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第82話 帰還、そして……

 魔界から転生屋へ帰ると般若のような形相をしたリルフィーが迎え入れてくれた。

「セリエから大体のことは聞いてるけどもうこんな無茶やめてよね。何かあったら私の責任になるんだから」

 ご機嫌斜めのようでいつも口調は荒い。

 そっぽを向いている最中にそっとセリエが補足してくれる。

「あんなことを言っていますがとても心配していたので次からは気を付けてください」

「師匠! 聞きましたよ。何でも魔界の悪魔共を震撼させたとか。ぜひ私も見たかったです。その時のお話を聞きたいのですが……実は師匠がいない間に大変なことになりまして」

「大変なこと?」

「バルドルが持ってきた仕事があって、それが大変なのよ。なんか独立しようとしてる天使が適当に女神を祀り上げて好き勝手にしようとしてらいしいの」

「そいつは大事だな。でもどうして俺たちに白羽の矢が立ったんだ? 天界にはそれを止められる奴はいないのか」

 ここは転生屋だ。

 転生させるのが仕事であり、天界のいざこざを解決する何でも屋ではない。

「知らないわよ。けど上からの命令にはどんな理不尽なことにも逆らえないってことじゃないの。あいつも珍しくボヤいてたし」

「それに付き合わされる俺たちのことも考え欲しいものだ。それで状況はどうなっている?」

「最悪よ。捜査中にネルが逆に捕まって奴らはもう儀式の準備をしてるわ。ネクロマンサーが女神にしようだなんてあいつら狂ってるわよ」

 姿が見えないと思ったら捕まっていたとは予想外だ。場の空気が悪いのも頷ける。

「しかし、そんなに簡単に神に出来るものか?」

「神の遺物と天使の力を使えば出来るようです。ただしそれと同時に供物として多くの人間の魂が必要とはります」

「つまりその計画を止めないと多くの人間が犠牲になるということか。女神が増えようがどうでも良かったがそれがネルーーましてや多くの犠牲も伴うと聞くと無視するわけにはいかないな」

 吸血鬼にとって人間はただの餌でしかないが、立場上見捨てるわけにもいかない。

「相手は天使……ですか。悪魔の私にとっては天敵ですけど新しい力が目覚めたので頑張ります」

 あの一件で使い魔であるビュートが覚醒し、彼女は本来の力が発揮出来るようになったと言う。まだその状態を見たことがないが蠅の王の戦闘力を考慮するとそれなりに期待出来るだろう。

「そうか。それは心強い。ではその天使たちの拠点を教えてくれ。用心棒として荒事は俺が解決してやろう」

「言われなくても案内するわよ。けど、今までの相手とは桁違いの強さだから気を引き締めなさい」

「ではお二人は準備をしてください。今回は一斉潜入し、ネルさんを救出して可能なら敵を捕獲するという流れとなっています」

「捕獲か。やはり天使を殺すのは御法度か?」

 別に殺したいという意味ではない捕獲となると難易度が格段に跳ね上がる。

「なるべく生け捕りにという命令ですので」

 相変わらずの事務的な返事だが、珍しく『なるべく』などという言葉を使った。どうやら彼女もこの状況にはお怒りらしい。

「了解した。それじゃあ、準備をしておけベル」

 リルフィーが言ったように今回は相手が相手なだけにいつものようにはいかない。

 吸血鬼は天井を見つめて決意を固めた。

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