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待っているのは死だけ

「斗真!まだ話はー、


もう勝手にしなさい!」



ジリリリリ


電話?こんな夜中に一体なんの…


「はい、アトランティス教会ですが!」



「葛城誠人君だね、、日本エクソシスト協会のドルジと申します

今、取り込み中だったかな?」



その名前をきいた瞬間慌てて

受話器を持ち直した。


「あ、こ、これはこれはエクソシスト協会の会長様でしたか、

ご無沙汰しております。全然大丈夫です、すみません

それで、どんなご要件で?」


日本エクソシスト協会とは、千葉にある日本の全ての教会の中枢、いわばエクソシストの本部、優秀なエクソシストやかつて偉大な力を持っていた元エクソシストの集まり、ドルジ会長はそのエクソシストを束ねる現在の長で、エクソシストの中にその名を知らぬ者はいない。

海外にはエクソシスト養成学校、エクソシスト専攻科があったりするが、日本ではまだ理解が薄くそのような学校は存在しない。基本的には儀礼書上は、洗礼を受けたクリスチャンであり、悪魔を見ることのできる能力者で、

日本エクソシスト協会の主催するエクソシスト実技試験に合格すれば、正式なエクソシストとして悪魔祓いを行える権限が与えられる。

試験の受験可能年齢は20歳以上だが、例外がある。それは純粋で汚れなきものにのみ降りるという天啓、天啓を受けたエクソシストは天使の力を借りて並外れた人間以上の能力を瞬く間に発揮し、ほぼどんな悪魔でも祓えるほどの力を有する。天啓は20歳に満たない若い男性に降りやすく、例外として、20歳未満でも天啓を得ているエクソシストは試験を免除され正式なエクソシストに任命される。

しかし天啓は全てのエクソシストの最終目標であるが、とても難しく多くのエクソシストは長年の修行を積んでも五年以内に天啓が降りる確率は四分の一、ほとんどのエクソシストを目指すものは、見習い予備生として、悪魔祓いに同行を重ね、エクソシスト講習会

で学び資格を取る形をとっている。


それに合格したものが正式なエクソシストとして認められ、1人で悪魔祓い及び悪魔狩りを行う権利が与えられる。



まさか、直々にこのアトランティス教会に制裁を?


だがそれは杞憂だった。





「ほ、本当てすか!?うちにそちらの教会のエクソシストを派遣して下さるのですか!?」


「ああ、今、君の教会が、いや、東京のエクソシストがほぼ壊滅的だということは聞いている。

例の事件のことで多くのシスターにエクソシスト予備性がエクソシストを降りてしまった。

たった2人で悪魔祓いを行っていると聞いている。

こちらも人員不足のため都合上、1人しか派遣できないが、まだ18歳の学生だが、熾天使ウリエルの天啓を受けている

両親共に純血のエクソシストで、腕は大人顔負けの能力だ。

きっと、君たちの役に立ってくれるだろう。」


「多大なる恩恵、心より感謝いたします!」


「うむ、明後日には東京につく新幹線に乗らせよう。ちなみに、秋霖学園に通わせるつもりだが、それで大丈夫かな?」


「はい、もちろんです!」



エクソシストをこちらに一名いただけるなんて、しかも天恵もあるエクソシスト。希望の光だ。これで我々のエクソシスト隊は救われた。これならばアトランティス教会が閉鎖された後も、我々の隊はやっていける!

あとは、エクソシスト病を解明できれば、、。

エクソシスト病のことはもちろん本部の方々も知っている。だが誰にも解明されず遅らせることくらいしか対した対策ができていないのが現状だ。斗真がエクソシスト病を発症して…いよいよもうこの隊も終わりかと思っていたさなかこの恩恵は、ようやく私の努力が報われたのだ。早く斗真に報告しよう。







………………side other………


























《2年3組 紫苑寺斗真さん、至急保健室までお越しください》


ある休憩時間に呼び出しの放送がかかった。

保健室…?この声は…養護教諭?


「ああ、紫苑寺君、すぐに済む話よ。座って」


彼女はこの秋霖学園の養護教諭、南部先生だ。昨年この学園に異動してきたのだが、実は彼女は私が通っていた中学のころからの顔見知りで、私の過去を知る数少ない先生のうちの1人、今も私の身勝手な希望で本名を呼ぶのを避けてくれている、優しい人だ。


「この間の健康診断の結果なんだけどね、すぐに大病院に精密検査に来てってお医者さまが、

これ、検査結果よ。勝手に中を見ちゃってごめんなさいね、」


「至急、、ですか」


「ええ。血液の白血球の数値が異常に低いのと、あとレントゲンで、右の肺に直径3センチほどの影が写っていたらしいの、



陽性であることの方が多いんだけど、、、

紫苑寺君は、何か自覚症状はなかった?

呼吸がしづらいとか、咳が出るとか、、」


「………いえ」



「ご両親…いえ、葛城神父様に伝えてすぐにでも病院に行くべきよ。」


「…分かりました。近いうちに行きます」




これはただのエクソシスト病なんかじゃない。とんでもないことになってしまったと予感した。薄々まさかとは感じていたが、調べれば調べるほど良くない情報ばかりだ。

一応保険証はあるものの、精密検査となると保護者代わりの人間がいないと病院にすらいけない。だけど葛城神父にこんなこと口が裂けてもいえやしない。


そうだ、紫苑寺夫妻なら…いや、彼らに余計な心配をさせてしまうだけだ。




「天上の主よ、、エクソシスト病にかからなくても、結局私に待っているのは死だけ、ということですか、私の罪は全く、一欠片も償われてはいなかったのですか?」




マリア像に語りかけるその呟きに、天啓の無くした私に答えてくれる声があるわけもない。


私ももはやここまで、ですか




……………………………………………………………




「紫苑寺君、病院には行ったの?」


「え?」


廊下を歩いていたときすれ違った南部先生に引き止められた。


「え、って、この間、精密検査の書類渡したでしょう?紹介状も入っているから、早めに大きな病院に行くようにっていったじゃない」


「ああ…今、色々と仕事が忙しくて」


「エクソシストのこと?葛城神父様は病院にも連れていって下さらないの?



早期発見が1番大事なのよ、私から葛城神父に伝えてー」


「いえ!それは、、結構です。今神父は依頼がたてこんでて大変なんです。私がまともに動けないから…桜田も瀬のもいなくなって、結衣も消えた。」




「………分かった。葛城神父には言わないわ。だから、その代わり、私が連れていってあげるわ」


「え?」




「私はここの保健師よ、お願い、紫苑寺君、生徒が苦しんでいるのを、ほうっておくなんてできない。

検査を受けに行くだけ、だから、ね?」



私は対応に困ったが、先生は返事を待たずに腕を引っ張っていく。

どうせ、近いうちにバレてしまうことだ。

だったら今診察を受けてもいいかと思った。











「あの、、秋霖学園養護教諭様、少しあちらでお話したいことが」


MRIや血液検査が終わり、待合室で待っていた最中、看護師が隣に座って待っていた先生に声をかけた。

その声は今にも消え入りそうなほど小さく

私と目が合うとサッと目を逸らしバツの悪そうな表情をして俯いている。

すぐに良くない結果であるだろうと分かった。


「え、えぇ…」


2人は待合室から少し離れた廊下の角で何やら二さん、会話した後、再び待合室に戻ってきた。


「ちょっとお医者さまが2人で話したいみたいだから、先生行ってくるわね、紫苑寺君はここで待ってて 」


「いえ、私も行きます」


「え?大丈夫よ、すぐ戻ってくるから」


「結果が出たのでしょう?私の身体のことです。私も聞く権利があります。余計な心配はいりません。どんな結果でも覚悟は出来ています。」


「紫苑寺君…」


「いいですよね?看護婦さん」


「え、あ、先生に確認してきます。。少々お待ちください…」





「大丈夫だそうです。」


わずかな時間で戻ってきてそう告げた。





診察室の中に入ると医師が神妙そうな顔でモニターを見つめていた。

私たちにむきなおり至極真面目な表情で背筋を伸ばし座り直した。


いいのかね?本当に。 目線が私にそう訴えていた。

聞けばもう戻れない、そんな暗示だった


私はまっすぐに見つめ頷く



「回りくどい話はいいです。手短にお願いします」



「……分かりました。結論からいいますと、、、紫苑寺さんの病は…

肺癌です。それもステージ4の末期の」


「そんな…っ」



隣で先生が悲痛に満ちた声で嗚咽を漏らした


「このままだと、1年以内の生存率は20パーセントです。すぐにでも入院し抗がん剤治療を行うべきです」


「やはり…そうでしたか、」


「そんなまさか…っ


先生、紫苑寺君は、手術はできないんですか!」


「…たとえ肺の癌細胞が除去できたとしても、既に機関士や骨にまで転移しているので、

延命措置になるだけです。それに成功率も低い

手術は困難を極めます。」



「成功率はどのくらいなのですか?」


「大体、40パーセントです。」


「私、色々複雑な事情で、生命保険には入っていなかったんです。費用はどのくらいかかりますか?」



「…左様ですか。国から幾分補助金制度を利用することもできますが、

保険未加入者となると、手術費だけで100万は…入院費も込めると少なくとも200万は見ておいたほうが、いいですね。」



「そう、ですか」






大量の書類を受け取り待合室に戻ってきたが先生は終始顔面蒼白でこ眉間に頭を抑えて俯いている。


「まさか、こんなことになるなんて……

あ、ごめんなさいね、私が弱気になってちゃダメなのに、すぐに入院の手続きをしてくるわね、」



「いいえ、入院はしません。」


「え、何をいいだすの?」




「私はエクソシストです。ただでさえ今、エクソシスト隊は過酷な状況です。私がいなければ誰が葛城神父の補佐をするのですか?」


「紫苑寺君!

今はエクソシスト云々の場合じゃないわよ、命がかかっているのよ!?」


「先生、私はどうせ手術をしたって先行きは長くない。高い費用を払ってまで一か八かかけて延命を図るのは嫌なんです。

それに私は入院してエクソシストから抜けるくらいなら、身体が動くかぎりエクソシストでいつづけたいんです。」



「手術費なら、保護者代わりの葛城神父様がきっと工面してくれるわよ、

そうだ、葛城様にこの話をすぐにでもしなければ…」


「だめです!葛城神父には何も言わないで下さい」


「どうして?どういうことなの?」


「今はダメです。彼には時期が来たら必ず話します。

毎日通院します、 だからお願いします。このことは黙っていて下さい。」


「……紫苑寺君…

私はエクソシストのことはよく知らないけれど、教会の神父様というのはそんなに厳しいものなの?病気の生徒の治療よりも仕事を優先させるような人なの?」


「先生、違いますよ。葛城神父はそんな人じゃありません。今までこの学園で働いていたのだから、本当は先生だって分かっているんでしょう?

私は葛城神父を尊敬しているんです。

だからこそ、私は最後の最後まで戦い続ける。」








「だから、このことは、誰にも口外しないでください。」



………


先生はようやく、毎日通院すること、医者の出したくすりを服用すること、その他体調の悪いときはすぐに早退すること、を条件に見逃してもらえた。

もちろん、医者には親代わりである葛城神父に伝えると言ってある。








「おかえり、遅かったな、どこか行ってたのか?」


寮に戻ると葛城神父がロビーに座り夕食の準備をしていた。


「ちょっと…久々に部活に顔を出しに行ってました。なにか緊急の依頼でもありましたか?」


「いや、今夜は何の依頼もない。明日は昨日祓ったばかりの少女の様子を見に病院を尋ねる約束だが、それも緊急性はないから、久方ぶりにようやく腰を据えられそうだよ。」


「それは良かったです。」


「この間は……すまなかったな」


「え?」


「きつく言いすぎてしまった。


頭に血が上っていたのだ。許してくれ。」



「いえ…私こそ、立場もわきまえず身勝手な意見を言ってしまいましたと反省しています。」


「エクソシスト病のことは本人が1番辛いだろうに…

斗真にどんな信条があるのか、分からないが、どうしても服用したくないのであれば、もう強要はしない」



……






こんなに上機嫌な葛城神父は久々に見た。今日は学園退職の最終日だ。

葛城神父はこの教会を、エクソシストを守るために

学園の講師を辞めて、本格的にエクソシストに

なったから。

こんな調子じゃ、言えるわけもない。だけどだんだん私も悪魔祓いも厳しくなってくる。今でさえ時々呼吸が苦しくなるし息切れや動悸が起こって咳も止まらないときがある。エクソシストができなくなるのも時間の問題なのに…。

痛み止めや咳止め、様々な薬を貰っているが出来ることなら抗がん剤治療はまだやりたくない…

これを打てば丸一日身体を起こすことすら難しいといっていたからだ。

エクソシストでいられない私に、なんの意味もない。エクソシストでいられないならば、生きていたって仕方ない。

まだ私は戦える……


「ゲホッゴホッ」


うっすらと掌には血が滲んでいた。


ーっ






これは、今度こそ私への罰なのだ。逃れはしない


彩花を信じられずに、、フィオナとも分かり合えず、結衣も救えなかった私への最大の、


葛城神父のいう通りなのかもしれない。私は心のどこかで、この悲惨な人生を終わらせてくれることを、願っていたのかもしれない。

だから私はー、、


………………………………………………………………



「紫苑寺君!紫苑寺君ってば!」



「ああ、南部先生…」


また保険の先生か、

広い学園だというのに。

わざと私を探して構内にいたかのようなぐらい遭遇率が高いですね



「ちゃんと通院はしてるの?

抗がん剤治療はどうなの?」




「抗がん剤は、2回打ちましたが、」


「2回だけ?大丈夫なの?さっきも辛そうだったけれど…」




「通院はしてます、

抗がん剤治療って、思ったよりきついんですよ

髪は抜けるし、副作用か頭痛と酷い倦怠感でろくに身体も動きやしません

私は1日でもエクソシストを休みたくなどないのに」


「手術は…本当に受けないつもりなの?」


「……」


「今のままじゃ余命3ヶ月なのよ!?

この手術が成功すれば、残りの転移している細胞は比較的小さいから、抗がん剤治療で消せるかもしれないって、、」


「先生、あまり大声で言わないで下さい。」


「ご、ごめんなさい…」



「先生はどうして、私にそこまでしてくれるんですか?」


「それは…紫苑寺君は、私の、大切な」


「生徒だから、ですか?」


「え、ええ、そうよ」


「先生は、この学園の養護教諭です。この学園の生徒の健康に気を配るのが仕事です。だから、私のことも、職務を全うしなければと思ってやってくれているだけ。

病院に付き添ってくれたのも、

それが仕事だから、」


「どうして、そんな悲しいこというの?先生は、紫苑寺君を大切に思っている人達のために、そうすべきだって」


「私には、いませんから。そんな人、1人も。

もういいですよね、今日も相対して病院に行きますので」



……side heroin……………………………………………


バサッ



手に持っていた教科書が床に落下した

筆箱の中身が無残に足元に散らばる。


……嘘……



背筋が凍りつき全身が寒気に襲われた。一瞬で足元が崩れ落ち目の前の景色が真っ暗になったかのような錯覚を覚えた。


だって斗真さんは、エクソシスト病だって…葛城神父が……

悪い夢を見ているのだろうか、

私は何もかも悪い夢を見ているのだろうか。







途端にいい知れようのない不安と焦りと絶望 様々な感情

が湧き上がって抑えきれなくなった


どうしよう…斗真さんが死んじゃう……!


「先生!南部先生!!」


私は先程まで斗真さんと話していた南部先生を追いかけた。


「斗真さんが、病気だってほんとですか!?さっきの話は本当なんですか!?」


「あなたは……」


「同じ寮に住んでいる、え、円城寺結衣です、。お願いします。知ってることすべて教えてください!」






先生から彼の病名、その症状、余命や手術のこと、これからの治療方法などお医者さまが話したという全ての情報を話してくれた。手術は絶対に受けないと拒否していること、葛城神父にも絶対に話すなと念を押されたこと、エクソシズムは続けるという頑なな意思、保険に入っていなかったため莫大な治療費がかかるという現実、

たとえ受けても成功率は半分以下、このま

だと余命3ヶ月という現実、

だけど聞けば聞くほど状況は絶望的で、全て聞きおえた今、もう頭がどうにかなってしまいそうなほど混乱していた。




先生と別れふらふらと廊下を歩いていたとき、不自然に

廊下に手を付き激しく 咳き込んでいる1人の生徒を目にした。


斗真さん!?


私はいてもたってもいられなくなり駆け寄った


「しっかりして下さい!」




「結衣…?」


虚ろな瞳で振り向いた額は酷く疲れた表情で顔面は今にも倒れてしまいそうなほど蒼白で帽子を被っているから気づかなかったものの近くで見ると髪の毛が少ない…

それに掌と口もとから尋常ではない量の血が付着し今も流れ落ちている



「先生を、先生を呼んできます!!」


私が立ち上がってさっきの先生を呼びに行こうとするとその手を掴んで引き止めた。


「いえ、、これくらい、平気です

ちょっと歯茎から血が出ただけですから、気にしないでください 」


「嘘…嘘です。聞いてしまったんです、さっきの、話を…南部先生に問い詰めて全て聞きました。」



「斗真さん、手術…受けないつもりなんですか?……どうして…!助かる可能性である手術なんですよね!?」



「だとしたら、なんだというのですか?」





「…え?」


「あなたに、何の関係があるのですか。」


「そんなの、決まって…」


「はぁ……急にそうやって友達ぶるの、辞めてくれませんか、あなたはもう、白百合寮生でもなければ、エクソシストでもない、私とは、もう何の関わりもないのですから」


「どう…して、そんな急に、そんなこと、いうの?私、長崎の、教会に行かなかったこと、怒っているの?私、まだ、ここでやりたいことがあったからー、それで、斗真さんには、迷惑かけない、かけるつもりはない、」


「だったら、私のことなどほうっておいて下さい。もう、顔も見たくないんです。結衣なんて、」



「…え…」


その明らかな拒絶に、私は呆気にとられたかのように立ち尽くしていた。

声も出ないまま、彼は去って行ってしまう


気力すらも奪われ、気づけばその場に座り込み、呆然と去って行く彼の後ろ姿をただ見ていた。

ー見ていた。















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