからこれ、明日向こうへ着いてからの計画と、あなたの行動をまとめた紙です。1週間分あります。その後はまた神父からその都度お渡しします。よく読んで、失敗などないようお願いします。」


「…はい。」



………………………………………………………………



結衣へ


これを読んでいるということは、結衣は朔夜やドルジ神父と接触し、イデアの真相を知り、世界を変えることを決めたのでしょう。そしてその時私はこの世界せんにはいない。

おそらく契約も解けていると思います。彼らならきっと出来たでしょうから、

あなたには黙っていましたが、私はかつて、天啓を受けていた頃、イデアの一員としてエクソシスト協会にいまでした。

契約が解除され、私がイデアの記憶を失い、このアトランティス協会に戻ってくるまでは。

私が病に倒れてからも、生前、結衣が私を何度も

助けようとしてくれたこと、本当に嬉しかったです。でも冷たく突き放してごめんなさい。

あのとき、私はもうこの世界でエクソシストの力はほとんど失われていました。朔夜達が来た時点で、計画はほぼ失敗でしたから、

私が何の記憶を封じてしまったのかは、自分でも分かりません。ただ、フィオナのことや、私を引き取ってくれた親類は、物的証拠もあるし、間違いないと思います。この能力は証拠は残せないはずです、なのでおそらく、私が天啓を得ていた中学三年までで、第三者の介入していない、証拠のない記憶のどれかのはずです。

天啓が戻るわけもないのに一心に信じ続けていた、あのときの馬鹿な私を、助けてあげて下さい、引っ張ったいてでも真実を突きつけて下さい、そうすれば、私の天啓は元に戻るでしょう。そのとき、私が全てを諦めてしまっていても、あなただけは決して諦めてはダメです。

この世界の私にはできなかったことが、結衣ならできるから。過去のあなたを殺せば、当時の私は3人を強く憎み、敵対するでしょう。結衣には、酷な役割を押し付けて本当にすまないと思っています。

私が作り出した馬鹿な幻想を壊して下さい。それだけが、私の最後の望みです。

結衣、過去の、私を、どうか宜しくお願いします。あなただけが、頼りです。

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