表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/87

第9話 忠実なる勇者は

 私にとって戦場とは居場所だ。

 存在意義は誰よりも戦果を上げることで選ばれた者としての責務を全うしなくてはいけない。それが聖剣所持者としての役目。

 この世界には二つの大きな王国があり、私はその片方で勝つために剣を振るっている。それが正義なのかどうかも分からないまま。

 でも私には選択肢はない。孤児であった私を育ててくれたあの人に恩を返すためにも、そして私にはこれ以外何もない。

 聖剣以外何もーー。

 難しく考えると剣を振るえなくなってしまう。唯一の拠り所である聖剣が。

 だから私はただ命令に従って戦場に赴いて聖剣を振るう。それが正義であると信じて。

 けど、王様は急に私を呼び出して無理難題を押し付けた。

「勇者、シュエルよ。長きに渡る戦争を終わらせるために聖杯を手に入れるのだ」

「聖杯……ですか。しかし、それは伝説上のものでは」

 二大王国に昔から伝わる伝説。勇者が聖杯を手にして世界に平和をもたらしたという伝説。

 まず知らない者がいないその伝説、しかし伝説は伝説だ。

「知らなくて当然だ。聖杯は機密事項だからな。だが存在するのだよ。手にしたものの願いを叶える聖杯は」

 何とも信じ難い話ではあるが、聖杯の存在を疑うということは聖剣の存在を疑うのに等しい。

 なので聖剣の所持者として、そして一人の国民としてここは信じざるを得ないのだ。

「それでは聖杯は何処にあるのですか?」

「それなのだが少々面倒でな。グラハグ領にあるのだ。無駄な争いを避けるためにここは穏便に聖杯を手にして帰ってきてほしい。詳しいことはそれに書いておいた」

「勇者シュエル。聖杯の任、受け賜わりました」

 一人で敵国に行くというのは条件が厳しいが王様から直々の任務を断ることはできない。

 衛兵から聖杯の情報が記載された紙を受け取ってその場を退出して早速荷支度をするために家へと戻ると白衣を身に纏った男が笑顔で迎え入れてくれた。

「また任務かい?」

 彼は私の育ての親であるバディハ。孤児である私を快く引き取ってくれた心優しい人で魔法研究局の局長をしている。

「はい。今回はいつもより長くなるかもしれません」

「そうか。それは寂しくなるね。でも最近は多くないかな」

「何か悪かったですか?」

「いや、君なりに頑張ってくれてるのは誰よりも分かっているつもりだから責めているわけじゃないんだ。けど最近は一緒に食事をするのも少なくなったなと思って」

 そういえばこの家に戻ってきたのも随分と久しぶりのように感じる。

「大丈夫ですよ。今回の任務が終われば毎日一緒に食事ができますから」

 平和になれば勇者である私は不要になる。そうなれば任務を受ける必要もなくなってそんな生活が送られるようになる。

「本当かい⁉︎ いや〜、それは楽しみだな。じゃあ無事を祈って待っているよ」

「はい。では行ってきます」

 今回の任務は王国のためじゃない。私と彼のためにも成功させないと。

 いつもは淡々と任務をこなしていたシュエルだが、この聖杯奪取には並々ならぬ感情がこもっていたが問題が発生した。

 それは任務の情報が漏れていたということ。

 これにより最強無敗だった勇者は追い詰められ、聖杯まであと少しというところで空を仰いでいた。

 彼女の体には幾つもの剣が突き刺さり、生きているのが不思議なほど血が流れている。流石の勇者も大軍相手では勝てなかったのだ。

 しかし、聖剣を振るい多くの兵士を屠り、その強さを示したが新たなる戦争の種を蒔いたにすぎない。

 それを知ってか知らずか彼女は戦争がどうしてあるのか疑問に思い、戦争が根絶することを願う。

 聖杯にその願いは届くことはなかったが、とある神に届き招待状を渡され彼女は転生屋へと誘われた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ