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私の大罪


……………One week ago………………………………



「フィオナ…どうしたんだ!その瘴気」


「ちょっと…ね、先日の悪魔祓いでしくじってしまって…私も歳ね」


「すぐに悪魔祓いの準備をしよう。教会まで来てくれ

……フィオナ?」


「もう、多分手遅れだわ」


「…こ、これは……」


フィオナの首筋の鎖骨から胸部の中心にかけての広い範囲赤黒い複雑な紋様が浮かび上がっている。そこから強力な瘴気を感じる。少なくとも三体の悪魔には取り憑かれている。フィオナはエクソシストの講習も受けていたベテランのエクソシスト補佐だ。それなのに、一体なぜ?


「一体何があったんだ?昨日は悪魔祓いの依頼はなかったはずだが?悪魔狩りに一人で出たのか?」


「皆、昨日は忙しくて、悪魔狩りは中止の予定だった。でも私、声がきこえて、」


「声?」


「悪魔の囁きよ、私、分かるの。なんとなくだけど。エクソシストたちが感じ取れないほど遠くにいる悪魔の気配も、それで、危険だとは分かっていたけれど、悪魔狩りに向かった。私でもできると思ったの…八王子ダム湖の周辺で数体の悪魔を見つけて、一体は倒したわ、残りの2体は、完全には 分裂して、とどめをさし損ねたの。今は、まだ正気を保てているけれど…私の肉体は早くてあと3ヶ月、精神は多分、数週間で…」


「フィオナ、今ならまだ間に合う。だからお願いだからそんなこと言わないでくれ。私は全力で命を懸けてでも君を助けたいんだ」


「分かっているでしょう。この悪魔の名前を。2体ともかつて熾天使だった序列の最上級の悪魔よ、どうして八王子にこんなに強力な悪魔がいたのかわからないけれど…エクソシストが誕生して依頼、人間に取り付いた熾天使の悪魔祓いに成功した事例はない。

私、ずっと、誰かに裁かれるときを待ってた。幼いときからずっと、罪ばかり犯してきた、誰かを傷つけることでしか生きられなかった馬鹿な私の、……これは、私の罪。きっと神さまは私はここまでだと言っているのよ」


「そんなことっやってみなければ…」


「誠人さん」


「!」


「もう、いいの。私を、自由にして欲しい。それが私の、心からの答えよ」


「………フィオナ、、」


「斗真と結衣を、頼むわね、もう、私が頼れるのは葛城先生しか、いない」


「じゃあ君は、このまま誰にも打ち明けずにただ死を待つと?

シスター中から嫌われたまま、斗真にも結衣にも誤解されたまま、一人で孤独に死ぬと?」


「…私は、身も心も罪に塗れていた。私には何1つ、望む権利も、幸せになる資格もないから。」


「フィオナ…君まで斗真みたいなことを言わないでくれよ。」


「あはは、斗真、謙遜を通り越して悲観的だものね。本当によく似てるわ。あの子は、繭ちゃんに。

……私の最後の願いを、聞いてくれる?」


「最後の願い?」


「教会の地下の研究所のことよ」


「!」


「あの研究所の実態をまず結衣に全て話してほしい。そして、3人で、あそこを、壊してほしい。」


「……どうして…そんなことを、今更…」


「あの研究所は、エクソシスト病の抗ウイルス薬を開発しているたった1つの場所だった。それはあそこで働いていた元研究員の葛城先生なら当然知ってるわよね?

私がずっと、シスターとそこの看護婦を掛け持ちしていたこと。

こんなこと皆にいったら憎むでしょうけど、私は毎週寮生の食事にアンプルを投入してたの。少しでも発症が遅くなるように、進行を抑えるために、、ね。だけど柚は…守れなかったけれど…」


「彼女は元から天使と直にリンクしていた。エネルギーの制御も難しくいつも暴走することが多かった。君のせいではないよ。逆によく今まで四年以上も持ったものだ。

じゃあ君は…エクソシスト病のワクチンを開発できるかもしれないということのために、あの研究所の味方をしていたのか?」


「でも研究所が暴かれチャッたら、もうアンプルも作れないか。今手持ちのアンプルがなくなったら、、斗真や優ちゃんは…。」


「こればかりは仕方のないことだ。エクソシストの定めなのだよ。先代も、その先代もその宿命を受け入れてきた。」


「どうして、悪魔なんて存在するのかしら」


「え?」


「悪魔さえいなければ、エクソシストが生まれることもない、

私は恨んでいたのかもしれない…ずっと自分を不幸な目に合わせたこの能力、何より悪魔を…だからユナン神父の計画を聞いたとき、頭ではわかっていてもしてやったりだと思った。

悪魔を殲滅したい、悪魔遣いなど生まれないような世界にしたい。悪魔に苦しむ一般市民を救いたい。信念が、理想が一致していた。でも、いつからか、私たちが目指していた理想は食い違っていっていた。ううん、きっと始めから、私たちの理想は全く違ったのね。

それに気づいたとき、もう何もかも遅かった。


先生…あの研究所を、壊して下さい。ユナン神父にはもう私の言葉は届かない、だから私の代わりに、、もう頼めるのは先生しかいない。」


「私は………」


「わかっているわ、あそこにはもう2度と足を踏み入れたくないことも、関わりたくないことも。でも、このままでは今も病と闘っているエクソシストたちにとってあんまりです。楽園などないかもしれない、死の先にあるものなんて誰にもわからない。

このままでは白百合寮のエクソシストは全滅してしまう。真実を暴けば、アトランティス教会は閉鎖に追い込まれるかもしれない、でも、もうこれ以上誰も、こんな理不尽なやり方で、犠牲になってほしくない。今まで私も見て見ぬふりをしていたけれど…やっぱりユナン神父のやり方は間違いだと思うから。」


「でも、どうすればいいかなんて、」


「まず結衣にあの研究所の実態を全て打ち明けるのよ。そして、エクソシスト病の真実も告げるの。斗真がなんといおうと、全て。そうすればきっと正義感の強い彼女はあの場所を野放しにはしない、エクソシストを助けるためにきっと動いてくれる。

その後、ユナンに知られないように信頼できるできるだけ大勢のシスターに地下施設の現状を話してほしい。いい?ユナンは毎週水曜日と、日曜日の夜は必ずあそこを訪れる。その現場を抑えるの。葛城先生ならばセキュリティにはかからないよね?斗真たちがシスターを誘導する間、警備員や研究員を足止めしておいて。そして、証拠を抑えたらタイミングを見計らって警察に通報するのよ。」


「私が足止め?シスターたちに打ち明ける?そんなこと…急に言われても…」


「じゃああのままこれから更正できる未来ある人々が無残に殺されていっていいと?誇りと尊厳を持って戦ったエクソシストたちが人体実験に使われていいというの?」


「そうではないよ、でも…私もフィオナと同じ考えで、あそこを見て見ぬふりしていた。エクソシスト病に打ち勝つ薬を開発できる可能性を秘めているのはあそこだけだ。だから………できる限りのことはしよう。失敗すれば、おそらく死ぬ戦いになるだろうがな」


「ありがとう」



「フィオナは?フィオナはどうするんだ」


「私にはやらなければならないことがあるから。だから…!う…っ!」


「フィオナ!」


「お願い…!たのめるのは、あなたしかいない…

…私が、私でなくなる、その、前に…!」











………………………………………………………………




「フィオナさん、どうしたんですか?その呪印…もしかして…」


「あ、ああ、、悪魔祓いはしないでほしいとの頼みだから、そっとしておいてやってほしい」


「………そうですか、分かりました。シスターに謝って取り付きでもしたら大変ですので、隔離した方が良いのでは?」


「いや、この悪魔はかなり根を深くはっている、そんなに簡単には出やしないから可能性は低いが、今はそっとしておいてやってくれないか、まだ意識はあるんだ。私がつきっきりで面倒を見る、だから、」


「………分かりました。」














………………………………………………………………

独白


私は詐欺師だ。この名前も、容姿も、何一つ作り上げたもの、私は嘘に塗れた人生だった。



家族で展望台に遊びに行ったことを覚えている。幼稚園くらいのとき。


「お父さんを探してくる。だからここで待ってるのよ。」


はぐれた父を探すといって、母は私を展望台の最上階において、そのまま帰ってくることはなかった。

閉園して、日も落ちてしばらくたったころ、泣いていた私に声をかけたのが、地元の孤児院の施設長と、そこの子供たちだった。

当時私は6歳だった。だから当然言葉は話せたし、自分や家族のことを知っているはずの歳だ。だけど、私は家族の名前や、住所はおろか、自分の名前も覚えていなかった。

孤児院の先生たちはずっと私の身元を調べようとしてくれていたけれど、身元の分かりそうなものは何一つ持っていなく、幼稚園も通っておらず、捜索願も出されていなかった私の身元は、最後まで分からなかった。

孤児院で生活して数ヶ月で、名前のない私に名付けてくれた名前、それがフィオナだった。ファーストネームは、養子に引き取られたときにそこの姓を付けてもらう子供が多いため、私もそうした。

小学校高学年くらいのころ、私は施設長の知り合いで、ここの孤児院の資金的援助もしてくれているという、当時フィンランドでは珍しい資産家でお金持ちのスカーレット家の養子に私は引き取られた。



スカーレット家は、4人姉妹と両親の6人家族、。私は4人姉妹の一番上だった。末っ子~次女までは3人とも性格は特にやんちゃでわがままな手のかかる子だった。3人目の妹は生まれつき障害があり、知的能力が著しく低かった。それに比べて私は大人しくてなんでもそつなくこなす優秀な子で、親孝行、誰よりも手のかからず、しっかりしていた方だったと思う。特に私は長女だからという理由で、忙しい両親に代わって、まだ生まれたばかりの赤ん坊や、下の子たちの世話を任されていた。私は珍しい劣勢の遺伝子だったらしく、金髪に蒼目というフィンランドでは珍しい白人系の容姿だった。妹たちには、髪も瞳の色も違い、突然家族に迎えいれられ優遇されていた私が受け入れられなかったのか、しょっちゅう嫌がらせを受けた。学校ではいじめられたし、決して楽な生活じゃなかった。だけど、両親は私にとても優しかったし、私は高校を出るまでは、この家にお世話になるつもり、だった。


だけど、14歳を過ぎたころ、両親は父の会社のことで、よく喧嘩をしているのを見るようになった。その数ヶ月後に、父の会社は多額の負債を抱え込んで倒産した、と聞いた。

後に知ったことには、父とその1部のグループが、会社の資本金を横流ししたり、不渡りを再三行っていたらしい。

それからすぐに、富豪だったスカーレット家は地に落ちた。中学生だった子供たちは学費を払えずに働くことになったし、残りの小学校だった2人は、母親が面倒を見るといい、母は2人を連れて家を出ていった。

私は、父の負担を軽くするために私も働くつもりだった。だけど父はそれを許さなかった。お金などないはずなのに、高価な服を着せて、髪を梳いて、私だけはまるで割れ物を扱うように、大切に育ててくれた。それがどんな意味だとも、知らずに、ー。

中学3年に上がるころだった、

3人の姉妹の中で、私だけが日本でいう女郎屋に売られた。ある日、母親に会わせてあげる、そう言われて乗り込んだ車は、決して母の元に着くことはなかった。知らない駅に降ろされ、知らない叔父さんの車に乗せられ、それから私は、5年かん、自分が今いる場所の地名や町すら分からず、わけも分からないまま女郎屋での生活を余儀なくされた。外に出ることは勿論、電話をかけることすら叶わなかった。1年が過ぎたそんなある日人目を盗んで自室を抜け出し、必死で屋敷の中を探し回り、見つけた電話で、1度、実家に電話をした。きっと、皆が私を心配してくれている、会いたいと思ってくれてる、助けに来てくれるはず、そう思ってた。

でも、そんな私の淡い望みはことごとく、打ち砕かれた。

誰一人私のことなどどうでも良かったんだ。私を大切に扱っていたのは売り物に傷がつかないようにするため、孤児院に来たときも、初めから売れそうな容姿の子供を探すために通ってたんだ。

私のことなど愛していなかった。会社が倒産しなくても、私はきっといつか同じ目にあっていた。


私は、帰ることを諦めここで生きていくことを決めた。元々この業界では珍しい金髪に蒼目だったことと、容姿も悪くなかった私は2年足らずでナンバー2の肩書きを得て、多くの客を取ることに成功した。私には唯一友人と呼べる子が1人だけいた。それは、私より前にここで暮らしていた少女、カルデア。彼女は私がここに売られてすぐ、泣いてばかりでまわりから疎まれ蔑まれて冷たくされていた中、彼女だけが私に手を差し伸べてくれた。私よりも年下だったのにもかかわらずいつも私のそばにいてくれた。彼女は容姿と体型から、あまり客引きが良くなくいつも女将から叱られまわりの女郎たちからも嫌われ者だった。

私はこの業界で成功することができた。だけど、彼女は違った。私はずっと考えていた。純粋で、心優しいカルデアはこんなところにいるべきじゃない、その想いが私の中で日に日に強くなっていった。

私は20歳のとき、カルデアにここから一緒に逃げようと提案した。だけどカルデアは自分だけ逃げるわけにはいかない、もうここで生きていくと決めているという。でも私はそれが本心ではないと思っていた。

だから、私は執拗に彼女を説得した。

彼女はようやく、頷いてくれた。私は自分の力を過信していたのだと思う。だから、必ず上手くいくと、そう思っていたんだ。あの日まではー。



「さあ、カルデア、彼も私たちの仲間だ。ここの警護をしてる鉄ちゃんっていうの。彼も協力してくれる。彼は信用できるわ。だから何も心配いらないわ」


「ありがとう、姉さん……」








「カルデア!どこに行っていたのさ!?探してたんだよ?待ち合わせ時間をとっくに超えてる。」



「……」


「時間がない、早く出よう……カルデア?」


「ごめんなさい」



「こりゃあまぁずーいぶんと悪知恵が働いたもんだねえ?3人揃って愛の逃避行かい?」



「どう、して…」


「言ったじゃない。私はここでの生活に満足しているって、ここから出る気はないって」


「そんな……」


「なのに……勝手に勘違いしてた姉さんが悪いんだからね」


「監獄に放り込んでおけ」


「逃げろ!フィオナ!!」


「鉄ちゃん!!」


「逃げられると思うなよ!反逆者!!」



「俺のことはいい…!だから…早く!!

早く行けええぇぇ!!!」



あのとき、鉄ちゃんがなんといおうと、あの場に残っていれば良かった。なのに私は、命からがら女郎屋を脱出してしまった。その後すぐ、ニュースで鉄ちゃんと、カルデアの死が公表された。あれから、何らかの理由で、自殺なのか他殺なのかはわからないでも、カルデアまでが殺された、と報道された。

私は2人を殺した犯人だと女将たちに仕立て挙げられて、客の証言や脱走者の発生からすぐに私は警察の指名手配犯となった。私は幾日もモーテルに身を隠したり、最悪野宿をする逃亡生活をしていた。そんな日が数週間ほど続いたあと、生き別れだった3女が、私のパスポートを持って現れ、国外に逃げろと言った。東京に私の遠い親戚の叔父さんの家があるという、彼女は障害がありながらも看護婦になるため、今は小さなアパートを借り専門学校に通っていると聞いた。私は、1人、空港に向かった。発着間近だった適当な便を選び飛行機に乗った。私は生き残ることしか考えていなかったんだ。私は何も悪くなんてない。私は幸せになれる、そんな淡い願いを、私はずっと抱いてしまっていたんだ。


本当は、カルデアも、鉄ちゃんも、私のせいで死んだも同然なのに。

私の選択は、正しくなんてなかった。

カルデアの意思を知らずに、私はずっと1人で自分勝手に行動していた。殺されるくらいなら、カルデアはずっと、あそこにいた方が良かったんだ。そうすれば私みたいに肩書きを得られるくらい成長したかもしれない。少なくとも殺されずに済んだ。鉄ちゃんだって、私の馬鹿な脱出計画に巻き込みさえしなければ、今も……。

そんなどうしようもないことを日本に来てからも悩むようになった。

私は日本に来てまず、3女から聞いていた親戚の住所を尋ねた。だけど、その親戚の叔父は、半年前に亡くなっていた。私は住む場所を見つけなければならなかった。でも貯金もろくになく、アパートを借りる前金もない私は、住み込みの仕事をすぐに見つける必要があった。だけどそんな仕事簡単に見つかるはずもなく、当てもなく職安に通う毎日だった。

さらに私は、日本に来て初めて悪魔という存在を知った。それは私が東京にきてすぐのこと、黄昏時~夜開けにかけて人ならざる真っ黒な影のような実体のない化け物が東京の町にうようよしていたから。そしてそれはまわりの人間には見えず、その得たいのしれない物体に追われた。それは実体はないけれども乗り移ることは可能であること、襲う人間にも種類があること、化け物自体はそれほど強くはなかったけれど、

刃物ひとつで大概は葬りされたけれど、人前でこんなことをするわけにもいかず、ほとんどは逃げるしかなかった。半年以上、正体不明の謎の化け物に追われ続けた。

アルバイトを幾つもかけ持ちし、アパートを借りて、、私は必死で日本語を勉強した。

そんな正体不明の化け物から逃げていたある日だった、森の中にさ迷い込んだ。そこで私は近くに大きな教会を見つけた。特に深く考えずに教会に足を踏み入れた。そこが多摩市内にあった、聖ユマニテック教会だった。そこで初めて、私は私を襲ってくるあの化け物が悪魔だと知った。

自分がメデューサと呼ばれる悪魔の好む血だったこと、日本では国際エクソシスト連盟に加入しておりエクソシストは職業として認められていること、現在全国で正式なエクソシストは50名ほど、またエクソシスト予備性と言われるエクソシストの元で修行を行うものが100名ほど存在している。

この東京には2つの大きな教会があり、合わせて20人という関東の中で最も多いエクソシストが存在する。

低級の悪魔で精神や身体の弱い人間に乗り移ることで

強力な悪魔ならば一般人に見えないが実体があり攻撃してくること、

そして教会にクラス彼らは、悪魔に取り憑かれた人々から悪魔を払ったり、俳諧する悪魔をかったりするエクソシストが多数いて、そのためのようせいりょうもあることを知った。

エクソシストたちの補佐をすることを条件に私はこの教会に併設されている修道院で住むことを許された。今の仕事は体力的に厳しかった私には嬉しい誘いだった。だけど私はシスターにはならないといった。なぜなら私は汚れていたから。シスターになる資格なんてなかったし、私が許せなかった。しばらく要請料で働いたけれど、慈善事業団体である教会の仕事の給与では生活できなかった。だから職安に通い続け、他に新たに見つけた仕事、それが、円城寺家の家政婦だった。週五日、朝から夕方まで円城寺家で家事をし、夕方~は教会に戻って寮の掃除、ご飯作り、庭仕事などをした。そして休みの日は修道院工場でシスターの仕事の手伝い、ミサの準備や、買い出し、夜は悪魔狩りや悪魔祓いにも同行したりと教会で祈りを捧げる時間もないほど目まぐるしい毎日が続いた。


そんなある日、円城寺家の旦那様が、私にある相談をした。その日から、私の人生は大きく変わった。これがさらなる奈落の始まりだとも知らずに。。


その相談とは、奥様の紗彩様と娘の繭お嬢様のことだった。


お嬢様は、不良だった。学校を度々無断欠勤し、毎日夜遊びに明け暮れていた。何日も家に帰って来ない日もあり、私が入ってきたばかりの頃、他のメイドにも手のつけようのない酷い有様だった。

旦那様は娘があんなふうになってしまったのは、幼いとき、音楽かの娘なのだからきっと才能を発揮してくれるだろう、そう信じて厳しい教育をしてきてしまったこと、そのせいで繭ちゃんは自分は才能のない落ちこぼれだと思い込んでしまっていること、仕事ばかりであまり家にいられず娘のことは紗彩に任せきりだった私の責任だといった。

奥様は私が雇われたときには既に精神状態が悪く、突然ヒステリックになったり、何日も床に伏せる日々だった。2人はいつも跡継ぎがほしいと願っていた。100年以上続く円城寺の歴史を閉ざすわけには、いかない、と強い意志を持っていた。


旦那様の相談、それこそ、子宮癌を発症し、もう子供を産めない身体になってしまった奥様の代わりに、私が代理母となり2人の子供を産むこと


最初は、半信半疑だった。私にいいよってくる人はこれまでたくさんいたけれど、皆口だけだった。お金もない私に求めるものは皆同じだった。口先だけ。どうせこの人も同じなんだって。でも、旦那様は違った。紗彩様のことを本当に愛していたし、何とかしてお嬢様と分かり合おうとしていた。


だから私も、そんな旦那様の願いを叶えてあげようと思った。

旦那様は、私に2人の子を産んでもらうというしを話し、奥様の了承を得ていると言っていた。最近、奥様の精神状態も大分良好だったため、だから私は、疑いもしなかった。まさか、こんなことになるなんてー。


無事懐妊して数日たったある夜、私たちは奥様に懐妊の知らせを報告しようと、今後のことを話し合っていた。そのとき突然奥様が常軌を逸した様子で私たちに、隠れて不倫していたのだと盗聴器を突きつけて私たちを追い立てた。私たちが何度子を産めない奥様の代わりに、代理母として生んでもらうだけ、この子供は奥様と旦那様の子だと言っても、奥様は全くきかなかった。私たちが愛し合っていて、不倫関係にあったのだと言い張って聞かなかった。旦那様は確かに奥様に話をしていたけれど、奥様の病はもう、私たちが思っていたよりもずっと深いものだったのだ。

それは、もうとっくに何もかも手遅れだった。紗彩様が悪魔と契約し、恐ろしい力を手に入れて、旦那様の会社の関係者を殺し、 まわりの人間が皆敵になってしまっていた。

さらに教会のエクソシストたちに、悪魔の気配を感ずかれ私に問い詰められ、私は事情を話した。そうこうしているあいだに繭ちゃんの復讐により、あっけなく2人は殺された。

私は逃げた。死の間際になって、旦那様を見捨てて、一人逃げた。ユマニテック教会の人々は私をひどく責めた。私の勤務先で悪魔使いが2人も生まれたこと、彼らを取り逃してしまったこと、何より殺人事件の元となった私が不倫していたことを。

確かに私は罪人だ、仲間を見捨てて自分だけ逃げて、、奥様を不幸にした、またしても自分だけが逃げて助かった、大罪人、

私はユマニテック教会を出て、もう行く宛などどこにもなかった。このまま、たまたま辿り着いた東京湾の船着き場で、私は、身を投げようとしていた。でも、私には死すら許されなかった。

そんなとき、命懸けで私を助けてくれたのが、長野の教会から実習に来ていたユナン神父だった。

ユナン神父は教会に私を迎え入れてくれた。私が私の過去を打ち明けた時も、警察につき渡すこともせず、私の過去も、誰にも話さないでいてくれた。私がシスターにはならないのに、ここで働かせてもらうことになったことに、多くのシスターから反対され、非難の嵐を浴びた。修道長が私と斗真の関係を言いふらしたあとは、私への風評被害はさらに過酷なものになっていった。葛城神父は最初は優しかったけれど、あるとき急に冷たくなった。挙句エクソシストは辞めるべきだと色んなエクソシストに主張し始め、最後にはエクソシストを降りて教会を出ていった。でもいつもユナン神父は庇ってくれた。だから私は、ユナン神父の本業であるエクソシストを手伝おうと思った。ユナン神父は私の命の恩人であり、日本でたった一人の信じられる人だった。だからユナン神父の秘密を知ったときも、私は暗黙しその計画に協力することを決めた。最初は少し非人道的だと思った。でも間違っているとは考えなかった。ユナン神父が正義だというのならそれは私にも正義だった。斗真にそのことを知られ、殴られたときも、私の意思は曲げなかった。

斗真は孤児院に入ったり養子に迎えいれられたり親戚に引き取られたりと可哀想な目に合わせてしまったとは思う。斗真と良い関係でいられたのはあのこが小学校に上がってすぐくらいまでだった。斗真は円城寺家に新しく住み始めた旦那様の兄夫婦の元に引き取られてから、兄夫婦が真実を話したことで斗真は私が本当の母親だと知るとひどく私を責め口も聞いてくれなくなってしまった。本当は私たちは血は繋がってはいないけれど、紗彩様の悪魔の能力の影響によりその洗脳は強力で、修道院中に広まり、簡単には解けなかった。結果的に斗真はあの家を出て、再び孤児院に戻った。斗真は1度も私を見てはくれなかった。1度も話をしてくれなかった。1度も、母と読んではくれなかった。

これも、生まれてからずっと、罪人だった私への罰なのかもしれない。神様は私を許しては下さらないといっているようだった。

繭ちゃんのこと、憎いとは思わない。私はこれまで多くの人を不幸にしそれを踏み台にして生きてきた。繭ちゃんよりもずっと大罪人だから。誰かを憎む資格もなかった。だけど…私は円城寺家で働いていたときからずっと、あなたが羨ましかった。私の青春時代は全て女郎屋で毎日知らない男に身を捧 げるだけの 毎日、最初は身の毛もよだつほど気持ち悪かった。毎日泣いていた。でも、いつからか慣れた。もう全てがどうでもいいように感じて、廃人のように過ごした。 そんな穢れきった私と違って、繭ちゃんには人生をやり直せるチャンスがいくらでもあった、両親に愛されていなかった?才能がなくて自分が嫌ですって?

だから悪魔と契約して力を手に入れたですって?

わがままだわ、強欲すぎる、お金持ちなだけで、どれほど恵まれていたか……。

私なんて、本当の両親がどこにいるのかさえ、わからない、自分の本当の名前すらわからないんだよ?

養子に迎えられた家ではすぐに、お金のために売られたんだよ…?数年ぶりに電話をしたら、もう帰ってくるなって言われたんだよ?

フィンランドでは私は指名手配犯なんだよ?一生故郷に帰ることすらできないんだよ?

私はとっくに、 狂っていた。どこで間違えてしまったんだろう。女郎屋で道化を演じていたあのとき?仲間を見捨てて逃げたあのとき?旦那様の相談を受けてしまったあのとき? ユナン神父の行いを容認してしまったあのとき?


私に関わる人は皆不幸になる。私が馬鹿な考えを起こさなければ、、私が円成寺家に行かなければ、あの一家は平穏だった。私の存在は人々を狂わせてしまう。







私は、斗真を守るために、悪魔にでも利用されてやる。私は悪役を買おう。罪人の私にはぴったりの役回りだ。

だってあのとき、決めたのだから、命に変えてでも、あなたを守るとー



【フィオナさん、言ったよね、私に。お腹の子は斗真さんの両親の子だって!代理母として受精卵を移植しただけだって!

私たちが誤解しているだけで2人に愛はなかったって!】


「……あはは、あははははははは!!!!!!」


そうだよ。あの人は初めから私を愛してなどいなかったし、私も旦那様に主以外の感情を抱いたことはない。


「今更何ほざいてんの??まさか本気で騙されてたなんてね!!どうだった、私の会心の演技??」


【どうして…?どうしてわざわざ、あんな嘘を…!信じて、いたのに…フィオナさんのこと、いいひとだって、、】


そんな目で私を見ないで。

私を助けようなど思わないで。



【……フィオナさん、、】


私なんかのために流す涙ほど、無意味なものはない。

だって、私が1番助けなければいけなかった人は、もういないんだから。







………………………………………………………………


景色が、暗転する。とてもゆっくりで、まるでスローモーションの映像を見ているかのようだった。


まさか、円城寺家で日記を見られるとは思わなかったな…。斗真との計画が破綻してしまった。見つけた奥様の日記で全てを誤解して、私に問い詰めたときから、私はもう諦めてしまった。

なにより斗真がずっと信じていなかったことが、致命的だった。

だから、私はもう反論できなくなってしまった。それに、今更どう足掻いたって、誰が信じるだろう。雑誌やテレビで取り上げられて、皆が私たちを知っているのに、この教会で、自分のお腹から産まれた子が、本当の子じゃないなんて、誰が信じるだろう。


もう、いいよね。私、今まで頑張ったよね。だからもう、私に出来ることは、ないよね。

もう、カルデアたちの所に、行ってもいいよね。向こうでも、謝らなきゃいけない人が、たくさんいる。




ごめんね、結衣、斗真。























さよなら









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