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イデアの使徒


ふ、とこの辺り一体の時間が制止したかのように、周りの音が、人が忽然と消え去った。

したかのように、ではなく実際に今、この瞬間、私、いや、私たち以外の時間は止まり、世界はセピア色に染まっている。こんなことができるのは、私の知る限り1人しかいない。


背後からふいに気配を感じ振り返る。


「やぁ、九条院君、探したよ。」


金髪の、少し癖毛がかった髪に、真っ白な祭服を身につけた、小学生か、中学生くらいの身長に、あどけなさの残る幼い風貌の少年が立っていた。


「ドルジ神父」


「君が隊務よりも私情を優先するなんて、珍しいこともあるんだね」


そう柔らかく微笑むけれど、目は笑ってなどいない。

私が任務を遂行しなかったことを野放しにはできない、そういう威圧感が漂っている。

実際、この方はそういう方だ。風貌や物腰に騙されてはいけない。


「すみません、ですがこれは私情ではありません。このハルフィアの残党は、我々エクソシスト隊の形勢逆転のキーパーソンになるかもしれません」



「ハルフィアの残党が1人でも生き残った世界がどうなったか、君は分かっていながら、言ってるの?」


「はい。彼女は葛城神父と円城寺斗真に強く関わりのある人物、彼女の力が必要だと思うのです。それに、何より彼女は条件は分かりませんが、攻撃を防げる強力な何かがあるのです。ドルジ神父に一度、診てもらいたい」


「…攻撃を防げる…か、先程も思ったが、なんの能力も使わずに、悪魔使いでも祓魔師ですらない少女、、、ね。思うところはたくさんあるけれど、その少女を匿う理由が薄いな、円城寺君はともかく、葛城君とはほとんど何の関係もないだろう。君が任務に口を挟むなんて、珍しいこともあるもんだね。今まで何も言わずに忠実にこなしてこれていたのに、


「ドルジ神父、私たちは主より受けたこの任務を達成するために今まで幾度となく世界線を行き来してきました。その度に歴史を揺るがす大きな悪魔絡みの事件を未然に防ぎ、この日の本は平和に保たれてきたと言っても過言ではありません。ですが、この最後の任務だけが私は今までのようにそう簡単にはいかないと思います。前回失敗した時も感じていた懸念ですが、今回この目で見て疑念はただの疑念で終わらせていいのか?そんな予感がするのです。」


「九条院君、君は何が言いたいのかな?もしかして、また何か悪い予知夢を見たのか?」


「いえ、予知夢はあれいらい…今月中に悪魔結社の召喚実験が行われ失敗し、改廃した八王子を見て依頼、何もありません。ただ、斗真さんのことを、もっとよく知っておくべきではないかと、思いまして。次回以降我々に協力を仰ぐなら、なおさら。

彼は、何かを強く恐れて、自らそれに気づかないようにしています。記憶に、蓋をしています。天慶を取り戻すために並外れた努力と労力を費やしてはいますが、彼が力が戻らない理由は、彼が、本当に乗り越えなければならない本当の原因は、別にある、試練のシステムを解放には、正しき現実を知っている人物とその協力が不可欠です。私たちはこれまで彼が改変したとされる4つの過去を世界線から探し、推測し、導き出しましたが、確実とは言い切れない。最後の試練は、原因はあのハルフィアの残党と大きく関わっています。2人は幼なじみだったと聞いています。彼女が、どうして闇に落ち、悪魔と契約したのか、もし、契約したことが斗真さんと強く関係があるのならば、彼女はきっと改変する前の記憶を知っています。そう思うんです。」


「彼女は悪魔に乗っ取られてほとんどもう自我などない、我々ですらダンタリオンと接触するのは危険だ、何度も言ったはずだよ。」


「そうですね、少なくとも、向こうの世界の彼女は、です。でも、今の彼女は魔人じゃない。」


「仮に彼の改変した過去に彼女が関わっているとして、

なぜこの世界線の彼女だけを救おうとする?もう円城寺君はいない、この世界には何の価値もないというのに、またいつものように葛城の思念を回収して、次に跳ぶだけだ」


「彼女を、結衣さんを私たちイデアの仲間に引き入れたいのです。」


「……何だって、自分が何を言っているのか分かっているのか、君はー、我々イデアの使徒の誇りと名誉を汚すつもりなのか?

元悪魔使いを引き入れるなどと、、主への冒涜以外の何者でもないじゃないか

君は、君まで僕を裏切ろうというのか?」


「違います、ドルジ神父。私たち九条院家は、あの時、あの日、あなたたちに命を救われてから、今日まで、1度だってエクソシスト協会の皆さんへの恩を忘れたことなどありません。それは、私がイデアに任命された時も、私はこの命尽きる最後の時まで、忠誠を誓うと約束しました。任務を達成するために感情を捨て、最終目的のためなら、何だって犠牲にできるし、その覚悟は今も揺るぎません。

だからこそ、今までのやり方では駄目なんです。北九州の事件は最小限に防げました。エクソシスト病のワクチンの開発もあと1歩まで来ました。でも、もうルーエン神父はいないんです。斗真さん達を無理やり拉致してエクソシスト協会に閉じ込めるわけにも行かない。

勝算がないんです。この闘い方じゃ、全く見えないんです。。お願いします。、確かに、これは賭けです。彼女を縛る契約が分からない限り、いつ解放されるか分からない、彼女が死ねば、私たち全員終わりです。でも、彼女の適合レベルは99でした、もし、彼が失敗しても、彼女に天啓が降りてくれれば、私たちはまだチャンスがあるかもしれない、はるフィアが台頭する世界線をこれ以上増やすわけにはいかない、そのためなら、何だって利用する、それが貴方の信条でしょう、ドルジ神父」


「………君の予知は、僕には出来ないことだ、何を見たのか、何を知ったのかも、知る術は君を通してしかない。

でも、そこまで君が、あの子を必要というのならば、イデアにふさわしき器でなければ、その提案は呑めない。それに、今は1人間の話を悠長にしている場合ではない。悪魔の封印に手が足りていないと要請があった。朔也もすぐに八王子中公園に来なさい。」


「分かりました。」



ドルジ神父が姿を消してからすぐに、倒れていた結衣さんを本拠地に運んだ。事態が収集するまで、すぐには目を覚まさないようにしてある。仲間には、逃げ遅れた一市民で、かつてアトランティス教会でエクソシストの補佐をしていた者で、身よりも頼るすべもなく怪我が完治するまではエクソシスト協会で面倒を見ると伝えた。不服を隠せない隊士も多かったが、ドルジ神父の決定だというと誰も反発しなかった。


荒廃した教会内から使える道具を回収している最中、考えるのはやはり彼女のこと、

自分でも、何故結衣さんを助けたのか分からなかった。殺せないとしても、捨て置くことだって出来たはずなのに、私は、聖域であるイデアの使徒に純血でもない人を加えようとしている。いや、これは、好奇心だ。

認めたくはない、私情を挟むなど、私らしくない。

愛、友情、悲しみ、怒り、憎悪、ありとあらゆる感情、そんなものは私の任務に必要ない。

私の天使、ウリエルは予知能力の他に、目の前の人物の思考を読み取ることができる。今まで、どんなに泣き叫び命乞いを求めた者も、死んだ方がましといえる境遇に身を置き、罪をおかさざるを得なかった者も、私は容赦なく斬り捨てたし、必要なら拷問にもかけた。

決まってそんなものの心の中は、必死で命懸けの説得を試みながらも、内心は、心の奥深くには別の感情が存在する。ある者は、自分をこんな目に合わせた私たちが許せないという強い憎しみー、今すぐにでも殺してやろうという殺意ー、ある者は、どうすれば私たちを騙し、逃走を成功させられるか、策を巡らせる者、ある者は、こうならざるを得なかった、過酷な身の上話をし、私たちの同情を買い見逃してもらおうとする者、詭弁を振る舞い自分には利用価値があると思わせ測ろうとする者、そのどれもが、悪意に満ちていた。拷問にかける魔人だけではない、普段の日常生活でも、聞きたくなどなくても思考が流れ込んできた。学園で接している友人も、エクソシスト協会の寮の仲間も、どんなに上辺だけで言葉を取り繕うとも、笑顔の裏には、そう、誰もが、その心の奥に後暗い悪意を抱えていた。そんな人間の心の闇にばかり触れてきたせいか、私はいつしか、人と距離を置くようになり、感情表現が著しく乏しくなり、人を信じられなくなった。人間にとって、ある程度の憎悪や、同情や、軽蔑、、羨望、承認欲求的な感情は、誰しもが抱いたことのある感情であり、抱くなというのはさしづめ無理な話だ。どんなかつての偉人でも、私利私欲や、見栄や誇りだって、あっただろう。

だけど、私はいつしかこう思うようになってしまった。善意や絆の指針は全て己のため、私にとって悪意から来る疚しいものだと、、


私の両親は、エクソシスト協会の当時の長ととある縁があり、私はよく両親に連れられ協会に礼拝にきていた、父は天慶を受けたエクソシストであり、いつだったか闘いを見せてもらったことがある。エクソシストのことは2人からいつも聞かされていたし、協会には実際に多くのエクソシスト予備生が暮らしていたから、幼い時からエクソシストと身近な立場にいた。九条院家は実際、先祖代々エクソシストとして、このエクソシスト協会を陰ながら支えてきた子孫であり、私は幼い時から並外れたエクソシストの厳しい訓練と強要を受けた。

何百もある悪魔の名前と種類、姿、固有能力に弱点、相性や、聖水の種類と実戦での聖水の撒き方や祈り方、聖書も全て暗記することを求められた。患者を祓う際には拘束の仕方や悪魔との交渉術、肉体との切り離し方や悪魔の完全な消滅に必要な核の融解の仕方、患者の事後サポートも含め患者のケアなど、でも私は、優秀

な父とは違い、あまり才能がなかった。

天慶を授かったのは中等部の頃、その天使は大天使と呼ばれる下位の精霊で、祓魔師の中でも凡庸で、取り立てて強い能力などなかった。悪魔狩りや、簡単な下級悪魔の悪魔祓いを学園に通いながら行うだけ。いつしか父にも見離され、私は孤独だった。


転機が訪れたのは5年前、北九州のメデューサ惨殺事件で、尋常ではない犠牲が出た。

悪魔祓いに向かった両親もそこで命を落とし、その時、父の天慶は、私に受け継がれたのだ。



新しい天使、ウリエルの加護を得てからは1祓魔師隊の隊員から、イデアの使徒という幹部の上級管理官に昇進した。私の力は他者には恐ろしいものに映るらしく、エクソシスト協会幹部の中でも、みな私を避け、任務以外で口を聞いてくるものはほとんどいなかった。


そこで、私は初めてあの3人と出会った。

そして、私は使徒の一人として、父の、いや、父達が目指す大いなる計画を引き継ぐことになった。

この任務を受け継いでから5年、数多もの世界線を観てきた。時間遡行、ドルジ神父のこの能力は天使のエネルギーの消耗が激しい危険な能力だ。

だから、失敗は許されない。彼がいなくなれば、また次の彼が現れるまで、一体何十年、何百年かかるだろう

実質それは、任務の失敗を意味し、この日本は悪魔結社に乗っ取られるだろう。

私は彼の駒だ、私の生命はドルジ神父に捧げ、地の果てだろうと私はついて行く、

例え何度死んでも、この任務だけは、生命に変えても、、必ずー。

………………………………………………………………



気付けば私は、知らない部屋のベッドで寝ていた。


ここは……?


大体20壤はあるだろうかなり広い部屋だ。全体的にモノトーンを基調としたシックな家具に、物は必要最低限以外ほとんど何もなく、掃除の行き届いた、綺麗な部屋だった。


私の昨日までいたホテルじゃない。完全に見慣れない部屋だ。

私、どうしてこんなところに…?確か、アトランティス協会で九条院という人とみんなを探しに来て、息絶えていたシスターや、ユナン神父と、瀬野さんを見た…

考えただけであの見るも無残な情景が蘇ってくる。


それから、どうしたんだっけ、頭が真っ白になって、、

直前の意識がなかった。私はふと窓の外に映る景色を見て絶句した。

この部屋は随分高い位置にあるのだろう、高層ビルが立ち並び、多くの車や人がまさに行き交っていた。

建物も壊れていないし、悪魔の気配も感じない。


夢だったのかとも一瞬思った。でも、こんな場所八王子のどこにもない。

それに、私の左腕の傷を治療した後の縫い目のような傷口と、僅かな痛みがそれが現実だと訴えていた。


突然ガチャりと扉が開いて見知らぬ少年が入ってきた。


「ああ、結衣君、起きていたんだね。すまない、ノックすれば良かったね」


「いえ…」


明るい金髪に、蒼い瞳をした、異国の血の入った小学高学年くらいの風貌の少年、だけど見た目とは裏腹にとても落ち着いており、そして身に付けている白と赤の何重にも重なる神父たちが着ていた祭服に似たロープは、彼の位が高位のものであることを思わせた。


「突然見ず知らずの場所に連れてきて悪かったね、実は昨日、アトランティス協会の敷地で君が気を失っているのを咲夜が見つけて、」


「じゃ、じゃあ、あなたは…もしかして、」


「ああ、ここは千葉のエクソシスト協会本部で、僕はドルジ ネバーマインド、一応ここのエクソシスト長さ。」


「あなたが、、」


「僕のことを知っているのかな?」


「は、はい。何度か、葛城神父がドルジ神父のお話を、、エクソシスト協会で、凄く腕利きのエクソシストがいるって、」


「あはは、それは、買いかぶりすぎだよ、僕の力は闘いには向かない。葛城君に比べたらちっぽけなものさ、、」


「あの、、ドルジ神父は、その、学生、なのですか?」


「ん?ああ、これはただの器だ、見た目のことは気にしないで、天慶の副作用で成長しないんだ、僕」


「そ、そうなんですか…」


「それで、君をここに呼んだのは単に君を八王子の外に逃がすためじゃないんだ、」


「…何となく、予感はしてました。九条院さんが私を殺そうとしていたのに、急に利用したいとか、言って傷を治したりしてくれましたから」


「朔夜の件は済まなかった。ハルフィアの残党を殲滅しろと命令したのは僕だ、朔夜を悪く思わないでやってくれ」


「あ、はい、そのことは、大丈夫です、別に…私には、もうどこにも行く宛てなんかないし、結局私にはもう失うものなんて何もありませんし、利用されるのも、いいかなって、」


「松永結衣、」


「え?」


「戸籍を作り替えて、嘘の住民票を出したりしているけれど、偽物の名前だね」


「………どうして、分かったんですか?」


「まあ、色々ね、記憶誘導は我々には効かないけれど、まんまと騙されてしまったよ。あはは」



「やはり、私の記憶は、斗真さんが消したんですね」


「ああ、本人が、いや、あの天使がいなければ、きみの記憶は戻らないだろう。」


「でも私、最近、斗真さんが、亡くなってから、よく、夢をミルんです。その夢に出てくる人達、私や過去の斗真さんや桜田さん、瀬野さんにそっくりで、きっと、その夢は私の記憶だと思うんです。」


「そうか、本人がいなくなり、効力が薄れているのかもしれないね、」


「あの、、ドルジ神父に、聞きたいことがあって、、協会で、ユナン神父や瀬野さんの姿があったのですが、、」


「ああ、瀬野君は1ヶ月前に本部に尋ねてきたんだ。エクソシスト病のワクチンの開発はどうなっているのか、エクソシストを存続させる気はあるのか、とね。納得するまで東京には帰らないと言い張るから、仕方ないから我々で保護していたんだ。」


「そんなことが…瀬野さんは、何も言わずに急に寮を出ていってしまって…葛城神父たちは、エクソシストを捨てて家出したって…」


「まあ、エクソシスト病のことをずっと知らなかったし、地下の研究所であんな悲惨な事件があったすぐ後だ。気が滅入るのは無理もない。でも彼はエクソシストを決して辞めなかった。立派な覚悟だったよ。私たちがエクソシスト病のワクチンを開発するためにアトランティス協会の地下に研究所を作らせ本部の人間を派遣したというのに」



「……どういう、ことですか、協会の地下に研究所を作ったのは、あなたたちなんですか」


「そうだよ。およそ15年前、エクソシスト病の猛威になすすべもなく死を待つだけの現状からだかいするために、当時1番力のあるエクソシストが集まっていたアトランティス協会の地下に、僕の父も含めたこのエクソシスト協会本部の人間が、エクソシスト病を研究し、ワクチン開発のための研究施設を作った。表向きはエクソシスト病を発症したエクソシストの入院施設と称して、ね。」


「そこで何が行われていたか、あなたたちは知っていたのですか!?ただの研究施設なんかじゃない、魔人や悪魔を連れてきて牢屋に閉じ込めて、拷問や人体実験していたんですよ!?入院施設だって安全じゃない、劣悪な環境の中対した治療もせずに、医師の免許もない研究員たちの実験台にされて、、倫理も人道もなかった、あんな場所…」



「よく知っているんだね、君があの研究所を強制立ち入りさせてから薬や設備がほとんど台無しになったよ。まぁ、エクソシスト病のアンプルはもうほぼ完成しているけどね」


「アンプルが完成している…?ならば、誰も犠牲になる必要なんてなかったってことですか?」


「このアンプルの露呈はとても危険だ はるフィアにとって、最も恐れていた脅威でもあるから エクソシスト病を克服したと知ればたちまち手段を選ばないかもしれない、

簡単には公表出来なかった」


「それがあれば、柚ちゃんも、、助かったかもしれないのに」




「昨日、アトランティス協会に、何故かユナン神父がいました、どうして刑務所にいるはずのユナン神父が?」


「ユナンを釈放したのは僕だよ、あの事件のすぐあとに、そして八王子の魔人狩りに遣わしたのも僕だ。」


「……私、あの人のことがわからない…私を家族同然に大切にしてくれて、エクソシストになる後押しをしてくれたのも、あの人なのに、突然地下施設に閉じ込めて殺そうとしてきて…なのに、彼は最期、エクソシストのために命をかけて戦っていた。」



「君が気にする必要はない。彼は僕達のただの駒だった、我々の任務をただ忠実にこなしていただけのね。」


「……」


エクソシスト存続のためならどんな犠牲も厭わないような恐ろしさを感じた


魔人と悪魔憑きの人間は違うことくらい分かっている。

魔人は、自分の意思で悪魔と契約し悪魔の力を借りている、


悪魔憑きは、精神や身体の弱さなどから悪魔に取り憑かれた何の罪もない哀れな一般市民


でも、魔人は本当に更生の余地すらなく殺されなきゃいけないの?

私はどうしてもそれに納得できない。自分が魔人だったから、自己保身に走っているだけかもしれない、

でも、法に基づくならば、やはり殺人に違いないのだ。

それが、表に出ないから、咎められないだけで。




「それより、、私に頼みたいことがあるんですよね、それってなんですか、私なんかに、エクソシストのお手伝いが務まるとは思いませんけれど…」



私は半ば投げやりだった。期待などしていなかった。この人たちはとんでもなく強い。だから私は逃げることは許されない。だけど、死ぬことも同時に、ならば、もう、何もかもがどうでもよかったから。



一瞬、目の前で光が明滅したように感じ、ドルジ神父の服装が瞬時に変わる。

瞬く間もなく目の前に鋭く光る刃の切っ先が私の額に向られていた、


キーンと激しい耳鳴りのような甲高い音が児玉し、彼の剣が震える、

私が目を疑ったのは、私の目の前を覆う真紅の光だ。身体全体が光を放つ光沢のように 明らかに彼はその刃を振り下ろしているのに、まるで薄い強力な決壊に覆われているかのように、、稲妻のような閃光を放ちながら 大剣は、刹那、彼の腕を離れ、勢いよく後方に弾き飛ばされ、地面に鈍い音を立てて激突した。



その常軌を逸した体験に息がつまり、声も出ない。呼吸が上手く出来ず、冷や汗が頬を伝う。

一体何がー


「なるほど、破れぬ誓いか、知識は得ていたが、、初めて見たな、」



いつの間にか少し離れたところに九条院さんが、立っている。


何が起きたのか、否、何故このような状況になっているのか訳が分からず、幾許かの間ただ見入ることしかできなかった。



「わかった、やろう、君は我々の仲間だ、松永結衣」


「え、仲間って、私は、」


「君は殺しても死なない。古い呪術で、禁忌とされている悪魔の契約だ。契約主の命と引き換えに対象をある条件が叶うまであらゆる敵から守る 君は無敵状態だ。どんな攻撃も貫けないだろう。」


ドルジ神父が、何を言っているのか、分かりたくなどなかった。でも、これまでの私の生き延びてきたこの状況は、よく考えたら、運の良さだけでは片付けられないレベルだった。


一体誰がー私に、否、夢で見たあの人に、私は、生かされた、、?ある条件って、何、、どうして、どうしてこんな、今になって……


「君の望みはよく知っている、そしてそれを叶える方法も」


経たり混み、俯いていた私に、朔夜さんが手を差し伸べてくる。


「斗真君を、助けられる、といったら、?君は絶対に協力する」


「え?」


私はその言葉に耳を疑った。

何を言っているんだ、この人はー、助ける、って…だって、、斗真さんはもうー、


「私たちは、予知能力で、未来に起こりうる悪魔絡みの大きな事件や事故を防ぐために過去に飛んで未然に防いできた。

正確には、無数にも存在する世界線を行き来している、ドルジ神父と私は、そうやってエクソシストたちを守ってきたのです。


「どういう、こと…?急に、そんな、こと言われても…」


私の予想していたどの返答とも違う発言に私は呆気にとられる。

こんな状況で、何を言い出すのか、真意がわからない。私に何をさせようとしているのか、どんな答えを望んでいるのか、



だけど、簡単に信じるには世の中の条理や常識をひっくり返しかねないほどの理論、暴論、私が何の反応も返せず固まっていると、



「やれやれ、君のお人好しには叶わないな、」


そう嘆息してドルジ神父は呟く。そして程なく手にしていた刀はどこかへ消え、服装も元の祭服に変わった。


「……」


「まだもう少し素性を調べたかったのだけれど、、朔夜が話してしまったのだから仕方がない。明かすよ。我々イデアの使徒をね」


「イデア…?」


心臓が五月蝿いほど高鳴っていた。それは先程殺されかけたという緊迫感もあるが、その言葉に、私は聞き覚えがある。記憶などないのに、何の記憶の断片も思い出せないのに、私はその言葉を何度も聞いたことがあるような錯覚、


「だが、これを聞いた後君に、逃げるという選択肢はない。きみの選択は二つに一つだ、我々に協力しイデアの使徒となるか、君は死ぬための条件も分からず、自死すら許されず、死んだような生き地獄を味わって生きていくかだ」


突き刺さるような冷酷な瞳で、再び刀を突き付けられる。


吹き抜けの天井から、朝焼けの太陽が差し込んでくる。その眩しさに目を細めながら、思う。


「彼を助けられるのならば、私は何でも協力します」

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